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箱庭の王様  作者: 山司
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第8章 移民と魔都と 3

第8章

移民と魔都と 3





▪️▪️▪️▪️





新ウルフバレットとの会合の翌日に王都アルアックス滞在メンバーには直接、トレジャノ砦のレアストマーセとディティカとルベスタリア王国のイデティカとペアクーレには伝書鳩で、狼弾会が僕の傘下に入った事を伝えた。


現在行って居る移民の人選は、狼弾会のテリトリーに関しては狼弾会から孤児の情報だけ貰って僕が見に行き、他のみんなには、其れ以外の地域での孤児を探して貰う様にした。



その後、狼弾会からの情報が大きく移民は次々と増えて行き、7月7日に第2陣のティヤーロとリティラがルベスタリア王国に戻って行くと直ぐに、7月15日には第3陣のティニーマとグレーヴェがルベスタリア王国に戻った。


そして、今日、7月16日。

今日は以前約束したサウシーズのご褒美のデートを敢行する運びになった。

ハンジーズはネクジェーに預けて24時間2人っきりのデートをする予定だ。


本来なら8月に入ってから行う予定だったデートだが、予想以上のペースで人選が進んだ為に、少し早く行う事となった。



「ごめん、待たせちゃった?」


「いいえ、今来たところです」


と、云うお決まりのセリフからデートスタートだ。

因みに此れは予定調和だ。


サウシーズから、「では10時に中央広場の噴水の前で待ち合わせで。私は9時半から居ますけど、決して其れより早く来ちゃダメですからね」と、言われていたからだ。

デートっぽさの演出だ。


但し、デートっぽく無いところと言えば、僕が娼館から直接此処に来た事だろう。

予定よりもかなり早いペースで移民計画が進んでいるので、1日も無駄に出来ないのだ!!



今日は相棒の“エアーバイク”“ウィフィー”にもお留守番をして貰って、サウシーズと腕を組んで歩く。


僕はいつも通りの白シャツにシルバーの胸当て、黒いズボンに刀を下げて、黒いコートを羽織った格好だが、サウシーズも白のブラウスにオレンジの膝下スカートに標準装備の空色のローブと云う余り普段と変わらない格好をしている。


多分、“普通のカップル”がコンセプトなのだろう。



「何処か行きたいところはある?」


「じゃあ、お洋服を見に行って良いですか?」


「もちろん。じゃあ行こう」



その後、婦人服店に2店舗行って、サウシーズが気に入ったモノを数点買って、サウシーズが泊まるホテルに届けて貰う様にした。


もちろん、僕が買ってあげた。

まあ、サウシーズが持っているお金も僕が渡したモノだが、“普通のカップル”がコンセプトだ。


その後、最近人気だと云うレストランに入って昼食を食べて、また買い物に。


しかし、今度は下着屋だった。

サウシーズが小声で、「今夜のご希望がありますか?」と、聞いて来たので、思わず真剣に吟味しそうになってしまったが、レアストマーセの時のトラウマが蘇り、「サウシーズの目利きに任せるよ」と、其れっぽい事を言って外で待つ事にした。


