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配置に付いたアーロン達は、一斉に行動を起こした。
2階から侵入したアーロン達は、一番奥の部屋の扉を開けると、そこには太った男が座っていた。
その男を見たアーロンは、片膝を付いてから話し掛けた。
「深夜に失礼致します。
ハーメル様の使いで参りましたが、貴方がムロン ニューマン男爵で相違ありませんか?」
その言葉を聞いたニューマンは、ハーメル伯爵の使いと信じ込み返事をし、
近くに寄って来た。
「そうだ、私が、ムロン ニューマンだ。
それで、ハーメル伯爵からの伝言とは」
「はい、嘘です」
「何!」
「その瞬間、控えていたジョゼがニューマンの心臓に剣を刺した」
「ぐふっ」
ダリルが剣を抜くと、ニューマンは倒れ、動かなくなった。
「さぁ、次の部屋に行くよ」
「はい」
次の部屋にいたニューマンの妻と息子を倒してから屋敷に火を放った。
「ジョゼ、2階から外に出るよ」
その言葉を聞いたジョゼは、アーロンに抱き着いて、脱出した。
その後、イリスと合流し、逃げ出して来た者達を、次々に倒していった。
1階では、エレノアとアンネが各部屋を回り、屋敷内に居た者達を倒していたが
途中で兵の詰め所の扉を開けてしまい、その場で戦闘を行っていた。
魔法なら有利に戦闘を行えるが、狭い屋敷の中での経験が無かった二人は苦戦を強いられていた。
「エレノア、まだいける?」
「うん、大丈夫よ」
「でも、このままじゃ・・・」
「私に任せて!」
エレノアは、魔法を唱えた。
「ファイアウォール」
突然目の前に、敵と自分達を遮る様に、炎の壁が立ち塞がった。
そして、その様子は、外からも発見できた。
「イリス、ちょっと行って来るよ」
「アーロン、私が行くわ!」
「はい・・・」
イリスは、炎の壁に向かって飛んで行き、エレノアとアンネを救出した。
そして、2人を下ろすと、屋敷に向けて魔法を放った。
「ボルケーノ」
イリスが唱えた瞬間、屋敷の建っている地面から、火山の様に炎が噴き出し、
全ての物を焼き払った。
アーロン達は、上空に上がり、そのまま王都の空を飛んだ。
一方、ポール達も夜襲を掛けようとしていたが、伯爵は兵を配置しており、中々突入が出来ずにいた。
「何なの、この屋敷、庭が広すぎない」
「練習場も兼ねているのだろう」
「ポールさんどうするの?」
「人質の有無が分からないから迂闊に攻めれないしな」
その時、ハーメルの屋敷の位置を把握していたアーロンが上空に現れた。
「ポールさん、あれ!」
ポールが見上げると上空で浮いているアーロンを発見し、合図を送った。
その合図に気付いたアーロンは、皆に伝え、少し離れた所に着地した。
「アーロン、そっちはどうだ」
「はい、イリスのせいで屋敷が無くなりました」
「アーロン、帰ったら覚えておきなさいよ!」
「ごめん・・・」
「その様子だと、終わったのだな」
「はい」
「なら、丁度良い、俺達を敵の屋敷まで連れて行ってくれ」
「いいですよ」
「よし、なら最初は、俺とボードンとメルティを頼む」
「分かりました」
アーロン達は、ポールの指示に従い、屋敷に運び込んだ。
「ポールさん、全員運びましたが、他に何かありますか?」
「いや、十分だ、後は、離れて待機していてくれたら有難い」
「わかりました、待機していますから何時でも読んで下さい」
アーロン達は、屋敷から離れて待機する事にした。
そして、運んでもらったポール達は2階から忍び込み全員がそれぞれの扉の前で待機し、
合図と共に飛び込むと、ポールの目の前には、鎖に繋がれた女がいた。
「お前は、捕まったのか?」
「私は、ハーメル様に買われ、妻にされた奴隷です」
「なんだと・・・どういうことだ」
「私は、奴隷として買われ、その後、子を2人産みましたが
欲しかったのは、後継ぎだったらしく娘も鎖でつながれて奴隷として此処で暮らしています」
「もう1人の子は?」
「男の子でしたから後継ぎとして生活しています」
「そうか・・・」
「あの・・・お願いがあります、どうか、私を殺して下さい」
「生きようとは思わないのか」
「はい、私は妻と言っても名ばかりで、ずっとここで鎖に繋がれて生活しています。
なのでお願いです、どうか殺して下さい」
「質問するが、もし此処を出られたらどうする?」
「そのような事が出来るのですか?」
「例えばの話だ」
「そんな夢のような話はお止め下さい」
「なら聞こう、おれが、新しい生活を準備してやると言ったらどうする」
女は、下を向いていたが、ポツリと呟いた。
「・・・・・生きたいです」
「そうか、最後に1つ聞くが、娘は助けるが息子とハーメルは殺す。
その事を納得出来るか?」
「あの人達は、他でも酷い事をしていたのですね、
私には、どうすることも出来ませんし、貴方を恨むつもりもありません」
「わかった、助けてやる」
ポールは、他の部屋で鎖に繋がれていた娘を母親の元に連れて行き2人の鎖を断ち切った。
「そのまま待て」
ポールは、アーロンを呼び、2人を預けた後、生き残っていた息子の首を落とした。
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