第16章 賢者の弟子の末裔 4
第16章
賢者の弟子の末裔 4
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4月5日、僕はS級A級代理官を全員招集して円卓会議を開いていた。
オルゴール技師 バドロウトと出会ってからは、特段変わった出会いも無く、2日前にルベスタリア王国に帰還した。
今回は、元商人で“10人のラノイツロバーの高弟”の1人、プレンテスと『伝説の勇者』の仲間、戦士店長 トレナガーの子孫に当たるビレジン親子とオルゴール技師 バドロウト夫婦の他に、諜報局が集めて来た、約300人の孤児も一緒に帰還して来た。
毎度の事で、みんな、“エヴィエイションクルーザー”に驚愕していたが、中でも、“エヴィエイションクルーザー”の鍵を先祖代々守って来たビレジンの驚きは尋常では無かった。
自分の存在意義を見失いそうになる程の狼狽振りだったので、さすがに前以て教えて於いてあげれば良かったかな?と、思った。
移民達の事は、ルベスタリア王国に残っていた代理官各員に任せて、昨日は1日休んでから、今日の会議に臨んだ訳だ。
「…………じゃあ、みんな始めよう。
先ずは此れらを見て欲しい」
そう言って取り出したのは、3連の箱。
ビレジンから購入した、半球と、六角形と、黒い球体が中で浮かんでいる、賢者 ラノイツロバーの遺産だ。
「な、此れは!!」
「……もしかして、“浮遊ユニット”と、“飛行ユニット”、そして、“重力操作ユニット”ですか?」
驚きで、言葉が出て来なかったアエルゲインに、冷静に分析するモルツェン。
2人ともさすがで、一瞬で見抜いた様だ。
「うん、多分ね。
此れが手に入った事は凄い事なんだけど、みんなに集まって貰ったのは、此れの出所に問題が有るからなんだ。
此れは、今回移民して来たビレジンが先祖代々受け継いで来たモノの1つなんだけど、そのビレジンのご先祖様は、あの賢者 ラノイツロバーの弟子で“10人のラノイツロバーの高弟”の1人、プレンテスだったんだ。
そして、此れは、その賢者 ラノイツロバーが、大厄災戦争後の人々が“飛行魔法”を完全に失わせる事を危惧して残したモノらしいんだ。
更に、ビレジンは『伝説の勇者』の仲間、戦士店長 トレナガーの子孫でもあって、『伝説の勇者』の物語に出てくる“伝説の空飛ぶ船”は、トレナガーがプレンテスから受け継いだモノを使っていたらしいんだ。
つまり、此れらの“空中都市”を作り出す事の出来る魔導具と、“エヴィエイションクルーザー”が、ラノイツロバー本人と10人の高弟分、存在している可能性が有るって事だ。
もちろん、全部が大切に保管されて使える状態とは限らないけど、少なくとも、古代魔導文明時代の“飛行魔法”の根絶を免れている可能性は十分にあると思う。
ハッキリ言って、僕は他国に航空戦力を持って貰いたく無い。
ルベスタリア王国は、誰に知られる事も無いまま、独自の発展をして、他国との交流の無い国でいたいと思っている。
その為には、1番に知られない事だ。
もしも、他国が“エヴィエイションクルーザー”を手に入れて、勇者伝説をなぞってドラゴンランドを目指したり、ワイドラック山脈の調査に乗り出したりしたら、ルベスタリア王国は間違い無く知られてしまい、高確率で接触を図ろうとされるだろう。
そうなれば、仮にその“エヴィエイションクルーザー”を撃墜しても、その原因の調査なんかで、ワイドラック山脈を越えて来ようとする者達が現れかねない。
だから、出来るだけ、此れと同じ、“空中都市”を作り出せる魔導具と共に、“エヴィエイションクルーザー”の鍵若しくは本体を回収したい。
“エヴィエイションクルーザー”を持っていた“10人のラノイツロバーの高弟”達は散り散りになったらしいから、世界中の一体何処に有るかも分からないんだけど、今後は、現実的な脅威の1つとして、“伝説の空飛ぶ船”の情報を集めて貰いたい。
そして、王都ルベスタリアの対空設備と航空戦力の増強を行なっておくべきだと思うんだ」
僕の話しを全員が黙って聞いていた。
みんなは基本的に僕の意見に肯定的だが、イマイチ、僕の警戒心を理解しきれていない様だ。
其れも仕方ないとも言える。
ルベスタリア王国には、他では考えられない程の魔導具があり、“エヴィエイションクルーザー”に至っては既に70隻を超えている。
例え、多少の航空機を手に入れた者が居ても脅威には感じ難いのだろう。
しかし、僕は他国に見つかる事に最大限の警戒をすべきだと考えている。
何故なら、無茶で無謀で作戦とも言えない様な行軍を繰り返して、生活圏を広げて来たのが、太古より続く人類の歴史だからだ。
一万年の平穏が、僅か数年の発展で覆る時もあるのだ。
「…………そうだな…………
キルシュシュ、ワルトルットゥ、ラウニーラート、ピカルニキ、サンティデルテ、ハートルシュー。
キミ達の住んでたナノマガン王国は、建国から300年くらいだけど、その間基本的には平和だったよね?」
「ええ、そうですね」
「はい、大きな戦乱も無く……」
「じゃあ、ルベスタリア王国軍が全戦力を持って、攻め込んだら、何日、いや、何時間耐えられる?」
「え、其れは…………」
「んな?!そんな事になったら……」
「…………5時間耐えられれば良い方では無いでしょうか」
「そうだね。
恐らく、5時間は持たないよね?
