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箱庭の王様  作者: 山司
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第18章 命 6

第18章

命 6





▪️▪️▪️▪️





ブオオオオオオオオ…………………



凄まじい風の音と共に、時速200kmで天空から垂直落下する僕と相棒の“エヴィエイションバイク”、“ウィーフィーver2”。



「…………今日辺り、ぶつかりそうだな…………」



僕は、今日までの日々を思い出し、眼下に見える魔物の群れを眺める…………





8月に入って、僕は日々、イジャラン・バダ帝国とガンヒンリン帝国を往復していた。

『戦争撲滅作戦 第1弾 スタンピート計画』の為だ。


先ずは、イジャラン・バダ帝国の古代遺跡都市 死都 プルトバトールの北西から、アエルゲインの作ってくれた、スタンピート発生魔導具、“スタンピートラーズ”で、魔物を死都 プルトバトールから南東に向けて追い出す。


この“スタンピートラーズ”は地脈の魔力の流れを一時的に強引に一定の方向に向けて流れる様にさせる魔導具だ。

此れに僕が殺気を思いっきり込めて送り込むと、その殺気が魔力の流れに乗って行き、『北西から凄いバケモノがやって来た。南東の方向が安心出来るから向こうに逃げよう』と、魔獣や魔物に思わせる事が出来るのだ。


その後、死都 プルトバトールから魔物を追い出すと、今度はその大量の魔物の後ろから、魔物を脅し続けて、南東へ南東へと追い立てて行く。



そして、イジャラン・バダ帝国の死都 プルトバトールの次は、ガンヒンリン帝国の悪都 オツヤントウの南東側から同じ事をする。

此れを何度も往復しては繰り返して、魔物の群れが衝突する様に誘導して行く訳だ。



死都 プルトバトールからは、数万のリビングアーマー系の魔物が、悪都 オツヤントウからは、数万のデビル系の魔物が、畝る様な大軍勢で、強大なバケモノから必死に逃げる。


現在、既にイジャラン・バダ帝国とガンヒンリン帝国はお互いに出兵して、直近の幾つかの街に集結しつつ、斥候を出し合ったり、部隊単位での小競り合いを行ったりしている様なので、この魔物の大軍勢もちゃんと目撃してくれているだろう。




こうして、強大なバケモノである僕は、地道な努力で魔物の誘導を行って来た訳だが、其れも今日で完了しそうだ。


来る日も来る日も、上空10,000mから相棒に乗って飛び降りては、魔物を脅し、また上空10,000m迄、相棒に乗って飛び上がると云う事を繰り返していたので、正直言って飽きていた。


飛び降りるのも、飛び上がるのも、楽しかったのは最初の2、3日だけだ。

因みに、S級代理官の娘達が心配してくれたのは、1回目だけだった。



地上に降りて、すっかり手慣れた“スタンピートラーズ”の設置をして、魔物を脅す。

なんだか、最後方の連中に、『うわ!!今日も来た!!』と、言われている様だ…………


様々な種類のリビングアーマー達が大音響で、ガチャガチャいわせながら、今日も駆けて行く…………

そのまま、いつも通り、後を追いながら何度も脅す。



暫く繰り返していると、とうとう、遥か前方から、今迄とは違う雄叫びの様な声が聞こえて来始めた。

リビングアーマー系の魔物は基本的には声を出さないので、この声はデビル系の魔物によるモノだろう。


“ウィーフィー”に乗って高度を上げてから、望遠鏡の魔導具で状況を確認した。


「…………いや〜、頑張った甲斐があるなぁ〜……

すっごい、魔物大戦争じゃないか」



リビングアーマー系の魔物は、魔法を使う者よりも比較的、肉弾戦を行う者の方が多い。

レイス系やゾンビ系の様に、魔核が壊れる迄、腕が捥げ様が、首が飛ぼうが、敵に向かって襲い掛かり続ける魔物だ。

レイス系やゾンビ系と違うのは、昼間でも活動する事だ。



対して、デビル系の魔物は、顔は人間っぽかったり、バッファロー系魔獣っぽかったり、ディアー系魔獣っぽかったりするが、共通して、頭に捻れたツノが有り、背中にドラゴンの様な翼が有る。

