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ぼくらのにゃんこ大戦争  作者: (弟)
2/2

えっ?猫と話せるんですか?

キーンコーンカーンコーン・・・・・・


「やっと終わったなぁ」


雅紀が伸びをしながらそう言う。


「結局午後は寝てただろ」


教科書を片付けながら僕が言うと、雅紀はつむじをかきながらぶっきらぼうに答える。


「本当にお前は点Pが移動した時の計算方法や、平安時代の文章の読み方が将来役に立つと思っているのか?寝ていた方がよっぽど有意義だと思う」


「役に立つのは内容でなく、その命題に取り組んで勉強する姿勢だよ」


帰り支度を終えた僕は、鞄を掴み立ち上がる。


「点Pが動かないように説得する方法を考えた方がよっぽど・・・・・・あ、ちょっと待てよ俺も一緒に帰るからよ」


雅紀が慌てて鞄を掴んで追いかけてくる。その頭の中と同じくからっぽの鞄を軽々と持ち、と言いたいところだが雅紀のテストの結果は平均より上だ。授業中は寝ているし、口では勉強なんか将来の役に立たないと言っているくせに、実は裏で勉強をしているらしい。と言っても、本人に直接問い詰めても『まあ才能っしょー』とおどけるだけで本当の事は話してくれないのでもう何も言わないけど。


「今日は女の子と下校しないんだ?」


「たまには男同士で帰ろうぜ」


僕は、ふん、と鼻で笑う。雅紀との下校の権利も、女の子同士の水面下ではドロドロとした争いが繰り広げられているというのは有名な噂である。それ故に雅紀とこうして一緒に帰る僕は、言われもない陰口を叩かれることもあるのだが。


「勝岡くんも尾上くんもまた明日ねー」


姫乃下さんが無邪気な笑顔で振り返って手を振ってくれる。


「うんまた明日」


「姫ちゃんばいばーい」


姫乃下さんと一緒に下校したいと思っている男子生徒もたくさんいるらしい。らしいというか、下駄箱の陰や校門の陰から姫乃下さんを見つめている集団がそうなんだよな。最も姫乃下さんの友人で結成された『姫ちゃんを護る会(非公認)』によってガードされているため、近付くことはできないし、何より抜け駆けすると他の男子生徒に制裁を受けるため一種の空白地帯ができているらしい。そのせいもあって、姫乃下さんに気軽に話しかけられる僕なんかは現在進行形で恨みがましい視線を受けている。


「半分くらいは雅紀のせいかも」


僕のその呟きは雅紀には聞こえず、雅紀は屈んで靴紐を結んでいる。その雅紀の背中越しに女の子の集団からの視線が痛いほど僕に突き刺さっている。勿論恨み節なんだろう。


「おっし帰ろうぜー」


男子生徒と女子生徒の謂れもない嫉妬にさらされて僕の胃が痛んでいることをこの脳天気な雅紀には伝わっていないのだろう。


「前門の虎後門の狼、か。僕関係ないのに」


明らかに使い方は間違っている諺を呟きながら、ギラギラした目を向ける校門の狼の脇を抜ける僕の胃がキリリと痛んだ。







「昨日あの芸人のSNSが炎上しててさー」



もうすぐ家というところで、雅紀がそんな話題を振ってくる。皆やってる呟くタイプの短文投稿サイトの話なんだろうけど、僕はやっていないので流し気味に相槌を打ちながら歩いていると、違和感に気づいた。


「あれ?」


「そんでさー、ん?どした?」


僕が違和感に足を止めると、雅紀も足を止める。



「なんか喧嘩してるみたいな声聞こえない?」


雅紀が耳を澄ましてキョロキョロする。


「まじだ。あの家か?ってあれ・・・・・・」


雅紀が指さしたのは少し大きめの一軒家。住宅街にあって広めの庭がついているその家は、一見するとちょっとセレブな家にも見えるのだが、


「マッドサイエンティストハウスじゃねえか」


僕らの中で通称マッドサイエンティストハウスと呼ばれる変わり者の発明家の家である。昼に白煙を上げていた事は記憶に新しい。


「昼に爆発させて警察沙汰になったとか?」


「大いに有り得るよな」


僕の懸念を雅紀が肯定する。何でも僕らが産まれる前に大ヒット商品を開発して、その特許による莫大な資産によって趣味に傾倒した結果、怪しげな発明ばかりしている癖のある御仁だ。失敗するたびに爆発を伴い、ご近所さんからは、ああまた博士の家ねなんて親しまれて(?)いる。


「ちょっと覗いてみようぜ」


雅紀が塀からこっそりと覗く。


「ちょっとだけね、ちょっとだけ」


僕もそれに追従する。


「じゃから!違うといっとろうに!」


庭先で頭にヘルメットを被った恰幅のいい老人が声を荒らげている。


「なんであのじじいヘルメット被って喧嘩してんだ?っていうか・・・・・・」


ふしゃー!老人の前には黒と白の体毛の猫が逆毛を立てている。


「猫と喧嘩してねえか?」

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