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箱庭の王様  作者: 山司
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第18章 命 1

第18章

命 1





▪️▪️▪️▪️





「…………此れは、不老不死の実験です」


「不老不死の実験?」


「はい、この女性は、エリニーフォス•ルニウメン皇女殿下、“不老不死を追う聖女”とも“不老不死を追う魔女”とも呼ばれていた方です」


「不老不死を追ってたのは、分かるけど、聖女と魔女と真逆で呼ばれてた理由は?」


「聖女と言われていたのは、その志し故にです。

殿下は、不老不死の法を見つけ、全ての人が、老いと死の恐怖から解放される事を目指しておられました。


魔女と言われていたのは、その実験費用故にです。

殿下は父である皇王陛下からの寵愛の全てを実験費用に注ぎ込み、ルニウメン皇国の財政すら傾けたと言われておりました」


「……なるほど、正しい行いの為なら、金を幾らでも使う浪費皇女だったと云う事か。


で、この実験は、不老不死とどう繋がる実験なの?

ぱっと見、自分をいっぱい作ってる様にしか見えないけど?」


「はい、ですが若干異なります。

此れは、自らの死体を作っているのです。


私が妻の遺体を蘇らせてしまったのも、この皇女殿下の研究についての論文を見ていたからです。


この論文では、怪我回復ポーションに身体の一部を切り取って漬け込み続ける事で、全身が形成されると云うモノでした。


もちろん、生きている訳ではありませんし、全身が完成した後、そのままにしておくと徐々に腐敗して行きます。


此れを、完成直後に、状態異常回復ポーションに移す事で腐敗を防ぎ、そのままの状態で保存が出来るとなっていました。


実際に、妻の遺体も此処に有る、皇女殿下の遺体も、そのままの状態が維持出来ています。



不老不死の実験は、此処からで、この作られた死体に、自身の魂を移せば老化する事の無い、死体の肉体が手に入り、更に、予備を準備しておく事で、何度でも生き返る事が出来るのでは無いか?と、取り組まれていた様です」


「…………其れって、素人の僕でも、無理だって分かるんだけど、何か可能性が有ったの?」


「此れはあくまで噂でしかなかった事ですが、皇女殿下は、“魂を移す固有魔法”を持っていたのではないかと、言われていたのです。


噂の理由としては、殿下のこの不老不死の実験には、魂を移し替える手段が不可欠です。

にも関わらず、殿下はこの魂を移し替える手段について、一切捜索されていなかったのです。


ですから、その手段を既に持っておられるのでは無いかと言われておりました」


「…………なるほど…………

でも、此処にその死体が有るにも関わらず、不老不死の法は完成しなかった…………


まあ、当然か。

死体に魂を入れたところで、脳から身体を動かす信号が出ないと…………」


「?ノッディード陛下、どうかされましたか?」


「ねえ、アエルゲイン。

ゾンビ系の魔物って首が切れてても動くよね?

其れって、魂が身体を動かしてるのかな?