その後は美術館に行った。

実にデートっぽい。


そして、其処で出会ったのが…………



「此れは…………」


「凄く綺麗ですね…………」


其れは1枚の大きな絵画だった。

ワイドラック山脈と思われる山々と遥かに高い空が描かれていて、そこに1体のドラゴンが優雅に飛んでいる。


そのドラゴンは純白で、黄金色の瞳以外、一切の色を失ったかの様な透明な雪の様な白…………



…………僕をルベスタリアへと誘ったドラゴンだ…………



あのドラゴンは僕の運命を変えたドラゴンだ…………


あの時、魔境レードウィーン大森林にあのドラゴンが来ていなければ、僕はあんな大森林の奥地まで行くこと無く、魔獣に喰われていただろう。


あの時、ドラゴンに連れて行かれていなければ、僕が不老不死になる事も、賢者 ウィーセマーの遺産を見付ける事も無かっただろう。


そして、其れは今の僕にとってかけがえのない、みんなとの出会いも無かったと云う事だ…………



「ノッド様?」


「ああ、ごめんね。

あのドラゴンはね、僕にとって特別なんだ。

いつか、その時が来たら話すよ…………」



僕はサウシーズと出会わせてくれたドラゴンに感謝しつつ、優しく微笑み掛けた…………




サウシーズとのデートは24時間の約束だったが、2時間程オーバーした。

僕が眠かったからだ。

眠りについたのが、陽が昇り始めてからなので致し方無いと言えるだろう。


しかし、お利口さんなハンジーズは、最上機嫌のサウシーズに優しく微笑んだだけで、文句一つ言わなかった。





▪️▪️▪️▪️





7月20日の夜、サウシーズ、ハンジーズ親子とネクジェーが王都アルアックスを経った為、王都に残るのは僕だけになってしまった。



移民の運搬は、王都アルアックスで移民対象の子供が見つかると、先ず深夜出発、翌朝着でトレジャノ砦に移動する。此れは順番に行っていたが、今日からは僕1人だ。


そして、トレジャノ砦では、レアストマーセとディティカが、子供達の世話を引き継ぐ。

そのまま、トレジャノ砦で夕方まで眠ってから王都に戻る。

深夜に到着してから朝まで眠って、また、移民探しに参加する。


其れを繰り返して、砦の人数が10人又は20人集まる時点で、ペアでトレジャノ砦に向かって、其処で一泊、翌朝早朝に各“エアーバイク”に10人づつ乗せて、ワイドラック山脈を登りルベスタリア王国を目指す。


と云う動きをしていたのだが、狼弾会の情報だけで、既に予定の100人を余裕で超えるので、僕の移民探しは1日置きに行う事にしている。

そうで無ければ、娼館に泊まる日が無くなるからだ。


最終便の今回は、僕も居るので30人の予定だが、5人づつ6回、トレジャノ砦に向かう12日掛けるプランだ。


なので、今日はお休み。

僕は珍しく一般層のエリアをうろうろしていた。


すると、見慣れない色の“エアーバス”に人集りが出来ていた。


普段見掛ける“エアーバス”は、王都アルアックスからアルランスの街に向かう軍隊所有の黄土色と王都アルアックスの街の中を巡回する赤色、そしてアルコーラル商国と往復する緑色の3色の“エアーバス”だ。


今見える“エアーバス”は白地に青い模様の入った“エアーバス”で、人集りはその中を覗こうとする者や新聞記者の様なカメラの魔導具を構える者達だ。


僕は通行人の中でも比較的綺麗な女性のグループに話し掛ける。



「ねえ、アレって何の人集りなの?」


「え?!あ、ああ、あの“エアーバス”に噂の“西の勇者”様パーティーが乗ってるらしいわ」


「あの、“西の勇者”様パーティーが?!

“西の勇者”様は何でこの王都アルアックスに?」


「何でも、古代遺跡都市 ウニウンの完全攻略をしに来たらしいわよ」


「ウニウンの完全攻略?!

“西の勇者”様達はそんなに凄い人なの?」


「ええ。西の国 ナノマガン王国では幾つもの古代遺跡都市を完全攻略したらしいわ」




…………話しを合わせていたが、まあ、僕は“西の勇者”なんて初耳だ。

そもそも、僕は王都アルアックスの西側にはアルランスの街が在る事以外知らなかったから、もっと西に他の国が在る事も初耳だった。


お嬢さん方の情報には限界があるだろうと、僕は狼弾会のウルフバレット モルツェンの元を訪れた。

“西の勇者”達の情報を集める為だ。



ただの興味本位じゃあない。


「古代遺跡都市の完全攻略」と云う言葉。

此れは、僕のルベスタリア王国にとって脅威になる可能性があるからだ。



モルツェンから得られた情報は、先ず西の国ナノマガン王国。

ナノマガン王国は、アルアックス王国の北に広がるトレジャノスピング大森林と更に北のワイドラック山脈が途切れた更に西に在る国で鉱山国とも呼ばれる鉱物の多く摂れる山々を持つ国らしい。


“西の勇者”はそのナノマガン王国に在る3つの古代遺跡都市の完全攻略を成し遂げたSランクハンターだそうだ。


勇者ワルトルットゥ、聖騎士ハートルシュー、聖戦士ラウニーラート、同じく聖戦士ピカルニキ、光の射手サンティデルテ、そして聖女キルシュシュ•ヴェルダールテの6人パーティー。

パーティー名はホーリーフェクション。



全員に凄そうな二つ名が付いているが、気になったのは、勇者と聖女だ。


そもそも何故、勇者と呼ばれているのか?


