第18章 命 2
第18章
命 2
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ルベスタリア暦5年7月。
最初の1週間程は、研究に実験、視察を行う穏やかな日々が続いた…………
其処からは怒涛の日々だった。
2週目の土曜日、7月9日に、参謀部からアルコーラル商国と死都 プロトバトール迄のワイドラック山脈貫通トンネルの完成の報告を受けた。
翌々日の11日には、僕の誕生日とトンネル開通を祝って、完成したばかりのルベスタリア中央広場で、工事に携わった代理官を集めてパーティーを行った。
そして、更に翌々日の13日には…………
「おぎゃ〜……おぎゃ〜……」
「ノッディード陛下、お産まれになりました!!」
「わ、分かった!!!!
……………………僕の…………子供…………」
「はい、ノッド様そっくりの可愛い女の子です」
「うん、そうだね」
「…………其処は、私にも似てるよって言ってくれるところじゃないですか?」
「あ、ああ、ごめん。
その、なんて言ったら良いか分からない気持ちで、頭がいっぱいで…………
その、なんて言うか…………
ありがとう、ティニーマ」
「ふふ……。どう致しまして。
ノッド様のそんな顔が見られるなんて、頑張った甲斐がありました」
「え?あ…………」
僕は、ティニーマに笑顔を向けているつもりだった。
でも、目の前がボヤけて、頬を涙が伝って行く…………
悲しみの涙では無い事は分かっているが、この涙が嬉しくて溢れて来ているのか、感動して溢れて来ているのか、其れとも別の理由なのか…………
僕にはハッキリとは分からなかった…………
ただ、初めて抱いた自分の娘は、兄上の息子や娘を抱いた時とは全く違う感触がした…………
そして、更に更に翌々日の15日、今度はサウシーズが男の子を出産した。
以前、ハンジーズが「弟が良い」と言っていて、サウシーズが「任せて」と言っていたが、本当に弟が生まれた。
サウシーズは本当に自分でどうにかしたのだろうか…………
その翌日16日には、レアストマーセとキルシュシュが出産した。
レアストマーセは男の子、キルシュシュが女の子だ。
2人とも初産だったので、出産直後に体力回復ポーションを飲んでいても疲れ果てていた。
そして、その翌々日18日にディティカも無事、女の子を出産した。
僕は、たった5日の内に、5児の父になった。
とは言え、僕は子供を可愛がりはしても育児はしない。
此れはS級代理官になる段階で伝えていた事だ。
今回は、避妊の解除と共に子供を希望した5人が続けて妊娠したが、今後は1人1人タイミングもバラバラで、避妊解除を希望して来る事になるだろう。
そうなると、僕が育児に参加しては、常に育児をし続ける事になってしまう。
そう云う訳にはいかないし、子供の人数が増えれば、全員を平等にと云うのも難しい。
なので、僕は基本的には育児にも子供の教育にもノータッチだ。
とは云え、S級代理官の娘達もずっとべったり育児をし続ける訳にも行かない。
彼女達はこのルベスタリア王国の中枢だ。
なので、必要に応じて、学校内の育児院に預ける形になる。
育児院は、0歳から10歳迄の子供を24時間365日預かってくれる。
学校に通っている場合には、此処から学校にも行け、孤児の子達も此処で暮らしている。
一応、10歳迄としているが、育児院に居る間は、学校施設から出られないので、10歳以下の孤児の子達であっても、学生寮に住んでいる子も居る。
子供が暮らす上でもっともネックになるであろう食事は食堂で食べられるからだ。
学生寮に住めば、半日授業、半日仕事と云う形が取れて国営農場等で働く事が出来、1階の商業階へ買い物にも行ける。
なので、育児院は本当に小さな5歳以下の子供が殆どだ。
もちろん、育児院も学校同様に無料で利用出来、利用する理由が仕事で無くても、夫婦でデートだろうが、もう1人子供を作る為だろうが構わない。
ルベスタリア王国は、子育てがし易く、子供をどんどん作れる様にする取り組みに全力なのだ。
そして、7月20日、この日は11人で一日中会議を行った。
議題は、『子供の名前について』だ。
母親5人と子供5人、そして僕の11人での会議だ。
厳密には親衛局のヴィアルトとエルヴァも居たがこの2人に発言権は無い。
