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クラスは、ニルスに案内をされ、グラン アイビス伯爵の元に向かった。
グラン アイビス伯爵は、ニルスの連れているクラスを見ると近づいて来て
挨拶をした。
「お初にお目に掛かります、グラン アイビスと申します。
国からは、伯爵の地位を頂いております」
「そんな、伯爵様にお辞儀をされては、申し訳ありませんわ。
私は、クラス マルセフと申します」
「噂には、聞いておりましたが、素晴らしく美しいお方ですね」
「お褒め戴き光栄ですわ、ですが、グラン様のご息女も、
とても綺麗で美しい方ではありませんか」
「これは、わが娘をご存じとは」
「ええ、お言葉を交わした事はありませんが、何度か他のパーティーでお見掛け致しましたわ」
「そうでしたか、まぁ今日は、お互いに楽しみましょう」
「そうですわね」
その後、クラスは、グラン アイビスと別れ、フィオと2人でパーティーを楽しんでいると
1人の男が近づき、クラスに話し掛けて来た。
「お嬢さん、少し話をさせて頂いても宜しいかな」
「ええ、構いませんわ」
「私は、ロディ エンデと申します、先程から貴方の美しさが目に留まりまして
一度、ご挨拶をと伺った次第で御座います」
「お世辞でも、光栄ですわ。
私は、クラス マルセフと申します」
「もし宜しければ、我が家にも、年頃の娘もいますので、
一度、我が家のパーティーにもお越しください」
「まぁ、光栄なお誘いですわね、そうですね、機会がありましたら是非に」
「そうですか、娘も喜ぶ事でしょう、ではその機会を楽しみにしております」
ロディ エンデとの会話が済むと、ずっとこちらを伺っていた小太りの男が近づいて来た。
「クラス様、お初にお目に掛かります、ムシロ トムソンと申します」
「私の名前をご存じのようですね、ならば、改める必要はなさそうですね」
「いや、手厳しい、実は貴方に会って頂きたい方がおりまして
聞くところによると、クラス様はご両親を無くされて今は、お1人とか・・・」
「ええ、ですがメイドや執事がおりますので」
「それはご家族では、ありませんよね、その者達は、あくまでも使用人ですから」
「そうですね、ですがその事が、貴方に何の関係があるのでしょうか?」
「いえ、私の知り合いに、貴方の子供の頃を知っているという者がいましてね」
クラスは、この時、身元がバレたのかと思い焦ったが、
冷静になり、相手の事を探る事に集中した。
「子供の頃ですか・・・」
「はい、以前、貴方はこの地を訪れていますが、まだ生まれて間もなかったので
覚えてはおられないでしょう」
「そうですか、それで何でしょう」
「その、会われた方は、貴方の親戚筋にあたる方でして、
どうしても会いたいと仰っているのですよ。
それで、このパーティーでお会い出来たのも何かの縁と思いましてお声を掛けさせて頂きました」
「そうですか、私はそのような方を存じ上げておりませんが」
「向こうの方もご両親が無くなった事も知らず、
一度会って謝罪したいと申しておりますので、お時間を頂けないでしょうか」
その時、隣にいたフィオが、クラスのスカートを軽く引っ張った。
その様子にムシロ トムソンの怪しさが増したクラスは、条件を付けた。
「わかりました、一度お会いしてみましょう、但し、ニルス クロード子爵様にも
同席をお願いしようかと思いますが宜しいですか?」
ムシロ トムソンは、たじろいだが、小娘などどうにでもなると思い了承した。
「わかりました。では、何時お会い出来ますか?」
「そうですね、6日後、クロード子爵のご自宅では如何ですか」
「わかりました、ではその時に」
ムシロ トムソンは、クラスに会釈し、その場を離れた。
「クラスさん、大丈夫ですか?」
「ええ、心配を掛けたようですね」
「いえ、あの人、なんか嫌だったから・・・」
「そうですね、私が入って来た時からずっと私を見ていましたから」
その後、クラスは、アーロンとイリスを連れてニルスの元に行き、
別室で話をした。
「クラス様の親戚ですか・・・」
「ええ、それでムシロ トムソンとはどういう人物なのですか?」
「あまりいい話は聞きません、今の奥さんも元は大きな商人の1人娘だったのですが
ムシロが気に入って、強引に妻にし、その後も、店を乗っ取り潰したなんて
噂もありましたし・・・」
「やはり胡散臭い方ですね」
「それで、私に用とは?」
「6日後にここで会う約束をしました」
「ここで、ですか」
「はい、いけませんでしたか?」
「いえ、構いませんが、宜しいのですか?」
「問題がなければ、お願い致します。
勿論、ニルス様にもご出席いただく訳ですから謝礼は出しますわ」
「そんな・・」
その時、お茶を持ってきていたニルスの妻のパトリシアが言った。
「貴方、他の方達には見栄は必要ですが、この方達は全てご存じなのですから
必要ありませんわ、ですから遠慮無くご厚意に甘えましょう」
その言葉を聞いて、ニルスは苦笑いを浮かべていた。
「わかりました、お願いします」
ニルスの了承を得て、クラスは帰って行った。
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