表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/94

4話 保留異世界ロズワルド

読んでも読まなくても構いません。

主人公がきちんと世界を選んでいるという話です。

 異世界の詳細は細かい文章なんかではなかった。


 内容は世界の実際の映像だった。


 実際に向こうの世界を見る事が出来る。

 そのメリットは大きくファンタジー世界で良さそうなのもがあったら片っ端から確認していった。

 何十も世界を見れば次第に確認作業の効率も向上していく。

 更に球体(かみ)から教えてもらった絞り込み機能で条件を絞ると、自分好みな世界がいくつも見つかった。


 俺の条件に出したのは、


 種族が人間以外にも存在する事。


 人間が頂点に立っていない事。


 転移者が複数人いない事。


 この三つの条件で絞った中からスキルポイント、転移先の環境を見て行きたい世界を選択していった。


 まだ途中経過だが、これから紹介するのは、詳細まで見てきた世界の中でも特に良さそうだと感じた世界だ。



 ーーーー



 ロズワルド


 世界観:3種族の共存する貴族社会

 種族:人族、エルフ族、ドワーフ族、魔物

 安全度:6

 内容:貴族の家に転生してもらい好きなように生活してください。

 アピールポイント:転生してから学園に通っているまでに色々な事件が起こります。事件を解決して成り上がっていくと王様になる事まで可能です。

 転移先:子爵又は男爵家の嫡男

 スキルポイント:5000pt

 定員:1名



 ーーーー







 王立学園の卒業式。

 3年生の学生達が友との別れを悲しみ、新たな門出を祝う場である。


 しかしこの日の卒業式は異様な雰囲気が周囲を包み、その場の中心である舞台の上では息をするのもはばかられるような重苦しいものとなっていた。


「――――以上でお前の犯した悪行は全てだ。何か申し開きはあるか?」


「殿下、考え直して下さい。彼女は平民の娘なのですよ」


「それがどうした? お前のような女を国母にするぐらいなら彼女の方がよっぽど国母を任せられる。……自分の罪を謝罪もできない女よりもな」


「その女は殿下だけではなく、他の婚約者持ちにも手を出しているんですよ」


 女性は必死で訴える。だが男は……男達はまるで慌てた様子がない。


「その事はすでに皆承諾しているさ」


「な!?」


 女性の表情が驚き、信じられないと言った表情に変わって殿下以外の男達に顔を向けた。

 男達は全員が殿下の横にいる女に寄り添うように立つと女を安心させるように微笑んだ。


 それだけで周囲で成り行きを見守っていた女性達が頬を染めて黄色い悲鳴をあげる。


「彼女は俺達全員を救ってくれた。全員が彼女のためになら命を賭けてもいいという思いを持っている」


「俺達の気持ちは本物だ。ならわざわざ1人に絞る必要はねぇ」


「我々全員で彼女を守らと決めました。あなたの言う通り彼女はまだ国母には実力不足なのかもしれません。しかしその穴は我々が埋めてみせますよ」


「彼女にはその価値がある」


 イケメン四人の甘い言葉に場内の雰囲気はどう見ても殿下側に持って行かれている。


 救世主とかは……現れそうにないな。


 遂に殿下は今までの関係を断ち切る決定的な言葉を告げた。


「ただいまを持ってアドルフ家公爵令嬢メリアとの婚約を破棄する事をここに宣言するっ!!」


 その場に居た者達が反応をする前に婚約破棄を告げられたメリアは崩れ落ちた。



 この世界の詳細は学園生活の映像であった。


 時代背景は中世ヨーロッパ。

 種族は人間以外にもエルフやドワーフがいる。安全度6というと関係性も悪くなさそうだ。

 それにこの世界は転移ではなく、転生によって召喚する様だ。


 貴族の家の嫡男が決定である。


 そして映像の内容だが、


(これって間違いなく乙女ゲーの断罪イベントだよな。これはゲームじゃないからリアルだけど)


