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64話 魔物の王

 Side:変異種オーク


 何カ月もかけて作り上げた魔物の群れがたった数分で崩壊した。


 進行中、突然火の雨が降ってきたと思ったらまずゴブリンの大半が殺された。

 あれだけ苦労して集めたのにたかが小さな火で簡単に殺されていくゴブリンどもに怒りが込み上がる。

 やっぱり数だけの雑魚は我々の壁にしかならないという気分にさせられた。


 だが敵からの攻撃はこれで終わらなかった。


 次いでオークとトロールに雷の弾が迫ってきた。

 こちらも大した攻撃ではないが、火の矢に比べれば威力があるためオークには即死させられるには十分な魔法だ。

 ゴブリン同様次々に同族が殺されていく。

 この時ようやく事態の深刻さに気がついた。


 攻撃している奴は最小限の攻撃で俺の軍勢を壊滅させようとしているという事に。

 そうなればこの雷の弾が終わった後の事は想像しやすい。

 今度は更に強い部下を殺すための強い攻撃がやってくる。


 すぐに迎撃のために行動を起こそうとした。

 だがそう気づいた時にはもう遅かった。


 上空で雷鳴が轟き、俺ですら大ダメージを負うであろう落雷が軍勢のど真ん中に落ちたのだ。

 主戦力を含むこの軍の主力勢力が集まっている箇所に落ちて同胞達が言葉を発する間もなく一瞬で殺された。

 1000体を優に超えていた俺の軍勢が、たった数分もしない間に100体ほどしかいなくなった。

 これではもう魔王ブローに対抗できない。


 軍勢の成れの果てを見て怒りが燃え上がった。


(どこのどいつだ。こんなこそこそ隠れて攻撃をしてくる奴はっ!!)


 邪魔をした野郎を八つ裂きにしないと気持ちは収まらない。

 その思いを伝えるべく生き残り達に向かって咆哮を上げた。


「聞けえっ、俺はこれよりこの攻撃を仕掛けた野郎を殺しに行く。俺についてこい」


 同胞達は俺の叫びに応えた。


(姿を見せない場所からの不意打ちだ。攻撃の方向以外何もわからない様に攻撃してきたところを見るに、このまま逃げるつもりだろう。そんな事はさせねえ。並みの魔物なら追跡できなかっただろうが、俺から逃げられると思うなよ)


 探索方法は臭い。

 嗅覚を最大限まで引き上げてカルバーナ全域の臭いを嗅いだ。

 森にはその地域特有の臭いがする。この森に先程のような事が出来る奴はいないとなれば必ずこの森の臭いとは別の臭いを纏っている奴がいるはずだ。

 それを探せば敵を見つけられる。


 その考え通り二匹の臭いを確認する事が出来た。


 方向も攻撃が来た方と同じ。

 まず間違いなくこいつが攻撃してきたんだ。


 そうと分かるとその二匹がいる場所に向かって走り始めた。

 生き残り共に何も言ったりはしない。

 言わずともこいつらなら確実に後をついて来ているという確信があった。


 二匹は魔法を放って疲れたのか中々その場から動こうとしない。

 姿を見せずに隠れていれば見つからないと思ってるんだろう。


 だが暫くすると臭いが移動し始めた。


(逃がすものかっ!!)


 二匹の移動速度は俺よりも遅い。

 この速度であればすぐに追いつけられる。


(……っ!?)


 どういう事か、突然一匹の臭いが消えた。


(どうなっている?)


 まるでその場から忽然と姿を消したかのように何も感じられない。

 どんなに探しても見つからない。

 一匹に嗅覚から逃れられた。


(くそがっ!! だがまだもう一匹は捉えているぞ) 


 すぐに標的を残った一匹だけに切り替えてカルバーナの森を出た。

 周囲は森を抜けて谷間へと進んでいく。


(馬鹿め。態々自ら袋小路を選んだか)


