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箱庭の王様  作者: 山司
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第16章 賢者の弟子の末裔 1

第16章

賢者の弟子の末裔 1





▪️▪️▪️▪️





………………カラン…………



「…………25……

そんな、ノッド様が…………」


「…………外した…………」



「いやいや、あんたら何言ってんだ。

今迄、1点賭けで、当て続けてた方がおかしいだろうが」


「そうだ!!

寧ろ、今迄がイカサマだったんじゃないのか?」




僕の左右に座る金にガメツそうな2人のオッさんが、有り得ない事を言う。


何が有り得ないか?

其れは、僕がカジノで当て続けるのは当然の事で、イカサマなんて必要無いのだ。


だから、僕が外した事に驚く、メイド服のルーツニアスと執事服のネイザーの反応の方が正しいのだ。


そして、僕が外す理由はたった1つ…………



「…………ディーラー。

僕がSランクハンターだって知っているんだよね?」


「……………………」


「雷魔法も見てから避けられる僕に、あんな不自然な球の動きが見えないとでも思っているのかい?」


「……………………」


何も言わないディーラーに、僕はクルリと椅子を回して後ろを向くと、壁際に居た、中年のボーイを手招きする。

僕達のテーブルに注目が集まっていたので、そのボーイも無視出来ず、ゆっくりと近付いて来た。



「御呼びでしょうか、お客様」


「うん。キミさ、ボーイの格好をしてるけど、此処の偉い人だよね?オーナーかい?」


「…………はい、此処のオーナーをしております」


「じゃあ、キミは僕がSランクハンターだって知ってて、其れでも騙せると思ってこのディーラーに指示を出したのかい?」


「…………其れはどう言ったお話しでしょうか?」


「ふぅ〜〜……。さすが商人の国、まどろっこしいやり取りが好きだね。

キミがこのディーラーにイカサマを指示したよね?って言ってるんだよ。


ディーラーの足の下に居るヤツの気配も気付いてるし、僕がベットした後に、ディーラーが踵を鳴らして下に指示を出してる音も聞こえてる」


「お客様、その様な…………」


「おっと、言葉に気を付けなよ?


もしも、嘘を吐いたら二度と喋れない様にするから。


知ってるかい?

舌を切って、上下裏返してから、安物の怪我回復ポーションでくっ付けると、逆さまのままくっ付いて、二度と元には戻らないんだ」


「……………………」


「分かってくれたみたいだね。

下手な言い訳や嘘は言わないでね。


じゃあ、此処からが本題だ。


僕は、イカサマをされて、とても怒っている。

だから、謝罪として、この店の金庫のお金を全部出すなら、手打ちにして上げても良い」



「んな?!

金庫の金を全部?!」


僕の言葉にオーナーだけで無く、他の客達もザワつく。

みんな、僕の優しい提案が分かっていない様だ。



「そう、もちろん隠し金庫の分もね。

ただ、通帳に迄は手を出さないでおいて上げるよ」


「…………もしも、断ったら、私を殺すとでも?」


「え?もしかして、Sランクハンターを本当に舐めてるの?


そんな事する訳無いじゃないか。


断ったら、金庫のお金と預金も全部貰って、この店の権利も貰って、キミとディーラーと下に隠れて居るヤツは死ぬまで魔物を誘き寄せる道具に使うよ」


「!!預金や店の権利を私が渡す訳が無いでしょう!!」


「…………いいや、渡すよ。

だって、渡さないと死なせて貰えないんだから…………


気付いてるんでしょ?


ガードマン達が、僕を怖がって助けに来ない事に。

僕の言葉がただの脅しじゃあ無いって事に…………」


「……………………」


「答えを聞こうか、オーナー?」


「…………この度は、大変申し訳ありませんでした。

誠意を持って、御対応させて頂きます…………」


「分かったよ。

じゃあ、一緒に裏に行こうか」




こうして、今日も僕はカジノで大勝ちだった!!