 映像は終わったが、その後現状を説明するスクリーンが出現した。

 そこには沢山の女性の情報も書かれていた。


 まず先程断罪されていた女性メリア。

 彼女は公爵令嬢として生まれた。

 そして生まれてすぐに殿下の許嫁となり、今まで未来の国母となるべく研鑽を積んできた。

 しかし学園に入ってから殿下に女が出来た。


 先程守られていた女性の事だろう。

 そしてここからメリアは典型的な悪役令嬢としての道を突き進み、最後には断罪されると言った内容が書かれていた。


 書かれているのは彼女だけではない。


 その次に紹介されているのはドワーフの女の子。

 ドワーフ国からの留学生だと書かれている。


 ドワーフの娘っ!? 一体どこにいるんだ、と止まった映像の中を探すと観衆の中にいる一人にスポットライトが上がった。

 どうやら彼女がドワーフの娘の様だ。


 しかしドワーフ感がない。

 身長が年齢よりも低い女の子にしか見えない。

 まぁ筋肉むきむきの髭を生やした姿をしているのもどうかと思うが、これではドワーフのイメージが崩れる。……と思っていると隣に俺のイメージ通りのドワーフがいた。

 丸太のような二の腕に短足な脚、そして長くて立派な髭を蓄えた執事服を着たドワーフ。

 鍛冶師っぽい服装でないのが残念だが、間違いなくドワーフだ。

 つまり女性ドワーフは身長が低いが外見は人間とさほど変わらず、男性ドワーフはイメージ通りの見た目をしているって事だ。

 凄く安心した。


 それから伯爵令嬢、他国の姫君、特使で入学した平民の娘と身分も出生もバラバラな女性の説明が続いていた。


(みんな綺麗な顔で不自由なく暮らしているように見えるのにみんな苦労している)


 説明には彼女達もメリアと負けず劣らずな内容だった。


 その中には殿下と一緒にいる男達関係もあるな。


 そこまで紹介されればこの世界がおおよそやってもらいたい事は分かる。

 今、紹介された女性達を救って下さいって事だろう。


 そして上手くいった暁には助けた女性と恋仲になれたり、王様になり上がる事が出来るという事だ。

 身も蓋もない言い方をすると女性を餌に男性を釣っている依頼書だ。


 でもかなりいい紹介だと思う。

 俺の場合、ラランルルーのようなのは女性の容姿を確認できないのは不安に感じる。

 それは女性の姿を見せるより見せない方が好みに合わないからという理由で却下されると可能性を低くしていると考えてしまうからだ。


 でもこの世界は強気に攻略対象の女性達を全面に押している。

 こういう世界は好感が持てる。

 彼女達が自信を持つだけの容姿を持っているからとも思うが。


 問題だと思っていたスキルポイント5000ptも調べてみると、この世界はスキルを持っている人自体がまれで一つ二つスキルを持っているだけで十分勝ち組となれる。

 取得ポイントから見ても十分なポイントだと言える。


 人間以外の種族が生活していて人間が頂点ではなく、他に転移者も見られない。

 見た所、非の打ちどころのないと言っていい内容であった。


 ではなぜすぐに選択してしまわないのか。


 それはどうしても気になる問題があったからである。

 その問題とは、エルフ族の候補者が一人もいない事だ。

 プロフィールには間違いなく、エルフ族と記載されていた。にも拘らず紹介された人物の中にはエルフは一人もいない。


 それどころか先程の断罪イベントにいた観衆の中にエルフと思える姿も一つもなかった。


 エルフがいたからと言って仲良くなれる保証はない。

 しかしできるできないの問題ではないんだ。


 元々種族がいないのなら諦めがついたが、いるなら何としてもお近づきになりたいと思うだろう。


「なんでエルフがいないんだ」


「そんなに気になるのなら聞いてみればよいじゃろ」


 聞く? どういう事だ。


「条件を絞ったのと同じ要領で疑問を聴けば答えられる範囲で答えてくれるのじゃ」


 だからそういう便利な機能とかはもっと早く言えよっ!!


 とにかくエルフがいない理由を質問すると、回答が返ってきた。

 エルフ族は自分の国から出てこない種族で、エルフ族は自分達のことを他の種族よりも高位な存在だと信じている。その為、他種族との交流は極限られた貿易のみで、それ以外は接触を避けている。


 ドワーフの方は主に国軍や冒険者関連でエルフ族よりも交流が進んでいたお蔭で近年留学制度が作られた事も書かれている。


 つまりまだ種族間の壁を越えられていない世界という事だ。


「エルフにはありがちな理由じゃの。これで分かったじゃろ。情勢的にエルフとは交流が持てんのじゃ」


 確かに交流する気もない相手と共存をできるとは思えない。理由として妥協できる回答だろう。


 だが俺はこの世界に行くかどうかを保留にした。


 安易に決めてしまうよりも他の世界を見て似た条件でエルフもいる世界があるかもと探してみる事にした。

 もしなければその時に再度検討すればいい。


 これが保留にしたい世界その一である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