そして、戦い方は基本的には魔法が主体だ。



デビル系の魔物が、迫って来るリビングアーマー系の魔物に対して多種多様な魔法を放ち、リビングアーマー系の魔物が降り注ぐ魔法を無視するかの様に、デビル系の魔物へと斬り掛かる。



此処まで大規模な魔物の大戦争は、未だ嘗て無かったのでは無いだろうか。

僕は“スピリットコミュニケーションデバイス”で、上空の“ハイスツゥレージセカンド”のみんなに連絡を取って、わざわざ、望遠鏡の魔導具を使ってビデオの魔導具で録画して貰う事にした。



暫く状況を眺めていると、徐々にデビル系の魔物の方が劣勢になって来た。

まあ、倒し方を知らなければ、リビングアーマー系の魔物は超強力な攻撃で、中の魔核が壊れるくらい攻め立てなければいけない。

デビル系の魔物の方が消耗が激しくなるのは仕方がない。



しかし!!!!



彼らの背後から迫る、強大なバケモノはデビル系魔物の敗走を許しはしない!!


僕は、デビル系魔物の背後迄“ウィーフィー”で行くと、“スタンピートラーズ”で、デビル系魔物を後ろから脅す。

後ろには逃げられないと感じたであろうデビル系魔物は、背水の陣で、必死にリビングアーマー系魔物に突撃して行く。


僕はその後も戦場の周囲を周りながら、戦場の中心に向かって、“スタンピートラーズ”を使い続けた。



もう、戦場は大混乱で、同じリビングアーマー系魔物同士でも、デビル系魔物同士でも殺し合い、敵味方入り乱れた場所でもお構い無しに魔法が飛び交い、ぐちゃぐちゃになっている。



かなり遠目だが、イジャラン・バダ帝国側もガンヒンリン帝国側も、斥候らしきヤツらが監視していて、中には豪華な鎧を着ている者もいるので、指揮官クラスの者まで見に来た様だ。



では、ギャラリーも増えて来たと云う事で、もう少し派手な演出を行おう。



僕は“天地鳴動”を抜くと、戦場の周囲に次々と、大規模な魔法を放って行く。

あくまでも周囲にだ。


巨大な火柱が上がり荒れ狂い、水の畝りが生き物の様に暴れ回り、嵐が起こって巨大な氷が降り注ぎ、大地は無差別に隆起し陥没し、雷が辺りを包む!!


