第11章 賢者の子孫 4
第11章
賢者の子孫 4
▪️▪️▪️▪️
ジャッジメントオーガ アエルゲインの話しを聞いた僕は、返す言葉を見つけられずに居た…………
「…………スマナイ、ヨケイナ、ハナシマデ、シテ、シマッタ」
「いや、僕もキミに掛けてあげられる言葉が見つからなくてごめん。
僕にも大切な人達が居るから…………」
「…………イヤ。ダレカニ、キイテ、モラエタダケデモ、ワズカニ、スクワレタ」
「そうか…………
ほんの少しでもキミの心が軽くなったんなら良かったよ。
僕を呼び止めたのは、誰かに話しを聞いて欲しかったから?」
「イヤ、ソレモアッタノダガ、ショウジキ、ケンキュウガ、イキヅマッテ、ヒサシイ。
サシダセル、モノハ、スベテ、サシダソウ。
ケンキュウニ、キョウリョクシテ、モラエナイ、ダロウカ?」
「……魔物を人間に戻す方法…………
僕に協力出来そうな事は思い付かないけど、具体的にどんな協力をして欲しいの?」
「ヨケレバ、アラタニウマレタ、マホウ。
トクニ、カイフクマホウ、ジョウホウガ、ホシイノダ」
「…………そうか……
アエルゲインは、知らないんだね、“サードストライク”の後の世界を。
今度は僕が話そう。
“サードストライク”の後に、世界がどうなったか。
ついでに、僕が此処に来た目的なんかもね」
そう言って、僕はお茶を入れ直すと、アエルゲインに語って聞かせた。
“サードストライク”の後、魔獣が凶暴化した事、殆どのドラゴンが理性を失った事、魔導士が魔物になった事…………
魔導士が魔物になった事で、新たな魔法も新たな魔導具も生まれて来ず、現代では魔導具は過去の遺産を探し出して、人々は生活している事。
“サードストライク”直後には、魔物を人間に戻す実験や研究なんかも行われたが、魔法の使えない人間達では、どうにもならずに直ぐに実験も研究も中止された事。
多くの魔導具が失われた事で、移動手段を失った人類の世界が一気に狭くなり、近隣の僅かな国家同士でしか交流が無い事。
僕自身も失われた魔導具の製造工場を求めて、この建物にやって来た事。
などを、本で得た知識を織り交ぜながら、伝えて行った…………
「…………ソウカ…………
スベテノ、マドウシガ、マモノニ…………」
がっくりと、肩を落とすアエルゲイン…………
アエルゲインの落胆も分かる。
安全の為にと従業員と家族までもをこのビルに集めた事で、このビルで、家族や同僚達に殺し合いをさせてしまったと知ってしまった。
そして、今後についても外の世界に可能性を求めても、其れは余りにも低い可能性だ…………
「アエルゲイン、僕はこのビルを自分の国に持って帰ろうと思っている」
「アア、カマワナイ。
ワタシハ、コノヘヤ、カラハ、モウ、デラレナイ、カラナ」
「その上で、たった1つだけ、僕からキミに希望を与えられる事がある」
「…………キボウ?……」
「ああ。此れは極秘情報だから無闇に言わないで欲しいんだけど、僕の国には、久遠の空の女王 ナエラーク ファースト エタニティスカイが住んでいる」
「!!!!ソレハ、モシヤ、『ファーストドラゴン』サマ、ナノカ?!」
「そう、『ファーストドラゴン』、『マザードラゴン』、『空の女王』。
その、ナエラークだ。
キミもこの場所から動けないけど、彼女もある場所から動く事が出来なくて、直接会う事は出来ないだろうけど、彼女は魔法の研究が好きだから、お互いにビデオの魔導具かなんかで情報を行き来させれば、もしかしたら、研究に光明が見えるかもしれない」
「!!ホントウカ?!
