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箱庭の王様  作者: 山司
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第18章 命 4

第18章

命 4





▪️▪️▪️▪️





僕は以前、モルツェン達がまだ狼弾会だった頃にある依頼をした。


其れは、アルアックス王国の闇オークションで手に入れた僕の愛刀“天地鳴動”の出所を探って欲しいと云うモノだった。


“天地鳴動”は、賢者 ラノイツロバーの作った最高傑作と言って良い程の凄まじい性能の武器だ。


なので、発見された場所は、賢者 ラノイツロバーの研究施設ではないかと考え、あわよくば、新たな魔導具の研究成果が手に入らないかと思ったのだ。



しかし、“天地鳴動”は、かなり西の方から、随分と時間を掛けてやって来た様で途中で捜索を断念していた。


其れが、この春にビレジン親子と出会い、賢者 ラノイツロバーの遺産は放置出来ないと判断し、再度モルツェン師団に捜索を再開して貰った。


その結果、捜索はどんどんと西へ西へと進み、そして、とうとう“天地鳴動”の発見者を見つけ出した。


発見者が居たのは遥か西の国、海に面した海洋国家スモーコサス王国。


発見者は高齢の漁師で、若い頃に嵐で遭難して、スモーコサス王国の南方に在る、“海竜の巣”と言われる絶対に近付いてはいけない島に漂着してしまった。

船も壊れて帰る事も出来なかった彼は食糧を求めて彷徨った結果、海蝕洞の中に係留された一隻の船を発見した。


その船には、水を出す魔導具も冷凍の食糧もあり、何とか一命を取り留めたが、せっかく発見した船は魔導具によるロックが掛かっていて、動かす事が出来なかった。


仕方がないので、島の木を切り、頑張ってオールを作ってから、その船を自力で漕いで帰って来たそうだ。


そうして持ち帰った船を改造して、新たな漁船として使おうと手を加えていたところ、何と剥がした床板の下から幾つかの武器が出て来た。


“天地鳴動”は、その出て来た武器の1つだったとの事だ。


見つけた武器はそのまま売ってしまっていたのだが、その内の剣が1本と槍が1本は、スモーコサス王国のハンターが購入して持って居た為、購入する事が出来た。


そして、“海竜の巣”から脱出した時の船もその高齢の漁師がまだ使っていたので、モルツェンの交渉によって購入出来た。

その船は漁師曰く、どんな嵐でも転覆しない凄い船と言う事だったそうなのだが、其れも当然で、その船は、偽装された“エヴィエイションクルーザー”だったのだ。


“エヴィエイションクルーザー”は、本来なら海を進む事は出来ない。

何故なら、“飛行ユニット”の所為で勝手に浮いてしまうからだ。

海面に着水しないのだ。


なので、モルツェン達も最初は購入した船を“エヴィエイションクルーザー”だとは思っていなかったらしい。


しかし、昨日アエルゲインが調べたところ、船の支柱の中が空洞になっていて其処に“飛行ユニット”が有る事が分かった。


恐らく、普段は支柱の中でプカプカ浮いていて、飛行する時には何かしらのギミックで船体にドッキングするのだろうと云う事だった。


そして、この副作用として、大きな波で船体が傾くと“飛行ユニット”が支柱の内側に触れて船体を浮かせ、どんな嵐でも転覆しないのではないか?と、云う予測だった。



何はともあれ、探していた賢者 ラノイツロバーの遺産の“エヴィエイションクルーザー”の一つが手に入った。


しかし、問題は、賢者 ラノイツロバーの研究施設が在りそうな場所が“海竜の巣”と言われている事だ。

さすがに、ドラゴンの居る可能性の有る場所に無闇に行く訳にもいかず、近隣での情報収集を行った結果、高確率でドラゴンが居るだろうと云う結論になり、モルツェン達は帰国して来たのだった…………





「…………そして、昨日、手に入れたドラゴンの写真をナエラーク様に確認したところ、恐らく、アビスシードラゴン 深淵の海の王 スバイアエロ フォース アビスシー様ではないかとの事でした」


「…………その、スバイアエロって、ナエラークと仲は良いの?」


「いえ、ナエラーク様は特に何も言われませんでしたが、表情的には余り良好な関係では無さそうでした…………」


「そっか、じゃあナエラークに仲介して貰って探索させて貰うのは難しいか…………


分かった。

とりあえず、“海竜の巣”は、現状が落ち着いてからにしよう。


因みに、他には何か変わった事は有った?」


「…………大変申し上げ難いのですが…………

西でも戦争の機運が高まっています…………」


「え?西も?


