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箱庭の王様  作者: 山司
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第12章 魔都の支配者 2

第12章

魔都の支配者 2





▪️▪️▪️▪️





5月5日、魔都 ウニウン、中央ビル。

通称“魔王城”の攻略を開始した。



元西の勇者パーティー達から話しを聞いてから約1週間、僕達は魔王城攻略準備と新規ルベスタリア王国民の教育についてなど、もろもろの準備を行ってからのスタートだ。



5ヶ月程前に元勇者パーティーが殲滅していた筈の1階から既に大量の魔物が居た。


現れた魔物は、弱くてBランク、普通にAランクの魔物が混じっているくらいの強さだったが、今回の探索は僕も戦闘に参加しているし、S級代理官のみんなにも、B級代理官をフォローしつつ自分達でもどんどん倒して良いと言ってあるので、殲滅速度も速い。


初日で40階までの攻略と、探索を終えた。


やはり、此処のボス魔物は、建物全体の魔物を支配しているのだろう。

最初の1階と1階エレベーターから行ける最上階の10階には多くの魔物が居たが、其れ以外の階には余り魔物は居なかった。


翌日、10階エレベーターから行ける最上階の50階にも魔物が多く、次の中継階の80階にも多かったが、やはり他の階の魔物は少なく、更にワルトルットゥ達に聞いた強力な魔物もあらわれなかったので、一気に100階迄到達した。


其れ以降も同じく中継階の魔物だけ多く、強力な魔物は居ない状態が続き、このビル自体が先細りの為、4日目で249階まで来てしまった。


本来なら、次の日には1階からの再確認の予定だったが、再確認をしても、その日の夜にはルベスタリア王国に戻って、また来るのは2日後だ。


其れではまた状況が変化している可能性が出るので、翌日は魔物を250階から出れない様に仕掛けをする事にした。



先ずは、1階エントランスの出入り口を封鎖して行く。

1階から10階迄のエレベーターは5ヶ所有ったが、その内の1つからしか出入りが出来ない様に“イモータルウォール”で壁を作って一本道にした。


次に250階のエレベーターホール。

此処に“イモータルウォール”と“インバイラブルドアー”で囲って空間を作ってセキュリティを掛け、僕達以外がエレベーターに乗り込めない様にした。


最後に250階から97階と250階から42階迄に不自然に太い柱が有った。

恐らく、内部に緊急脱出用の隠しエレベーターが在るのだろう。

この太い柱を“イモータルウォール”で全て包んで行って、エレベーターを使えない様にした。


破壊してしまった方が手っ取り早いのだが、どうやら内側からしか開けられない構造の様で、壊す事が出来なかったのだ。




ルベスタリア王国に帰ってから状況報告とボス魔物戦の作戦会議を行ったが、元勇者パーティーは、僕の用意周到振りに、「其処までやるのか……」と、驚いていた。


「まあね……」と、適当に答えておいたが、普段はこんなに準備しない。

寧ろ結構行き当たりばったりだ。


ただ、今回のボス魔物は、なんとなく“逃走”も選択しそうな気がしたのだ。

こっちは伏兵と違ってただの勘だが…………






5月12日火曜日午前5時


僕達は“ハイスツゥレージセカンド”でしっかりと朝食を摂って、魔都 ウニウンの魔王城へと入った…………



今日の布陣は、先ずは僕、単独Aチーム。


そして、Bチームが、ティニーマ、ルーツニアス、ジアンヌ。

このチームはティニーマの“流斬薙刀”での遠距離攻撃を機動力の高いルーツニアスと防御力の高いジアンヌがフォローする感じだ。


Cチームは、リティラ、リーニー、オンレミッド。

このチームは最後方に布陣して、リーニーとオンレミッドの“ノーサプレット”で射撃しつつ、リティラが“レヴォリューションマーダー”のエネルギーを溜める。

ボス魔物が生半可な攻撃では効かなかった場合には、リティラの“レヴォリューションマーダー”で、穿っちゃおうと云うチームだ。


Dチームは、レアストマーセ、フェレッメ、ディークシーの斬撃飛ばしチームだ。

レアストマーセの“レイブラント”、フェレッメの“スラッシュソード”、ディークシーの“ライトニングソード”はいずれも斬撃を飛ばす能力が有る魔導具なので、3人で連携して斬撃を飛ばしつつお互いの防御をカバーし合う感じだ。


