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箱庭の王様  作者: 山司
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第10章 勇者の敗北 1

第10章

勇者の敗北 1





▪️▪️▪️▪️





今日、11月11日は、ティニーマの誕生日だ。

せっかくなので、南方遠征の為に誕生日が祝えていないメンバーも誕生日祝いをした。


まあ、しかし、僕を含めた春から秋に誕生日が来る者は、どうしても、当分は当日に祝えない事が多くなる。


暫くは、ティニーマの誕生日に纏めて祝う感じになりそうだ。

今年も、リティラ、ペアクーレ、ハンジーズ、レアストマーセ、ティヤーロ迄は祝えたが、其処で南方遠征に向かったので、其れ以降のディティカ、イデティカ、僕、グレーヴェ、ネクジェーの誕生日祝いは出来なかったし、多分、来年は、レアストマーセとティヤーロも無理だろう。


ただ、これから先、家族が増えれば誕生日の日数も多くなる。

今の様に出来ない時は割り切って、出来る時に纏めてやるスタイルの方が楽で良い。



ディティカ、イデティカ、僕、グレーヴェ、ネクジェー、そしてティニーマの前にケーキが並んで、その上に蝋燭が揺らめいているのだが、ティニーマはどう見てもあんなにいっぱい蝋燭が並んでいるのが信じられないくらいに、今日も可愛らしい。


しかし、僕の視力は優秀なので、ティニーマのいっぱい並んだ蝋燭が2本足りない事にも気付いている。

溶けた蝋燭を触っても火傷をしないと全身で学んでいる彼女が素早く抜いたのではないかと思う。



もちろん、見なかった事にして、楽しくパーティーを行った。



明日からは、予定が目白押しだ。

先ずは明日には、地下高速道路が完成する予定だ。


現状エアポートタワーとの往復が出来る様に北線だけ使える状態だったが、明後日には全線で1日中利用テストを行なって、翌日には完全利用開始だ。

利用テストの日は“自由の日”なので、みんなとワイワイテストを行うつもりだ。


高速道路利用開始の更に翌日、15日には、C級代理官の認定試験を行う。


此れは、先月10月30日に行った学校の卒業試験に合格した者の中で、C級代理官になりたい者だけが受験する。


因みに、卒業試験の合格者は40人。

模擬テストに受かった受験資格者は全員が合格した。


そして、今回はその40人全員がC級代理官試験を希望している。

さすがに、此方の試験は全員が合格とはならないだろうが、まあ、今回不合格でも、今年に限っては、1月に直ぐもう一度試験があるので頑張って貰いたい。


次の日の16日は、僕もテストの採点を手伝って、17日には合格発表と共に、僕との個人面談だ。

あくまで面談であって面接試験では無いが、面談の内容が余りにも悪ければ、僕の采配で不合格にする可能性も一応有る。


因みに面談場所は、10階の謁見室だ。


あくまでも面談なので、ずっと跪かせて話す訳では無く、椅子に座って話すのだが、まあ、雰囲気作りと、謁見室を使ってみたかったからだ。


そして、18日には、演説用のホールでC級代理官の任命式だ。

その後、C級代理官の権限の付与を行なってから、各自、S級代理官であるみんなの下について貰う予定になっている。


万が一、全員がC級代理官試験に落ちた場合には、みんなと残念会をする予定だ。


次の日の19日には病院等の建設予定の建物の設計を行って、20日には、みんなと牧場にピクニックだ。


1日しっかり楽しんだら、翌日からは各建物の建設を始めて行く流れになっている。





「…………来年は工場が動いて無くても、大型エレベーターが動いていればエレベーターだけでも持って帰ろう…………」


そう呟きながら、僕は地下高速道路中央ターミナルに続く階段を、“エアーバス”を片手に降りていた。


賢者 ウィーセマーの遺産には多くの魔導具が有り、今迄は特に不足するモノを感じなかったが、さすがに“エアーバス”や“エヴィエイションクルーザー”を上げ下げ出来る程の大型エレベーターは無く、いつもの“ゼログラビティバック”運搬法で、運んでいるのだが、いかんせん、この方法だと僕もエレベーターには乗れないので、階段を往復するしか無いのだ。


唯一の救いは、数の多い“エアーカー”がエレベーターに乗せられる事だろう。


此処中央ターミナルは、ルベスタリア王城の南西に位置し、10階建ての建物の地下に在る。

10階建てではあるが、1階と2階は高さが7mあり、其れ以上の階も各階3mある。

此れは、“エアーカー”や“エアーバス”の駐車や技術的に可能で有れば、修理なんかも出来る様にする為だ。


そして、地下1階は待合スペースと事務所スペースが有り、地下2階が一気に深くなって、広い駐車場の周囲を円形の道路が囲っている様な構造の中央ターミナルになる。


中央ターミナルからは、東西南北に向けて真っ直ぐに6本の道路が伸びていて、降りの“エアーカー”用、“エアーバス”用、代理官専用と並んで、昇りの代理官専用、“エアーバス”用、“エアーカー”用となっている。


当面は代理官専用以外は使わないだろうが、将来的には、30分に1回くらいの“エアーバス”の運行を考えている。


因みに、“エアーバイク”の高速道路での使用は止めておいた。

ちょっと、命の危険がありそうだったからだ。


ただ、“エアーバイク”は折り畳んで“エアーバス”に持ち込めるので問題無いだろう。



12往復の“エアーバス”運びが終わって、“エアーバス”搬入用に開けていた穴を塞いで、ルベスタリア王国の交通網の基礎になる予定の地下高速道路が完成した。



「…………出来たぁ〜……」


「お疲れ様です、ノッド様」


「ああ、リティラ。

今日もナエラークのところに行くのかい?」


「はい!!

