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箱庭の王様  作者: 山司
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第14章 A級代理官とS級代理官 2

第14章

A級代理官とS級代理官 2





▪️▪️▪️▪️





エベオベシティ伯爵邸で助けた少女エルヴァの治療は大手術だった。


彼女の負った傷は、見た目どころでは無く、全身の至るところに及んでいて、其れが放置されて歪に治って行く事で更なる弊害を身体に与えていて、怪我回復ポーションで、どうにかなる様なモノでは無かった。


1度の手術で全て治すには危険過ぎて、結果5回に分けての手術となった。

場所によっては、僕の知識と“ジーニアスグラス”のデータや分析だけでは判断し切れず、ナエラークやアエルゲインにも知恵を借りる程だった。



2週間に渡る治療の末、彼女の身体は内臓も含めて元の正しい状態になった。


しかし、彼女の精神年齢は、2、3歳の小さな子供の様な状態で、失われた言葉は治療が終わっても戻らなかった。


なので、恐らく名前はエルヴァで合っているとは思うが、其れ以外は何も分からないままだった。

年齢も正確には分からず、恐らく成人するかしないかくらいだろうとは思うが此れもハッキリしない。

兄と姉が居た様だが、其れも本人は分かっていない様だ。


そして、卵から孵ったばかりの刷り込みの様に、僕から片時も離れない。

夜は精神年齢同様にさっさと寝てくれるので、其方は困らなかったが、昼間の仕事の時も常に僕の服の何処かを掴んでいないと不安で仕方が無い様子だ。



色々と調べてみたが、このままの精神年齢状態が続く場合、この精神年齢から記憶が無いまま徐々に成長して行く場合、何かのタイミングで精神年齢と記憶が一気に戻る場合など、人によって様々らしく、暫く経過を見るしか無さそうだった。




僕がエルヴァの治療に掛かり切りになってしまったが、移民計画の対応はS級代理官のみんなが順調に進めてくれていた。



今回の移民が昨年の移民と大きく違う点は3点。


1つは単純に人数の多さだ。

今回の移民は5,210人で、去年の秋の実に5倍以上だ。

B級代理官も増えたので、全員で教育係をする必要は無いが、各部署へ配置した者も一時的に教育係に周る事になっている。


2つ目は、幾つかの商会を斡旋している事だ。

彼らは学校と作業の並行授業はせず、学校教育のみを受けて、卒業後は即出店する。

経営も最初から国営では無く自営で、店舗の準備や運営の援助は国で行うが、基本的には元々持っていた資産を換金する形で営業して貰う。

主にサービス業がメインで、飲食店なんかが多い。

もちろん、待望の娼館も出来る予定だ!!


そして、3つ目が狼弾会メンバーへの対応だ。


狼弾会はこの2年で組織改革が成されて、狼弾会本体と、2つの下部組織、灰狼会と黒狼会の3つで構成される様になった。


この3つの組織は、ルベスタリア王国への移民の際の振り分けを考えた組織編成だ。

先ず狼弾会は、移民後、即僕の配下として代理官へとなれる人材だ。

次に灰狼会は、狼弾会メンバーへの昇格検討中、若しくは移民としては問題無いが僕の配下としては選ばれない人材だ。

最後に黒狼会は、僕やルベスタリア王国とは一切関わる事の無い問題児で、ルベスタリア王国への移民の際には置いて行かれる者達だ。


此れによって、元々1,000人以上居た狼弾会は300人程のエリート集団の様な形を取った。



そして、その新生狼弾会メンバーは、既にこの2年で、ルベスタリア王国の学校教育とC級、B級代理官としての教育も終わっている。


勉強の内容は全く同じだが、法律の内容はちょっとだけ違う。

狼弾会メンバーと言えども、移民迄の間はルベスタリア王国の存在が秘匿してあったからだ。

全て知っていたのは、ウルフバレット モルツェンと10人の最高幹部だけだ。


なので、“ルベスタリア王国”と云う言葉は全て、“狼弾会”に、“ノッディード・ルベスタリア”の名前や国王と云う言葉は、真のボス、“キングウルフ”に、変わる形で教育されている。


