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アーロン達が王都を去る様子を見ていたケリーは、チーム全員無事に王都から抜け出した事を
確認すると、チームの皆と王都の出入り口に向かって歩いた。
「ケリーさん、本当に最後になったんですね」
「そうだな、ここでの生活は楽しかったな」
「はい、でも、実感が湧きませんね」
「そのうち嫌でも理解できるようになるよ」
「そうですね・・・」
そして王都の出入り口に到着すると、振り向かず、そのまま歩いて王都から出ていった。
その頃、ギルマスは、職員3人娘の自宅を車で回っていた。
「ギルマス、もう少し、荷物載せてもいい?」
「ちょっと!エレイン、少しは遠慮しなさいよ!」
「いいじゃない、まだ余裕あるし」
「まだって!シリカの荷物の事も考えてあげなさいよ」
その言葉を聞いて、エレインは車に近づいて来た。
「お待たせ、これで全部よ」
エレインは後部座席に乗り込むと、合図を送った。
「さぁ、シリカを迎えに行きましょう」
「あんたねぇ・・・・」
ギルマスは、車でシリカの自宅の前まで行くと、既にシリカは荷物を纏めて待っていた。
「シリカ、もしかして・・・待たせた?」
「大丈夫ですよ、私も今、準備が出来たところですから」
ギルマスは、シリカの荷物を車に乗せ、王都の出入り口に向けて車を走らせた。
「ねぇ、ギルマス、良くお金持っていたわね」
「仕事が忙しくて使う暇が無かったんだよ」
「それにしても、車購入のじゃんけんにギルマスが手を上げた時には驚いたわ」
「私も、・・・だってお金無さそうだし、車も必要無さそうだったしね」
「ちゃんと、今、役に立っているだろ!」
「そうね、この車、6人乗っても余裕だから、野宿も楽だしね」
「でも、私達が付いて来ると思っていたの?」
「いや、ギルド全員の手配書だったから、お前達も出て行った方がいいとは思っていたが
精々、養成所でほとぼりが冷める迄生活する程度だと思っていたよ」
「そんなの嫌よ、これからは、冒険者に戻って車で旅をするのよ!」
「えっ、俺は、聞いてねえぞ!」
「今、言ったし・・・」
「お前達は、知っていたのか?」
「うん、3人で決めた事だから」
「まぁ、そう思ったのも、アーロンが、短銃を渡してくれたおかげなんだけどね」
「そうだな、車もアイツのお蔭だしな」
「そうそう、そこまでお膳立てしてくれたんだから頑張るしかないよね」
「わかったよ、こんなおっさんで良ければ付き合うぜ」
「ありがと!」
翌日、王宮では、騒ぎが起こっていた。
まず最初に気付いたのは、新しく設立したギルド連盟の者達が来ない事だった。
不審に思い、兵に確認に行かせるとギルドの建物は破壊され、多くの死体が転がっていた。
驚いた兵士は、直ぐに連絡を送り、他のギルド連盟の建物も確認に行かせると
同じ様に破壊された建物と死体しか無かった。
「陛下、ギルド連盟は全滅です、如何なさいますか」
この時、王は初めて、自身の失態に気付いた。
「誰か、ヒューゴの元に行かせろ!」
兵士は、王城から馬を使って闇ギルドのアジトに向かわせたが、
そこには1通の手紙が置いてあるだけだった。
その手紙を王の元に持ち帰り、渡した。
手紙を受け取った王は、その場で手紙を開き読み始めた。
”フローランド王国には大変お世話になった。
この国で、裏切られ、犯罪者にされた事、俺達は決して忘れない”
王は、手紙を読むと、俯いたまま動かなくなり、ブツブツと呟いていた。
「なぜ、わしはこんな判断を・・・・・」
そして、王が落ち込んでいると、慌てた宰相が飛び込んで来た。
宰相の手には手紙が握られており、王は、悪い予感しかしなかった。
「宰相、その手紙はわしにか?」
「はい・・・・」
「見せよ」
宰相は、手紙を王に渡した。
王は、手紙を開き読み始めると、顔から血の気が引いていった。
「陛下!」
手紙を落としかけた王は、なんとか落とさずにもう一度、目を通した。
その手紙は、クラリス第2王女からの物だった。
”敬愛なるお父様へ
この度のお父様の判断に、どうしても私には、納得できません。
なので、私は、私が正しいと思った道を進むことにしました。
その為には、私の持つ爵位の返上、王位返還、継承権の放棄を
致します。
今迄、お世話になりました。
お父様、お体を大切にしてください。 クラリス ”
王は、手紙を読み返すと、手紙を両手で持ったまま倒れた。
「陛下!」
「誰か、医者を!」
王宮内が、騒がしい頃、ギルドでもひと騒動が起こっていた。
前日まで、闇ギルドを狩ると息巻いていた上位ランクの3チームが、
死体となってギルドの前に置かれていたのだった。
それから数日後、王都には、新しい張り紙が張られていた。
それは、ギルドメンバー達の手配書の取り消しとクラリス第2王女の捜索願いだった。
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