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それから間もなくして、商人の数が減っていった。
その事に商業ギルドも頭を抱えていた。
表向きは、新しくこの街に入って来たカーター商店に合併した形だが
実際は、完全な乗っ取りだった。
その証拠に合併した後、元々その店で働いていた者達は誰一人として
見た事が無いからだった。
だが、証拠が無かった為に、単なる言いがかりにしかならないので手出しが出来ずにいた。
2週間が経った頃、商業ギルドの代表者のボールドは、セイン商会に出向いていた。
「ボールドさん、どの様な御用件でしょうか」
「セインさん、貴方も分かっているでしょう、今回のカーター商会の事ですよ」
「分かっていますが、どうしろと言うのですか」
その時、セインに来客があった。
「旦那様、来客の途中、申し訳ございません、ロビン商会の会長がお見えです」
ボールドは都合が良いと思い、ここに呼んで欲しいとセインに頼んだ。
セインは了承し、ロビンをこの場に呼ぶことにした。
セインとボールドの話し合いに参加する事して貰ったが
現れたロビンは、蒼い顔をしていた。
「ロビン、どうしたのだ、顔色が悪いぞ」
「聞いてくれないか、カーター商会が私の店を狙っているんだ」
「訳が分からん、詳しく話してくれ」
「分かった」
ロビンの話す内容は酷かった。
突然、カーター商会の番頭を名乗る者が店にやって来て
店を売れと言って来た。
しかし、ロビンが断ると、次の日から可笑しなことが起きた。
ロビンが注文していた商品が店に届かなった事、
また、配達員が消えてしまい商品が届かないと色々な店から苦情を貰うようになり、
後日、謝罪に伺うと既にカーター商会に仕入れ先が変わっていた。
そして、ある時、とある貴族から大量の注文が入り、配達日迄に時間もあったので
しっかりと準備して前日までに揃える事が出来た。
しかし、当日、倉庫に行くと、全てが無くなっており、配達が出来なくなった。
その事を話す為に、貴族の屋敷まで謝罪に伺ったが許して貰えず、
多額の賠償金を請求されてしまったとの事だった。
話を聞いた2人は、カーター商会の徹底したやり方に驚いていた。
「もしかして、今迄の店も同じ手口でやられたのかも知れないな」
「そうだな、それで金額は如何ほど請求されたのだ」
「金貨150枚です」
「!!」
「そんな無茶な金額!」
「わざと払えない金額を請求したんだろう」
「という事は、奴らは結託しているのか」
「だろうな、それでその貴族の名前は?」
「ソーマ オリビエ男爵です、どうしたらいいだろう」
「支払いの期日は何時だ」
「10日後です、助けて下さい!お願いします」
ロビンは、必死に頭を下げた。
「頭を上げてくれ、知り合いの貴族に相談してみるとしよう。
だが、今回の事は難しいかも知れんので期待は出来ぬかもしれんがの」
「それでも、お願いします」
その日は解散し、翌日にセインはアイビス伯爵邸に行き、グランに相談を持ち掛けた。
話を聞いたグランは、賠償金などに口を出す訳にも行かず、時間を貰う事にした。
その頃、ロビンも唯一取引のあるロゼッタ男爵に相談してみると
ロゼッタ男爵は二つ返事で了承した。
しかし、2日後、ロゼッタ男爵は死体になっていた。
ロゼッタ男爵が死んだ事にロビンは怯えてしまい、屋敷から出れなくなってしまった。
その頃、セインから相談を受けたグランは、ニルスの元に来ていた。
「グラン、相談とは何なのだ」
「セインからの話なのだが、どうやら最近この街に来たカーター商会に
上手くあしらわれて商業ギルドが困った事になっているらしいのだ」
「俺達が商業ギルドや商人同士の話に首を突っ込んでも
取りなす程度の事しか出来ないだろう」
「そうなのだが、俺達が考える程度の軽い話では無さそうなのだ、
だから、相談に来たわけだ」
「証拠とかあるのか?」
「無いが、聞いた話だと汚い手段で乗っ取りをして
この街の商いを独占しようとしている様なのだ」
「それで、証拠が見つからず、商業ギルドも頭を抱えているという事か」
「そう言う事だ、それで相談だ、クラス殿に相談できないだろうか?」
「出来ると思うが、誰が金を出すのだ?
それに、そんなに不味い事になっていたら今回の依頼以外にも金が掛かって来るぞ」
「なら、先の事は、置いておいて今回の事だけを依頼すれば良いのではないのか」
「そうだが、その金を誰が払うのだと言っているのだ」
「商人達か、商業ギルドだろうな」
「間に俺達が入って、払わすという事か?」
「時間は、掛かってしまうが、それならクラス殿にも迷惑は掛からないし
話しても問題無いだろう」
「そうだな、だが、一度手紙を送って見るよ」
「頼む」
ニルスはクラスに手紙を送り、聞いてみる事にした。
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不定期投稿ですが宜しくお願い致します。