つまり、既に“ルベスタリア王国憲法”を心に刻み、全ての法律を実践した生活を送らせていたのだ。

後は、“狼弾会”と“ルベスタリア王国”、“キングウルフ”と“ノッディード・ルベスタリア”や“国王”を入れ替えるだけで、教育は終了と云う事だ。



狼弾会メンバー、311人は、移民と同時にその事だけを学んで、一応の復習をしてから、即卒業試験、C級代理官試験、B級代理官試験と続けて受験する計画となっていた。


残念ながら、僕の手が2週間空かなかったので、B級代理官の面接だけが滞って、少しだけ出遅れてしまったが、面接も無事に終了し、B級代理官は一気に311人増えて、509人となった。





狼弾会メンバーが全員B級代理官になった事で、待望の病院を始動させる事が出来る様になった。


狼弾会メンバーは基本的には、軍部に入り、周辺国の情報収集と国内の治安維持の任務に着いて貰う予定だが、一部のメンバーには、医療知識を付けて貰って居た。


これは、狼弾会メンバーに医学を学ばせてみて、適正の有りそうな者をモルツェンに人選させていたのだ。

その選ばれたメンバーは、医療知識を学ぶと共に、スラム街で、『人助け』と云う名目の実践訓練もさせていた。


B級代理官合格発表の後には、僕はその病院メンバーへ、付きっきりで授業と病院用に準備していた魔導具の数々の使い方の指導を1ヶ月以上掛けてしっかりと行っていった。



そして、ルベスタリア暦4年5月17日、ルベスタリア総合病院が開院した。

この病院はもちろん国営で、全国民が無料で利用出来る。

このルベスタリア総合病院の開院は全国民に知らされ、国民から大いに喜ばれた。


僕も非常に嬉しい。

此れで、心置き無く妊娠出産が可能だと云う事だ!!


とうとう、封印し続けた、“無敵の指輪タイプA”を使う時がやって来たのだ!!

移民計画の最終段階、A級代理官試験が待ち遠しい!!




病院以外にも国民が増えた事で、製糸工場に縫製工場に革製品工場も本格的に稼働し始め、衣料品店もジャンル分けでの出店が成された。


まだまだ種類豊富とは言えないが、此れで食料品、生活用品に衣料品と、ルベスタリア王国内での自給自足の体制が取れ、衣食住の確立が出来た。


今後はより豊かな生活へと其れらを向上させて行く事になる。




6月に入り、斡旋した商会の面々も無事に学校を卒業した。

そして、其れ迄に準備してあった各店舗は数日の準備期間を経て、次々と開店して行った。


もちろん、僕の行き付けのあのお店もオープンして、映えあるお客様第1号は、当然国王たるこの僕だ!!


あのお店を知り尽くした僕が、サービスレベルが下がっていないか、現場で確認するのは必須事項と言える。



最っっっっっっっっっっっっっっっっっ高だった!!!!



昨年は余り通えず、今年はお預けを喰らっていたので、余計にだ。

更に、女の子達も、学校に通っている間は、恋愛禁止だったので、お互いに我慢し合って居た同士だ。

其れは其れは、サービス増し増しだった!!


ただ、今回の移転に伴って、仕方なく此処で働いていた娘達には、自由に仕事を選んで貰える様にしたので従業員数は減っている。

此れについても、オーナーは了承済みだ。


その分、このルベスタリア王国には、マーメイドクラブの歴代売り上げランキングを大幅に塗り替えた僕と勇者ワルトルットゥが居るし、超常連と化したイカルツウィン、デンツウィンも居るので、お店の売り上げが大きく下がる事は無いだろう。


寧ろ、オーナーの意向で、真裏に建てられた新店舗、女性向けのマーマンクラブが軌道に乗れば、売り上げは倍増しそうなくらいだ。


まだ、マーマンクラブの方は従業員募集中状態ではあるが、店舗自体は完成しているので、今回の移民が全員卒業すれば、稼働出来るのではないだろうか。



因みに、言う迄も無く、お客様第2号は勇者ワルトルットゥで、彼は聖女を除く元勇者パーティーの面々を連れてやって来て、大はしゃぎをしたらしい。


ルベスタリア王国では、健全、安全、安心のサービスが、各種魔導具の下、提供されているので、本当に心置き無く、楽しむ事が出来るのだ!!