 谷間を進み暫くすると俺が追っているのを勘づいたのか逃走を諦めて立ち止まった。

 その場で待ち構える構えの様だ。


 いい覚悟だ。

 この谷間をお前の墓にしてやる。


 谷間へと入り少しして遂に俺の野望を邪魔した野郎の姿を捉えた。

 あいつかっ。


 出会いがしら咆哮を上げて相手を威嚇した。

 だが敵は咆哮を聞いてもまるで動じなかった。


 逆にこちらは嫌な汗が流れる。


「よく来たな、下等種族の王よ。華やかな洗礼の方は気に入ってくれたようだな」


 他人の不幸は蜜の味。

 そう豪語する魔族に相応しい笑いを浮かべて立っていた。


 目の前にいる相手は俺よりもさらに大きい体格をしている。

 いや、体格だけではない。膨張した筋肉に風格、果ては帯びている魔力も大きい。

 こいつは間違いなく俺と同様強者として生まれた存在であることを直感した。


 こいつはただの魔族ではない。

 上位魔族だ。


 問題なのはどれほどのレベルがあるのか。

 強い事は確かだ。

 しかし上位魔族であるにも拘らず連れていた魔族は一体のみ。それも先に帰ったという事はこいつはそれほど高い地位の上位魔族ではなさそうだ。

 そう結論を導き出した。


「……ウォーガルの差し金か? 貴様の御蔭で俺の計画は見事に潰されたぞ」


 相手は顔をしかめた。

 質問な何かがお気に召さなかったらしい。


「……テレビも電話もないから仕方がないとはいえ意外と知名度が低いよな」


 大きな溜息と共に訳も分からぬことを言い出した。


(テレビ? デンワ? 一体何のことだ?)


 手を前に出してきたので魔法攻撃に警戒して瞬時に構えを取ると、


「【絶対者のオーラ】」


「ぎゃああ」


 俺は生まれて初めて感じる全身の毛が逆立つ程の悪寒に襲われた。

 だが相手がいったい誰なのかをハッキリと分かった。


 こいつは俺の人生を変えた元凶。


「貴様が魔王ブローかっ!!」


 今にも膝を折ってしまいそうな足に力を入れ直し必死に言い返した。

 俺は魔王に絶対に屈しない。そう主張して魔王ブローのプライドを折ってやろうとした。

 だがそんな俺の態度に魔王ブローは逆に不敵に笑った。


「そうだ。これでどうしてお前の群れが狙われたのか十分に想像がつくだろう」


 想像も何も分かり切った事だ。

 俺の支配領域はこいつの支配地内にある。

 その上俺はこの魔王に反乱を企てていたんだ。


 戦う理由など十二分に揃っている。


「言っておくが、お前や主戦力をわざと残したのは俺の配下に入れる訳じゃあないぞ。既に降伏する機会は嫌というほどあったはずだからな」


「……つまりお前が俺達を生かしたのは自分の手で直接俺達を殺すためって事か」


 弱者をいたぶる遊びのような感覚。

 俺にはその気持ちが理解できた。


 そしてここで自ら姿を現した本当の理由も察しがついた。


「……だが自信過剰が過ぎたな。部下も連れずたった一人でこの数を相手にしようというのか……」


 舐めるなよっ!! そう続けようとした俺は次の言葉を紡ぐ事が出来なかった。


 右を振り返る。

 左を振り返る。

 現実が信じられずに股の下からも後ろを見たが、結果は変わらない。


「……」


 ふるふると身体が震えた。

 先程までとは別の怒りが爆発した。


「てめぇら何処行きやがったーーーーッ!!」


 ついて来ていると思っていた部下が誰一人いない。

 何時からだ?

 谷間に入る前? 森に移動中か? まさかあいつら最初に俺が飛び出した時ついてこなかったのか?

 兎に角いると思った奴らがいないのは現実。


(許せねえ)


 俺はお前達の王だぞ。

 今までさんざん俺の威で好き勝手してきたくせに状況が悪くなった途端に俺を見捨てて逃げやがったのかっ!!


「ぷっ」


 前を向くと魔王ブローが俺の姿を見て笑いやがった。

 声を殺しているが、肩は未だに震えている。


(そんなに味方に見捨てられた俺が面白いか)


 もういい。相手がどこのどいつだろうが関係ねエ。

 俺だけで復讐を成し遂げてやる。


「こうなったら俺様の真の力を見せてやる」


 そうだ。味方なんて関係ない。

 俺の力は最強なんだ。俺様に勝てる奴なんていねえんだよ。


 両腕を前に出して魔王ブローに狙いを定める。

 魔王ブローは俺が構えを取った事で笑うのを止めたが、俺の攻撃事態を止めに入る気配はない。

 それじゃあ俺の攻撃は防げねえよ。


 計画は破綻したが、復讐の主犯格である魔王ブローを殺せるのであれば結果は変わらない。

 俺を敵に回したこと後悔して死ね。


「喰らいやがれ、【催眠】!!」



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