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箱庭の王様  作者: 山司
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第12章 魔都の支配者 4

第12章

魔都の支配者 4





▪️▪️▪️▪️





「…………壺は守りましたね…………

!!髪は弾丸が消えました!!」


「……やっぱり、ヤバい髪だったか…………」


僕は、そう言うと防壁から飛び出して、女王鬼に向かって駆け出した…………





玉座の間でのVS女王鬼戦は、今のところ、順調に進んでいる。


第二の伏兵だった、2体のインバストゲットトゥローリーブレイドオーガは僕が瞬殺して、その後、第三の伏兵は現れて居ない。


そして、最初の伏兵だった2体のリプロダクションエンペラーオーガは、ティニーマとレアストマーセが抑え切り、リティラがきっちりとトドメを刺して、無事に勝利した。


その間、イデティカとB級代理官のみんなは、女王鬼に何もさせない状態をしっかりと維持してくれて、今、僕がオーダーしていた、リプロダクションエンペラーオーガ討伐後の、黒いナニカが入っている壺と、危険な香りのする長い黒髪へと弾丸を撃ち込んでくれた。


そして、予想通り、壺は守って、髪は弾丸が消えると云う不可思議な事になったのだ…………





「…………ティニーマ、リティラ、レアストマーセ、お疲れ様。

3人とも、防壁に直ぐに上がれるところまで下がっててね」


「はい、御気を付けて下さい」

「了解しました」

「御武運を」


「うん、行って来るよ」



僕は、すれ違い様に3人に声を掛けると加速する。

3人は、僕と壺との直線上になりそうでならない、微妙な位置を駆けて行く。


此れも作戦に含んでいた事だ。

あの壺の攻撃が直線上にしか出来ないかどうかの確認の為だ。


そして、恐らく直線上にしか攻撃出来ないのだろう。

女王鬼は攻撃を見計ろうとしている。


だが、徐々に僕との距離が迫った事で業を煮やしたのだろう。

とうとう、僕だけを狙って、壺を倒して来た!!


倒れた壺から黒いナニカが僕に迫る!!

僕は横に飛び退いて、黒いナニカを躱すと女王鬼は直ぐに壺を立てらせる。


一瞬にして、黒いナニカが壺へと引き返して行き、全てが戻ると女王鬼は壺をいつでも倒せる様に構えて僕の方を見る…………



飛び退いた僕は、立ち止まって女王鬼の方を見ると、ゆっくりと壺を指差して、その指を今度は女王鬼の長い黒髪へと向けると、にっこりと微笑んだ…………





一糸纏わぬ女王鬼の色気を更に際立たせている、美しく長い黒髪…………

しかし、僕は一眼見た瞬間から、危険だと感じていた。

あの、吸い寄せられる様な黒は、全てを飲み込んでしまいそうな雰囲気が有る。


事実、女王鬼へと放たれたイデティカの弾丸は、まるで消えた様に無くなってしまった。


そして、今、溢れて来た、黒いナニカ…………


アレは、髪の毛だった。


黒い川の流れの様に迫って来た黒い髪。

先ず間違い無く、女王鬼の髪だろう。




“エアーバイク”や“エアーカー”に使われる“浮遊ユニット”は、風属性魔法の“飛翔”と同じく、風を高圧で噴き出す事で飛んでいる。

しかし、其れには重さや高度の面で限界が有り自由自在に空を飛ぶとは言い難い。


其れに引き替え、“エヴィエイションクルーザー”の“飛行ユニット”は、“空を飛ぶ”と云う概念から来ている魔法で、まさに、自由自在に空を飛ぶ事が出来る。

伝説にも多く残る“空飛ぶ船”こそ、“エヴィエイションクルーザー”だ。


だが、最も有名な空飛ぶモノは、“空飛ぶ船”では無い。

古代魔導文明の象徴、魔導士達が全ての人々を支配する為に空へと浮かべた大地。

古代魔導文明の空中都市だ。


この空中都市は、“飛行ユニット”も備え付けられて居たそうだが、もう1つ、“空中に停止する為”の装置も付いていたそうだ。


“重力操作ユニット”


地球の重力を操作して、重さを無くす為の装置だ。


この“重力操作ユニット”を作り出す、重力操作魔法は、元々は、土属性魔法の1つだったそうだが、その余りの強力さに、重力魔法と単体で呼ばれる様になったそうだ。


重力魔法は単にモノや空間を重くしたり、軽くしたりするだけの魔法の様だが、この重力魔法の代名詞とも言える“ゼログラビティバック”を使い熟す僕にはこの魔法の恐ろしさが良く分かる。


