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箱庭の王様  作者: 山司
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第18章 命 9

第18章

命 9





▪️▪️▪️▪️





「(…………以上です。

私は人間を害そうとは考えていませんし、現在も、レイス系魔物による被害が減る様にと努めているつもりです。


なので、どうか、身体を返して頂けないでしょうか…………)」



エリニーフォスの話しは、思った以上に長かったが、価値有る話しだった。

そして、このエリニーフォスを野放しにしておくのは危険だ。



「エリニーフォス、残念だけど、キミ自身に悪意が無かったとしても、素直に返す訳には行かないな…………」


「(……何故でしょうか?

何か条件がお有りなのでしょうか?」


「理由は僕の脅威になる可能性が有るから。


キミの作ったポーションを大量に作れるシステムが出回ったらどうなるか分かる?

キミの思っている様な、誰もが怪我や病気の苦しみから解放される様な事にはならないよ?

今のキミなら分かるでしょ?


間違いなく、そのシステムを使って支配者達が今以上の権力を持つ。

そして、そのシステムを奪い合う戦争が繰り返され続けるよ」


「(…………確かにそうかもしれません。

しかし、其れは、貴方様がお持ちになられていても同じなのでは?)」


「いや、そんな事は無い。

だって、僕は既に潤沢にポーションを持っているから、今よりちょっと生産効率が上がるだけだよ。


そして、もう1つ、其れはキミ自身の危険性だ。

キミの子供はさっき話しに出て来た2人だけ?

その2人の心臓って、ちゃんと心臓だった?」


「(…………私の子供の心臓が魔核になっている可能性ですか…………)」


「そう、その子達が違っても、今後生まれて来る子供はどうかは分からないよね?


もしも、心臓が魔核の子供が産まれたら、その子は不老だよね?

そして、魔導士のキミの子供は魔導士である可能性も有る。


魔物になるかどうかは別にしても、魔導士が生まれる可能性が有るなら、将来的に危険な存在が生まれて来る可能性がある。


そんなキミを何処かの国の偉い人が見つけたらどうなる?」


「(…………私を王妃にと云う事ですか…………)」


「…………エリニーフォス、もうちょっと、現実を見た方が良いよ。

王妃なんて、そんなまともな地位に据えられる訳無いじゃ無いか。


キミは不老不死なんだよ?

地下にでも幽閉されて、自殺が出来ない様に拘束されて、延々と子供を産む為の道具にされるに決まっているよ」


「(!!!!そ、そんな、ことは…………)」


「普通に有り得るでしょ、僕が情報を持ってるのはこの近辺の国くらいだけど、アルアックス王国、アルコーラル商国、イジャラン・バダ帝国、ガンヒンリン帝国、何処も碌な国じゃ無いし。


と、云う訳で、キミに身体を返す条件は、僕の国に来て生活する事。

此れも理由を言っておこう。


僕の国には魔導具が潤沢に有って、魔導士を求めて無い。

そして、僕自身も不老不死だから、キミから生まれるかもしれない不老の子供を求めて無い」


「(!!貴方様も不老不死なのですか?)」


「うん、そうだよ。

キミとは方向性が違うけど、僕は殺されても死なないんだよね。

まあ、痛いから見せないけどね」


「(殺されても死なないと云う事は本当の不老不死ですか…………

…………死都 プルトバトールでスタンピートを起こされたのは貴方様ですか?)」


「ああ、そういえば答えて無かったね。

そうだよ、僕があのスタンピートの犯人だ。


つまり、キミを殺した犯人は、僕だ!!」



シャキーーーン!!っと、音がしそうな程、カッコイイポーズでキメる僕に、冷たい3人の視線が突き刺さる…………



「(…………ええっと、その…………)」


「だから、ゴメンね、殺しちゃって」


「(いえ、先程もお話しした通り、死ぬ事には慣れているので良いのですが、ちょっと、軽過ぎませんか?)」


「まあ、ハンターのルールにはスタンピートを起こしてはいけないって云うルールは無いから、ぶっちゃけキミが死んだのは不幸な事故だと思ってるからね」


「(…………まあ、そうですね…………

其れよりも、あのスタンピートを起こしたのが貴方様ならば、あれ程の途轍も無いお力をお持ちと云う事。

更に、不老不死だと仰る。


貴方様の目的は一体何ですか?)」


「僕の目的は、誰もが幸福に暮らせる国を作る事だよ」


「(…………其れが、私を連れ帰る事と、あのスタンピートに一体どの様に繋がるのですか?)」


「キミを連れて帰ろうとしてるのは、さっき言った通り、この近辺の国は碌でも無いから、戦力を上げて欲しくないから。

此れは、僕の国の安全性を高める為だ。


スタンピートを起こしたのは、イジャラン・バダ帝国とガンヒンリン帝国の戦争を遅れさせて、最終的には戦争自体を止めるようとしたからだ。


イジャラン・バダ帝国とガンヒンリン帝国が戦争になったら、高確率でガンヒンリン帝国が勝つと思われる。


そうなると、このワイドラック山脈とラレジャーヤ山脈の間は全て、ガンヒンリン帝国の土地になりかね無い、其れは僕の国も戦争に巻き込まれて行く可能性が有るから妨害したいからだ」


「(其れは、貴方様の国の為に、スタンピートで多くの犠牲者が出る事もやむ無しと云う事ですか?)」


「……あのスタンピートで被害者は多分、キミ1人だけだと思うよ?

