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第1話 とんでも話

頭を柔らかくゆるゆるにしてお読みください。

楽しんだもの勝ちです。

楽しめなかった方はごめんなさい。


 地球上にエイリアンがやって来て技術革新が起こる――なんて話はハリウッドのSF映画の中だけのことだと思ってた。

 しかもある日突然なんの前触れもなく全国ニュースで流れたものだから「あれ?今日ってエイプリルフール?」なんてバカな独り言を呟いてしまったくらいだ。


 ちょうど年が明けたばかりの季節の大ニュース。

 ネットは荒れたし、宇宙人に侵略されているのなら学校も会社も休みだと無断欠席&欠勤者が多数出たとか出ないとか。


 え?あたし?

 あたしはもちろん出勤したよ。


 だって社畜だもん。


 それに働かないと推しに課金できないでしょうが!

 来月から始まるお花見イベントで推しの限定SSRキャラが出るんだよ!絶対ゲットしたい。ううん。ゲットするまで課金するんだからお金はいくらあっても困らない。


 なんなら残業だって辞さない。


 いつもは一分一秒でも早く帰って”らぶふる”(あたしがハマっているゲーム「恋人果実(Lovers&Fruits)」の略)をプレイし、ネットで推しCPのイラストや漫画を漁るという大事な使命があるんだけど。


 イベント前限定で残業はウェルカムなのだ。


「ああ今日も推しが尊い……!」


 ”らぶふる”にはたくさんのヒロインとヒーローがいるんだけど、あたしは公式のメインCPがいちばん好き。

 佐賀ほのかちゃんと佐藤錦くんは幼馴染なんだけど、錦くん頭もよくてスポーツもできるからめちゃくちゃモテるのね?ほのかちゃんはおとなしくて控えめな性格だからグイグイ来る他の女の子に押されちゃってなかなか好きって言えないんだ。


 もうさ。ほんと応援したくなるじゃん?

 幼馴染って憧れるよね?


 そんな二人がイベントを通してちょっと進展したり、ライバルに邪魔されたりしながら高校生活を満喫するゲームなわけ!


 いや他のキャラもみんな可愛くてかっこよくて魅力的なんだど、あたしは王道CPを推したい。幼馴染なんて現実そんないいもんじゃないし、どちらかというと地味CPだからないよね?なんて叩かれようとも。


 あたしは推したいのだ!


 スマホの待ち受けに設定している推し二人をニマニマ見ながら会社のエレベーターに乗り込むと後ろから「お前オタクなの少しは隠せよな」という呆れた声が聞こえてきた。

 振り返って確認するまでもない。

 同期入社の黒岩一豊くろいわかずとよである。


「あたし好きなものは好きだって正直に言う派なので」

「恥ずかしくないのかよ」

「え?なんで?どこが恥ずかしいのよ。らぶふるの評価は高いし、ダウンロード数は五十万以上ある。この会社にだってらぶふるやってる人がいっぱいいるってことでしょうが」


 やってもいない人間があれこれいうなよなって話なんですよ。


「それにあたし昔オタクなのを隠しててバレて彼氏に振られたことあるから」

「あー……なるほど?」

「好きなものを隠してるって相当ストレス溜まるし、バレた後に好きなものを悪く言われるのも腹立つし」


 なにより恥ずかしいって隠していることが好きなものに対する裏切り行為みたいなのが一番嫌なんだよね!


「まあ一理あるが。おれは桐に男がいたことあるってことに衝撃を受けている」

「はあ?失礼な男だな。黒岩は」


 あたしにだって付き合ったことのある男の一人や二人―—はいないか。オタクがバレてお別れした彼があたしの初彼でもしかしたら最後の彼になるかもしれない。


 いいんだ。

 あたし恋愛体質だけど自分が主人公になるのは苦手だし。

 推しが幸せになってくれればそれだけで満たされるんだよね。


「そういえば今日開発に呼ばれてんだけど黒岩開発部だったよね?なんか知ってる?」

「……行きゃわかるだろ」

「そりゃそうだけど。営業のあたしを呼ぶってことは新しい商品の説明かなんかかなって思ってさ」

「……まあ、新しい商品、ではあるな」


 なんだ?

 妙に歯切れが悪い。


 なんか嫌な予感がするんだけど他の人に代わってもらえないかな。


「じゃあね……って、ちょっと!」


 営業部のある階についたので降りようとしたら黒岩が腕を掴んできて文句を言おうとしているうちに扉が閉まってしまった。


「どういうつもり?」

「朝イチでって言われてなかったか?」

「は?朝イチって営業部に顔出してからじゃないの?」


 どんだけ急ぎの話なんだろうか。


 余計に胸騒ぎがして黒岩の手から逃れようと頑張ったけど、そんなに強く握られてるわけじゃないのに外れないのはやはり男だなと言わざるを得ない。


金光かねみつさんには常識が通用しないから」

「え?金光……は?呼び出しってあの(・・)金光さんなの!?」


 黒岩が死んだような目であたしを見て頷く。


 うそでしょ……?

 噓でしょ!?


 冒頭でSFみたいなことが現実になったって話をしたけと、そのハリウッド映画みたいな設定の人間(ん?人間ではないか?)が今、名前が出た金光さんなのだ。

 もう十年も前から地球に住んでいて、ひっそりと研究と観察を続けていたとかなんとからしい。

 うちの健康食品開発部に勤めて五年になるそうで。

 元々発想が奇抜なのと言動が突飛で人の話を聞かない人だったので「本当は宇宙人なんだよね☆」っていわれて「あ、そうかぁ。だからかぁ」と納得されたとかなんとか。


 そんなおかしな人がなぜあたしを?

 恐ろしくてたまらないんですが?


 ガタガタ震えながら黒岩に連れられて金光さんの前へと連行されたあたしに宇宙人はのたもうた。


「桐くんと黒岩くんで実験台になってもらうから」


 と。

 



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― 新着の感想 ―
[一言] むう、ゲームに課金するために仕事を頑張るのはいいことです。
[一言] 好きと言えないまま、それを貶められるときの哀しさと言ったら……(。´Д⊂) うん。前向きが一番だよね。 それにしても、宇宙人からの「実験台」という一言はなんだか嫌な予感ですなぁ。
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