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その頃、パーティーに出ていたフィオは、1人壁際に立って落ち込んでいた。
パトリシアからは、堂々としていなさいと告げられたが、
13才のフィオには、そこまでの振る舞いは出来る筈も無く、ただ参加して下を向いているだけだった。
そんな時、1人の少女がフィオに近づいて来た。
「フィオさんでしたわね」
フィオが、顔を上げると笑顔で見つめるクラスの姿があった。
「クラスさん・・・・」
「どうされましたの?
浮かない顔をしていますわね」
「・・・・・・」
「そういえば、今日は貴方のお姉様は、お見えになっていませんの?」
「姉さまは・・・姉さまは・・・・」
ナタリアの事を聞かれたフィオは、涙ぐんでしまった。
「ごめんなさい、何か事情がありそうですね」
クラスは、フィオの背中を押し、バルコニーに連れていった。
「ここなら他の人に聞かれませんわ、それに話す事で気が楽になる事もありますのよ」
「クラスさん・・・」
「それでもまだ気になるとお思いでしたら、私の事は井戸か木の洞とでもお思い下さい。
昔から、人に言えぬ事を気を晴らす為に話すのなら、井戸か木の洞に話すのが良いと
言われていますの、ですので私の事は、その井戸か木の洞だと思って頂いて構いませんわ」
フィオは、なんだか可笑しな人に思えたクラスに全てを話す事にした。
「私の名前は、フィオ クロード、姉の名前は、ナタリア クロードと言います。
ニルス クロード子爵家の者です。
実は、姉の婚約が決まってから、ドイル子爵家のターシャ ドイル様から
様々な嫌がらせを姉が受ける様になりました。
それまでは、良くも悪くも無く、挨拶をする程度の関係でしたのに
突然そのような行為に及ぶ事が、私達には理解出来ませんでした」
「それで、止める様に言ったの?」
「はい、直接本人に止める様にお願いしましたし、何故そのような事をするのかも
聞きましたが、知らないとか、私はやっていないと言ってはぐらかされてしまいました。
それで、今度はお父様からスティーブン ドイル様の方へ抗議致しました。
ですが、それでも嫌がらせは止まず、寧ろ酷くなっていき、
我が家のあらぬ噂を立てられるようになりました」
「原因は、考えてみたの?」
「はい、最初の頃はターシャ様もジュード様の事が好きで
嫌がらせをしているのかとも思いましたが、お父様も抗議しましたのに収まらないし、
悪い噂も流されてしまいまして・・・もう、訳が分からなくて・・・・・」
「そうでしたのね、お家が大変な事になっていますのね・・・
それで、貴方は、どうしたいのかしら」
「姉さまを助けたいですし、私の家の事もなんとかしたいのですが・・・」
「じゃぁ、そう言う事をしてくれる人に心当たりはないの?」
「私には、わかりません」
「そうですか・・・でしたら、本当に困ったら私に相談しなさい、住所はここだから」
クラスは、フィオに屋敷までの地図を渡した。
「そう言う事を調べたり、それなりの報いを受けさせる人に心当たりがあるから。
でもね、お金も結構掛かる事も忘れないでね、
それと、この事は、貴方の御家族以外は秘密にしてね」
そう言って、クラスは手を振りながらバルコニーから離れ、執事と一緒に帰って行った。
「クラスさんって何者なの・・・」
パーティーも終り、フィオが自宅に戻ると、項垂れて顔色を無くした両親がソファーに座っていた。
フィオは、出来るだけ明るく振る舞いながら両親に声を掛けた。
「只今帰りました」
その声に気付き、両親は作り笑顔をフィオに向けた。
「フィオ、帰って来たんだね」
「お帰り、パーティーは楽しかったですか?」
フィオは、両親のその姿に居た堪れなくなり、思わず問いかけてしまった。
「お父様、お母様、私はもう13歳です、後2年もすればお嫁にも行けます。
ですので、どうか私にも背負わせて下さい。
私もある程度の事情は理解していますが、キチンとお父様の口から
お伝えいただきたいのです。
もし・・・もし、このまま何も知らずにこの家が悪い方向に向かってしまったら
私は、私を許せません。
ですので、どうかお話しください、何も出来ない事は分かっています。
ですが、一緒に背負うくらいはさせて下さい」
フィオの言葉を聞き、ニルスとパトリシアは涙を流した。
「フィオ、お前は知らぬ間に大きくなっていたのだな。
私が間違っていたようだ、フィオ、これから全てを話すよ」
「お父様、有難う御座います」
フィオは、その日、クロード家の置かれている状態を知った。
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