はぁ〜…………

何で、あっちもこっちも戦争ばっかり…………


まあ、言っても仕方ないか。

どう言った状況なの?」


「はい、スモーコサス王国の北方に在る、ヴォルガ•エルール•リヤッチ帝国が南征侵攻を進めていると云う噂でした。

既に、スモーコサス王国の北に在るスカフフタウ王国とは現状小競り合いではありますが戦端が開かれているそうです」


「…………そのヴォルガ•エルール•リヤッチ帝国って、ルベスタリア王国の西の山岳地域の集落も領地かもしれないって言ってた国だよね?


…………侵攻の目的が海が欲しいからなら、こっち迄は来ないだろうけど、もしかして、ナノマガン王国は危なかったりする?」


「ワイドラック山脈があるので、直ぐにと云う事は無いと思いますが、将来的には分かりません。

しかし、どちらかと言えば、ガンヒンリン帝国の侵攻の方が早い可能性が高いでしょう」


「なるほど、確かにガンヒンリン帝国が進んで行ったら、イジャラン・バダ帝国以降は素通り同然の可能性が高いもんなぁ〜……


因みに、ヴォルガ•エルール•リヤッチ帝国についての情報ってある?」


「はい、此れも噂ですが、どうやら『ヴォルガ•エルール•リヤッチ帝国に“北の勇者”が誕生したから、侵攻を開始したのでは?』と、言われています」


「…………勇者って、戦争する為に居るんじゃ無いよね?」


僕は思わず、“西の勇者”ワルトルットゥを見る…………



「ノッディード陛下、言い難いのですが、勇者認定は基本、聖剣を所有する王家が行っているので、魔王の侵攻の無い今、勇者は戦争の旗頭にはうってつけですから…………」


「……まあ、そっか。


勇者が現れて古代遺跡都市から次々に強力な武器を持ち帰って軍事力が上がる。


其れで、勇者の行ける古代遺跡都市が自国に無くなったら、今度はハンターとして近隣の国の古代遺跡都市を攻略させるか、上がった軍事力で近隣の国から古代遺跡都市を奪う戦争をするかのどちらかになっちゃうもんね。


そして、戦争を選んで、戦争で勝って、その甘い汁を吸ったヤツらが、もっと戦争をさせようとする流れが出来て行ってしまうか…………


いっそ、6大魔王みたいなヤツらが現れて、人類の敵になってくれたら丁度良いのに…………

戦争してる国々で、スタンピートでも起きないもんかなぁ〜……」



思わず溢れた僕の愚痴の呟きに対して、アエルゲインがスッと手を上げた。

表情的には、余り良いアイディアと云う訳では無いようだ…………



「ノッディード陛下は、スタンピートの3大原因はご存知でしょうか?」


「いや、幾つかの原因が予想されている事は知っているけど、3大原因と云う言葉は知らないな」


「なるほど。

古代魔導文明末期に言われておりましたスタンピートの原因は、3大原因と言われるモノに絞られていました。


恐らく、1つ1つはご存知でしょうが、1つは、異常繁殖による住処の奪い合い。

もう1つは、地脈の変動による魔素流の変動。

最後の1つが、生息域の異なる超強力個体の接近です。


そして、最初の異常繁殖は出来ませんが、2つ目と3つ目については、人工的に起こす事が出来ます。

つまり、スタンピートを起こす事自体は可能です」



「…………なるほど、僕はどうせやらないだろうけど、出来るよって事ね。

ありがとう、アエルゲイン、一応、その手段が有るって事だけ覚えておくよ」


「あの、アエルゲインさん。

その人工的に起こせるスタンピートは起こせるだけですか?

其れとも、何方の方角に起こるか調整出来ますか?

あと、魔獣だけで無く、魔物にも効果があると思いますか?」



今度の休みに狩りに一緒に行く約束をした事で気を取り直したのか、先程迄とは違う雰囲気でハンジーズが声を上げる。

何か良いアイディアが出たっぽい雰囲気だ。



「細かく起きる方角を指定は出来ないでしょうが、大まかにであればある程度の方角の指定も可能だと思います。

そして、恐らくではありますが、魔物にも効果は有るでしょう。

ただ、魔物の場合には、建物内のモノは低階層に居る者達だけでしょうが」


「ありがとうございます。


ノッド様、時間稼ぎにしかならないかもしれませんが、古代遺跡都市でスタンピートを起こしてはどうでしょう?

