10
その後、2階の制圧に成功し、ポール達は1階に下りて行き
歩いていた執事を捕らえた。
「この屋敷に奴隷や捕まっているエルフはいるか」
「・・・・・」
「返事をしろ!」
「ひぃ!」
「もう一度聞く、奴隷やエルフはいるか?」
「は、はい、おります。
地下牢に繋いでおります」
「何人だ」
「3人です」
「他には、いないのか?」
「兵舎の方に数人がいると思います」
「なぜ、人数が分からないのだ」
「兵が、勝手に攫って来た者達ですので・・・」
「わかった、地下牢に案内しろ」
ポールは、ナオミとメルティを呼び、一緒に地下牢に向かった。
地下牢に着くと、そこには、生きている事が不思議な程、傷だらけにされたエルフが
鎖に繋がれていた。
「貴様!」
「ナオミは怒り、執事の首を刎ねようとしたが、ポールに止められた」
「まぁ、待て、もう一カ所案内して貰わないと困るのだ」
そう言ってナオミを落ち着かせた後、3人のエルフの鎖を外し、牢から出した。
「皆、もう少しの辛抱だ、此処を出たらエルフの国に戻れるぞ」
その言葉を聞き、エルフ達が微笑んだ。
メルティに治療を任せ、ナオミに奴隷の服に着替えて貰い、
鍵のかかっていない首輪を付けて貰った。
そして、ポールが鎖を引き、執事に他のエルフの元に案内をさせた。
案内をさせている時に、執事が兵に呼び止められた。
「ヤムザ、こんな時間にどうした?」
「リック団長、実は、エルフを捕まえたと奴隷商人が訪ねて来たので
そちらのエルフの元へ連れて行く途中で御座います」
「ん、そうか、中々いい女じゃねえか、この女は貰っていいのか?」
「いえ、まだ商談も済んでおりませんので、今日の所は諦めてください」
「ちぇっ、まあいい、その女を買う事になったら俺の所に連れて来いよ」
「畏まりました」
リックが去って行く迄、ヤムザは動こうとはしなかった。
「では、行きましょう」
リックが、見えなくなると再び案内を始めた。
「ヤムザさんだったか、よく裏切らなかったな」
「ああ、それは私だってこんな所には居たくありませんよ。
私は、この国に娘を探しに来たのですよ」
「見つかったのかい?」
「見つかりましたよ、通路の横の川の中に、投げ捨てられていました」
「おい、それって」
「奴隷として売られて捨てられたのでしょう。
私が拾い上げた時には、傷だらけで、腕も足もありませんでした」
「なら、なんでここに居るんだ」
「復讐の為です」
「復讐?」
「はい、私は、必死に犯人を捜しました。
でも、なかなか見つからず困り果てた時に、ある噂を聞いたのです。
奴隷を買い、好き放題甚振った後で捨てる男の話です」
「もしかして・・・」
「ゾイド ハーメル伯爵です」
「私は、真実を知る為にこの屋敷の執事になりました。
まぁ、前職も執事でしたので問題なく採用されましたが、
ある日、とあるお客様が見えていましてね、お2人の会話を聞いてしまったのです」
ポールは、黙って聞いていた。
「どうやら、このお2人は若い子を甚振って遊ぶのは、面白いが捨てるのが面倒なので
兵に頼んでそこらの川に捨てていると言っておりました」
「なら、犯人は、ハーメルかその客だな」
「はい、お客の名前は、ムロン ニューマン男爵です」
「なんだ、そうなのか」
「なにか?」
「ああ、そいつはもうこの世にはいない」
「え!」
「そう言う事だ」
執事は、納得した表情を見せた。
「この世もまだ、捨てたものではありませんね」
「どうかな・・・」
執事の案内に従い、付いて行った先には小さな家が建っていた。
外には鍵が掛かっており、逃げ出せない様にしてあった。
ヤムザが、鍵を開け中にポールを案内したので入って見ると
そこには、全裸のまま放置された4人のエルフが肩を寄せ合って震えていた。
「大丈夫か?」
そう言ってポールが近づこうとしたが怖がって震えているだけだった。
そこで、奴隷の服を纏っていたナオミが話しかけてみた。
「私は、ナオミ、貴方達と同じエルフよ、もう大丈夫だから安心して」
「エルフ達は、ナオミの言葉で安心したがナオミも奴隷の恰好をしていたので
不思議そうな顔をしていた」
「その恰好・・・」
「これは、此処に来る為に着替えたの、それにこの人は味方だから」
「その言葉にエルフ達は、ポールを見た」
「おれは、味方だ」
「でも、ポールさん、この子達どうしましょう」
「そうだな、裸だしな」
2人が相談していると、突然声が聞えて来た。
「私に任せてよ」
「イリス、いたのか」
「うん、アーロンもいるよ、それに服も持って来たよ」
「助かる」
ポールは、当然の様に話をしているが、ナオミとヤムザは、理解が追い付かなかった。
「ポールさん、何故イリスさんが此処にいるのですか?」
「これは、アーロンの能力だ」
「うん、後は秘密だよ」
イリスは、皆に服を着せるとアーロンを呼んだ。
「もう、出てきていいよ」
現れたアーロンには、目隠しがしてあった。
「お前ら、相変わらずだな」
「へへへ・・・」
「ポールさん、この子達、先に運び出しますか」
「頼めるか」
「はい」
アーロンとイリスは手を繋ぎ、姿を消してエルフ達を外に運び出した。
その後、牢にいたエルフ達もアーロンとイリスが運び出し、
何時でも攻撃が出来る準備が整った。
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