其れは、ナノマガン王国の所有する聖剣に選ばれたからだ。

聖剣はかつてドラゴンを倒した勇者が使っていた伝説の剣で、光の刃で敵を斬り裂くらしい。

この聖剣は選ばれし者にしか扱えなくて、ワルトルットゥが光の刃を発生させた事で勇者認定されたらしい。


“西の”と云うのは、もう1本、東の国にも聖剣が有り勇者が居るからだそうだ。


此れは僕の予想だけど、多分聖剣は、売却の可能性を考えて、緩めのセキュリティを掛けられた、ただの魔導具の武器ではないかと思う。


僕達の装備は盗難の危険性を考えて、バッチリ本人認証が出来なければ使えない様にしてあるが、此れには1つデメリットが有る。


売れないのだ。


もちろん、ただの武器としては売れるが、魔導具として売る事が出来ない。

何故なら、他の人には使えないから。まあ、当然だ。


しかし、セキュリティは、指紋の一部などと限定して緩く掛ける事が出来る。

そうすれば、何万人に1人とか、何千人に1人とか、偶然合致する者が現れる可能性がある。


これなら魔導具として売れなくもないので、聖剣はそうなっているんじゃないかと思う。


まあ、もしかしたら聖剣は本当にとんでもない武器で、使い手を自ら選ぶのかもしれないが……



そして、もう1人。

聖女キルシュシュ•ヴェルダールテ。


苗字が有るので、貴族だろうとは思ったが、なんと、ナノマガン王国の公爵家の娘で、国王の姪に当たるらしい。


そんな彼女が何故ハンターなんかをやっているかと言うと、『運命の出逢いをする為』だ、そうだ…………


此れは有名な話しらしく、更に西の勇者に、「貴方では無い!!」と、ハッキリ言ったと云うのも有名な話しらしい。


そして、彼女が何故、聖女と言われているかと言うと、『未来を予知し、幸運を呼び寄せる』からだそうだ。


彼女はなんと、生まれてこの方、一度の怪我も病気もした事が無いらしい。


転んでも打ち所が良くて無傷、寧ろ、偶然落ちて来た花瓶を躱せた。とか、屋敷の3階から落ちても、偶然、馬の飼葉が置いてあって無傷。とか、極め付けは、“西の勇者”パーティーが未だ駆け出しの頃、敗走する勇者達に、魔物が魔法の雨を降らせても、全て避けなくても当らず、1人優雅に歩いて逃げ帰ったらしい…………