さすが、アルコーラル商国でも、1、2を争う大カジノで、なんと現金だけで7兆アルも置いてあった。

大金庫に、4つの隠し金庫まで、全部貰ったからだ。


僕の凄メガネの前では隠し金庫など、普通に置いてある金庫と変わらない。





僕達は、現在、アルコーラル商国の首都アルコーラルの最高級ホテルをワンフロア貸し切りで寝泊まりしている。


今回、アルコーラル商国に一緒に来たのは、国王親衛局の局長ペアクーレと副局長のルーツニアス、ネイザー、ヴィアルト。そして、この1年、いつも一緒のエルヴァ。


其れと、リティラ、シイーデ、ネクジェー、エニットだ。


一応、予定では、このホテルへの滞在は1週間くらいで、其れ以降は首都アルコーラルに作る拠点に移る予定で、ネクジェーとエニットに関しては、其処からは基本的には別行動だ。


彼女達には、ルベスタリア王国軍 諜報局としての任務がある。



そして、リティラ、シイーデに関しては、2週間後の僕の帰還と一緒に帰って、次は別のメンバーと交代の予定だ。



とは言え、現在、ティニーマ、サウシーズ、レアストマーセ、ディティカ、キルシュシュの5人は妊娠6ヶ月目で、無理はさせられないので、今年はお留守番だ。



「あぅぅぅぅ…………あぅぅぅぅ…………」



僕達がカジノから帰って来ると、エルヴァが泣いていた。

そして、僕を見つけて、ダッシュで、がっしり抱き付いて来る。



エルヴァは、相変わらず小さな子供の様なままで、僕から離れられない。

言葉も何度も教えようとしたが、此方も進歩が無い。


ただ、小さな子供の様に、夕食を食べて、20時くらいには寝てしまうので、今日のカジノだったり、いつもの娼館に行くのは、一緒にお風呂に入ってからエルヴァが眠った後にしている。



そして、いつもはだいたい朝も起こす迄はずっと眠っているのだが、今日は起きてしまった様だ。



「申し訳ありません、ノッド様。

特に何か有った様子は無かったのですが、不意に起きてしまって…………」


僕が帰って来る迄、泣いていたエルヴァを撫でていたリティラが、申し訳なさそうに謝って来る。

僕は、そんなリティラの頭を撫でて、


「リティラが謝る事じゃ無いよ。

僕もちょっと油断してた。


多分、ルベスタリア王国と違って、アルコーラル商国の雰囲気が、アルアックス王国に似てるのが良く無かったんじゃ無いかな」


と、答えた。

エルヴァは、僕にくっ付いた瞬間から、嘘の様に泣き止んで、既に眠そうだ。



「…………やはり、記憶が無い様でも、覚えているんでしょうか……」


ネクジェーがそう言うと、他のみんなも悲しそうな顔をする。

エルヴァは僕がルベスタリア王国に連れて帰ってから、5回に渡る手術が必要な程の酷い状態で、寧ろ、今迄死ななかった事が不思議なくらいだった。


一体どれ程の苦痛を味合わされたのか、想像も出来ない。


そんな、痛ましい姿を此処に居る全員が見ているので、みんなエルヴァに幸せになって欲しいと思ってくれていて、手術では治せない心の傷を心配してくれている。



僕はゆっくりとエルヴァをベッドまで連れて行って寝かせると、手を握ったままベッドに腰掛けた。



「……そうだね…………


此れは僕の予想だけど、エルヴァの心を壊したのは、多分、エルヴァ自身なんだと思う。


もちろん、原因はあの伯爵だろうけど、エルヴァは多分、自分の身を守る為に、自分で心を壊したんだろうと思うんだ。


だから、多分、記憶は有って、思い出す事が出来ない様にしているんじゃないかと思う。

未だに言葉を覚えられないのも、みんなにすら懐かないのも、新しい記憶ですら、整理が出来ない状態をずっと自分で維持してるからじゃないかと思う。


何か、心を揺さぶる大きな出来事が有れば、エルヴァの心も元に戻るかもしれないけど、其れがエルヴァにとって、良い事かどうかは分からない…………」


「…………辛い事は忘れたまま、此れからの楽しい事だけを覚えて行けたら良いんですけどね…………」


「そうですね、辛い事と一緒に楽しい事まで忘れてしまうのは、悲しいです…………」


「…………ノッディード様、魔導具で記憶を消す訳には行きませんか?