ノッド様のお陰で、20分で行ける様になったので、夕食の当番が無い時は出来るだけ行こうと思って……」


「そうか。

此れから数日、僕もリティラも忙しくなるだろうから、ナエラークに急ぎの要望が無いか聞いといてくれる?」


「はい、分かりました。

あ!!そう言えば、最近、ノッド様が全然来てくれないって、ちょっとだけ寂しがってました」


「そうなの?

ああ、北に向けて工事してた時は続けて会いに行ったけど、他の方面の工事になってからは行けてないなぁ〜……

リティラ、もし良かったら、僕も今から一緒に行ってもいいかな?」


「ええ、もちろんです。

ナエラークもきっと喜びます」


「じゃあ、行こうか」



その後、僕はナエラークのところにリティラと一緒に行って、暫く、話しをして帰った。

ナエラークは僕の来訪を檻が無ければ抱き着いて来たんじゃないかと云う程、喜んでくれて、もうちょっと頻繁に彼女に会いに来ようと思った。





▪️▪️▪️▪️





「……ルーツニアスです、宜しくお願い致します」


そう言って、頭を下げて、僕の向かいの一段低い椅子に座るルーツニアス。

彼女は以前子供達にリーダーを任せた時の15人の内の1人で、この度、C級代理官試験に合格した新たな僕の代理官だ。


銀髪に銀の瞳の知的な雰囲気の美少女で、13歳とは思えない程、一部の発育が良い。


本来なら、国王である僕の前では跪くのが普通だが、今日は個人面談なので、本音で喋って貰える様に、椅子を準備して、名前を名乗ったら僕が勧めなくても席に着く様に前以て全員に言ってある。



「じゃあ、ルーツニアス、面談を始めよう」


「はい、お願い致します」


「先ず、代理官になろうと思った理由は?」


「はい、命の恩人であるノッディード様に最も御恩返しが出来るのは、代理官だと思ったからです。

私もレアストマーセさんの様なノッディード様をお側で支えられる女性になりたいからです」



「……レアストマーセを目標にしてるの?

それって、法律の先生を目指したいって事?」



確かに、法律の先生は、絶対に代理官がなる事になっている。

ただ、それについては代理官になってから知る事なので、現状代理官を目指す理由では無いと思うんだけど…………



「いえ、レアストマーセさんの様に、どんな危険な場所でもノッディード様のお供が出来る様な強い女性になりたいんです」



ルーツニアスは、パッと見、線の細い感じの華奢な雰囲気だ。一部以外は。

なのに、強い女性を目指してるのか?

いや、自分に無いモノだからこそ目標にしてるのか?


まあ、何方であってもレアストマーセを目標にしていると云う志しは良い事だ。



「なるほど…………

なら、ルーツニアスは代理官にとって1番大切な事は何だと思う?」


「其れはもちろん、ノッディード様の御心を理解して全てを捧げる事です」



僕の考えを分かってくれる事は確かに大切だ。

でも、何だか言い方がアレだな…………


「じゃあ、2番目と3番目は?」


「2番目はノッディード様の御心を乱す者を赦さない為の強さと、3番目は何があってもノッディード様を御守り出来るだけの強さです」



…………強さ、2回出て来たけど、この子もしかして、脳筋なの?


