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箱庭の王様  作者: 山司
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第8章 移民と魔都と 4

第8章

移民と魔都と 4





▪️▪️▪️▪️





ルベスタリア王国、王都ルベスタリア、ルベスタリア王城の城内には、少し活気が出て居た。


今年の移民は110人、其れも全員が10歳前後の移民だ。

僕の下に来てから食事を満足に取れる様になり、衰弱していた子供達も元気になり、僕の帰還よりも前にルベスタリア王国に来て居た子供達は、既に元気過ぎるくらいになっている。


最初と2番目に来た子供達は、もう、料理や家畜の世話も始めていて、此処での生活にも慣れて来た様だ。




子供達の生活サイクルは、先ず朝6時前後に起床。

身支度を整えて、7時迄に聖堂に集合する。


聖堂は、5,000人分くらいの長椅子が並べられ、正面に僕の写真、その左側にティヤーロ達10人の写真、右側にルベスタリア王国憲法がデカデカと並んでいる。


其処で、7時から憲法の唱和を行って、5分間のお祈りをする。

祈るのはもちろん、僕への感謝の祈りだ。


其れから、各分担に分かれて、朝食作りと掃除を行って8時に朝食だ。

朝食後は各自で片付けを行って、9時から学校での勉強だ。


勉強は3時間、12時まで。12時からは料理担当、農業担当、畜産担当に分かれて準備を行なって、13時に昼食。また各自で片付けて、14時からは各担当で作業だ。


料理担当は、夕食の準備と翌日の下拵え。

農業担当は、野菜や果物の世話と農業用魔導具の勉強。

畜産担当は、家畜の世話と畜産用魔導具と魔獣についての勉強。


各作業は18時迄、18時からは夕食を食べて片付けたら自由時間だ。

この生活を学校を卒業する迄行う。

卒業には試験があって、合格する迄は卒業出来ない。

そして、卒業しなければ、自立も就職も恋愛、結婚も禁止だ。


此れは、今後やって来る大人の移民も、後々生まれて来る子供も全員が共通で、逆に学校さえ卒業すれば、ルベスタリア王国では成人として扱われる。

此れが出来るのは、子供でも出来る国営の仕事が十分に有るからだ。



勉強の内容は、文字の読み書きに計算と法律を中心に学び、其れと共に剣術、体術の授業も有る。

卒業試験は此れらがキチンと身に着いているかの試験で、武術に関しては苦手でも、キチンと訓練方法が身に着いていれば合格だ。


賢い子なら、10歳前後でも卒業の可能性は有るだろうと思っている。



一応、日々の作業に給料も有って、1日で2,000ルーベだ。

ルーベはルベスタリア王国のお金の単位で、1ルーベがアルアックス王国で使われている1アルと同じくらいになる様な物価調整をするつもりだ。


現在は全員が支給されたモノしか無くて、貯金をしているだけだが、卒業生が何人か現れたら、売店を任せて、買い物が出来る様にするつもりだ。





こんな感じの日々を1週間、観察して、その中で、朝のお祈りにサプライズ登場してから僕の不老不死をぶっちゃけたりして過ごし、今日はみんなに、“魔都 ウニウン遠征”について話す為に集まって貰った。




「…………と、云う訳で、一度、魔都 ウニウンを確認しておこうと思う」


僕は、先ず“西の勇者”について説明して、飛行可能魔導具や空中都市の復活が、ルベスタリア王国の安全を脅かしかねない事を説明した。


みんな、一様に真剣な表情だ。

ハンジーズも真剣な表情だ。可愛い。


少し間を置いてから、続ける。



「だから、予定よりも大分早く移民が終わった事と、この1週間で、子供達も問題無さそうだったから、今年の内に行ってしまおうと思う。


予定では20日くらいで帰って来るつもり、9月中に戻って来れれば雪の心配も無いから」



僕が言い終わると、シュバッとリティラが手を上げた!!


「はい、リティラ」


「今の言い方だと、もしかしてノッド様1人で行くんですか?」


「え?うん、そのつもりだけ…………」


「私も行く!!」


「え?」


リティラの質問に答えていると、ペアクーレが凄い勢いで立ち上がった!!