其れも、古代遺跡都市から古代遺跡都市に向かってお互いにです。


イジャラン・バダ帝国の死都 プルトバトールとガンヒンリン帝国の悪都 オツヤントウの間には主だった街は有りません。


そして、恐らくこの直線上は、両国が衝突する可能性の高い地域です。


もし此処をスタンピートが通過すれば、お互いの国が自分達が敵国を攻め立てた後で、後方に大量の魔物の群れがやって来る可能性を恐れて無闇に突っ込まず、更に古代遺跡都市への情報収集や討伐作戦を組むと思われます。


そうなれば、一時とは言え、時間稼ぎが出来るのでは無いでしょうか?


その間の混乱に乗じて、情報収集を行い、内乱に持って行ければ…………」


「…………アイディアは良いと思うけど、スタンピートってそんな、何千kmも遠くまで続くモノなの?」


「其処は、スタンピートの最後方から攻め立て続けて、両古代遺跡都市の中間で、魔物同士がお互いにぶつかれば可能なのでは無いでしょうか?」



そう言ってハンジーズがアエルゲインを見る。

アエルゲインはまた、微妙な表情だ。



「恐らく可能ではないかと思いますが、其れを実現するには、ノッディード陛下が何度もスタンピートの最後方へ行き来されるか、ナエラーク様にご協力を頂くかのどちらかになってしまいます…………」


「え?其れって、僕かナエラークがスタンピートを起こすって事?

何かしらの魔導具じゃなくて」


「いえ、最初にスタンピートを起こすだけならば、魔導具で十分です。


しかし、魔導具だけで起こすスタンピートでは、『棲家に危険が迫ったから逃げよう』と、思わせるだけで、ずっと追われていると思わせる事は出来ません。


なので、一定の方角に向かわせ続けるなら、追い立てる強者が必要です」


「ああ、なるほど。

普通は巣を突いて追い出しても、其処迄遠くに行かずに、様子を見に戻って来るもんね。


其れを凄く遠くまで行かせるのに、鬼ごっこの鬼が必要な訳だ。


……………………分かった、其れやってみよう。


最悪、スタンピートの制御が不可能だったら全部狩って仕舞えば良いし。


ただ、ナエラークに協力して貰うのは無しだ。

ナエラークは代理官じゃあ無いから、ルベスタリア王国の存亡に関わる時以外の軍事行動をさせるつもりは無いからね。



でも、そうなると、空中要塞の建設と、北部の小屋の建設が滞りそうだな…………」


「空中要塞に関しては、トンネル工事で出た大量の土があるので、地形を気にせずに作れますから私の方で進めておきます」


「北部の小屋についてもノッディード陛下の許可が有れば、私の方で進めておきますが……」




アエルゲインとワルトルットゥがそう言ってくれている。


しかし、不安が有る…………


空中要塞に関しては、万一の時の事故だ。

アエルゲインの建設を疑っている訳では無いが、今迄のモノと違って規模が規模だ。


もしも、墜落した場合、乗っていた者も、王都に住む者も、甚大な被害が出る可能性がある。



北部の小屋に関しては、北東のドラゴン、北西の伝説の魔獣。

何方も、僕では勝てないだろうが、僕が居れば、他の者を逃す事は出来るだろう。


まあ、小屋が出来ても、その小屋で見張りをするのは命懸けなので、早いか遅いかで危険な事は変わりないが…………


何方も、周囲が戦争だらけの状況では、後回しにし続ける訳にも行かない…………



「…………分かった。

アエルゲインとワルトルットゥを頼らせて貰おう。


ただ、何方も危険だから、現場で作業する者は希望者だけにして欲しい。

最悪、其れで工事が遅れたら、その時は、僕がちょっと本気出して、どっちも作るから」


と、僕が言うと、いつもの様に手を上げて、


「…………ノッド様、アエルゲインさんの方には、ネイザーとヴィアルトに協力して貰って、ワルトルットゥさんの方には、私とルーツニアスが入るのはどう?


