12
突然の退団の報告とチームへの入団希望でイヴの仲間は喜んだ。
しかし、ヒューは、どうしていいのか分からなかった。
確かに、村で助けた時に、率先して声を掛けたのも、皆を安心させる為の行為であって
手柄を横取りするつもりはなかったし、彼らがイヴに反抗したことだって
自分が揺動したわけではないのだから、自分に罪は無いと考えていた。
「何故、俺がこんな思いをしないといけないのだ!」
1人で、どうしたら良いか分からず、イヴ達の前から離れた後、やけ酒を飲んでいると
見知らぬ男が、ヒューに声を掛けて来た。
「確か・・・ヒュー様でいらっしゃいますよね」
ヒューは、振り向き相手を見ると、そこには立っていたのは
両手に酒を持った見知らぬ男だった。
「お前は誰だ!それに、俺に何か用か」
「申し遅れました、私は、アーネストと申します。
今後は御贔屓にお願い致します」
男は言い切ると両手に持っていた酒の片方をヒューに差し出した。
ヒューは、何も疑わず、その酒を一気に飲み干した。
「流石は、エルフの国の騎士団団長、ヒュー様です」
その後も、ヒューは酒を煽り、グダグダに酔ってしまった。
ヒューは、酔った勢いでイヴ達の元に行き、暴言を吐いた。
「貴様らは、何処まで俺にさせれば気が済むのだ!
この度の事だって、俺達だけで、片が付いたんだ、
それなのに貴様らが出しゃばって来たせいで、俺達の面目が丸潰れだ
どうしてくれるんだ!」
「何を言っているのだ」
「貴様ら人間がエルフの国まで来て、恩を売った気になるなんておこがましい。
貴様らは、高貴な俺達の命令に一生従っていればいいのだ!」
「ほう・・・」
ヒューの暴言を聞いた周囲の者達は、顔を青くする者、ヒューの態度に激怒する者と
色々だったが、王は、自身が開いた歓迎の宴に水を差す行為に激怒し、
兵士によってヒューを取り押さえさせた。
その後、ヒューは兵士に連行されたが、パーティーの雰囲気は最悪の物となった。
「これは、面白い余興でしたわ」
「そうですね、お姉さまの仰る通りですわね。
まさか、こんな風に歓迎されたのは初めてで、この後、どの様にしたら良いのか
考えが纏まらないわ」
「陛下、この余興は、どなたの発案なのでしょうか」
イヴの質問に、宰相が答えた。
「イヴ殿、それから、今回の件で活躍して頂いた皆様に
不快な気持ちにさせた事をまずはお詫びいたします。
私達は、ヒューの申していたような気持ちは持ち合わせていない事を
きっぱりとここで申し上げます」
すると、ポールが聞いて来た。
「では、何故彼は、あの様な事を言ったのですか?」
「それは、かの者の独断と騎士団団長の立場から、
何も出来なかった悔しさから出た言葉だと思います」
「そうですか・・・ですが、この場で恥を掻かされたことに対しては
どう対処なさいますか?」
「それは、話し合って今後の処遇を決めたいと思います」
「わかりました。
今後の事は、貴方達にお任せ致します」
「感謝致します」
宰相は、軽く頭を下げた。
その後、盛り上がる事無くパーティーはお開きとなり、ポール達は宿に戻った。
翌日、牢屋の中で酔いが覚めたヒューは、昨日の事を思い出していた。
「私は、一体何をしたんだ・・・」
その時、宰相が現れ、格子を挟んで対面した。
「ヒューよ、昨日は、大変な事をしてくれたな」
「宰相殿、どう言い訳をすればいいのか・・・」
「謝罪は不要だ、貴方は王の御前で、やってはいけない事をしたのだ、理解出来るな」
「はい・・・」
「ならば、何も言うまい、そのまま刑の執行を待つのだ」
「わかった・・・」
ヒューは、酒に溺れたといえ、取り返しのつかない事をしたので
自身も、刑を潔く受け入れた。
ポール達は、その日の内にエルフの国を出発し、フローランドに向けて旅立った。
それから数日後、ヒューの処刑が執行された。
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