其れに、レイス系の魔物は、魂だけの存在で、魂が魔法を使って攻撃して来てるのかな?」


「確かに、ゾンビ系の魔物やレイス系の魔物はその様に感じられますな」


「ちょっと、気になってはいたんだけど、魔物街 アコウツウで、ゾンビ系の魔物とレイス系の魔物に全く出くわしていないんだよね。


僕だけじゃなくて、探索に行った代理官からの報告にもゾンビ系やレイス系の魔物との戦闘報告が無かったと思うんだ。



…………もしかして、なんだけど。

エリニーフォス•ルニウメン皇女の考案した不老不死の法が成功していて、皇女が不老不死だったとする。


その皇女が今もまだ、魔物街 アコウツウに居て、“魂を移す固有魔法”で、死んだ魔物達の魂を何処かに集めてたりって事は…………無いよね、きっと」


「…………ノッディード陛下、その可能性は低いとは思います…………しかし…………」


「……どうしたの、アエルゲイン?」


「……先日お預かりした、“6大魔王の1体 死の魔王 マラの右腕のミイラ”の解析が出来たのですが、その中に、“魂を移す魔法”がありました…………


死の魔王 マラは、リビングアーマー系の魔物の大軍団を率いて、人間の街を攻め入ったとか…………」


「其れってもしかして、死の魔王 マラは、リビングアーマー系の魔物を自分で生み出して率いていたって事?鎧に魂を移して?」


「恐らく、そうではないかと…………」


「だったら、エリニーフォス•ルニウメン皇女が生きてる可能性も完全には捨てきれないね………


とりあえず、アエルゲイン。

この施設についても調べてみて。


優先順位は高くないから、他の作業の合間で良いから」


「畏まりました。

皇女殿下の御遺体は如何なさいますか?」


「一応、現状維持で保管しておいて。

全て調べ終わって、残す必要が無ければ埋葬しよう」


「畏まりました、では、その様に」




こうして、僕は魔物街 アコウツウで発見した怪しげな施設の調査を後回しにしてしまった。


この事を僕は後に後悔する事になる…………






今回の魔物街 アコウツウ探索は僕の生活に新たな変化を齎した。

まあ、僕にと云うか、エルヴァにだ。


この1年、僕から片時も離れなかったエルヴァだが、さすがに古代遺跡都市に連れて行く訳にも行かないので、僕はこっそりエルヴァが寝ている間に出発したのだが、案の定、目を覚ましたエルヴァは、僕が居なくて、泣きながら僕を探したらしい。


しかし、現在ティニーマ達妊娠中の5人は、出産が近い為、大事な会議以外は、仕事に行っていない。

なので、みんなでエルヴァの相手をしてくれたのだが、暫くすると泣き止んで、大人しく遊び始めたらしい。


そして、昼過ぎに会議のあったレアストマーセが試しに一緒について来るか聞いたところ、レアストマーセに着いて行ったそうなのだ。

更に、その日の夜は、イデティカが試しに一緒に寝るか聞くと、イデティカの部屋に泊まったらしい。


翌朝は、なんと泣く事も無く、僕を探していたらしいが、居ないと分かると大人しくリビングで遊び始めたそうだ。

そのまま、仕事に行くみんなが代わるがわる連れて回ったそうだが、S級代理官になら誰にでも着いて来たそうだ。


此れは、とても大きな変化だ。


僕以外でも大丈夫だと云うのもそうだが、成長を自ら止めているのではないかと思われていたエルヴァが成長していると云う事だ。



昨日帰って来た後は、僕にべったりだったが、今日もグレーヴェに誘われて、僕では無く、グレーヴェと出掛けて行った。


エルヴァが少しづつでも成長しているなら、例え時間が掛かったとしても、いつかは普通の生活が出来る様になるかもしれない。


今後に期待だ。





アエルゲインとの話しの後、その足でナエラークのところに行った。

アコウツウから持ち帰った施設についてはアエルゲインが答えを持っていたので相談する必要は無くなったが、ナエラークには、もう1つ確認しておきたい事があったからだ。



「…………と、云う感じの間取りを考えているんだけど、どうかな?」


「うむ、私は其れでも良いのだが、私だけがノッディードと同じ階で暮らしても良いのか?」


「其れについては、みんなから了承を貰ってるよ。

ナエラークとも毎日一緒に食事を摂れる様にするにはこの設計が1番良いだろうからね」



そう、ナエラークへ確認に来たのは、ナエラークの部屋についてだ。


現在、ナエラークは檻を取り払った状態のエアポートタワーの地下にそのまま住んで貰っている。

ナエラークの存在は、B級代理官以上の者しか知らず、“イモータルデマイス”の開発で檻から出られる様になっても、直ぐに外に出るとルベスタリア王国中が大混乱になる可能性が有るからだ。


なので、ナエラークには今年の建国祭迄は此処に住んで貰って、建国祭でみんなにお披露目をする予定になっている。


そして、お披露目後には、ナエラークにもルベスタリア王城の方に住んで貰おうと思っている。


その為、ナエラークも住める様に、お城を改造する必要がある。

此れも“イモータルデマイス”が開発されたから行える事だ。


ルベスタリア王城は、基本的に“イモータルウォール”で出来ているので、大幅な改造は出来ない造りになっていた。


しかし、“イモータルデマイス”なら、“イモータルウォール”も斬れる。

此れによって、今迄は出来なかった、大幅な改造が出来る様になった。




ルベスタリア王城は、1階から5階迄が一辺1,000mの正方形、6階から39階迄が一辺800mの正方形、40階から50階迄が一辺500mの正方形と、段々と先細りになる形状をしていて、各段差には防壁が囲い幾つもの尖塔が立っているのだが、まあ、防壁や尖塔は完全に飾りだ。



