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アーロンが襲撃される少し前、森の中を静かに駆け回る連中がいた。
その連中の動きを捕らえてリーナは、魔法を放った。
「エクスプロージョン」
一瞬にして大爆発が起こり、森の中を駆けていた連中にも被害がでた。
「敵襲!」
襲撃者の叫んだ言葉は、森中に響き渡り、森に潜んでいた殺気が一気に溢れ出した。
「全員、気を抜くなよ、また何処からか仕掛けてくるかも知れん」
突然、魔法による攻撃を受けた襲撃者達は、慎重に辺りを警戒していた。
すると、何処からか襲撃者の仲間の悲鳴が聞こえて来た。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
「な、何が起こっているんだ!」
思わず声を上げてしまった襲撃者は、次の瞬間、背後に殺気を感じたと思った時には
息を引き取っていた。
暗い森の中に何かが倒れる音しかしない状態に、1人生き残っていた襲撃者は
焦って、森の中を走り出してしまった。
大きな音を立てて走りだすと、突然、足元から凍り付いて来た。
「え!」
男は、何があったか分からず身動きも取れないままでいると
徐々に氷は体を登り始め、最後には体全体を覆ってしまった。
「ポールさん、成功しました!」
「ライザ、見事だったな」
「初めてこの魔法に挑戦しましたけど、凄い威力ですね」
「そうだな、俺も驚いたよ」
「ライザ、良かったわね」
「はい、リーナさん、有難う御座います!」
そう言って、ライザはリーナに抱き着いた。
その後、ポールは、氷柱となった敵を砕き、皆の元にゆっくりと歩いて向かっていった。
他の部隊の始末が終わった頃、アーロンを守るレスリーの部隊は苦戦していた。
数の上では、4対7と負けていて、ほぼ1対2で戦っていたので中々勝負がつかず
体力の限界が近づくにつれて押され始めていた。
その様子を見ていたアーロンは、そろそろ自分も戦闘に加わった方がいいかと思い
剣を抜き、家から出ようとしたが、ケリーに止められてしまった。
「アーロン、君の役目は、囮だよ。
だから、心配する必要はないよ」
「ケリーさん、でも・・・・・」
「大丈夫だよ、俺達が行くから」
そう言ってケリーとその部隊は、レスリー合流する為に進んで行った。
「レスリー、援軍に来たよ」
「いらねえよ!」
「まぁまぁ、そう言わずに受け取ってよ」
そう言って、ケリーはレスリーに剣を投げた。
投げられた剣を掴むとレスリーは、ニヤッと笑い、襲って来た敵を切り伏せた。
「懐かしいね」
「そうだな・・・」
レスリーとケリーは軽く言葉を交わすと襲撃者達に向かって走り出し、
さっきまでの光景が嘘のように軽々と敵を倒して回った。
「終わったかな」
「そうみたいだな」
レスリーは、ケリーに剣を投げ返そうとしたが、ケリーはレスリーに鞘を投げつけた。
「持っておいてもいいと思うよ」
レスリーは、大人しく剣を鞘にしまいこんだ。
「そうするよ・・・」
「そうだね」
その後、襲撃者の生き残りが居ないかを確認して回った後、全員が合流し、
王都に向けて歩き出した。
王都に到着し、ギルドで今回の件をギルマスに報告をすると
ギルマスは、今後、帝国の闇ギルドが襲ってくる可能性もある事を考慮し、
必ず、連絡がとれるようにしておくことを伝え解散となった。
アーロン達が、外にでるとすっかり太陽は昇っており、王都の人々も動き出していた。
「アーロン、市場で朝食を買って帰ろうよ」
「そうだね、そうしよう!ところで何が食べたいの?」
「う~ん、私は卵のサンドかな」
「私は、肉です!ガッツリと食べたいです」
「分かった、みんなで好きな物を買って帰ろうね」
それから、市場を回り、食事を買い自宅に戻った。
そして、その日の昼頃、突然アーロンの自宅の扉を強く叩く音がしたので
起き上がって扉を開けると、そこにはシリカが立っていた。
「アーロンさん、大変です!ポールさんのアジトが襲われました」
突然の報告に、アーロンは立ち尽くしてしまった。