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第1話 人間最後の日

『あると思いますか? 魔法……』



 こんな時だというのに丁寧で、落ち着いた声の主──


 その姿を確認するより先に俺は……。



「ちょっ! 何して……やばっ!」



 空と地面の判別が、こんなに難しく感じることなどあるのだろうか。


 俺は今、学校の屋上から落下の一途をたどっている。


 高校に入学して数ヵ月経つが、特別楽しいとか、つまらないということも無かった。


 そんな所謂な学生生活を送ってはいるものの、変わらぬ日常にうんざりしたり、自殺願望がある訳でも、足を滑らせた訳でも無い。


 何かが背中に触れたと感じた次の瞬間にはもう、俺は自分の身体をどうすることも出来なくなっていたのだ。


 落下によってゴォォと風を切る中にあっても、足音だけは不思議と耳に入ってきた。


 目を凝らし音源を探す俺──


 すると、光を背負い真っ黒になった人影が、目を細め俺を見下ろしているのが見えた。



「くそっ……よく見えない……」



 体勢を崩しながら、俺は犯人と思しきその者から眼を離すこと無く、そのまま落下を続けた。


 こんな状況にあっても、意外と冷静でいられるものなのだと、知らなかった自分の一面を見つけたことに、幾分頬がほころんだが、そんな自分を気持ち悪くも感じた。



「ああ……世界はスローに見えるのに、重力と加速度は裏切らないのか。人間なんかより……よっぽど信用出来るな」



 直後、一秒の長さは正確さを取り戻し、俺の身体は、激しく地面に叩きつけられた。



「…………な……んで」



 世界が紅く染まっていく中、すぐ近くでもうひとつ(・・・・・)鈍い音がした。



(……何で、お前も…………飛び降りた?)

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