赤ん坊の頃まで、記憶を消したら、もしかすると、歩き方すら忘れてしまうかも知れませんが、其処からはもう一度成長出来るのではありませんか?」


「ネイザー、其れは僕も考えたけど、記憶の消去は二度と戻す事が出来ない。

もしも、エルヴァの中に絶対に忘れたく無い思い出があったら取り返しがつかないから、どうしても、勝手にやる気にはなれなかったんだよね」


「そうですか?

今のルベスタリア王国での暮らしの記憶が残らない方が辛いと思いますけど?」


「ああ…………、うん。

ネイザーがそう思ってくれるのは嬉しいんだけど、エルヴァがどう思うかは分からないからね…………」


「ネイザーは良い事言う。

さすがは国王親衛局の副局長。


私もノッド様と出会う前の記憶なんて、有っても無くてもどうでも良いモノだと思う」


「ペアクーレも、そう言ってくれるのは嬉しいけど、エルヴァがどう思うかは分からないでしょ?

もしも、記憶が戻って、その上で、本人が消したかったら協力はするけど、現段階では決められないよ。


全部消したら忘れたく無い記憶があるかもしれないし、中途半端に消したら思い出したく無い記憶が蘇るかもしれないんだから。


まあ、とりあえず、アルコーラル王国に居る間は、夜の外出は出来るだけ控えるよ…………


って、今思ったんだけどなぁ〜…………」


「ノッド様、敵?」

「さっきのカジノのヤツらですか?」


「多分ね。この街で僕の事を狙ってるなら其れしか今のところ考えられないからね」



みんなが瞬時に臨戦態勢に入る。

全員がお互いに何も言い合わずとも、ネクジェーが直ぐに窓際に身を隠して外を確認して、エニットがドア側に付いて、リティラは、ネクジェーの少し後ろに、シイーデはエニットの少し後ろに行き、親衛局の4人は僕の周囲を固める。



「数は14人でした。

6人が今も入り口周辺に、8人がホテルに入って来ました」


「そっか、8人は普通に玄関から入って来たんだね。

じゃあ、このホテルも無料になるかな?」


「其れでしたら、その交渉は僕がして来ましょう。

ペアクーレ様、念の為、2人お願いします」


「じゃあ、エニットとシイーデ、そのまま、ネイザーと対応して来て」


「「はい!!」」






ネイザー達は、部屋を出て行くとそのまま、エレベーターに乗った様で、僕はゆっくりとヴィアルトの淹れてくれたお茶を飲みながら待っていた。


暫くすると、ネイザーが、1枚の紙を持って戻って来た。



「お待たせ致しました。

ホテル側が、強盗に協力して、この階の事を教えていたので、宿泊費の無料と1人につき1億アルで10億アルの賠償金の証書も書かせました。


賊は全員、ロビーに生かして捉えています。

首謀者はやはり、カジノのオーナーでした。

カジノのオーナーの家も聞いてありますが、このまま、対処して来ましょうか?」



さすがパーフェクトネイザー。

全て、完璧だ。


多分、賠償金を取る為に、ホテル側が賊に情報を教える迄待ってから、行動を開始したに違いない。

賊も生かして捉えて、聞き取りも終わっている。


本当に毎度完璧だ。



「そうだね、じゃあ、お願いしようか。


ネクジェーとルーツニアスもネイザーに付いて行ってあげて。

其れと、諜報局からも5、6人出してネイザーの指揮下に入れて。


ネイザー、目標は朝一で、預金を全額接収して、カジノの権利も売却して来て。

売却金額はあんまり気にしなくて良いから。


後、全員、殺しても生かしても良いけど、生かす場合には、何か使い道を用意しておいて」


「はい、畏まりました」


ネイザーは、丁寧なお辞儀をした後に、僕の方を見て、爽やかな笑顔を見せた。

アレは多分、悪い事を思い付いた顔だ…………





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