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箱庭の王様  作者: 山司
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第6章 建国 1

第6章

建国 1





▪️▪️▪️▪️





ウルフバレットを逮捕した翌日。


僕はグレーヴェとネクジェーを連れて彼女達の家を訪れた。


季節は夏、丸2日も放置された無惨な死体は凄い異臭を放っていたが、昨日買って置いた袋に、出来るだけ1人づつになる様に集めて、家中に飛び散った血を拭いて行った。


もちろん、2人は外で待たせて僕1人で行った。


僕が14個の袋を1つづつ丁寧に『ティニーマフーズ商会』倉庫に運んで、倉庫の隅を一部掘り返して魔導具で火葬した後に埋葬した。

2人は、これ迄で1番、僕に感謝して、涙ながらに何度も何度も御礼を言っていた…………



多少無理をしている感はあったが、翌日には、2人は立ち直っている様に振る舞っていた。

今回は余りにも酷い形だったが、スラム街の組織で3年過ごした2人は、「今迄も何度も仲間を見送って来た」と言って強がっていた。


彼女達2人で、10人のメンバーが揃った僕としては、例え強がりでも、早目に切り替えて貰った方が都合が良い。

敢えて、強がりには気付かない振りをして、今後の方針を伝えた。

先ずは、今日と明日とで、2人には荷物を纏めて、いつもの大量の衣類の購入もして貰う。


僕がポンっと出した購入資金の1億アルに、今迄の娘達と同じ様に目を丸くして、「服を買いに行くんじゃないんですか?」「何万着買うんですか?」などと言っていたが、服だけで無く下着や化粧品も買う事や衣類は50着くらいと化粧品は5年分くらい買う様に言った。


「其れでも多いなんてもんじゃ無いですよ?」と、まあ、他の娘同様に言って来たので、出来るだけ長く着れる良いモノを買う様に言いながら、いつもの様に、貯金通帳を見せた。


僕の通帳が攻撃力が高い点は、しょっちゅう億単位の出入りが有る事だ。

彼女達だけで無く、衣類の購入は全員に毎回、1人5,000万アル渡しているし、僕がカジノに行くと、億単位の収入が毎回ある。


グレーヴェとネクジェーも、通帳を見て固まり、静かになった。



そして、僕は日用品の買い溜めをして、明日の夜にはトレジャノ砦に向けて出発する。



…………と、説明した。


しかし、僕にはもう1つ大切なミッションが有る…………

僕は今夜、娼館の娘達にプレゼントをして、お別れを言わなければならない…………


ティヤーロ、ティニーマ、サウシーズ、リティラ、レアストマーセ、ディティカ、イデティカ、ペアクーレ、グレーヴェ、ネクジェー、で予定していた10人の教育係候補が揃ったからだ。


今回、トレジャノ砦に戻ったら、もう王都アルアックスには戻らない。

そのまま、ルベスタリア王国に帰る予定なのだ。



なので、娼館の娘達に次に逢えるのは、来年の春になる予定だ。

だから、今生の別れでは無い!!

僕はきっと来年もまた此処に戻って来る!!


そう、思いながら1人1人にプレゼントを買ったのだった…………





ルベスタリア王国に帰るには、トレジャノ砦を出発し、先ずワイドラック山脈を登って、山頂に在るワイドラック小屋に向かい、ワイドラック山脈を降って、反対側に在るサウス小屋へ、そして、ルベスタリア草原を抜ける事になる。