其れを見て、ティニーマがニッコリ笑って、ペアクーレを座らせる。


「ノッド様。私も着いて行きたいのは山々ですし、みんな着いて行きたいと思います。

ただ、現状、全員が行くのが難しいのは、みんな理解しているので、せめて何人かは、連れて行って頂けませんか?


ノッド様の強さは全員知っていますが、其れでも、心配しないと云う事は出来ません。

なので、“愛され税”だと思って、お願いします」


「……“愛され税”って。そんな事言われたら断れないじゃないか。

ティニーマには敵わないな。


分かったよ。

でも、あくまで子供達への教育の方が大事だから、2人だけね」


「あ、あの!!だったから、レアストマーセさんとペアクーレを連れて行って下さい!!」


今度は、ティヤーロが手を上げた。

自分が行きたいとは言わず……


「2人なら、みんな納得すると思いますし、少しでも安心だから」


と言った。


「……強い順って事?

でも、この2人が抜けたら、ティヤーロとティニーマの負担が大きくなるんじゃない?」


「其れは大丈夫です。

食事に関しては、お母さんとペアクーレは、もう、見ている事が殆どだし、法律の授業はまだ暗記させているだけで、内容を教えるレベルの子は少ないですから」


「…………確かにね……

ティニーマも大丈夫そう?

あと、他のみんなは其れで良い?」


「私も大丈夫です。

其れに、レアストマーセとペアクーレの2人なら安心出来るって云う意見にも賛成です」


みんなを見回すと其々頷いて返して来る。

最後にレアストマーセとペアクーレを見ると、力強く拳を握って立ち上がり、


「私がノッド様には指一本触れさせない!!」

「私もだ!!」


と、みんなに宣言した。

みんなが2人に拍手を送る中、僕は、『なんだかお姫様にでもなった気分だなぁ〜…』と、どうでも良い感想を抱いていた…………





▪️▪️▪️▪️





魔都 ウニウン


トレジャノ砦や王都アルアックスから南西に、フュンティル荒野を抜けて、フュンティル砂漠を進むと、砂漠のど真ん中に忽然と現れる、高層ビルの森だ。


古代魔導文明時代の都市で、何十階も有るビルが所狭しと立ち並び、中心部には100階を裕に超えるビルが聳え立っている。


永い年月と跋扈する魔物の所為で荒れ果てては居ても、その破壊不能なビルの群れだけが、今尚この都市が生きている事を伝えている。




王都ルベスタリアを出発した僕とレアストマーセ、ペアクーレの3人は、先ず、王都アルアックスに向かった。

其処で、現在集まっている魔都 ウニウンの情報を受け取ってから、砂漠越えを行った。



狼弾会の集めた情報では、ウニウンも僕の知る一般的な古代遺跡都市と同じく円形の都市で、ハンターギルドでは、この都市を東西南北と中央の5つのブロックで分けているそうだ。


そして、北部と東部は既にほぼ完成に近い地図が有り、探索も終わっていると言える程進んでいるらしい。


現在ハンター達は、南部と西部を中心にする者が殆どで、凄腕と言われる一部の上位ハンターが中央部の探索をしているそうだ。


理由は簡単で、中央部の魔物は東西南北に比べて異常に強いから。

中央部の魔物が強いと云うのは何処も似たり寄ったりで諸説あるが、1番有力なのは、魔物にも強さと云う身分が有って、上位の魔物程、中央部の魔力の濃い場所に住むからだろうと云う説だ。



中央部の情報に関しては、残念ながら得る事がまだ出来ていなかったが、上位のハンター達は簡単には情報を出さないだろうから、まあ、仕方がないだろう。


元Aランクハンターのレアストマーセは何度も中央部の探索をしていたが、活動としてはやはり身入りの良い、生活用の魔導具を集める事が殆どで、何処に何が有るかでは無く、荒れ果てた元民家から使えるモノが無いか探すといった行動をしていた様で中央部ではあっても行った事の有る場所は殆どがマンションだった。


ハッキリ言って、僕の欲しい情報では無い。

強いて言うなら、レアストマーセの行った事の有る場所には確認に入らなくても済むくらいのモノだった。




そんな訳で、僕達はグイグイと魔都 ウニウンを進んでいる。


砂漠同様にこのウニウンでも、地上を進んでいる。

砂漠では空飛ぶ魔獣を警戒して、此処ウニウンでは、ビルの窓からの攻撃を警戒してだ。


フォーメーションは僕が先頭で左後ろにレアストマーセ、右後ろにペアクーレだ。


ハンターが少ないと聞いていた北部と東部の間の道をグイグイ進んでいる。

ハンターが来なくなって長いからか、結構な数の魔物が襲って来ているが、殆どCランク程度なので、僕が指鉄砲を向けて、雷の槍や風の槍を撃っては頭を吹っ飛ばして、止まる事無く進んでいる。