今回の改造は、先ず39階の上に有る、この飾りを一旦全て取っ払う。

次に、40階から42階迄の周囲も39階迄と同じ一辺800m迄拡大して、39階の上に有った飾りを42階の上に移設する。


40階の僕の私室スペース、41階の僕の訓練室、42階の僕の実験室は、全てどんな魔導具でも持ち運びが出来る様に、天井迄の高さが10mある。


なので、新たに増設した40階から42階の外周は各階の仕切りを入れずに、40階から30mの吹き抜けにする。


現在、僕達が普段寛いでいるリビングは南西側に在るのだが、このリビングの外側に新たに天井迄の高さ30m、縦横150mの最早リビングと呼ぶのかどうかも怪しい広大な空間を作る。

元のリビングは壁を取っ払って、新たなリビングが見える超広々キッチンにする。


此処が、僕がナエラークとも一緒に寛げる様に考えた空間だ。

今のリビング同様に、みんなで食事をするのも、ホワイトボードで日々の行動予定を連絡し合うのも完成後には此処で行う。



次に、拡張した西から北西のゾーンはナエラークの私室スペースにする。

寝室だったり、お風呂だったり、応接室だったり、リビングだったりだ。


一応、現在ナエラーク用の超巨大クッションや超巨大ベッドも、国営工場にて製作している。

まあ、作っている職人達は、何かの催し物だと思っているだろうが。



そして、東側に関しては、“エヴィエイションクルーザー”の倉庫にした。

この春に王都ルベスタリア各所の“不可侵領域結界柱”をアエルゲインの新作、“半球開閉式不可侵領域結界柱”に変更したので、王城にもエアポートを作る計画を立てていたのだが、此れをこの余った吹き抜け40階の東側に作る事にしたのだ。


此れによって、ナエラークの出入り口用に設置する吹き抜け天井までの大型リフトを“エヴィエイションクルーザー”の出入り口としても使える。



王城のエアポートには、僕が愛用している“ハイスツゥレージセカンド”から“ハイスツゥレージフォース”迄をとりあえず置くのと、僕の執務室もエアポート内に移設して、31階のA級代理官宿舎から40階のエアポート、そして僕の執務室迄の出入りが出来る様にした。


もちろん、元々の僕のプライベートゾーンには入れない様にしてあるのと、31階よりも下の階には繋がって居ないが、今後、僕が執務室に居ても直接報告や相談に来れる様にと、僕が“エヴィエイションクルーザー”で出掛ける時にネイザーとヴィアルトが直ぐに来れる様にと云う感じの間取りだ。



出入り口用のリフトは北側に設置して、S級A級代理官と同じ権限の有る操作パネルを埋め込んだ指輪をナエラークにプレゼントした。



ナエラークは、僕達と違い、アエルゲイン同様に、古代魔導文明時代の魔導士の様に魔素操作によって魔導具を扱えるので、パネルそのものを操作出来なくても問題無くリフトも動かせるし、各部屋のセキュリティも“半球開閉式不可侵領域結界柱”の開閉も出来る。



此れで、ナエラークは好きな時に外に飛びに行く事が出来る様になる。

“久遠の空の女王”の復活だ。





ナエラークとの擦り合わせは、特に変更も無く終了して、これ程の大改造にも関わらず、工事自体も僅か2日で完了した。


まあ、最も時間の掛かる資材の運搬が、“エヴィエイションクルーザー”と、“半球開閉式不可侵領域結界柱”のお陰で凄まじく早く出来たのと、今回は僕1人では無く、国王親衛局の4人も一緒にやったからだ。


続いて、翌週には、王都内の地下高速道路中央ターミナルの北側に、南北1km東西2kmの広大なルベスタリア中央広場を作った。


此処は将来的には国民の憩いの空間として、先日持って帰った賢者 ラノイツロバーの遺産の“エヴィエイションクルーザー”を飾ったり、今後見つけた歴史的な価値の有りそうな物を展示して行こうと思っているが、とりあえずは、今年のルベスタリア王国建国祭で、ナエラークをお披露目しつつ、お祭りをする為に作った。



こうして、着々と準備を進めつつも、僕は王都ルベスタリアに留まる日々を過ごして、7月を迎えたのだった…………





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