第12章 魔都の支配者 1
第12章
魔都の支配者 1
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古代魔導文明の遺跡、元空中都市 魔都 ウニウン。
かつては、王都だったこの都市は、周辺諸国に在る遺跡都市よりも一回り大きな遺跡都市だ。
当然、街が大きければ魔導士も多く住んでいた。
ならば、多くの魔物が生まれたと云う事だ。
遺跡都市では、大きな遺跡都市程強力な魔物が居ると言われている。
其れは、元々強い魔導士程、強い魔物になり、その魔物が自らの進化の為に、多くの人間を襲い、多くの魔物を取り込んだ結果、強力な魔物が生まれたのだろうと言われている。
魔物には2種類居て、自らが強くなる為に他の魔物を全て駆逐して行く魔物と、強い集団を作る為に他の魔物を支配して行く魔物だ。
しかし、稀に両方をバランス良く行う魔物が居る。
その魔物は、自らを最強の状態で維持しつつ、全て駆逐するのでは無く、勢力の拡大も行うとても厄介な存在だ。
そして、得手してそう云う魔物程、登り詰めて行く。
古代遺跡都市のボスに迄至った魔物はこの稀な魔物が多いらしい。
魔都 ウニウンのボスもこのタイプだった。
王城や魔王城とも言われる、古代遺跡都市の中央に立つ最も高いビル。
此処は元々、その都市の支配者が居たビルで、魔都 ウニウンで言えば、ルニウメン国王が住み、行政が行われて居たビルだ。
その為、防衛も考えられてか、最上階への直通のエレベーターは無く、一定の階でまたエレベーターを探さなくてはいけない。
そして、最上階に君臨するボス魔物はエレベーターの各中継階に、配下の強力な魔物を配置して、防衛を行っていたそうだ。
“西の勇者 ワルトルットゥ”率いる勇者パーティーは、1ヶ月以上掛けて、この王城の攻略を進めていた。
そして、とうとう玉座の間と云われる、ボス魔物部屋があると思われる最上階迄、辿り着いた。
最上階にエレベーターから降り立ったが、他の階の様に魔物の洗礼を受ける事も無く、エレベーターの正面に明らかに他とは違う豪華な扉が有った。
廊下に並ぶ左右の扉を警戒しつつも、正面の豪華な扉へと向かい、意を決して、その扉を大きく開く。
すると、正面の本来なら玉座があったであろう床に、見た事の無い魔物が居た。
一言で、言うなら、“大柄な女性”だったそうだ。
3m近い身長と頭にツノの生えた人間の様な女性…………
オーガにも男性型と女性型が存在するが、見た目の違いは股間だけだ。
偶に歩き方や仕草で、女性型かな?と、思う事はあっても、基本は股間に有るか無いかだ。
しかし、そのボス魔物は、美しく長い黒髪に白く透き通る様な肌、一糸纏わぬその姿は、素晴らしいプロポーションで、たわわに実った双丘は、勇者ワルトルットゥをして、「Sランクだった」と言わしめる程だったと云う。
其れを目にした勇者パーティーの男性陣が若干前屈みになっている姿に聖女が冷ややかな視線を向けると、そのボス魔物は、ニッコリと本当に人間の様に微笑んだ。
更に前屈みが進み、若干内股になりつつある勇者パーティーだったが、相手は、魔都 ウニウンを統べるボス魔物だ。
笑顔の後に、側に有った壺の様なモノを倒した。
其れが、ボス魔物の最初で最後の攻撃だった。
倒れた壺の口から、大量の黒いナニカが溢れて来たのだ。
其れは一気に勇者パーティーへと迫り、足元を埋め尽くす。
黒いナニカの濁流にバランスを崩して、床に手を着いたのを見たボス魔物は、優しい笑みを一瞬で、邪悪な笑みに変えて、倒した壺を起こした。
すると、黒いナニカは、時間を巻き戻したかの様に、壺の中へと戻って行く。
其れと同時に、勇者パーティーの絶叫が響き渡った…………
戻って行った黒いナニカは、其処に浸かっていた勇者パーティーの面々の足や腕迄、一緒に持って行ってしまったのだ!!
しかし、偶然、前屈みになった仲間達から距離をとって居た聖女は、その黒いナニカの攻撃が届かず無傷だった。
聖女は、仲間の惨状を見て即座に玉座の間の扉を閉じ、苦痛を叫ぶ仲間達を担いで一気にエレベーターへと駆けた。
すると、先程通った廊下の左右の扉から、次々と魔物が溢れて来た!!