一応、スタンピートを起こす前にハンターが居ないかの確認はしてたんだけど、何日も前から古代遺跡都市に滞在して、全く戦闘をしていない人が居るとは思わなかったんだよね、ゴメンね」


「(……いえ、其処は確かに私はイレギュラーな存在だったかもしれませんが、スタンピートが起これば周囲の街や村への被害が…………)」


「ああ、其れも含めて被害者はキミだけだと思うって言ったんだよ。


あのスタンピートは、死都 プルトバトールを出た後も僕が追い立て続けて、イジャラン・バダ帝国とガンヒンリン帝国との間に在る荒野で、悪都 オツヤントウから追い立てたスタンピートと衝突させたんだ。


で、最後には僕が全ての魔物を倒したから、スタンピートでの死者はキミ以外は多分居ないよ。


ああ、もちろん、スタンピート後のゾンビになった魔物と戦った両国の軍人には死者が出てるけどね」


「(……………………スタンピートをコントロールして、魔物同士を戦わせたんですか?

そんな事が出来るなんて…………


いえ、其れならば、そのスタンピートを両国の軍勢に向ければ戦争は起きないのでは?)」


「いや、其れだと僕が両国の軍人達を殺したも同然でしょ?

もちろん必要なら軍人だろうが民間人だろうが殺すけど、殺さなくて良いなら、出来るだけ殺さない方が良いでしょ?」


「(ですが、スタンピート後の死体から生まれたゾンビの被害で死者は出ているんですよね?)」



僕は指を一本立てると、チッチッチ……と、エリニーフォスの言葉を否定する。


「古代遺跡都市を探索してて、他のハンターが魔物の大群を引き連れて来たら、そのハンターを恨むよね?

だけど、夜間にゾンビ系の魔物が襲って来ても、別に以前その魔物を殺したハンターの事を恨んだりしないよね?


だって、魔物の死体からゾンビ系の魔物が生まれるのは仕方ない事だし、古代遺跡都市って云うのはそう云う場所なんだから。


と、云う事は、魔物が大量に争って死体がいっぱい有るって分かってたなら、其処はそう云う場所なんだから、其処で死んじゃうのは自己責任でしょ?」


「(…………そう云うモノでしょうか…………)」


「そう云うモノさ。

で、結局、何が聞きたいのかな?」


「(いえ、質問そのままに、貴方様の目的を教えて頂きたかったのですが、その、良く分かりませんでした。

誰もが幸福に暮らせる国と聞くと素晴らしい事だと思いますが、その為に他国を犠牲にするのは…………)」


「他国を犠牲に?」


「(…………他国の発展を妨げているのですよね?

そして、貴方様の国だけが発展をする様に世界をコントロールしようとしている…………)」


「なるほど、確かにそうだね。

残念ながら、僕は、全ての人間の命を平等だと思って無いからね。


僕は、僕を慕い、善良な心を持って、仲間を裏切らない者以外の命は正直言ってどうでも良いんだ。

だから、他国を犠牲にして、発展を妨げてるとしても、僕は自分の国だけが幸福に暮らせる国にするつもりだよ」


「(…………其れ程の力を持っていてもあくまで、貴方様の国だけの発展をお考えですか…………)」


「其れ程の力か…………

キミにとっては大きな力だろうけど、僕の力は世界中を幸せに出来る程の力じゃあ無いよ。


コロラッド・ルニウメン皇子は、キミの弟だよね?」


「(?はい、そうですが、何故、弟の名前が出て来るのですか?)」


「この世界で、最強の存在は知ってる?」


「(最強の存在ですか?)」


「そう、最強の存在」


「(…………ドラゴンでしょうか?)」


「ドラゴンの中で最強なのは?」


「(…………ファーストドラゴン様でしょうか……)」


「そうだね、で、そのファーストドラゴンを捕まえて、奴隷同然に魔導具作りの部品にして居たのが、キミの弟のコロラッド・ルニウメン皇子だよ」


「(!!な?!其れは、一体どう云う意味ですか?)」


「そのままの意味さ。

キミの弟は、ファーストドラゴン ナエラークを捕らえて魔導具作りの部品にしていた。

ナエラークを騙してね。


世界最強の存在ですら、そんな目に遭うんだ。

僕の力が多少強かろうと、1人の人間の力なんてたかが知れてるよ。

人間の欲望って云うのは其れ程恐ろしいモノさ。


だから、僕は自分の大切な人だけ幸福にする事に全力を注ぐ。

そうで無ければ、全て失う事になってしまってから後悔しても遅いからね。


キミ自身にも思い当たる事があるんじゃないかい?

キミの家族を殺した者達の中にキミよりも強い者が居たかい?

キミも村人達の命よりも家族の命の方が大事だったんじゃないのかい?」


「(…………仰る通りですね…………

確かに、自分の大切なモノを守る為なら、他のモノを犠牲にしてでも全力を尽くすべきですね…………


そして、貴方様は自分の力を過信せず、人間と云うモノを私よりも遥かに理解されている。

だからこそ、全てを救う事も、全てを支配する事もせず、手の届く者にのみ全力を注いでおられるのですね。



…………私は、人よりも長い人生を生きた事で、傲慢になっていた様です。


貴方様に従いましょう。

存分にお役立て下さい…………)」





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