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ニルスは、クラスの屋敷まで御者に手紙を届けさせ、返事を貰ってくるように指示した。
そして夕刻、御者が手紙を持って戻って来た。
「旦那様、戻って参りました」
「ご苦労だったな」
御者から手紙を受け取ったニルスは、自室に戻り、封を開けた。
そこには、明日そちらに出向くと書いてあった。
それを見てニルスは、馬車でその事を告げる為に、アイビス邸に向かった。
屋敷に着くと、ニルスはグランに面会を求め、手紙の内容を話した。
「ならば、明日、会って話せるのだな」
「ああ、これが上手く行けば街は平和になるな」
「そうだな、それからセイン商会に、もう一度戦う事を告げたら、
商人達も協力をしてくれる約束を取り付けたぞ」
「それは、有難いが・・・」
「大丈夫だ、一切話してはおらぬ」
「それなら安心だ」
「それ程の人物なのか」
「そうだな、明日会うのだからグランには話しても良いだろう」
「どのような方なのだ?」
「名前は、クラス マルセフ様だ」
「その名前は、もしかして・・・」
「お前も会った事があるだろう、少し前のパーティーで、俺が紹介したお方だ」
「あの少女なのか」
「少女だからと舐めて掛かると痛い目に合うぞ」
「わかった、気を付けよう」
それから2日後、ニルスの元にアーロンとイリスを伴ってクラスが現れた。
「クラス様、わざわざご足労頂きまして有難う御座います」
「ニルス様、そのような態度はお止め下さい、仮にも子爵様なのですから」
「これは失礼を、では、お言葉に甘えましょう」
「ところで、そちらはグラン アイビス伯爵ではありませんか」
「私を覚えておいでだったとは、恐縮ですな」
「ええ、ニルス様にご紹介頂いた方ですから当然のことですわ」
「まぁ、その辺にして、中に入りましょう」
ニルスに促され、3人は屋敷に入って行った。
中に入ると、フィオがクラスに近づいて来た。
「クラスさん!」
「フィオ様、お元気そうで何よりですわね」
「有難う、クラスさん、後でお話出来ますか?」
「これっフィオ、これから大事な話があるのだ、
お前は、部屋に戻っていなさい」
「フフフッ、構いませんわ、フィオさん、また後程」
「はい、お待ちしております」
フィオは、喜んで部屋に戻って行った。
「申し訳ございません、後で言い聞かせますので」
「気にしておりませんわ、それよりも話をしましょうか」
それからクラスは、応接室で今回の件の詳しい内容を聞いた。
「相手の数は不明で強力ですか、他に分かっている事はありませんか?」
「そうですね・・・」
「これまでに襲われた商人達についてとか、何でもいいので教えて頂けませんか」
「そうですね、前に襲撃が始まって、商人達が冒険者ギルドに依頼をしたのですが
金を使い、ランクの高い冒険者を多く雇った店は、狙われませんでした」
「そうだったな、ランクの低い冒険者や人数の少ない屋敷が狙われていたな」
「分かりました、他に何処に逃げたとかは?」
「申し訳ないが、他には思いつかないのだ」
「構いません、では、ここから先は調べるとしましょう」
「宜しく頼む」
「それでは、金貨70枚をお願いします」
「え!」
グランは、驚いていたが、ニルスは2回目だったので驚かずに済んだ。
「無理でしたか?」
「流石に、それは・・・」
「では、話は此処までですね」
そう言って、クラスは席を立ち、屋敷を出て行こうとした。
「グラン、一度断れば二度目は無いぞ!」
そのニルスの言葉にグランは、屋敷の玄関までクラスを追いかけた。
「クラス殿、待って貰えないだろうか」
その言葉に、クラスは立ち止まり、振り返った。
「今、手持ちが無いのだ」
「わかりました、明日、私の屋敷に持ってきて頂けるのなら受けましょう」
「感謝する」
「ニルス様、申し訳ありませんが、明日、屋敷までの案内をお願い出来ますか?」
「勿論だ」
「有難う御座います、それとフィオ様に急用が出来たので帰るとお伝えください」
「わかった」
「では、失礼します」
クラスは、馬車に乗り、自宅に戻って行った。
クラスが帰った後、ニルスとグランは話し合っていた。
「ニルス、お前の言った通りだった、あの少女は何者なのだ」
「わからんよ、ただ詮索はしない方がいいと思うぞ。
うまく付き合えば、高額だが、難しい依頼を簡単に引き受けて貰えるのだから」
「そうだな、ところで金だが早急に準備するしかあるまいな」
「そうだな、これから手分けして集めよう」
その後、2人は貴族や協力を約束された商人の所を回り、金貨70枚を集めた。
翌日、2人は馬車でクラスの屋敷に向かっていた。
「何とか、かき集められたな」
「ああ、イングリッドの所に行って、金額を伝えたら驚いていたぞ」
「それが、普通の反応だよ」
「そうだな」
それから間もなくして、馬車はクラスの屋敷に着いた。
不定期投稿ですが宜しくお願い致します。