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2

スタートと同時に皆が一斉に飛び出し、走って障害物を乗り越え

テーブルの上に置かれた紙を持って動き出した。

その中には、ケリー、ミハル、ポール、ライアンの姿もあった。

ケリーの引いた紙に書いてあったのは、女性下着一式だった。

それを横目で見ていたミハルは、ガッツポーズをして喜びながら自分の紙を開けた。


「商人の娘(抱いて運ぶ事)」


「え!?」


「ミハル、俺の紙を見て喜んでいるからそのような借り物になるのだ!」


ミハルは、笑いながら走っていくケリーに、『あんたも人の事言えないじゃん』と思ったけど

口には出さなかった。

その後、他のメンバーも紙を受け取り、借り物を探しに出掛けた。

ポールの借り物は、武器屋の親父、ライアンは、冒険者ギルドのギルマスだった。


「ポールさん、俺、冒険者組合のギルマスなんて知りましんよ」


「そうか!知り合いになるチャンスじゃないか!」


「そんなチャンス要りませんよ!」


ライアンは、悪態をつきながら冒険者ギルドに走って行った。

その頃、アーロンも紙を取っていた。

そして中を確認すると


「知人の女性の服を借りる(全部着て走る)」


アーロンは、全部と言う言葉に絶望した。


「無理です・・・・・」


絶望するアーロンの姿を見てイリスとタバサは、一際大きな声を出しアーロンを呼びつけた。


「アーロン、何しているの!

 こっちに来なさいよ」


アーロンは、イリスに近づくと紙を渡した。


「はぁぁぁぁぁ!女性の服、しかも全部って・・・・・」


「うん、俺もわかっているよ。

 今回は諦めよう、流石に無理だよ」


だが、肉、肉、肉と呪文を唱えていたタバサは、何が無理なのかと不思議に思い

アーロンとイリスに話し掛けた。


「何故、諦めるのですか?」


「タバサ、考えてご覧よ、俺が女装する訳だけど、その・・・

 下着も借りなければならないんだぞ」


「はい、分かっていますよ。

 ですが、無理な要素がありません」


えっ!と思ったイリスがタバサに聞いてみた。


「タバサ、アーロンが服を貸してくれと言ったらどうする?」


「貸しますよ」


「お、お前、下着も含む事になるのだぞ」


「理解していますよ、勿論、お姉さまの許可が頂ければと言う前提が付きますけど」


そう言うとタバサは、イリスを見た。

イリスは、アーロンがタバサの服を着て走れば問題の無い事は頭では分かっているが

どうしても、気持ちが許さなかった。


「そんなの駄目!!

 わ、私が貸す、貸せばいいのでしょ!」


そう言って、イリスは、アーロンの手を引いて人のいない場所に連れて行った。


「早く脱いでよ」


「イリス、本気?」


「仕方無いじゃない!

 だって、このままだと、タバサが貸す事になるでしょ、それともタバサの服が良かったの」


「そんな筈があるわけないよ!」


「だったら急いで、早く終わらそうよ」


「わかった」


イリスとアーロンは、素早く服を交換してレースに戻った。

その頃、ライアンは冒険者ギルドに着いていたが面会すら許して貰えず、

受付で必死に交渉していた。

 

「お願いですから、ギルマスに会わせて下さい」


「さっきから言ってますが、約束の無い方の面会は急用以外は

 通せません」


「ですから、借り物競争で、ギルマスを連れて行かないと駄目なんです」


「はぁ・・・」


「借り物競争の借り物がギルマスなんです!」


「無理ですので諦めてください」


ライアンは、面会すら出来ずにリタイアすることになった。

ポールも武器屋の親父に頼んだが、武器屋のチームも借り物競争に出ていたので

あっさりと断られた。

そして、ケリーは、近くの女性に頼むとあっさりと貸して貰えてダントツのトップで優勝した。

ケリーの次は、商人の娘をお姫様抱っこをしながら走ったミハルがゴールしたが

娘は、ウットリしていてゴールしても、降りようとはしなかった。


「ミハル様・・・」


「ミハル、式には呼んでくれよ」


「ケリー、ふざけるなよ!」


「ハハハ・・・」


2人がゴールの近くで話していると突然大声援が起きた。


「兄ちゃん、いい女だな!」


「似合ってるぜ!」


「わはははは、そのまま娼館で働けるぜ」


野次を受けながらアーロンは、下を向いたまま走ってゴールした。


「アーロン、お疲れ」


「ケリーさん、お疲れ様です・・・」


「似合っているじゃないか」


「止めて下さいよ、結構恥ずかしいですよ」


「まぁまぁ、皆が喜んでいるのだからいいじゃないか」


「はぁ・・・・・」


結局、借り物競争は、ケリー、ミハル、アーロンの順でゴールし、

アーロンは、タバサの希望通りの肉を手に入れた。


「イリス、タバサ、ただいま」


「アーロンさん、尊敬します」


「お前、肉が手に入ったからだろ・・・」


タバサは、返事も返さずに肉を抱きしめたまま自宅に戻っていった。


「タバサ・・・」


「アーロン、私達も帰ろうよ」


「そうだね、俺もこの恰好じゃ、落ち着かないよ」


「そうだね」


アーロンとイリスは、タバサの後を追って自宅に戻って行った。



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