でも、キミ達が、ナノマガン王国にそのまま住んでいたとして、そんな戦力がたった5年で生まれるなんて、予想出来たかい?」
「!!いいえ、絶対に予想出来なかったと思います」
「はい、寧ろ戦争が起こると考える事自体が無かったと言えます」
「だよね?
でも、現実にこのルベスタリア王国が存在する訳だ。
じゃあ、ハンジーズ。
“エヴィエイションクルーザー”が何隻有ったら、キミはこの王都ルベスタリアを落とせる?」
「…………ノッド様とナエラークを数に入れないなら、5隻でしょうか」
「だよね」
「え?!たった5隻で?」
「其れは一体…………」
「5隻の“エヴィエイションクルーザー”を超高空から落とすんです。
狙うのは、王都、王城、エアポートの結界柱。
そして、王城本体とエアポートタワーです。
“エヴィエイションクルーザー”が結界を張って落下して来たら、いかに新しい“半球開閉式不可侵領域結界柱”が強度2.5倍でも耐えられません。
結界が砕けて、落下を許すでしょう。
そして、エアポートタワーが如何に頑強でも“イモータルウォール”で補強されていない場所は粉々です。
王城は、“イモータルウォール”で出来ているので耐えられるでしょうが、そのぶつかった衝撃は城内に伝わります。
王城の頑強さ故に、衝撃は外に逃げず、中の人間は、先ず間違い無く全員死亡するでしょう」
「!!確かに、そうか………」
「ぶつかった衝撃は中に広がって、逃げ場が無い分、中で何度も増幅しかねない……」
「そう云う事だね。
みんな、分かってくれたかい?
脅威はいつ生まれるか分からない、そして、このルベスタリア王国も無敵では無いって事だ。
だから、常に情報を集めて、脅威への対抗手段を準備しておく事が大切だ」
「「「はい!!」」」
今度は全員がしっかりと返事をして、頷く。
僕も満足して頷き返す。
そこで、珍しくイカルツウィンの手が上がる。
「ノッディード陛下。先程のお話しで、『伝説の勇者』の物語で、戦士店長 トレナガーが元々“伝説の空飛ぶ船”を持っていて、其れを使ったと仰っておられましたが、確かでしょうか?」
「多分、確かなんじゃないかな。
まあ、ビレジンの言い伝えが合ってたらだけど、この3つの箱と、“エヴィエイションクルーザー”の操作パネルから、可能性は高いとは思うけど、どうかしたの?」
「我らの今は無き祖国は、半島と島々で出来ている事はお話ししたと思いますが、遠い祖先は元々は島々の方に住んでいた様なのです。
そして、その島々へとたどり着いた祖先達は、“空飛ぶ船”で、その地に降り立ったと言われているのです。
なので、我らの祖国では、『伝説の勇者』の乗った“伝説の空飛ぶ船”は、戦士店長 トレナガーが我らの祖国で見つけたモノだろうと言われていました。
しかし、トレナガーが元々持っていたとするなら…………」
「イカルツウィン達の祖国にまだ、“エヴィエイションクルーザー”が眠っているかもしれないって事?」
「はい、我らの祖国の物語でも、トレナガーは遥か南の国の出身であると言われていますので、全く別の出所の“空飛ぶ船”の可能性もあるかと」
「…………イカルツウィンの祖国に、“10人のラノイツロバーの高弟”が国を作ったみたいな話しってある?」
「いいえ、『賢者 ラノイツロバーと10人の高弟』の物語はありましたが、高弟の1人が移り住んだと云う言い伝えはありません」
「そうか…………
でも、探してみる価値はありそうだ。
ただ、簡単に行ける場所じゃあ、無いんだよね…………」
「そうですな、祖国を離れてそろそろ9年ですが、恐らく今も完全なる隷属を強いられている事でしょう。
彼の敵国は、今や帝国を名乗り、イジャラン・バダ帝国との狭間に在る国々を巡って争い続けているとの事。
戦時下の国は、警戒が強いですからな…………」
「だよね…………」
「…………ノッド様、少し宜しいですか?」
「どうしたのネクジェー?」
「はい、ちょっと確認したいのですが、イカルツウィンさん、デンツウィンさん、先程、ノッド様が仰っていたビレジンさんから得たモノの中に、戦士店長 トレナガーが世界を巡った地図が有ったんですが、お二人の祖国は結構、大小様々な島が有りますよね?