ワイドラック山脈を登るのは通常2日の行程だが、幸いにもまだ日が長い。

キャンプの手間を無くす為に、日の出前に出発して、食事も移動しながら食べて、ノンストップで1日で登り切ってしまう事にした。

降りは1日有れば余裕なので、ワイドラック小屋ではゆっくり寝て、降って行く。


その逆の行程でまたトレジャノ砦に戻る。


此れを繰り返して、全員がサウス小屋に着いてから、ルベスタリア王国に揃って向かう予定を立てた。



先ず、第一便で向かうのは、ティヤーロ、レアストマーセ、ペアクーレの3人だ。

最初が3人なのは、第一便で多めの荷物を持って行く為で、この3人を選んだのは、運動神経の良い順だ。


3人には、サウス小屋に着いたら予備の“エアーバイク”の練習をして貰って、ルベスタリア王国に帰る時には運転して貰う為だ。



次の第二便で向かうのは、ティニーマ、サウシーズ、ハンジーズ、リティラの4人だ。

この第二便は、幼いハンジーズとリティラを含める事で、第一便と同様に荷物を多めに運ぶ事と、2人を出来るだけ人数多めの方に居させる配慮からだ。


因みに、圧倒的最年少、3歳のハンジーズは“エアーバイク”を全く怖がらない。むしろ大好きだ。

どれほどスピードを出そうと、どれほど高度を上げようと、宙返りをしようと、大はしゃぎだ。



そして、第三便で、ディティカ、イデティカ、グレーヴェ、ネクジェーの4人を連れて行って山越えは終了だ。

この4人に関しては理由が有ってでは無い。



全員の山越えが終わったら、4台の“エアーバイク”でルベスタリア王国に向かう。

途中、一泊キャンプをする予定で、翌日には到着する筈だ。


キャンプが一泊予定なのは、ティヤーロ達の“エアーバイク”の運転技術次第だからだ。

もしかしたら、2、3泊の可能性も有る。



と云う内容をルベスタリア王国の名前を言わずに説明した。

僕が王様だと云うのはまだ言っていないからだ。



最後まで聞き終えた皆は、


「「「此処に住むんじゃ無いんですか?!」」」


と、声を揃えて言った。

10人の大合唱は、流石に僕も気圧された程だった…………





▪️▪️▪️▪️





ルベスタリア王国に向けての旅が始まった。

トータルで2週間前後の道程だ。


とは言っても、各所に拠点があるので、キャンプは1回の予定だ。



相棒の“エアーバイク”“ウィフィー”に3台の連結式荷台を繋げて、運転席に僕が跨り本体の荷台にペアクーレが乗って、最初の連結式荷台にティヤーロとレアストマーセが乗っている。

後ろの2台の連結式荷台と空いたスペースには“ゼログラビティバック”が山盛りだ。





「じゃあ、行って来るね」


と、いつも通りの挨拶をして、みんなに見送られながら出発した。


最初はみんなに笑顔で手を振り、段々と山の標高が高くなって景色に感嘆を漏らしていた後ろの3人だったが、20mジャンプを延々と繰り返して、どんどんどんどん地表が離れて行くにつれて、下を全く見ずに、手摺りに必死に掴まっていた。


山頂に到着した時には全員がぐったりしていた…………


しかし、この途轍も無い高さの場所に立派な建物がある事に驚愕して、建物内が砦同様の快適空間だった事に更に驚いていた。


3人とも疲れ切った様子で、食事も風呂もそこそこに早々に眠ってしまった…………



しかし、本番は明日だ。

明日なのだ…………







「きゃあああああああああ………………!!!!」

「いやあああああああああ………………!!!!」

「うわあああああああああ………………!!!!」



3人の女性達の叫びが、遥かに広がる空に向かって響き渡る…………


ワイドラック山脈越えの1番の醍醐味は降りだ。


登る時は20m毎に1段1段登って行くが、降りは一気に100mジャンプで降って行く。


僕は何度も繰り返しているので何とも無いが、


『きっとみんな怖がるだろうなぁ〜……えっへっへ…………』


と、思っていた。


悪戯に成功した感じのニヤニヤ笑いで、休む間も無く降って行った…………


そして、最後は垂直落下だ!!


3人とも甘美な悲鳴で鳴いてくれた…………




とはいえ、腰砕け状態そのままでは可哀想なので、サービスで1人1人お姫様抱っこでサウス小屋の中迄運んであげた。


まあ、其れで3人とも直ぐに機嫌が治ったのだから、肝が据わっている。


その後、昼食を摂ってから、“エアーバイク”の運転指導だ。

操作の仕方を説明してから、実際に運転させてみた。


やっぱり、この3人は運動神経が良い。

夕方には普通に走れる様になっていた。


一応、練習期間は1週間ちょっと有る。

恐らく、自在に乗りこなす様になってくれるだろう。



翌朝、トレジャノ砦同様に、此処も周囲に魔獣が居るので、防壁から無闇に出ない様に言ってから、僕は100mの絶壁の梯子を駆け登った…………





「「「きゃあああああああああ………………!!!!」」」

「あははははははは………………!!!!」


第二便が到着した。



「「きゃあああああああああ………………!!!!」」

「「いやあああああああああ………………!!!!」」


第三便が到着した。



やはり、ハンジーズには才能がある!!!!



と、全員の山越えが終わった。

そして、サウス小屋で1日休んでルベスタリア草原を北上した。


ちゃんと、ティヤーロ達3人は、“エアーバイク”をマスターしていて、計画通り1泊キャンプをし、翌日の昼過ぎには、ルベスタリア王国、王都ルベスタリアに到着したのだった…………





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