竜
最近、ギルド経由で通達があった。
フローランド王国とコール王国の間の山脈に住む竜が
町に下りて来て襲っているとの報告があった。
そして今日、コール王国の山脈近くの村が消滅した。
また、近くの町にも甚大な被害が出ていた。
数日後、フローランドの冒険者ギルドにも竜盗伐の依頼が舞い込んだが
誰も、受ける様子が無かった。
闇ギルドではポールとヤンがその話で盛り上がっていた。
「誰か受けてみれば面白いのにな」
「アイツらじゃ死ぬだけだよ。
それよりも、竜が襲ってくる理由を探したりしないのか?」
その話を聞いていたギルマスが話に入って来た。
「竜の襲撃に理由などあるのか?」
「そりゃ、竜が突然襲ってくるなんて、絶対訳ありだぞ」
ポールの言葉を聞き、ギルマスは冒険者ギルドに向かった。
「ギルマス、慌てて出て行ったぞ」
「冒険者ギルドでも行ったんだろ」
「そっかぁ」
それから数日後、コール王国からフローランド王国に使者が訪れていた。
「私は、コール王国の騎士団長のゲオルと申します。
この度、竜討伐の協力をお願いする為に参りました」
「竜討伐の件は、書簡にて承っているが、只今準備をしている最中なので
こちらに滞在してお待ち頂きたい」
「ご配慮、有難く受けさせて頂きます」
コール王国の討伐軍50名は、王国指定の宿に泊まり、フローランド王国の準備を待っていた。
その間も、冒険者ギルドでは竜討伐の依頼を出していたが
誰も受けようとはしなかったので、指名依頼に切り替えて、
高額の依頼料で3チームに依頼を出した。
その後、フォローランド王国側も準備が整い、出陣式の日を迎えた。
その日の朝、ケリーがアーロンの自宅を訪ねて来た。
「ケリーさん、こんなに朝早くにどうしたんですか?」
「アーロン、世間はもう働いているよ」
「すいません・・・・」
「・・・アーロン、どうしたの・・・」
後ろから、イヴが眠たそうに顔を出した。
「イヴ、おはよう」
「ケリーじゃない、こんな早くにどうしたの?」
「アーロン、ここにいると、俺が早起きに思えるよ」
「ハハハ・・・ところで・・・」
「そうだったね、バイクを貸して欲しくて来たんだけど」
「分かりました」
アーロンは、アイテムボックスからバイクを取り出した。
ケリーは、バイクに魔力を充電しながら、アーロンと話をしていた。
「今回、ちょっと遠出の依頼を受けてね」
「単独ですか?」
「そうなんだ。
今回は、大人数で動けないからね」
ケリーは、充電が終り、バイクに跨った。
「じゃぁ借りるね」
ケリーが、エンジンを掛けて出発しようとした時、後ろに飛び乗った人物がいた。
その子は、手を振りながら、そのままケリーと出て行った。
「アンネ、だよね・・・」
「そうね・・・」
「なんで付いて行ったんだろう・・・」
アーロンは、考える事を止め、放置する事にした。
バイクでコール王国に向かっていたケリーは、疑問に思っている事を素直に聞いてみた。
「君はアンネだったよね、何故付いて来ているの」
「バイクの後ろは、私の物」
「え?」
「遠出サイコー!」
ケリーは、引き返す訳にも行かず、アンネと共にコール王国に行く事にした。
コール王国に行く途中で、魔獣に出会うが、後部座席のアンネが後部座席に立ち、
ライフルで狙い、一撃で倒していった。
「アンネは、ライフル上手いね」
「これは、私の手です」
「本当に凄いな」
ケリーは、一度も休憩する事なく、コール王国の首都アイズに到着した。
「やっぱり、バイクは最高の乗り物だね」
「私もそう思う」
「アンネは、運転しないの?」
「私は、後ろが好き、前は乗った事が無い」
「そうなんだ、これから聞き込みに行くけどアンネはどうするの?」
「勿論、参加する」
ケリーは宿を取ってから、アンネと一緒に聞き込みは始めた。
その頃、フローランド王国では、アーロンがギルマスに呼ばれていた。
「アーロン、突然の呼び出しで悪いな」
「ギルマス、依頼ですか」
「ああ、単独の依頼だ」
「ケリーさんも単独でしたね」
「なんだ、知っているのか」
「いえ、朝、バイクを借りに来ましたから」
「そうか、実は・・・・」
ギルマスは、今回の依頼について話した。
数日前のポールとの会話から、誰かが竜に
ちょっかいを掛けた可能性があるかも知れないから調べて貰っているとの事だった。
「で、俺は何をしたらいいのですか?」
「竜の山脈に行き、竜人族の者達に話を聞いて来て欲しいのだ」
「聞いて来るだけでいいのですか?」
「ああ、頼む、これは王宮からの依頼なんだ」
「わかりました」
アーロンは、そのまま竜の住む山脈に向かった。