中には無人島も多いんじゃないですか?」
「うむ、確かに」
「寧ろ、無人島の方が多いくらいだろう」
「なら、“エヴィエイションクルーザー”が隠されているとすれば、無人島の方が可能性が高いんじゃないですか?
例えば、近付いてはいけない島とか、伝説の魔獣の縄張りの島とかに、隠しているんじゃないですか?
もしも、“エヴィエイションクルーザー”を手に入れるのが目的なら、ビレジンさんの持っていた鍵の様に、ちゃんと動かす手段を手に入れてから、本体を探すべきかもしれませんが、今回は、極論破壊しても良い訳ですから、隠されている場所の特定が出来れば、そこごと壊しても問題無いですし。
なら、人と接触する必要は無いですよね?
無人島をしらみ潰しに回って、怪しい場所は破壊すれば良いんですから」
「ネクジェー、其れ採用!!
ただ、めちゃくちゃに破壊するんじゃなくて、可能なら動かなくても回収する方向で。
船そのものは必要なくても、船内には情報や変わったモノとかが有るかもしれないからね」
「少々お待ち下さい、ノッディード陛下。
確かに其れならば、入国の方は関係無くなるかと思いますが」
「無人島の中には、本当にネクジェー殿の言われた、伝説の魔獣の縄張りが御座います」
「!!え?!本当に?
確かに、魔境の海に囲まれてるかもしれないけど、島々にも伝説の魔獣がいるの?」
「はい、其れも残念ながら、そう云った島が複数あります」
「中にはドラゴンに匹敵しうると言われているモノも…………」
「…………其れはさすがに、不味いね…………
“エヴィエイションクルーザー”を見つけられる危険より、そっちの危険の方が高そうだ…………
まだ、今の僕じゃあ、ナエラーククラスの相手に勝てそうに無いからなぁ〜……」
「あの、ノッド様、ナエラークは最強のドラゴンなので、他のドラゴンよりも圧倒的に強いらしいですよ。
だから、多分、ナエラーククラスって云うドラゴンや魔獣は居ないんじゃ無いですか?」
「いやいや、ナエラークの最強は“サードストライク”の前迄の記憶でしょ?
“サードストライク”以降は、ドラゴンも魔獣も凄く強くなって、更にドラゴンは理性を失った他のドラゴンを殺しまくってたんだから、寧ろナエラークよりも更に強いドラゴンや魔獣が居るって考えるべきだよ」
「ノッディード陛下、宜しいでしょうか。
以前、ナエラーク様に“サードストライク”時の力の変化について伺ったのですが、『ちょっとだけ強くなった』と、仰られていました。
全ての魔導士が魔物と化し、あらゆる魔獣が力を倍増させ、殆どのドラゴンが理性を失う程の魔素が注がれても、ナエラーク様にとっては僅かな変化しか無かったと云う事は、それだけナエラーク様が超越した御力を持たれていたからではないでしょうか。
私はリティラ様の仰る通り、ナエラーク様は完全なる別格の存在だと思いますが…………」
「アエルゲインまで…………
…………そうか、此れも良い機会だし…………
みんな、ちょっと、向こうの壁際まで下がってくれるかな?
あ、妊娠中の人は、僕の後ろに来て」
疑問顔ながら、みんなが席を立って、壁際と僕の後ろに移動する。
円卓の間は、結構広々設計なので、壁際迄は結構距離が有る。
魔物と遭遇したと仮定するなら丁度良い距離感だろう。
「みんな、魔獣図鑑を学んで知っていると思うけど、古代魔導文明時代の魔獣のランク付けは、危険度で記載されていて、頂点たるナエラークのエタニティスカイドラゴンを含む危険度SSSの魔獣が約100種類、その下の危険度SSの魔獣が約1,000種類居る。
キミ達は最近、ポーションを使った訓練で、Sランクの魔物にも勝てる様になって来ているから、ドンドン自信もついているだろう。
ハンターギルドの定めたSランクは、上限が無いから分かり辛いだろうけど、魔物のSランクは、危険度で言えば、AからSくらいだ。
じゃあ、SSは、どのくらいかって話だ。
良いかい、みんな、今から僕がプレッシャーを掛けるから、気をしっかり持ってね。
行くよ?此れが、危険度SSクラスだよ!!」
僕は普段抑えているエネルギーを解き放つ!!