最後にEチームは、ネクジェー、シイーデ、ネイザー。

このチームは、ネクジェーが防御に専念しつつ、シイーデとネイザーの“スリーソートキャノン”で砲撃しまくるチームだ。

ネクジェーは索敵能力も高く、周囲の警戒もバッチリなので、シイーデとネイザーも安心してぶっ放せるだろう。



以上、5チームでボス魔物を遠距離からボコボコにしようと云う作戦だ。



先ずは、予定通り、1階から順に249階迄のチェックを行って行く。


閉じ込め効果が十分に有った様で、レイス系の魔物の魔核が3つほど1階に転がっていただけで、他の魔物は居らず、隠しエレベーターも封鎖状態のままだった。



「…………よし、此処からが本番だ。

みんな、気を引き締めて行こう!!」


「「「はい!!」」」



気合いを入れて、エレベーターで250階へ。

外の様子が見える様に、“インバイラブルドアー”を透明なモノにしておいて正解だった。


魔物達も異変に気付いているのだろう。

4体のSランクの魔物が、エレベーターホールに作った部屋の外で待ち構えていた。


インバストゲットトゥローリーブレイドオーガ。

通称マスターオーガだ。


2m弱の通常のオーガくらいのサイズで寧ろ普通のオーガよりも細い体格だが、只のオーガとは比べ物にならないくらいに強いらしい。


特徴は、なんと言っても、額に有る第3の目だ。

もちろん、目が3つ有るから強い訳では無い。


このインバストゲットトゥローリーブレイドオーガは、身体強化の魔法しか使わない魔物で、武器も必ず剣一本のみ。

噂では、この剣の道を極めた事で、額の第3の目が開眼するのでは無いかと言われている。


かの『伝説の勇者』の物語でも登場する魔物で、勇者はこの魔物との激しい戦いで、更なる剣の極みに到達したとなっている程の魔物だ。


しかし…………



「……ちょうど良い感じで、ボス魔物の練習が出来そうだね。

みんな、配置について」


「ええ?!アレってマスターオーガなんじゃ……」

「『勇者伝説』の?」

「其れも4体も!!」


「いやいや、何言ってるのさ、此れから戦う此処のボス魔物は、其れこそ『伝説の勇者』の物語で云うところの魔王と同じレベルの魔物だよ?

Sランクの魔物が守ってるのは当然でしょ?」


「は?!そうですね、魔王城のボス魔物なんですから当然、魔王ですよね」

「え?!今回の作戦って魔王討伐だったの?」

「ちょっと、強い魔物と戦いに行くくらいの作戦会議だったよね?」


「みんな、落ち着きなよ。

Aランクの魔物を瞬殺するS級代理官の方々が挑む、ちょっと強い魔物となったら、普通にSランクに決まっているじゃないか。


其れも、ノッディード様がわざわざ作戦まで立てる程の魔物なら、魔王と同等なのは予想出来た事だよ」


「そうよ。其れに“西の勇者”様パーティーが敗れた相手なんだから、並みの魔王じゃ無いくらいは分かってたと思うんだけど?」


さすがネイザーは落ち着いている。

其れに、ルーツニアスも当然の様にネイザーサイドの様だ。

後は、シイーデも2人の言葉に同意しているところを見ると、最初から、そう云う考えを持って居たのだろう。


B級の子達の統率は、B級の子に任せるつもりなのか、S級代理官のみんなは、用意していた駐車スペースに“エアーバイク”を停めていて、口を出さないつもりの様だ。


ネイザー達落ち着いていた3人が、残る5人を落ち着かせてから、其々、配置に着いた。


まあ、敗北した元勇者パーティーは6人、今の僕達は13人で、更に遠距離からボコボコにする作戦だ。

慌てていた5人も早々に落ち着いた。



と、云う訳で、ボス魔物戦の予行練習だ。


作戦配置は本番と同じにした。

先ず、僕1人のAチームは、扉を開けたら、左後方に下がる。

Bチームは、扉に向かって右後方から攻撃。

Cチームは中央最後方で、A、B、Cの3チームで三角形を作る感じの配置だ。

Dチームは、AチームとCチームの間、Eチームは、BチームとCチームの間に布陣する。


この陣形で廊下から扉の中の部屋へと攻撃しまくる感じだ。



今回の予行練習は、エレベーターホールから、廊下に向かって行うが、扉を潜らせて攻撃するのは一緒だ。



僕は、「じゃあ、行くよ」と言って、指で3、2、1、と、カウントダウンをしてから、エレベーターホール部屋の扉を開く!!