因みに、この雷の槍と風の槍は、左右の人差し指に付けた指輪の魔導具の効果だ。

左が“雷環ver3”で、右が“風環ver3”だ。

“雷環ver3”が、“雷の槍”、“落雷”、“放電の球”の魔法が放て、“風環ver3”が、“風の槍”、“風の刃”、“飛翔”の魔法が使えるとても凄い指輪だ。

唯一の弱点が、威力の調整が出来ない事で、人間相手だと殺してしまう可能性が高過ぎて余り使えない事だ。



しかし、相手が魔物なら容赦は要らない!!

僕はビシバシ魔法を撃って、次々魔物を倒して、ドンドン進んでいるのだ!!





「ノッド様。睡眠の時間と順番はどうしますか?

流石に魔都 ウニウンでは、いつもの様に全員眠るのは危険だと思いますから……」



夕方になって、僕達は早い段階で元マンションだと思われる一室に入ってキャンプの準備を始めた。

此処は、中央部がもう見える場所で、此処を拠点に明日、明後日は探索をする予定だ。


普段から愛用している僕のテントは魔導具で魔獣を遠避ける機能が付いている。

なので、今迄のキャンプではみんな揃って気にせず寝ていた。


しかし、魔物も遠避けるとは限らない。

レアストマーセの言う警戒は必要だろう。



「そうだね、魔物にはテントの効果が無いかもしれないからね。


じゃあ、2人の内どちらかが先に4時間寝て、もう1人がその間、僕とイチャイチャして、で、次は入れ替わって4時間、最後に僕が4時間寝るから、2人は2時間づつ交代で寝るって云うのはどう?」


「じゃあ、其れで」

「え?!いや、ペアクーレ!!

あのですね、ノッド様。此処ウニウンには、夜はゾンビ系やレイス系の魔物が出て、魔物の数が増えます。

なので、その分夜の方が危険なのです。


其れに、レイス系の魔物は、魔核以外は壁を擦り抜けるので、夜番の者は外で見張っておかなければ何時襲われるか分かりません」


「…………なるほど、レイス系は壁を擦り抜けるのか…………」


「はい、なので……」


「だったら、テントの外でイチャイチャしよう!!」


「でも、ノッド様。

其れだと声が響いて魔物が寄って来るんじゃ……」


「其処は声を我慢する方向で……」


「無理!!」

「無理です!!」


「「「……………………」」」


「どうしよう…………」


「ノッド様、せめて魔都 ウニウンを出る迄は…………」


「3日も?!」


「ノッド様、其れなら昼間に…………」


「ペアクーレ!!其れじゃあ、探索が出来ないだろう!!

其れに、ノッド様、明後日には此処を出る予定ですから、今夜と明日だけです。


もしも、其れが理由でノッド様に何か有ったら、私は皆に顔向け出来ません!!」


「…………ごめんね、レアストマーセ。

分かったよ。今日と明日は我慢するよ。


じゃあ、レアストマーセ、僕、ペアクーレの順に4時間交代で見張ろう」


「あの、其れでは真ん中のノッド様が、途中で起きる分負担が大きくなってしまいます。

真ん中は慣れている私が…………」


「いや、そもそも僕は普段から不規則な生活に慣れてるから問題無いよ。

2人とも、僕が一瞬で寝ちゃうとこ見た事あるでしょ?」


「ええ、確かに…………」

「ノッド様は寝始めたら早い……」


「でしょ?だから、心配要らないよ。

其れに、僕だけ男なんだから、カッコ付けさせてよ」



渋々頷く2人を前に、僕は宣言通り、一瞬で寝てみせた。

2日間のお預けを喰らった僕としては、中途半端に我慢するよりも寝てしまう方が良い。


結局、その夜は何事も無く過ぎて、翌朝、本格的に探索を開始する。

此れから先の中央部にはAランクの魔物も多い。

僕達は気を引き締めて、出掛けたのだった…………






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