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一方、王都を出発した騎士団も魔物の森に侵入していた。
「団長、正面より魔物の大群が迫っております」
「よし、全軍停止、前衛は防御態勢、中、後軍は攻撃態勢を維持、
攻撃範囲に入り次第、一斉攻撃に入る」
「はっ!」
騎士団が戦闘態勢を維持して待機していると、前方から魔物の集団が現れた。
「前方に魔物の集団を発見しました」
「攻撃開始!」
騎士団長の合図で、一斉攻撃が始まった。
「ギャァ!」
「グワァァ!」
魔物達は、正面から魔法や弓の攻撃を受け、次々と倒れていった。
「団長、攻撃を避けた魔物が迫ってきました」
「わかった。
前衛、防御態勢より攻撃に移行、近づいた敵を殲滅せよ」
そして、到頭、魔物と騎士団は激突した。
混戦になった為、弓矢や魔法が使いにくくなり、槍や剣を持つ者達に任せる事になった。
「グワァァ!」
「ここを抜かせるなぁぁぁ!」
数時間の戦闘後、魔物を全滅させることに成功した。
ただ、騎士団も思った以上の被害を出し、この場で倒れた者、重傷を負った者たちでの
戦線離脱者が多かった。
騎士団は、休憩を挟んだのち、隊列を組み直してから、ワイバーンの住処を目指した。
その後も、局地的な戦闘を繰り返し、人数を減らしながらもやっとの思いで
目的地の近くまで辿り着いた。
目的地に近づくにつれ、地面に転がるワイバーンの死骸が増えていき、
もの凄い腐敗臭に包まれた。
その中を、匂いを我慢しながら進むと、地一面のワイバーンの死体と
その中に冒険者達の死体が転がっていた。
「全軍停止、冒険者達の遺品の回収と近隣の調査を行え」
兵達は、タオルで口元を隠し、冒険者達の死体から遺品を回収した。
その間に、斥候に出ていた兵達が戻って来た。
「報告します、この先にもワイバーンとの戦闘の形跡があり、冒険者の死体も確認できました。
それから、ワイバーンの巣と思われる洞窟を発見しました」
「わかった。一旦捜索を中止し、進軍の準備をする」
「はっ!」
騎士団も時間は掛かったが、対列を組み、ワイバーンの巣に向けて進軍を始めた。
そして、騎士団が洞窟の近くまで行くと、血だらけの冒険者達が洞窟の前で休憩していた。
「全軍停止!」
騎士団長が、冒険者達の所に走って行き、声を掛けた。
「オスカル!」
「おっ、騎士団長様、遅いじゃねえか」
「クッ、それはすまない・・・・・」
「はは、冗談だ、ルシウス、それよりも重症者の運搬をお願いしてもいいか」
「当然だ、出来る事はさせてもらうが、その前に色々聞きたい事があるのだが」
「ああ、ワイバーンならいないぜ、全部倒した」
「本当に倒したのか」
「倒したよ、そうでなければこんな巣の前で休憩なんて出来ねえよ」
「そうだが・・・・」
「なんだ、不思議そうだな、確かに、空を飛んでいたらまだ戦っていたと思うよ」
「なら、どうやった」
「アイツら、夜になると巣に戻ってお休みするのさ。
だから、夜襲をかけた。
洞窟の入り口から、火と風の魔法を送り込み続けて殆どのワイバーンを倒し、
その後に、洞窟に突入し、生き残っていた奴らを倒しただけだ」
「お前、凄い事を考えたな」
「俺じゃないぞ、あそこのスカーレットの作戦だ」
オスカルは、スカーレットに向けて手を振った。
ルシウスは、スカーレットを見た後、オスカルに聞いた。
「あれは、Sランクのスカーレットか?」
「そうだ、見た目と違い、怖い女だぜ」
そう言ってオスカルは、笑った。
「ところで、そろそろ俺達を休憩できる場所に連れて行ってくれないか
流石に今すぐに戻れるほどの力は残っていないんだ」
「そうだな、近くにテントを張って休憩場所を作ろう。
そこでゆっくり休んでくれ」
「助かる・・・・」
ルシウスは、兵に命令して平地にテントを張らせ、冒険者達の休憩場所を作らせた。
冒険者達は、ワイバーン討伐を成し遂げたが、78名いた人数は、半数程の32名迄減っていた。
死者が出なかったチームは、Sランクの”赤き風”と”激流”の他は
Aランクの”炎舞”と”風牙”の4チームだけだった。
それから数日後、冒険者達と騎士団は、数匹のワイバーンの死体と共に王都に戻って来た。