その代わりに、ノッド様には、産休中のみんなに着いて行って貰って」



と、親衛局長のペアクーレが言った。


確かに、親衛局のメンバーは、僕の手伝いで結構建設をしているから、空中要塞の建設にもとても力になるだろうし、代理官最強のペアクーレと、第11位のルーツニアスが居るなら、ワルトルットゥ達も部下の指揮に専念出来るだろう。


しかし、ペアクーレが親衛局のメンバーを全員、僕から離れさせる意見を出したのは意外だった。

その気持ちが顔に出ていたのだろう、ペアクーレが続ける。



「……多分、魔物を追い立てるならノッド様も戦闘モードだし、本気で魔物を脅すなら私達は近くに居ても足手纏いだから、結局は“エヴィエイションクルーザー”で待つ事になると思う。


其れなら、ノッド様が戻って来てから、無理をしなくて良い様に、空中要塞と北部の小屋を完成させておく方が良いと思う」



『ああ……。僕が本気出すって言っちゃったからか…………』と、ちょっと反省した。

多分、ペアクーレは僕が無理をしてでも、空中要塞と北部の小屋を完成させる事に気付いてしまったのだろう。


いや、きっと最初期からの10人には、バレてたっぽい。

ペアクーレのアイディアにちょっと安心した感が有るから………



まあ、実際にはちょっと無理して頑張っても僕は平気なのだが、みんなが心配してくれるのは素直に嬉しい事だ。


しかし、心配を掛けないに越した事は無い。



「……分かった。

じゃあ、其れでお願いしよう。


なら、僕とティニーマ達で、魔物の追い込み。

アエルゲインとネイザー、ヴィアルトにリティラ師団で空中要塞の建設。

ペアクーレとルーツニアス、ワルトルットゥ師団で北部の小屋の建設。

諜報局とモルツェン師団で、イジャラン・バダ帝国とガンヒンリン帝国の情報収集。


って、ところかな?


じゃあ、モルツェン師団から、他に何か気になる事ってある?」



すると、モルツェン師団中将フラストンが、非常に申し訳無さそうに手を上げた…………



「ノッディード陛下、その、本来なら別に陛下にご報告する様な事では無いんですが…………」


「…………うん…………」


「スモーコサス王国よりも更にもっと西の方で、新たな国が出来たそうなのです。

まだ大きく無い街が1つだけの国らしいのですが、国名がその…………」


「………………」


「ルベスタリア帝国と云うそうで…………」


「…………え?名前もだけど、小さい街が1つで帝国?」


「はい、その国の皇帝が、古代魔導文明時代に滅んだ、魔導帝国ルベスタリアの正統な後継者だと言っているそうで…………」


「ああ、だからルベスタリア帝国か。

帝国って言葉の意味知ってるのかな?


まあ、いいや。

言っておくけど、僕は魔導帝国ルベスタリアとは何の関係も無いから気にしなくて良いよ。


この盆地が帝都ルベスタリアが墜落して出来たルベスタリア盆地だったから、地名からとって、ルベスタリア王国にしただけだから」


「あの、ノッディード陛下、もう少し続きがありまして…………」


「え?その国がどうかしたの?」


「いえ、国もですが、皇帝の方です。


その…………皇帝の名前が…………


ノッグード リーン ルベスタリアと…………」


「…………ノッグード?

なんか、微妙にイヤな感じの名前だね…………」


「ノッド様、その国は滅ぼした方が良いと、私の勘が言っています!!」

「ええ、絶対に滅ぼした方が良いです!!」

「私の女の勘もそう言ってますね」



……………………なに?この空気?


言い出したティヤーロだけで無く、女性の代理官は全員が滅ぼせと言っている。


其れも全員の理由が“女の勘”…………


男性の代理官達は…………半分くらい………………



おっと、僕が呆然としている間に、ハンジーズ達参謀部が具体的な作戦を考え始めた、止めないと。



「いやいや、ただの勘で滅ぼしたりしないよ。

其れに、そんなに遠くなら、関わる事は無いでしょ?


まあ、西の戦争の問題が解決して、余裕が出来てからゆっくり調べてからで良いよ」


「たびたび、申し訳ありません、ノッディード陛下」


「え?フラストンまだ有るの?」


「はい、確実では無いのですが、現在の帝都ルベスタリアも少し問題でして、元の名前がロスロッパーの可能性が高いのです」


「ロスロッパーって、事は…………」


「はい、“賢者 ラノイツロバーの10人の高弟”の故郷の1つで、調査対象の街です」


「…………先ずは、南の戦争、次に西の戦争、其れが終わってから、もう一回考えようか………」



……………………なんだろう、女性陣の“女の勘”が当たりそうでならない…………

将来、完全に敵対して滅ぼす未来がやって来そう…………


いや、もうルベスタリア帝国の事は一旦忘れよう…………



その後、各方面の具体的な人員の割り振りなんかを決めて解散となった…………






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