どれ程鍛えていようと、自分の体重を100倍にされたら、まともに動ける訳がない。

どれ程軽い攻撃でも、自分の体重をゼロにされたら、遥か彼方まで吹き飛ばされてしまう。

たった、1mの落下でも、重力を100倍にされたら、高層ビルからの落下に等しい。



僕の予想通り、女王鬼のあの黒髪が重力魔法を備えているなら、この女王鬼が、魔都 ウニウンの頂点に立ったのも頷けると云うモノだ…………





内心では、そう思いつつも、僕は余裕の表情を崩さない。


あの黒髪を喰らうのは危険だ。

なら、相手の使い方で、その性質を見極める必要がある。


先程倒したインバストゲットトゥローリーブレイドオーガの様には行かないだろう。

この状況なら間違い無く女王鬼は既に最大限、僕を警戒しているし、攻撃手段の出し惜しみはしないだろう。


壺での攻撃の構えをしているのも、持っているカードを切るタイミングを見計らっているだけだろう。




僕が髪を指差した事で、女王鬼はニッコリと優しく微笑んだ。

「正解ですよ」と、「さっき迄の慌てた様な行動は演技だったんですよ」と、言いたげな、余裕のある優しい、そして、僕を見下した、弱者を憐れむ微笑み…………


このまるで人間の様な女王鬼を否が応でも魔物だと思い出させてくれる…………




キンッ……

スーーーーーーッ………………


僕も負けじと笑みを絶やさないまま、余裕ぶって、ゆっくりと“天地鳴動”を引き抜く。


そして、駆け出すと、進行ルートを計算した様に、壺が倒され蠢く髪の毛が溢れて来る。


その髪の毛の流れを飛び越える様にジャンプすると、


「……“飛翔”!!」


そのまま、風を纏って女王鬼の頭上へと向かうと、


「“火の槍”、“水の槍”、“氷の槍”、“風の槍”、“土の槍”、“雷の槍”!!」



各属性魔法の槍を降らせる。

何れか効果の有る属性が無いかの確認はもちろんだが、あの髪の毛をどう使うかの確認でもある。


そして、この判断は正解だった。


女王鬼の黒髪は、まるで、其れだけで生き物であるかの様に、迫り来る魔法の槍を薙ぎ払った。



此れは非常に良い情報だ。

女王鬼の黒髪がナーガ系の魔物のメドゥーサの蛇髪の様に自在に動く事が分かったのと、恐らく、火、水、土のどれかに苦手な属性が有ると予想出来る。


先程迄、イデティカと共にB級代理官のみんなが“スリーソートキャノン”で砲撃をしていた時には、全て手で払い除けていたのに、今回は髪を使った。


つまり、手で受けるとダメージになってしまう属性が、火、水、土のどれかに有ったと言う事だろう。




「じゃあ、先ずは火属性から試そうか。

“灼熱の火柱”!!」


“天地鳴動”の切っ先の前方に、炎が渦を巻いて現れると、直径2m程に広がって、一気に伸びる!!


すると、ずっと人魚座りだった女王鬼が、形の良いお尻を此方に向け、アレやソレやも丸見え状態のまま、四つん這いで一目散に逃げ出した!!



ドオオオオン!!!!



「…………………」


「…………………」


魔法が床にぶつかって火柱を上げる。

四つん這いのまま、その火柱が消える迄見ていた女王鬼は、火柱が消えるとゆっくり顔を上げて僕を見る。


バッチリと目が合うと、スーッと視線を逸らして、また、人魚座りに戻るともう一度僕を見て、ニッコリ笑った…………


しかし、僕が“天地鳴動”の切っ先を向けただけで、女王鬼はビクッとする。

笑顔も苦笑いっぽい…………



「……ふっふっふ…………

……はっはっは…………

ア〜ッハッハッハ………!!!!


“灼熱の火柱”!!!!


“灼熱の〜〜〜〜火柱”!!!!」




その後は、高笑いをしながら追い掛ける僕と、とうとう立ち上がって逃げ惑う女王鬼との、楽しい楽しい鬼ごっこの時間となった…………





▪️▪️▪️▪️





「…………ティニーマさん、ノッディード様って、そっちの時はああなんですか?」


優等生シイーデがティニーマに質問する。

一番すんなり答えてくれそうな人選もさすがだ。


B級代理官の子達は、全員が興味津々で、ティニーマの周囲に集まっている。


まあ、ティニーマが答える迄も無く、リティラ、レアストマーセ、イデティカが赤くなってソッポを向いたので、「YES」と言っている様なモノだが…………


しかし、意外にも、ティニーマはゆっくりと首を横に振った。



「シイーデ。ベッドの上のノッド様は、あんなモノじゃ無いわよ」



…………全然意外じゃなかった…………




女王鬼との激しい戦いが終わった!!


女王鬼はさすがは、魔都 ウニウンの支配者らしく、その美しい黒髪に、最強魔法との呼び声高い、重力魔法を宿す、強敵だった!!