激しい議論の結果決まった5人の子供達の名前は、ティニーマとの娘がティフィーチ、サウシーズとの息子がノテルーク、レアストマーセとの息子がゼクシニーグ、キルシュシュとの娘がウィーツレッツ、ディティカとの娘がラトギスアだ。
まあ、基本的に名付けたのはお母さんだ。
お父さんは、1人目を決める段階で、発言権を殆ど失っていた。
最初に聞かれて答えたのが、「コティニーマ」、2回目が「ティヤーロツー」だったので、信用を失ってしまったからだ。
本人に悪気は無いし、巫山戯てもいないらしいのだが、いかんせん、ネーミングセンスが無さ過ぎる様だ。
ティニーマ達の出産と子供達への名付けが無事に終了したので、7月22日から24日迄掛けて、開通したアルコーラル商国から死都 プルトバトール迄のトンネルの視察と元奴隷6人の体内から取り出した追跡用の魔導具“レゾナンスブレスレット”のカケラと“サイレントスピーカーピアス”の設置を行った。
撹乱の為に“エヴィエイションクルーザー”であちこち飛び回ってくれていた諜報局員達と合流して、トレジャノスピング大森林で、魔獣に食べさせたり放り投げたりしつつ魔導具を分散させて、“レゾナンスブレスレット”の一つは、トンネル入り口近くに放り投げる。
その後、トンネルへと入った。
トンネルは僅か1ヶ月の突貫工事とは思えない程、しっかりと作られていて、“エアーバイク”での走行も楽々だった。
途中で一泊する傍ら、ちょっと、嫌がらせで、側面の“イモータルウォール”を1ヶ所剥がして、“レゾナンスブレスレット”の1つを地中に埋めてから“イモータルウォール”で塞いでおいた。
反応が“イモータルウォール”の奥からすれば、必至に隠し通路を探す事だろう。
翌日の日暮には、トンネルを走破し終えたが、よくも此処までの工事を頑張ってくれたものだ。
代理官のみんなには本当に感謝だ。
そして、最後の仕上げで、森の魔獣と死都 プルトバトールの魔物に魔導具を食わせてからルベスタリア王国へと帰った。
25日には最後の1人だったディティカも退院して来た為、その日の夜は、みんなで大誕生パーティーを行った。
主役の5人は、最早アイドルだ。
母親や父親よりも明らかに他の娘達に抱っこされている時間が長い。
そんな中、ふと弟ノテルークを抱っこしたハンジーズが、妹ティフィーチを抱っこしたティヤーロに訊ねる。
「ティヤーロさん、私やティヤーロさんに赤ちゃんが産まれたら、ノテルークとティフィーチは伯父さん、伯母さんになるの?
其れとも、異母兄弟になるの?」
「…………どっちだろう…………」
そう言いながら、僕を見るティヤーロ。
いや、僕に聞かれても…………
『普通に考えて、どちらでも有るのでは?』
と、思っていると、ティニーマが、
「異母兄弟ね」
と、言った。
そして、サウシーズを見る。
サウシーズは一瞬考えた様だったが、ハッとして、
「異母兄弟ですね」
と、言った。
「そっか、異母兄弟だね、ママ」
と、全てを一瞬で悟ったハンジーズが答えたが、悟れなかったティヤーロは、
「え?でも、ティフィーチは私の妹で、お母さんの娘で、私の子供はお母さんの…………」
「ティヤーロ…………」
「え?お母さん、その、ええっと…………
ハッ?!そっか、そうだね、異母兄弟だね、ねぇ、ハンジーズ」
「うん、そうだよね、ティヤーロさん」
…………どうやら、ティヤーロも察した様だ…………
ティヤーロの子供と云う事は、ティニーマの孫、つまり、ティニーマはお婆ちゃんと云う事だ。
多分、生涯女性を貫くつもりのティニーマは孫が産まれようと、曾孫が産まれようと、きっとお婆ちゃん呼びを認めないつもりなのだろう。
……僕も気をつけよう…………
と、そんな一悶着も有りつつ、誕生パーティーはとても盛り上がり、楽しい時間を過ごした…………
27日には、ワルトルットゥから、アルコーラル商国の3ヶ所の古代遺跡都市の探索完了の報告を受けた。
今月は僕が殆ど王都ルベスタリアから動かなかったので、ワルトルットゥ師団とリティラ師団のA級代理官でパーティーを組んで、各都市中心部の地下についても探索をしてくれたのだ。
しかし、其れと共に、モルツェンからも明日帰還予定との連絡が来ていたので、2日後に、両方の報告会を兼ねた円卓会議を行う事にした。




