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そう決めて、酒場の前で、隠れて見張りを続けた。
暫くすると、ロルフ達は、酒瓶を持ったまま、酒場から出て来た。
酒場を出てからは、空き地に屯し、近くを通りがかった人達にちょっかいを掛けていた。
「褒められた行動じゃないな」
「ほんとだね、なんでこんな奴と結婚しようと思うんだろう」
「調べてわかったんだが、レオ デール準男爵家からアギト商会に融資の相談があって
それを受ける代わりに今回の縁談の話が出たそうだよ」
「そっか、それで娘の相手の事を調べる事にしたんだね」
「そうみたいだよ」
まだ、数日の調査だったが、良い報告は出来そうにないと思った。
それから数日後、ロルフが、女友達のディアナと2人で会っていた。
2人は、食事を摂った後、宿屋に入って行った。
その様子は、魔法のオーブに記録を撮った。
2人は、宿を出た後、いつも行く若手酒場ワングに行き、
後から来た3人と合流した。
その日は、飲み会が終わった後、ロルフは、一度解散した後、
コッソリと、もう一人の女友達のパティと合流し、そのままパティの家に泊まった。
「あーもう真っ黒だな」
「証拠も十分撮れたしね」
ギルドに戻り、ギルマスに報告書を書いて渡した。
「アーロン、どうだった」
「真っ黒ですね」
「やはりそうか・・・」
「噂通りのクズでした。
この短期間に2人の女と関係を持っていましたので
間違いありません」
「わかった。
ご苦労だった」
その後、依頼主に報告し、この件を終えた。
それから数日後、レオ デール準男爵はアギト商会を訪れた。
「主人のアギトはいるか?」
「はい、お待ちください」
奥から、アギトが出てきてレオ デール準男爵に挨拶をした後、
応接室に案内した。
応接室に入り、2人は、婚約についての話をした。
「デール様、この度はどうか致しましたか」
「まぁ、言葉にするのも不快でしかないのでこれを見てくれ」
そう言って報告書を映した紙を見せた。
アギトの顔色は、どんどん変わっていった。
「これは、事実なのか・・・・」
「ああ、悪いと思ったが、娘の為に調べさせてもらったんだ」
「そうか・・・・」
アギトは、報告書を握ったまま、目に涙を浮かべていた。
「ここまで馬鹿な事をしているとは・・・・」
「アギトよ、今回の話は無かった事にさせてもらうぞ
それに、我が娘の経歴に傷をつけたのだ。
その件についてもしっかり賠償を請求するからな、そのつもりでいろ!」
そう言って、アギト商会を後にした。
その日の夕方、何も知らないロルフが戻って来ると
アギトに呼び出され、婚約が無くなった事を告げられた。
「父上、なぜですか、なぜ急に無くなったのですか」
「ロルフよ、お前に心当たりは無いのか」
「はい、私には、まったく身に覚えがありません」
「そうか・・・」
アギトは、黙って机の上に報告書を置いた。
「これは?」
「読んでみろ」
ロルフは、その紙を手に取った。
そして、内容を読む度に、顔色が青くなっていった。
「どうだ、何か言う事はあるか」
「・・・・・」
ロルフは、反論することが出来なかった。
「私は、お前を甘やかし過ぎたようだ。
今後は、我が商会の下っ端として働くように。
もし、断るのであれば、後は継がさんし、家も追い出す。
「そんな・・・・」
「当然だ、お前の行為が許されると思うな、
折角の良縁を潰したばかりか、飲む度に関係の無い人達に絡んだり、
二股をかけるような男をどう許せと言うのだ」
「はい・・・」
ロルフは、俯いたまま動かなくなった。
「下っ端からやり直せ、わかったな」
「・・・はい」
「それから、当分、小遣いもないぞ」
そう告げると、アギトは、部屋を出て行った。