僕は、激しく苦しい死闘をなんとか制して、勝利を掴み取った!!



その戦いの様はまるで、下衆な悪漢が逃げ惑う全裸に剥かれた美女を高笑いしながら、追い回して楽しんでいるかの様に映ったに違い無い。



しかし、僕も遊んでいたのでは無いと断言しておこう!!


ちゃんと、全てを焼炭にせず、アエルゲインの研究に使える様に、腕も首も斬り落としたし、魔導具らしき装飾品も回収出来る様に避けて攻撃した。



キャイキャイ言いながら、シイーデがティニーマに具体例を求め出したので、ストップを掛けた。



「みんな、その話しは帰ってから、僕の居ないところでしようね。僕の居ないところでね。


其れよりもこの玉座の間のチェックと、女王鬼の死体の回収を済ませてしまおう。

特に女王鬼の死体の回収は、絶対に髪の毛に触れない様に細心の注意をしてね」


「「「了解しました!!」」」



ボスを倒しても此処は敵地だ。

みんな、切り替えは早い。


壺の回収用に準備しておいた“イモータルウォール”製の特別ボックスに壺と、予備の特別ボックスに女王鬼の頭を回収して、玉座の間の調査を行う。


建物の構造から予想されていた隠しエレベーターも隠し宝物庫も発見出来、見た事の無い魔導具なんかも色々と手に入れた。



王都ルベスタリアに帰ると、“西の勇者”パーティーすら倒せなかった、魔都 ウニウンのボス討伐の話しは瞬く間に広がり、同時に僕のドS疑惑…………


まあ、疑惑では無いのだが、其れも一緒に広まった…………



僕のそう云う噂は既に1つや2つでは無く、3桁に迫る勢いなので今更だ。

人口700人に満たない国なのに不思議でならないが…………



回収した戦利品に関しては、アエルゲインに解析を行って貰っている。


最優先で調べて貰った女王鬼の髪の毛は、やはり、重力魔法の力が有った。

そして、もう1つ、ワルトルットゥ達やティニーマ達の病気の原因も、やはり、あの黒髪に有った。


女王鬼の髪の能力は大きく3つ。


1つは、モノを引き寄せ、引き込む能力。

もう1つは、引き込んだモノを腐敗させて溶かす能力。

最後が、魔物を操る能力だ。


最初の能力は言うまでも無く、重力魔法の力で戦いだけで無く、より多く魔力を得る為にも使って居ただろうと云う事だった。


2つ目の能力は所謂、消化吸収能力で弾丸や魔法を消したり、ワルトルットゥ達の手足を奪った能力だ。


そして、最後の能力が病気の原因となった毒だった。

この能力は魔物に髪の毛を取り込ませて操るのだが、その時に、2つ目の能力の影響か、半分ゾンビの様な状態で操っているのだろうと云う事だったのだ。


そして、髪の毛を取り込んだ魔物が他の魔物や魔獣に喰われると、その髪の毛の毒素が、其方の魔物や魔獣にも侵食して行くらしい。

つまり、ティニーマ達は、永い年月で巡って行ったこの髪の毛の毒素の含まれた魔獣の肉を食べてしまった訳だ。


そして、人間では、その毒素に耐え切れずに、四肢が壊死して行ったのだろうと云う結果になった。


病気の進行速度は取り込んだ毒素の量と抵抗力の差の様で、直接受けてしまったワルトルットゥ達は、一気にあそこ迄進行してしまったのだろう。



この病気の事は、ルベスタリア王国の全国民に知らされて、全国民に状態異常回復ポーションが支給された。

家畜となっている魔獣達にもエサに混ぜて状態異常回復ポーションを与えて、今後の感染の予防を行った。


壊死した部分は、状態異常回復ポーションでも治らないが、体内の毒素の状態ならば回復可能だと分かったからだ。



あの病気で苦しんだ者や、その苦しみを見て来た家族達は全員が、病気が治っただけで無く、病気の原因迄取り除いてくれた僕に対して、絶大な感謝をした様で、其れは、後々のC級B級代理官試験で証明されたのだった…………





女王鬼討伐から3ヶ月余り、僕達は魔都 ウニウンに思い残す事が無い様に、しっかりと各建物を調査して回った。


その結果、“エアーバイク”と“エアーカー”の工場と生活用の魔導具を作っていた工場を発見して、またもや、ビルごと頂戴して帰った。


生活用品の魔導具はアエルエンタープライズビルで製造可能だが多く作れるに越した事は無いので持って帰って来た。


嬉しいのは、“エアーバイク”だ。

これでもう、僕が地下からえっちらおっちら運ばなくて済む。



こうして、魔都 ウニウンでの探索は8月20日をもって、無事に終了したのだった…………





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