カノ、『ファーストドラゴン』サマガ…………」
「魔物を人間に戻す方法が見つかるかは分からないけど、協力はしてくれるよ。
彼女は僕の家族の1人だからね」
「カ、カゾク?!『ファーストドラゴン』サマト?!」
「うん、もちろん結婚してるとか、実は僕もドラゴンなんて変わった事じゃないよ?
僕と僕の家族も彼女もみんなが家族だと思っているって云う気持ち的なヤツだから」
「…………『ファーストドラゴン』サマト、ソコマデ、ココロヲ、カヨワセテ、イルトハ…………
ノッディードヘイカ、アナタノ、オココロヅカイニ、カンシャヲ。
ワタシニ、デキルコト、ナラバ、ナンナリト、オモウシツケ、クダサイ」
「うん。分かった。
もしも、魔物を人間に戻す方法が見つかったら、魔物を救えるかもしれないから、研究頑張ってみてね」
こうして、ジャッジメントオーガ アエルゲインが新たな国民となる事が決まった。
その後、みんなにも上がって来て貰って、ざっくりした話しと、アエルゲインをルベスタリア王国に一緒に連れて帰る事を話した。
そして、此処でまた、天才ペアクーレが炸裂する!!
「…………アエルゲインさんは、どんな事をしてでも、奥さんを元に戻したいの?」
「アア、タトエ、ナニヲウシナオウトモ、モドシタイ」
「その為だったら、ノッド様も裏切る?」
「ソレハ、デキナイ!!
ノッディードヘイカハ、ワタシノ、ココロヲ、スクッテクレタ、オンジンダ。
ミタメハ、マモノニ、ナロウトモ、ココロマデ、マモノニハ、ナッテイナイ!!」
ペアクーレはアエルゲインの鬼の瞳をじっと見詰めると、
「……分かった、信じる。
だったら、良い作戦を教えてあげる」
「イイ、サクセン?」
「そう。アエルゲインさんがどんな事にも耐えられるなら、右肩から左脇までを斬り落として、頭と魔核だけであの扉から出て、その後で、怪我回復ポーションで治せば下に出られる。
その扉と、螺旋階段と、会長室と、エレベーターの4回其れを我慢すれば、外に出られる。
そうすれば、ナエラークと直接研究出来る。
あ!!ナエラークのビルに入る時もだから、もっと回数は多かった」
「…………ペアクーレ、キミは本当に天才だな。
けど、ちょっと、キツくない?」
「私なら、ノッド様の為に、其れくらいはする!!」
「「「私も!!」」」
「あのさ、気持ちは嬉しいけど、万が一死んじゃったら、僕にもどうにも出来ないから絶対にしないでね」
「そうです。
S級の皆様に何かあっては、ノッディード様の悲しみは計り知れません。
そう云う事態になった時には、僕がその任務を全うしますので、無茶はお辞め下さい」
「いやいや、ネイザー、キミが死んじゃっても悲しいから無茶な事自体しないでよ。
キミ達も、手を上げなくていいから」
「グワァハッハッハ…………
ネイザードノ、キデンノ、ココロガマエ、カンプクシタ。
ワタシモ、ネイザードノト、オナジ、ココロイキデ、ノッディードヘイカニ、オツカエ、シヨウ。
ソシテ、ペアクーレサマ。
スバラシイ、ゴテイアン、アリガトウ、ゴザイマス。
ソノ、サクセンヲ、ゼヒ、サセテモライタイ」
「…………アエルゲイン、本気?
いや、魔物なら大丈夫な可能性は十分あるけど、魔物だって万が一って事があるよ?」
「あの、宜しいですか?」
「どうしたの、イデティカ?」
「ええっと、アエルゲインさんは、肉体的にはジャッジメントオーガですから、他のジャッジメントオーガで、何度か試してみてはどうですか?