僕が全力で訓練を行うのは、僕以外立ち入り禁止の41階訓練室だ。
だから、S級代理官のみんなですら、僕の本気を見る機会は今迄無かった。
其れに僕も日々努力して強くなっている。
僕の放つプレッシャーに、全員息を呑んで、目を見開く様にして見ている。
そこに、更に殺気を上乗せして放つ…………
みんな、本能的に感じてくれただろう。
ルベスタリア王国最強のペアクーレも、最も戦闘経験豊富なイカルツウィン、デンツウィンも、魔王城を攻略して来た勇者ワルトルットゥ達も、みんな冷や汗を滲ませて僅かに震えている。
一応、プレッシャーも殺気も前に向けてしか、放って無いが、僕の裾を掴むエルヴァの震えが伝わって来たので、殺気を消して、プレッシャーを引っ込める。
「みんな分かったかな?
危険度SSって云うのは、危険度Sが束になっても全く歯が立たない様な魔獣だ。
そして、SSSって云うのは、そのSSが束になっても歯が立たない。
ナエラークの存在感は、Sランクの魔物なんて目じゃ無いよね?
でも、アレですら、今の僕の様にリラックスして、プレッシャーを抑えてるんだよ。
そして、そんなナエラークみたいな危険度SSSの魔獣が100種類以上、僕くらいの危険度SSの魔獣が1,000種類以上この世界には居る。
だから、忘れないでね。
世界は広くて、上には上が居るって」
「はい、ノッド様。申し訳ありません…………」
「私も謝罪を。差し出がましい事を申しました…………」
「良いんだよ、リティラ、アエルゲイン。
思った事を言うのは良い事だ。
何も言わずに、安易に危険に飛び込んでしまわなくて良かったと思うよ。
其れに、今ので、気が引き締まったのは、きっとキミ達だけじゃあ無いだろうからね」
そう言って見回すと、図星を突かれて照れ臭そうにする者と、より高みを目指そうと力強く頷く者が居る。
やっぱり、みんな心の何処かで自分達の強さに慢心し掛けていた部分が有ったのだろう。
「じゃあ、みんな座って、会議を続けよう。
…………今ので分かったと思うけど、伝説の魔獣ってなると、恐らく危険度SSや危険度SSSの魔獣だと思った方が良い。
もちろん、中にはSクラスも居るだろうけど、ここ数百年で台頭して来た魔物と違って、魔獣は何千年も何万年も生きて来たモノも居るからね。
言葉通り、桁が違う。
と、云う訳で、無人島の探索はやっぱり一旦保留にしよう。
アイディアは良いと思うけど、残念ながら、まだ僕達じゃあ力不足だ。
何年か先に、最低でも危険度SSが1パーティーで倒せるくらいになってから調査すべきだと思う。
他には何か情報は無いかな?
……はい、シイーデ」
「はい、あの情報では無いんですが、アエルゲインさんに確認したいんですけど、ビレジンさんの家宝を見ていて思ったんですが、“飛行ユニット”は、単体で浮きっぱなしの状態なんですか?操作をしなくても」
「うむ、そうですな。
“飛行ユニット”は、“浮遊ユニット”や“重力操作ユニット”と違い、常時浮いています。
逆に、地面に付ける事が出来ませんな。
因みに、あの箱に関して言えば、恐らく“浮遊ユニット”と“重力操作ユニット”は、箱側に中で浮かんでいる様に制御が掛かっているのでしょうな」
「ありがとうございます。
だったら、例えば、操作パネルが無い“エヴィエイションクルーザー”が有ったとして、そこに“浮遊ユニット”を周囲にくっ付けて、“浮遊ユニット”側を操作すれば、その“エヴィエイションクルーザー”は動かせますか?」
「!!其れは、恐らく可能です!!