因みに弓の名手で、矢の届く範囲なら絶対に外さないそうだ。



最後に肝心の「古代遺跡都市の完全攻略」とはどう云う事かについては、全くの杞憂だった。


完全攻略とは、玉座の間に辿り着いて、其処に居る魔物を倒す事だったのだ。


僕の心配していた、魔物を完全排除してからの、動力源と魔導具製造ラインの確保や、空中都市の復活などと云うモノでは無かった。



とりあえずの心配は無くなったが、古代遺跡都市の玉座の間に行ける程のハンターが居ると云うのは余り良い情報では無い。

古代遺跡都市が元々の都市だった頃、玉座の間と言えば最も警備が厳重だった筈だ。

魔導士達が魔物となっても、恐らく最も多くの魔物の居る場所に違い無い。


そこまで辿り着けるなら、他の重要な施設にも行く事が出来る可能性が高いと云う事だ。


万が一の事態を考えて、早い段階でのルベスタリア王国の防衛力の強化と、何かしらの航空戦力の準備が必要だ…………





▪️▪️▪️▪️





「じゃあ、2人とも準備は良いかい?」


「「はい!!」」



8月3日、僕はツヤツヤのレアストマーセとディティカと共に33人の子供を乗せて、ルベスタリア王国へと向かった。


今日まで、僕は実は精力的に活動していた。


ウルフバレットに会った翌日には、子供達の人選を行って、深夜にはトレジャノ砦に運んだ。

翌日には王都アルアックスに戻って、精力的にカジノで資金稼ぎをしてから、精力的に娼館に泊まり、子供達の人選、トレジャノ砦への運搬。また、カジノでの資金稼ぎだ。


何故こんなに続けて資金稼ぎをしたかと云うと、狼弾会のシノギを全面的に中止させて、代わりに僕の為の活動をさせる為の資金を準備する為だ。


ハッキリ言って、1,000人以上の狼弾会の配下が1年働くよりも、僕が一晩カジノに行く方が遥かに稼げる。

唯一の不安はカジノが次々と潰れるんじゃないかと云う事くらいだ。


まあ、狼弾会に渡した資金も再来年まで運営してもかなり余る筈なので、今後は当分カジノ荒らしはしないつもりだ。



そして、狼弾会の活動だが、先ず最優先は、元々頼んでいた移民の人選だ。

此れから来春迄はかなりの時間があるので、人選はしっかりと行わせる予定だ。

其れに伴い、その仕事ぶりと潤沢になった資金と云う罠を使って、狼弾会のメンバーも篩に掛けさせる。


再来年迄には、狼弾会には、真の支配者である“キングウルフ”こと、僕に絶対の忠誠を誓う完全に統制の取れた組織に生まれ変わって貰う為だ。

既に前ウルフバレットとの抗争で手足を失った幹部なんかには、こっそりとポーションを渡して高い忠誠心を得ている。



移民の人選はスラムの住人の情報収集と一定の保護だ。

この仕事に対しての働き振りは、慈悲や助け合いの精神が有るかどうか分かる。


そして、潤沢になった資金は忠誠心と欲望を天秤に掛けさせるのに最良のアイテムだ。

裏切る者を炙り出すにはもってこいな状況と言えるだろう。


欲望は原動力でもあるので、それ自体は否定しないが、僕は狼弾会のメンバーに関しては、移民後には僕の代理官かルベスタリア王国軍への所属を考えているので、私利私欲に走る者は必要無いのだ。