其れと、もし、此処から屋上に出られるなら、“ミグレーション”に乗って地上に降りる事も可能じゃないですか?」
「なるほど、良いね、其れ。
ちょっと、2、300体くらい斬って試して来ようか」
「「「……………………」」」
驚いていたり、尊敬した様な顔だったり、うっとりしてたり、表情は様々だが、なんだかみんな固まっている…………
「あれ?どうかした?」
「ノッド様は本当に素晴らしい人だなと………」
「ええ、今日もとってもカッコいいです」
「はい、素敵です」
「濡れちゃいそう……」
「え?何が?」
「ノッディード様の優しさに皆様は感動されているのだと思います。
僕も感動しました。
今日出会ったばかりの、其れも魔物であるアエルゲインさんを心から大切に思っておられるお姿に」
「そりゃあ、アエルゲインも今日からルベスタリア王国民だからね。
守るべき国民に違いは無いから当然大切にするさ」
「……グウォォォォォ!!!!
ノッディードヘイカ!!アリガタキ、アリガタキシアワセ!!」
「じゃあ、ちょっと試して来よう。
Aチームの3人は、BチームとCチームに振り分けてくれるかな?」
その後、僕はあちこちで叫び回り、魔物を集めては、ジャッジメントオーガをどう斬るのが良いか試しまくった。
しかし…………
「…………結局、今日は120体しか試せなかったんだよね…………
途中から、いくら大声を出しても魔物が現れなくなっちゃってさ。
明日は、建物の中を探し回らないといけなさそうなんだ…………」
「あの、ノッド様、ちょっと良いですか?」
「なんだい、イデティカ?」
「ジャッジメントオーガだけで、120体も倒したって事は他の魔物も大量に倒されてますよね?」
「うん、結構倒したよ」
「1,000や2,000じゃ無いですよね?」
「うん、5,000以上は居たんじゃ無いかなぁ〜…」
「「「5,000?!」」」
「それじゃあ、魔都 ウニウンから魔物が全然居なくなって、他のハンターがどんどん中央区画にやって来て、街を荒らしてしまったら本末転倒になったりしませんか?」
「…………ええっと…………
ごめんなさい…………」
「じゃあ、ノッド様は罰として明日は“ハイスツゥレージセカンド”でお留守番で」
「ペアクーレ!!其れって、自分がお留守番だからでしょ!!ダメだからね!!」
「ティヤーロはいつも鋭い…………」
「とりあえず、アエルゲインさんから、コントロールルームの事も聞いて先に制圧はして置いたんで、ノッド様は明日、屋上以外からは出入りが出来ない様にして、ビル内の掃討を手伝ってください。
120体も試したんだったら、ノッド様の事ですから、cm単位で何処から何処までなら大丈夫かもう分かってますよね?」
「ふっふっふ………
甘いなティヤーロ。
既に個体差があっても1mm以下で魔核に当たらないラインを見極めたよ」
「…………だったら、何で明日もジャッジメントオーガを探そうとしてたんですか?」
「え?2、300体って言っちゃったから、最低でも200体以上は…………」
「ノッド様は時々天然さんですよね」
「え?サウシーズが其れ言っちゃう?」
「ノッド様!!
ジャッジメントオーガ狩りの目的は、アエルゲインさんの安全の為で、其れは達成出来たんであれば、本来の魔導具工場を手に入れる事に切り替えて下さい」
「いや、でも、2、300って…………」
「其れは、言葉の綾です。
そうですよね?ノッド様?」
「そ、そうだね。
言葉の綾ってヤツだね、間違い無いね」
「ですよね。
じゃあ、ネイザー、ルーツニアス。
今日探索出来た階の報告をノッド様にして」
「「はい!!ティヤーロ先生!!」」
ティヤーロの圧倒的な威圧感に、ネイザーとルーツニアスも思わず生徒だった時の先生呼びが出てしまっている…………
その後、報告を受けてから、明日の3チーム分担での作戦を決めて行った…………