開いたと同時に一気に動き出す。


僕は左後方にジャンプして下がり、その横を、リーニーとオンレミッドの放った弾丸が通り過ぎて行く。

魔物も扉が開いたと同時に此方に駆けて来たが、弾丸の後を追う様に、風の砲弾と氷の砲弾が飛んで行き、更に飛ぶ斬撃達が追従して行く。



しかし、さすがはSランクの剣を極めたマスターオーガ。

弾丸も砲弾も斬撃も、時には躱し、時に弾いて、距離を詰めて来る。

「グオオオオオ…………!!」


なかなか進めない事に業を煮やしたのか、1体のマスターオーガが叫びを上げる。

すると、廊下に並んだ左右の部屋から、次々と魔物が現れた。


100体を超える数の魔物。

その全てがAランク以上の様で、中にはSランクの魔物も居る。


だが、完全に悪手だ。


此れなら、敵を狙う必要も無い。

撃って撃って撃ちまくれば、敵が勝手に喰らいに来る。


お互いに邪魔をし合った所為で、最初に居た4体のインバストゲットトゥローリーブレイドオーガも2体が死体の山に埋もれて行った。


仲間の死体を盾に近付いて来ようとする魔物も…………



「”穿て”!!“レヴォリューションマーダー”!!」


リティラが穿って、敵陣に風穴を開けて、盾ごと挽き肉にしてしまう。


そして、脇から近付いて来る魔物も、ティニーマとレアストマーセが的確に攻撃をして、結局、僕の出番は扉を開けただけだった。



「…………よし、廊下の敵は殲滅終了だよ。

じゃあ、BチームとCチームは、玉座の間以外の部屋の確認、DチームとEチームは魔物から戦利品の回収をして、魔物の死体は玉座の間の入り口付近に集めといて」



さっきの雄叫びで、玉座の間以外の部屋は全部の扉が開いたので、気配から魔物は殲滅出来たと思うが、罠を張る様な魔物だ。

何処に伏兵が居るかも分からないので、十分に確認は必要だ。



各部屋のチェックも問題無し、魔核に装備品も回収して、ついでに部屋の中に有った魔導具なんかも回収してから、魔物の死体を玉座の間の扉前に並べた。


ボス魔物が行って来ると云う、黒いナニカの攻撃を喰らって貰って、どんなモノか見極める為だ。


もちろん、そんな攻撃をされる前に倒してしまえれば問題無いが、相手は魔王とも言える魔物だ。

使えるモノは使って準備は万端にしておくに越した事は無い。


魔物の死体を並べた後は、その周囲に“イモータルウォール”で囲いを作って、お昼ご飯にした。


来た時には、慌てていた5人も、あの死体の山を片付けた後に、にこやかにご飯が食べられるくらいには既に成長している様だ。


お昼ご飯の後にはゆっくりとティータイムを取って休憩して、いよいよ、VS魔王のお時間だ!!





▪️▪️▪️▪️





「…………じゃあ、行くよ」



僕は、此れまでの人生で見て来た中で最も豪華な巨大扉の前で、後方に配置しているみんなを見る。


全員が息ぴったりで頷いたのを確認して、扉の方を向いて、左手を扉に掛けて、右手の指を3本立てる。

その指を2本、1本と減らして行き、握り込んだ瞬間に、左手に力を入れて、扉を一気に引いて開く。

扉は左右が連動している様で、僕が引っ張る左の扉と共に、右の扉も開いて行く。


徐々に広がる扉の隙間から見えた、玉座が在るべき床に座る美しい女性…………



光を全て吸い込んでしまいそうな美しく長い黒髪…………

優しさを湛えつつも、意志の強さも感じさせる美しい紅い瞳…………


身に付けているのは、ネックレスとブレスレットとリングのみ。

下着すら身に着けず、人魚座りをするその肢体は、完璧とも言える凹凸を見せ付け、世の全ての男性を魅了するかの様だ…………


なるほど、元勇者パーティー達が見惚れたのも、理解出来る。


だが、一度死んだ事の有る僕の警戒心は、この程度では誤魔化せない!!


あの美しく見える長い黒髪は、非常に危険だと、僕の中の何かが言っている。

あの美しく見える紅い瞳の優し気な雰囲気は、他者を完全に見下した、弱者に対する憐れみから来る目だ。



まあ、黒髪の美しさは、ペアクーレに劣り、紅い瞳の美しさは、リティラに劣り、プロポーションは、サウシーズに劣ると思ったから、ここ迄冷静に分析出来たのかも知れないけどね。


いや、違う違う。

僕の警戒心の高さが、冷静に分析させたのだ!!