飲食店も次々にオープンしたので、ルベスタリア王城1階の商業階は、本格的に街らしい賑わいを見せ始めた。


ああ、もちろん飲食店の方も全店舗食べて回ったよ。

こっちはみんなと一緒に。



更に、季節は進み、8月になって、恒例の試験ラッシュが開始された。


卒業試験、C級代理官試験、B級代理官試験と毎週試験が行われた。

最もキツいのは、相変わらず僕のB級代理官面接だが、今回は受験者数が今迄の比では無いので、各試験の採点やC級代理官面接を一緒にやってくれたS級代理官のみんなもかなり頑張ってくれた。



そして、9月1日、とうとう、ルベスタリア王国初のA級代理官試験が始まった…………







▪️▪️▪️▪️






A級代理官、其れはこのルベスタリア王国で、国王である僕に次ぐ権限を持つ存在だ。


国の根幹を成す各分野での最高責任者を任されたり、多くの機密を知り、重要な魔導具類の使用も許可され、そして、明らかに常人を超えたレベルに至れるポーションを使った訓練も実施される。



ルベスタリア王国にはS級代理官が存在するが、A級代理官とS級代理官の権限の違いはたった1つ。

僕のプライベートルームである40階の国王私室階に入れるかどうかだ。


此れは、S級代理官は、揺らぐことの無い僕への絶対の忠誠心だけで無く、女性としても身も心も全て捧げて尽くしてくれる存在だからだ。


まあ、一般家庭で云うところの、夫婦の寝室に子供を入れないくらいの感覚でしか無い。

A級代理官以上の者は、僕は家族の様に思って接しようとは考えているが、例え家族でも見せられない、色々な色々があると云う感じだ。


因みに40階へ自由に入れるのは、本当にS級代理官だけで、現在特例で出入りしているハンジーズやエルヴァも誰かと一緒で無ければ入る事は出来ない。

此れは、今後、産まれて来るであろう僕の子供でも同様だ。


逆に言えば、一緒にであれば誰でも入って来れるのだが、S級代理官のみんなが僕に無断で連れて来る事は無い。





ルベスタリア暦4年9月1日、その最上位の権限を持つA級代理官を決める試験が実施された。



今迄の代理官試験とは違って、合格出来るのはほんの一握りだと伝えていたが、受験者は、8月に行われたB級代理官試験に合格した者も含めた631人全員だった。


本当はB級代理官になった段階で、A級にする者はほぼ決まっているので、形だけの試験と言えなくも無いが、試験の内容や面接での応対で、キッチリと再検討を行ってから決定はするつもりだ。