“天地鳴動”の中でも、広範囲高威力の魔法をどんどん放って、戦場の混乱は更に加速して行く。


そして、演出が大いに盛り上がったところで、大規模魔法に紛れて一気に上昇して、“ハイスツゥレージセカンド”へと戻った…………





「…………お疲れ様です。

随分と楽しまれていましたね」


“ハイスツゥレージセカンド”の甲板で、撮影係をしてくれていたキルシュシュが声を掛けて来た。

反対側で撮影していたっぽいディティカもやって来る。


「ですね、良い表情が撮れました」


「…………え?良い表情が?」


「はい、バッチリとノッド様の楽しそうな笑顔が撮れてます!!」


そう言ってガッツポーズをするディティカ…………



「あの、僕は戦場の状況なんかを撮影して欲しかったんだけど…………」


「大丈夫ですよ、そっちは私が撮影していますから」



と、キルシュシュ。

どうやら、2人での撮影は、別方向からの為では無く、全体撮影と僕撮影の為だったらしい…………


とりあえず、全体撮影担当らしいキルシュシュを残して、僕は食堂に降りる。

食堂にはティニーマが待っていて、僕の食事を準備してくれていた。



「おかえりなさい、ノッド様。

ご飯にしますか?お風呂にしますか?やっぱり、私ですか?」


「ただいま、ティニーマ。

もちろん、ティニーマにしたいのは山々だけど、結構お客さんが集まってるから、今日は徹夜になりそうなんだよね」


「残念です。

ちょっとだけ、摘み食いして行きますか?」


「ティニーマさん、ティヤーロとペアクーレとハンジーズに怒られますよ」


「はは……、間違いないね。

とりあえず、ご飯をお願い、ちょっと休憩したらまた降りるから」


「はい、了〜解です。

直ぐにお出ししますね」



ティニーマは笑顔のまま、キッチンへと戻って行く。

アレは絶対に怒られるから止めた訳では無く、僕が今日は徹夜だと言ったからだろう。


ティニーマは怒られる事に慣れ過ぎている…………


ディティカは料理を盛り付けるティニーマと少しやり取りをしてから、艦橋に向かって行った。


僕が食事を摂り始めると、サウシーズが降りて来て、此れからの予定を聞いて来た。

ディティカは運転の交代に行った様だ。



「ノッド様、徹夜で対応されると云う事ですが、どう言ったプランでしょうか?」


今回の『スタンピート計画』のリーダーはサウシーズだ。

僕は現場に出突っ張りなので、王都ルベスタリアとのやり取りや、諜報局とのやり取りをしつつ、状況判断をしてくれている。



「うん、思った以上にギャラリーが集まって来たから、今夜は夜通し、ギャラリーが戦場に近付かない様に、時折さっきみたいに魔法で追っ払おうと思ってね。


まあ、戦場に混ざって来て、戦争の戦力を消耗して貰っても良いんだけど、今回は、最終的には僕の1人勝ちの予定だから、連中に戦利品を渡したく無いんだよね」


「…………でしたら、戦利品の回収に私達も戦場に降りましょうか?」


「いや、流石にあそこには行かない方が良いよ。

戦いに行くならともかく、戦利品の回収だけをするのは危険だから。

其れに、ギャラリーの軍隊に見られたく無いしね」


「しかし、10万体以上の魔物ですよね?

戦利品の回収もノッド様お一人では難しいんじゃ…………」


「うん、もちろん僕1人で回収するのは難しいから、目ぼしいモノだけ貰って、後は埋めちゃおうと思ってるんだ。


本来の予定だったら、全部焼き払うつもりだったんだけど、諜報局からの情報だと、この近辺には全然村とかも無さそうだから、この辺りにはデビルゾンビエリアになって貰って、戦場に出来なくしようと思ってさ」


「なるほど、それは良いですね。

確か、デビル系のゾンビは何故か強くて、極偶に、ヴァンパイア系の魔物も生まれるんですよね」


「そう、なんなら、此処にヴァンパイアの集落でも作ってくれたら…………


もしかして、此処にデビルゾンビエリアが出来たら、結構遠くの街迄、人間を襲いに行ったりするかな?」


「もしかしたら、そう云う事も有るかもしれませんけど、その時は、大勢の軍人さんがなんとかするんじゃ無いですか?


せっかく、集まっている事ですし」


「…………そうだね、其れは其れで良いかもね。

国内情勢に手が掛かれば掛かる程、戦争は遅れる訳だし。


じゃあ、埋める事にしよう。

タイミングとしては、明日の昼頃に、ギャラリーがしっかりと集まってからにしようか」


「そうですね。ですが、出来れば途中で少しでも仮眠をとって貰った方が…………」


「…………ええっと、其れをサウシーズが言っちゃう?

昨日の睡眠時間が短いのは…………」


「ノッド様、其れは其れ、此れは此れです。

ですよね、ティニーマさん」


「ええ、その通りね」



…………此処はスルーした方が良さそうだ…………


「…………うん、じゃあ、タイミングを見て、ちょっとは仮眠をとるよ…………」


「はい、絶対に仮眠をとって下さいね。

じゃあ、私はノテルークにおっぱいをあげてから、艦橋に戻りますね。


あ!!ノッド様もご一緒に如何ですか?」


「いや、全部終わってお風呂に入ってから子供達の顔は見に行く事にするよ」


「いえいえ、其方では無く、おっぱいをノテルークと一緒に召し上がられますか?って意味です」


「えっと、僕の睡眠時間の話しは何処に行ったのかな?」


「其れは其れ、此れは此れです」





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