などと思いつつ、僕は左後方にジャンプして下がる。


元勇者パーティーの話しでは此処で微笑んでから、壺を倒して攻撃して来たと云う事だったが、僕達パーティーは、微笑む時間すら与えない!!


僕が空中を下がっている間に、弾丸と砲弾が横を擦り抜けて飛んで行く!!



さすがネイザーだ。

ワルトルットゥ達の様に裸体に目を奪われたりせず、即座にトリガーを引いた様だ。


今回のパーティーでは、僕とネイザーだけが男だから、ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ、ネイザーの動きが遅れる可能性も考えては居たが、やっぱり真のイケメンは判断を誤ったりはしない様だ。



その後は、斬撃が後を追ってボス魔物に向かって行く。


しかし、弾丸も砲弾も斬撃も、ボス魔物には届かなかった。


突如左右から飛び出して来た、紅い壁が全ての攻撃を遮ったのだ。

その紅い壁は、攻撃を防ぐとゆっくりと構え直された。


紅い壁は、本来なら大楯と言うべき装備だろう。

しかし、装備者にとってはスモールシールドだ。


装備者は、リプロダクションエンペラーオーガ。

5mを超える巨体の赤い鬼神、不死身の悪鬼と恐れられるSランクの魔物だった。


『伝説の勇者』の物語にも出て来るその赤い鬼神が、2体同時に現れたのだ。



「……予想通りの伏兵だけど、よりによって、不死身の悪鬼か…………」


「ノッド様、一度撤退して作戦を練り直しますか?」


「いや、レアストマーセ。

このままで行こう。


良いかい、みんな!!

敵の攻撃パターンの可能性は3つ。


1つは、僕達が不死身の悪鬼を倒した瞬間の隙を突いて、黒いナニカで攻撃して来るパターン。

もう1つは、不死身の悪鬼の回復力を当てにして、味方諸共、黒いナニカで攻撃して来るパターン。


最後に、他にも隠し玉の必殺の攻撃方法を持っているパターンだ。


1つ目と2つ目のパターンを警戒しつつ、このまま攻撃を続けよう。

3つ目が来たら、撤退も視野に入れてくれ。


因みに、リプロダクションエンペラーオーガを早く倒す方法は、頭と左右の胸に在る3つの魔核を同時に壊す事だ。


難しければ、頭や胴体を吹き飛ばし続けたら、その内死ぬから」


「「「了解しました!!」」」


「ノッド様、私は攻撃の瞬間に距離を詰めてもいいでしょうか?

この位置からだと、“レヴォリューションマーダー”の攻撃で、胸と頭を含む様に撃てないので」


「…………そうだね。分かった。

攻撃する時には言ってね、リティラ。

ボスからの攻撃がリティラに行ったら僕がフォローするから」


「はい、了解です」


こうして、戦闘は続行されたのだが…………





ギイイイイ………………バタンッ…………



「……はあ……はあ……はあ…………」

「……全然……ダメ、でした…………」

「……申し訳、ありません、ノッド様…………」

「ノッド様、やはり、別の作戦を考える他、無さそうですね……」



結局、リプロダクションエンペラーオーガ2体の壁は厚く、攻略する事が出来なかった…………


最も攻略を妨げたのが、リプロダクションエンペラーオーガが僕が戦った時とは違い、盾で防御をする事だ。


なので、攻撃の殆どは防がれてダメージが碌に蓄積出来なかったのだ。

特に此方は、扉の外からの遠距離攻撃だけだから必ず同じ方向からしか攻撃が来ないので、向こうも非常に守り易いだろう。


向こうからは攻撃して来なかったので、ただひたすら攻めたのだが、突破出来なかったのだ。


その所為で、攻撃担当の者はクタクタになっており、防御担当の者はする事が無い状態だったので、S級代理官では、ネクジェー、B級代理官では、ルーツニアスとジアンヌだけが、全然疲れていない感じになっている。



「とりあえず今日は一旦帰って、ご飯とお風呂を済ませてから、もう一度、作戦を練り直そう。

ただ、明日の為に、この250階の部屋は全部潰しておきたいから、ネクジェーとルーツニアスとジアンヌの3人で扉を塞いで行ってくれる?


玉座の間の扉は僕が見張っておくから」


「「「了解しました!!」」」



こうして、初日は無傷だったが敗退したのだった…………

いや、間違えた、引き分けに終わっただった!!





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