先ずは、筆記試験だ。

此れは全員が受験する。

そして、此れに合格すると面接試験だ。


筆記試験の内容は、B級代理官試験の内容を更に難解にした問題が2割、残り8割は、正しい正解と云うモノが存在しない問題だ。


例えば、


『10人の部下と10億ルーベの予算が与えられました。

どう、使いますか?』


『周囲に遮る物の無い広大な平原で、1万の敵と戦争になります。

此方の兵力、装備、死者数を明記して戦術を組んで下さい。

その際に、“エヴィエイションクルーザー”は使えないものとします』


と、いった感じだ。


此れらの問題は、受験者達の考えをより多く知る為と、A級代理官の本当の合格基準が、僕が選ぶかどうかだと云う事を隠す為のカモフラージュでもある。



試験が終わって、採点を行った。

序盤の2割部分はS級代理官のみんなにお願いして、代わりに僕は残り8割の回答を全員分全て目を通してキチンと点数は付けて行った。



そして、驚愕する…………



「ハンジーズ…………

本当に天才だ………」


「ふっふ……、自慢の娘ですから」


「本当に、幾らでも自慢出来るくらい天才だよ。

この政策も、こっちの運用も、実際に行った方が良いと思う。


其れと、凄まじいのは、戦術だ。

軍部のトップは僕じゃなくて、ハンジーズで良いんじゃないだろうか…………」


「其処まで褒めて貰って、私も母親として鼻が高いです。


でも…………


母親としては、ハンジーズに女の子として幸せになって欲しいんですよねぇ〜……チラッ」



「チラッ」と、口でも言いつつ、チラッと僕を見るサウシーズ。

とうとう、この問題が…………



「……ねえ、みんな、ちょっと良いかな?」


僕がそう言うと、試験の採点を行なっていたS級代理官のみんなが手を止めて此方を見て来る。

まあ、みんな、僕とサウシーズの会話は聞いていただろうから、だいたい察してくれている様だ。


ティニーマの輝く笑顔が其れを如実に物語っている。



「まあ、みんな察してくれていると思うけど、ハンジーズの事なんだよね。


正直言って、ハンジーズの試験の結果は、間違い無く合格だ。

ハンジーズなら、面接の必要も無いしね。


ハンジーズがS級代理官になりたいって云うのも本人から聞いてるんだけど、みんなの目から見て、ハンジーズは本当の意味で、S級代理官ってモノが分かってると思う?」


「「「思います!!」」」



うおっと、久しぶりの全員シンクロだ。

そして、即答…………



「そ、そっか。じゃあ、もう、ぶちゃけて聞くけど、何歳からなら可能だと思う?」


「ノッド様、もう既に大丈夫ですよ」


「あ、いや、気持ちの問題じゃ無くて、身体の方の………」


「もちろん、そう云う意味です」


「サウシーズ…………

ハンジーズに一体どんな事を教えてるの?」


「うふふ………」



笑って誤魔化す気だ…………



「大丈夫ですよ、ノッド様。

私も色々と教えましたし、一緒に練習しましたから」


「…………ティニーマ…………」


其れって絶対大丈夫じゃ無いヤツなんじゃ…………



「ハンジーズは勉強熱心だから、私のところにも、どう云うのがノッド様の好みか聞きに来た」

「あ、私にも聞きに来たよ」

「多分、全員に聞きに来てると思うよ、ノートに纏めてたし」



『…………ノートに纏めてるの?僕の性癖……じゃ無くて、好みを?

6歳のハンジーズが?

一体どんな風に育てられて来たら、そんな事に…………』と、思っていると、


「ノッド様は基本的にはA級代理官に合格した者の中からしか女性を選ばれませんよね?」


「うん、ティニーマ。基本的にはそのつもりだよ」


「それで、次回からはA級代理官試験は5年に1回、B級、C級の代理官試験も年に1回1月だけで、学校卒業試験も3月と9月の2回に統一される予定ですよね?」


「うん、来年からはそうする予定だね。

そっか、今回、ハンジーズを不合格にしちゃったら、次は5年待たないといけないのはさすがに可哀想…………」


「確かに、其れも有るんですけど、このチャンスを逃したら、もう二度とこんなに若い子は現れませんよ?」


「え?こんなに若い子?」


「はい、こんなに若い子です。

だって、ハンジーズを上回る天才少女が現れて、4歳で学校を卒業したとしても、その子がA級代理官になるのは最低7歳、A級代理官試験のタイミングによっては11歳です。


さすがに、1歳や2歳の子を学校に入学させる親は居ないでしょうから、6歳のS級代理官が誕生するのは此れが最初で最後のチャンスなんですよ」


「…………なるほどね、どうせなら、誰にも崩せない、最年少記録をハンジーズに作って貰いたいと………」


「いえいえ、ノッド様にとって二度と訪れないチャンスなので、勿体無いと思われないのかと云う意味です」


「……………………」


「ノッド様、親の私が言うのもナンですけど、ハンジーズは可愛いと思うんですけど?」


「いや、確かに可愛いけど…………」


「ハンジーズの事を心配してくれているのは分かってるんですけど、ハンジーズは本気ですよ?」


「…………分かったよ。但し1つ条件が有る。

ハンジーズとの面接は僕が1人で行なってから決めるから、面接の時は全員、席を外してくれ」


「其れは構いませんが、記録はどうされますか?」


「記録は付けない。

そう言った具体的な事をちゃんと聞いてから決めたいから」


「分かりました…………

…………ハンジーズは言葉責めも結構好きだし…………」


「え?サウシーズ、今、なんて?」


「いえいえ、あ!!

全く記録が残って無いのは良くないので、最初に一般的な面接を少ししてから、席を外す感じで良いですか?」


「ああ、そうだね。そうしよう。

で、なんて言ったの?」


「ふふ…………。

其処は本人に確認して下さい」



優しく微笑むサウシーズ。

此れって、本当に母の愛なのだろうか…………





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