聖女キルシュシュは、自分の“ラッキーフィールド”が仲間達も守ってくれると信じて駆け抜けた…………
エレベーターに転がり込み、入って来ようとする魔物を倒して壁にし、なんとか下の階へと向かった。
しかし、隠れていた魔物は、最上階だけでは無かった…………
エレベーターを降りる度に、押し寄せて来る魔物。
此れまでのエレベーター乗り継ぎ階の魔物は全て倒した筈だった。
多少の魔物が他の階からやって来たとしても、溢れる程の魔物が偶然やって来るなどあり得ない。
全ては、ボス魔物の罠だったのだ。
聖女は必死に逃げて、エレベーターを降り、廊下を駆け抜け、また、エレベーターを降りる…………
繰り返し続けた結果、何とか、全員を連れてビルを出て、他のハンターに助けを求める事が出来て、勇者パーティーは一命を取り留める事が出来た…………
勇者パーティーから、魔都 ウニウンでのボス戦の話しを聞いた。
場所は役所の大会議室。
メンバーは僕とS級代理官のみんな、B級代理官のみんな、そして、説明をした勇者パーティーの6人だ。
一通り聞き終わって、僕は先ず、最も大切な質問をした。
「キルシュシュ、一体どうやって、この5人を運んだの?」
僕の質問に、5人の男性陣は、ゲンナリした表情で視線を逸らした。
しかし、質問されたキルシュシュ本人は、満面の笑顔だ。
「はい!!
実は5人の頭を無理矢理に、“ゼログラビティバック”に押し込んで、ひっくり返して運んだんですよ!!
此れも、ノッディード様のお陰です。
事前にノッディード様から、“ゼログラビティバック”が一部でも入っていれば機能するって云うお話しを聞いていたからこそ、思い付いた名案でした!!」
「…………そっか、良かったよ、キミ達の命を救う一助になれて…………」
僕達の会話を聞いた5人が、何だか、吐きたそうな表情をしている…………
唇と唇でも、触れ合っちゃったのかな?
「…………其れにしても、まさか、勇者パーティーが、美女に見惚れた所為で壊滅したとは以外でした」
「そうですね、美人は聖女様で見慣れていると思っていましたが、やっぱり裸だったからですかね?」
…………などなど………
勇者パーティーは、みんなに言われたい放題になっている。
そして、反論の言葉が無い様だ…………
やっぱり、美女の裸体に見惚れたのは事実らしい…………
「……まあ、大体分かったよ。
その人間っぽいボス魔物の部屋には、他に気になる事は無かった?
例えば、他の魔物が隠れられそうなモノが置いてあったり、怪しげな魔導具が有ったりとか?」
「…………いえ、特にそういったモノは…………」
「…………そっか…………
じゃあ、ぱっと見では分からないところに伏兵がいるのか…………」
「あの、ノッディード様。
通常、玉座の間には、ボスの魔物しか居ません。
扉を守る魔物はよく居るみたいですが、玉座の間の中にはボス以外が居たと聞いた事は有りませんけど…………」
「……いや、居るよ絶対に。
ウニウンのボス魔物は、配下を自在に操る様な魔物で、女性型なんでしょ?
だったら、出産の直前と直後には弱くなる。
オーガは比較的、繁殖力強めの魔物だから、そんな時を狙われた場合の対策で絶対に護衛を付けていると思うんだ。
ボスの魔物が玉座の間に1体だけで居るのは、空から降り注ぐ魔力をより多く自分だけが得る為だろうけど、其れは自分を脅かす魔物が新たに育ったら困るからだと思う。
でも、配下に待ち伏せをさせるくらい言う事を聞かせられるなら、ローテーションを組ませて、自分よりも強くならない様に調整すれば良い。
だから、絶対に玉座の間にも伏兵は居る」
ハッキリと言い切る僕に代理官組の面々は納得した様だが、ハンターの常識からか、元勇者パーティー達は半信半疑だ。
まだ、元勇者パーティーへの教育は始まったばかりなので、思考の柔軟さが足りない様だ。
まあ、其処は良いだろう。
其れよりも、ボス魔物への対策だ。
「と、云う訳で、ボスへの対策なんだけど…………」
「ノッディード陛下、少し良いだろうか?」
「どうしたの、ワルトルットゥ?」
「ノッディード陛下の噂は王都アルアックスでも聞いていたし、今まさに目の前に現実が在る訳だが、ボスの魔物は、本当にツノ以外は完全に美しい女性だった。
そんな相手をノッディード陛下は斬れるのだろうか?」
「え?もしかして、ワルトルットゥは美女は斬れないの?」
「「「え?」」」
僕の質問返しに、ワルトルットゥ以下、元勇者パーティーの男性陣が驚いた顔をする。
今、此処に居る男性は、僕と勇者パーティーの5人、そして、B級代理官のネイザーとネッグエンだ。
そして、ネイザーとネッグエンは、僕の考えが理解出来ている様で、普通に聞いている。
「あのさ、敵だったら、美女だろうが幼女だろうが斬るに決まってるよ。
もしかして、キミ達は暗殺者が美女だったら見逃すの?