因みに、この事はウルフバレットにも何も言っていない。

地位や身分を目指しての忠誠心では無く、僕に対する盲目的な忠誠心を求めているからだ。

序盤の移民は、結果として重要なポジションに就いて貰う場合が多い、なので、そのくらいの人物でなければ困るのだ。



次の狼弾会の活動だが、周辺国、主にアルアックス王国、アルコーラル商国とナノマガン王国及びその国が所有する古代遺跡都市の情報収集だ。


各国の情報に関しては、別にスパイ活動をしろと云う訳では無い。


国の情勢や噂話し、可能なら都市の地図や有力者の情報なんかも集めて貰う。

基本的には、街の住人や酒場なんかで話しを聞けば良いくらいのモノだ。


しかし、古代遺跡都市の情報に関しては、多少なら相手に金を握らせても良いので出来るだけ集める様にさせている。


先ずは地図、次に発見された魔導具の情報だ。


地図に関しては複数の情報を以て整合性を上げさせる様にさせて、魔導具に関しては出来るだけ、詳しく何処でどんな魔導具が見つかったかと云う情報迄集めさせている。


僕には他の人には無い、圧倒的なアドバンテージが有る。

其れは、賢者 ウィーセマーの遺産だ。


その中には、古代魔導文明時代の空中都市の地図なんかも有る。

手に入れた情報とその空中都市の地図の情報が一致すれば、元々、何処にどんな施設が在ったかが分かる可能性がある。


そうなれば、未発見の重要な魔導具を迷う事無く取りに行けるかもしれない。


此れはルベスタリア王国の国防の上でも重要な事だ。

強力な魔導具や飛行可能な魔導具を他国に渡さず、手に入れる事が出来ればルベスタリア王国の安全性が大きく高まる。


かつての魔導士達が行った様に、空を征すると云うのは、途轍も無い力だからだ。

僕は、ルベスタリア盆地の外に領土を求めるつもりは無いが、強力な防衛力は必要不可欠だ。



そして、最後に情報収集のついでの特産品のお買い物だ。

野菜や香辛料、ハーブやお茶なんかの苗や苗木を買って帰って貰う予定だ。


最終的にはルベスタリア王国は輸入輸出の一切無い、完全に一国で完結した国になる予定だ。

その上で出来るだけ多くの食品が有る状況が国民の豊かな生活には望ましい。


土壌や気候の問題は大抵魔導具が解決してくれるので、ちゃんと育つ可能性が高いと云う事もあって、珍しいモノや変わったモノも遠慮無く買い込んで貰う様にしている。



こう言った活動を狼弾会にはして貰う。

シノギを全面中止させたのは、この活動の期限が再来年の夏迄だからだ。


1,000人以上居るとは言っても、殆どはゴロツキやチンピラだ。

国の暗部や専門のハンターの様には行かない。


其れでも数は力なので、それ也の成果は期待している。

特にウルフバレット モルツェンは、こう云う事に長けていそうだから、もしかしたら、予想以上の結果を得られるかもしれない。



そんな期待を胸に、子供達の叫びを聞きつつ、お漏らしを眺めつつ、ワイドラック山脈を相棒の“ウィフィー”に跨って登って行く…………





山頂のワイドラック小屋に着いてから、子供達の食事や風呂を済ませて寝静まった後、僕はレアストマーセと小屋の外に出ていた。



「ごめんね、レアストマーセも眠いだろうけど、せっかく山頂に居るから、聞いておこうと思って」


「いえ、初めての時と違い何度も訓練しましたから、大丈夫です。

其れで聞きたい事と云うのは?」


「うん、魔都 ウニウンの事なんだけど、此処からのパッと見、“エアーバイク”で王都アルアックスから1日半くらいかと思うんだけど、合ってる?」


「…………そうですね…………

恐らくですが、2日見た方が良いと思います。


フュンティル荒野には殆ど空を飛ぶ魔獣は居ませんが、フュンティル砂漠には何種類か空を飛ぶ魔獣が居ます。

なので、時間が掛かるだろうと思われるのと、夕方に魔都 ウニウンに入ると、キャンプをする場所に苦労すると思います。

有名な安全地帯は他のハンターも多く居ると思うので」


「なるほど、なら2、3日探索するとして往復1週間くらいか…………

移動の問題が、フュンティル砂漠の空飛ぶ魔獣なら、トレジャノ砦から向かっても、大体同じくらいの感覚で大丈夫かな?」


「はい、恐らくトレジャノ砦からでも2日くらいだと思います。

もしかして、魔都 ウニウンに行かれるのですか?」


「うん。移民が予想以上に早く終わりそうだから、ちょっと見ておこうかと思って」


「…………もしかして、“西の勇者”が来たからでしょうか?」


「其れもあるね。

万が一、勇者様御一行が、空を飛べる魔導具を見つけちゃったら、僕のルベスタリア王国が見つかっちゃうかもしれないでしょ?」


「…………魔都 ウニウンで勇者を暗殺すると…………」


「…………あのね、レアストマーセ。僕がそんな事する訳無いでしょ?

僕のレアストマーセに向ける優しさは作り物じゃないと思うんだけど?」


「は、はい!!ごめんなさい!!」


慌てて頭を下げるレアストマーセを優しく撫でて、壁際のベンチに一緒に座る。


「まあ、僕は王様だし、今後は暗殺とかをする事も有るだろうけど、敵対しない相手には絶対にそんな事はしないよ。たとえ、僕にとって都合が悪くてもね」


「ごめんなさい…………

ノッド様は他の王族とか貴族なんかとは違うって分かっているんですけど…………」


「良いんだよ、レアストマーセ。

僕だけが特別。キミにとっても、ルベスタリア国民にとっても。

其れで良いんだ。


他の男とは違う。

だから、キミも僕を、僕だけを愛している。


他の王族とは違う。

だから、国民も僕を敬う。


其れで良いんだ。


だから、普通はこうするって思っちゃう事自体は問題無いんだよ。

でも、此れからは、僕ならどうするのかもちゃんと考えてね?」


「は、はいぃ………」



ウルウルした瞳で恥ずかしそうにしているレアストマーセにそっと口付けて、そのまま、小屋の中へと戻った…………





翌日、本番の絶叫山降りを経て、8月7日、僕達はルベスタリア王国へと無事に帰還したのだった…………






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