「そう…………

最後にどんな仕事に就きたいか希望はある?」


「ルベスタリア王国軍で、ノッディード様の警護担当が希望です」


「分かった。

希望通りになるかは今後のルーツニアスの頑張り次第だと思うけど、ちゃんと覚えておくよ。

じゃあ、下がって、次の子を呼んでくれるかな」


「はい!!ありがとうございました!!」



ルーツニアスが出て行った後、僕は後ろのレアストマーセを見た。

前半の面談には、レアストマーセとイデティカとネクジェーが参加している。


「ねえ、レアストマーセ。彼女って凄く強さに憧れてる?」


「そうですね、確かにそう云う傾向の強い子だと思います。

私のところには、法律の勉強では無く、体術の学校での授業以上の訓練方法を聞きにきました」


「そっか…………

じゃあ、彼女はペアクーレと相談して、軍に行って貰っても良いかもね」


僕がそう呟くと、ノックの音が響いて、次の子が入って来た。



「エニットです。

宜しくお願いします」



エニットは水色の髪に黒い瞳の大人しい雰囲気のほっそりした少女だ。


「じゃあ、エニット、面談を始めよう」


「お願いします」


「じゃあ、エニットが代理官になろうと思った理由は?」


「レアストマーセさんみたいに、法律を何よりも大切にする人になりたかったからです」



レアストマーセ、人気だな。

其れと、この子は法律を守る姿に憧れているようだ。



「じゃあ、代理官になって法律の先生を目指したいのかな?」


「はい、法律の大切さをみんなに伝えて、ルベスタリア王国を犯罪の無い国にしたいと思ってます」


「だったら、法律の担当では無く、代理官自体として、1番大切な事は何だと思う?」


「ノッディード様のお考えと、ノッディード様の目指すルベスタリア王国を理解する事だと思います」


「なら、2番目と3番目は?」


「2番目は法律を遵守して、みんなの規範になる事だと思います。

3番目は、ルベスタリア王国を守れる盾になる事だと思います」


「分かった。

じゃあ、下がって、次の子を呼んでくれる?」


「はい、ありがとうございました」





と、こんな感じで面談を行った。

ハッキリ言って、別に大した事を聞いている訳では無い。


しかし、大きな意味が有る。


試験の最終段階としての面談だ。

合格したいが為に、言葉を取り繕ったり、その場凌ぎの聞こえの良い言葉を言う可能性もある。

その程度の事を悪とは言わないが、そういった子には、B級への昇格は無い。


C級の代理官はいわば小間使いだ。

代理官ではあっても、権限も殆ど無いし、決定権は何も無い。


しかし、B級からは権限も多く、採決権が有る。

なので、優秀な小間使いとして働いて貰うのか、ルベスタリア王国の運営の一部を任せられる可能性があるのかの篩に掛ける為の面談だ。



僕は、ポーションによる感覚の強化で、嘘ならまず間違い無く分かるし、僅かな誤魔化しも殆ど分かる。


だから、この面談は内容そのものでは無く、僕を前に一切の誤魔化し無く、本音を言えるかどうかの面談なのだ。


今回、C級代理官試験を受けた40人の内、合格者は25人。

その中には、例のリーダーを務めた15人は全員入っていた。


そして、嬉しい事に、今回面談を行った25人は全員合格だった。

ちょっと、脳筋かな?と思った子や、僕に対して女性としての売り込みの強めな12歳も居たが、其処はまあ、問題無い。




翌日の任命式では、此方も初使用の演説用ホールで、25人の名前を1人づつ呼んで、今後、代理官の制服となる黒に近いチャコールグレーのローブを渡して行った。


このローブは、“サドゥンガードローブ”と云う魔導具で、突発的な衝撃から自動で守ってくれると云うモノだ。

代理官は全員一定の戦闘訓練はさせるが、ティヤーロ達S級代理官の様に、しっかりとしたポーション訓練を行うのはA級に成れた者だけだ。


なので、もしもの時の保険としての装備だ。


因みに、S級とA級の代理官に制服は無い。

もしかしたら、式典的な事をするのに作るかもしれないが、今のところ予定は無い。


任命式の後は、権限の付与を行った。

C級代理官には、21階から23階のC級代理官宿舎の1室が与えられて、26階から29階の物資備蓄庫と30階の代理官武器庫への移動権限が与えられる。


新任C級代理官達の、自分の部屋を貰った喜び様と物資備蓄庫の広さと物資の量を見た時の驚きの表情はとても良かった。


生活に必要なモノは物資備蓄庫から持って来ても良いルールだが、必ず持って行く前に役場に持って行くモノの報告が必要だ。

此れは代理官としての勉強を此れから行う中で学ぶ事だが、その前に知らずに持って来てはいけないので説明をしておいた。


明日から1週間は、ティニーマの下、代理官のみの法律を学んで行く。

此れは、権限を持つ代理官だからこその法律で、一般の人間は知らない事だ。


そもそも、一般の人間は、ルベスタリア城の10階以上には立ち入れ無いので関係無い事も多い。

逆に関係の有る部分では、トラブル等が有った時に、代理官に何処までの決定権があるのか等だ。


しかし、此れについても一般には公開しない。

法律を掻い潜ろうとした時に、C級代理官になら見つかっても大丈夫だと思わせない為だ。


C級代理官は小間使い的な存在だが、一般人には舐められて貰っては困るからだ。




そういった話しを簡単にして、各自、現在住んでいる7階の一時宿泊階からの引越しをして貰って、その後は、21階のC級代理官宿舎の談話室で、就任祝いパーティーを行った。

C級とB級の宿舎階には、この談話室と大浴場が在る。

A級やS級の階に無いのは、A級、S級には38階にサロン階が在るからだ。


因みにパーティーは余り長くは続かなかった。

殆どの子が、初めて飲む酒にダウンしたから早々にお開きになってしまったのだ。




それからは、僕は建設ラッシュの日々に入り、新人達は勉強期間を経て、各自の担当で奮闘して行ったのだった…………




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