幼女だったら説得でもするの?」
「え、いや、その………」
「あの、幼女の時だけオレを見ないで下さいよ…………」
「はぁ〜〜〜〜…………
キミ達、しっかりと学校で勉強してよね。
もちろん、脅されて無理矢理やらされてるなら、状況によりけりかもしれないけど、見た目を理由に戦えないなんて、困るよ?
もしも、美女だらけの軍隊と戦争になったらどうするのさ」
「其れはもちろん、戦いますが…………」
「ネイザー、美女だらけの軍隊と戦争になったらどうする?」
「そうですね。
具体的な作戦は別として、女性の方が男性に比べて持久力が高い傾向にあるので、短期決戦を狙った作戦を立てると思います」
「ほら。13歳、思春期真っ只中のネイザーだってこの解答だよ?
女性を大切にする事と、敵味方の区別を付ける事は全くの別物だからね?」
「「「はぃ…………」」」
僕の言葉と多数の女性陣の視線から、縮こまってしまった元勇者パーティー。
彼らにはA級代理官になって貰う予定なので、しっかりして貰わないと困るのだ。
後でみんなに彼らの教育を厳しめで行う様に言っておこう。
「じゃあ、話しを戻すけど、ボスへの対策だ。
先ず、中央ビルの攻略に関しては、1階から順次、全ての魔物を殲滅して行く形を取ろうと思う。
この時に、隠し部屋や隠し階段なんかもキチンと確認をしよう。
チームは基本3チームで、A、Bチームが戦闘チームで、Cチームがフォローチームだ。
AチームとBチームは別々の方向に向かって戦闘を進めて行って、Cチームは戦利品の回収とマッピングを担当して貰う。
月曜日の夜に出発して、火曜日から探索開始。
土曜日まで行って、土曜日の夜にはルベスタリア王国に戻って来る。
日曜日は休んで、また月曜日にはメンバーを入れ替えて再出発だ。
このペースで最上階の1つ下、249階迄進む。
そして、249階迄行ったら、もう一度1階から確認しながら登り直して、殲滅が確認出来たら250階の玉座の間以外の魔物を殲滅してから、ボス魔物に挑もうと思う。
ボス魔物と戦う前には、玉座の間の外に囲いを作って、謎の黒いナニカを堰き止められる準備をする。
ただ、そのナニカをボス魔物が自在に操れて、囲いを越えて来るかもしれないから、十分に注意は必要だ。
配置はその日のメンバーで考えるけど、基本、僕が扉を開けたら即退避するから、遠距離攻撃で、玉座の間の外からボスを攻撃しよう。
もしも、黒いナニカを囲いで全く防げなくて、遠距離攻撃が難しい様であれば、一旦撤退だ。
其れと、遠距離攻撃では倒せず、ボスが玉座の間から出て来ようとした場合には、扉から出た瞬間に僕が首を落とす。
もちろん、黒いナニカ以外にも危険な攻撃をして来る可能性も十分にあるから、基本的にはいつでも撤退出来る様に身構えて戦闘を行おう」
「「「はい!!」」」
力強く頷く代理官のみんな。
其れに対して元勇者パーティーは心配そうだ。
「…………やはり、あの魔物と戦われるんですよね……」
「うん、そうだね。
キルシュシュ、心配してくれるのは有り難いけど、此れは必要な事だからね」
「必要な事ですか?
ノッディード様にとって?」
「うん。ワルトルットゥ達の症状を見て、この魔物は倒しておく必要があると思ってたんだ。
ワルトルットゥ達の症状は、手足が切断されてしまったところは違うけど、ティニーマやハンジーズが患っていた病気の毒と同じ症状だったんだ。
この前、僕が手術した人の中にも何人も同じ症状の人が居た。
つまり、あの毒の元凶は、ボス魔物だと思うんだよね。
だから、元凶を絶っておきたいんだよ」
「…………アルアックス王国で、今後その病気で苦しむ人が現れない様にと云う訳ですね……」
「え?違うよ?
あの毒がアルアックス王国に利用されたら厄介だし、あの病気にまたティニーマやハンジーズが罹って悲しむところを見たく無いからだよ?」
「…………ええっと、そのお考えもとても崇高なお考えだと思います」
「まあ、其れにキミ達の話しを聞いて、ボス魔物を倒す理由がもう一つ増えたしね。
その魔物が人間っぽい姿をしている理由が分かれば、アエルゲインの研究の役に立つかもしれないからね」