操作パネルが無ければ、ロックも掛かっていませんからな。
極端な話し、“エヴィエイションクルーザー”の下に“エアーカー”をくっ付けて、その“エアーカー”を動かせば、“エヴィエイションクルーザー”も動くでしょう。
ああ、しかし、それでは上昇や前進は出来ても、下降が出来ないか…………」
「…………甲板に“エアーカー”を裏返してくっ付けたらどうですか?」
「おお、ネイザー殿、其れならば自在に動かせる可能性が十分に有るでしょう。
試してみる価値は有りますな」
「なるほど…………
ありがとうございます、アエルゲインさん、ネイザー。
ノッド様、今の話しからするなら、“エヴィエイションクルーザー”本体を発見されるだけでも十分に問題です。
そして、“エヴィエイションクルーザー”の一隻は、高確率でイジャラン・バダ帝国の何処かに有ると思われますから、先ずはその探索をするのが良いんじゃないでしょうか?」
「!!戦士店長 トレナガーの“エヴィエイションクルーザー”か!!
確かに、今の話しからして、幾ら鍵をビレジンが持っていても、放置出来るモノじゃ無いな。
イジャラン•バダ帝国は帝国主義国家だし距離も近い。
…………でも、ビレジン達が住んでたのは、イジャラン•バダ帝国の帝都なんだよなぁ〜……」
「……潜入となると危険ですね」
「今、あの国はハンターすら徴兵していると云う噂ですし…………」
「帝都に限らず、大きな街の周囲は軍人が巡回しているらしいですからね」
「…………帝都周辺には、そもそも無いのでは?」
「なるほど、モルツェン、その通りかもしれないね。
古代遺跡都市の何処かって事だよね?」
「はい。戦士店長 トレナガーが誰にも見つからない様に隠したならば、その可能性が高いと思われます。
予想でしか有りませんが、アルコーラル商国南東の魔物街 アコウツウが怪しいのでは無いかと思います。
現在ではアルコーラル商国内で、近くにカギョクドの街が在りますが、以前は、完全に砂漠の中でしたし、首都アルコーラルとも帝都イジャランとも距離が有ります。
其れに、魔物街 アコウツウは、規模も余り大きくない上に、女性ハンターが忌み嫌うオーク系の魔物の巣窟なので非常に不人気な遺跡都市ですから、大切なモノを隠すには非常に適した場所だと思います」
「確かに、条件的にはピッタリではあるね。
なら、今迄通りの計画を進めて、古代遺跡都市を王国軍の方で探索する中で、注意して貰うのが良さそうだね」
「了解しました、お任せください」
「後は、諜報局の方で南西方面の比較的平和な国での情報収集を強化して欲しい、賢者 ラノイツロバーの遺産の情報は共有して良いから、僅かな情報や古い伝承も拾って貰いたい」
「はい、分かりました」
「後は、モルツェンにちょっと動いて貰いたいんだけど、以前判明しなかった、“天地鳴動”の出所の情報をもう一度、確認して貰いたい。
もしかしたら、賢者 ラノイツロバーの研究所みたいな場所が見つかるかもしれないから」
「了解しました。
かなり西の方から流れて来た様なので、暫く王都を離れる事になると思います」
「うん、了解。
ただ、無理はしないでね、活動範囲の拡大はもう少し先で本格的にしようと思うから。
と、云う事で、活動範囲の拡大についてだ。
アエルゲイン、出来るって期待してるよ?」
「……空中都市の復活ですか…………」
「そう。でも、ルベスタリア王国を浮かべようとは思って無いんだ。
イメージ的には、空中要塞都市かな?
基本的には、遠くに行く時の休憩所で、王都を捨てないといけないくらいの万が一の時の避難所って所かな。
大きさ的には、王都の中央円の半分くらいは欲しいけど」
「やり遂げてみせましょう。
ノッディード陛下ならば、悪しき時代の再来とはならないでしょうから、全力で取り組む所存です」
「ありがとう、信じてくれて。
其れから、参謀部は王都の対空戦力の増強案を考えて貰いたい。
パターンは2種類、地上からの迎撃と、“エヴィエイションクルーザー”の強化だ。
可能な限り既存の魔導具を活用した案でお願い、頼んだよハンジーズ」
「はい、お任せ下さい」
「後は、イデティカ、もし、学校の授業で生徒たちが歴史や伝承についての面白い発見や解釈をしたら拾い上げてくれる様に、教師陣に伝えておいて欲しい。
もしかしたら、何かの手掛かりが見つかるかも知れないから」
「はい、分かりました」
…………と、云う感じで、基本的な僕の予定は変わらないまま、一応、会議は終了した。
正直言って、何千年も前の情報が簡単に出て来る訳は無い。
ビレジンの家系は、本当にご先祖様に誇りを持って、そして、代々真面目な性格の一族なのだろうと思う。
普通なら、言い伝えなんて廃れて当然の年月だ。
だから、気長に探して行くつもりだったのだが…………




