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2話 プロフィール

 白い空間へやってきたと思ったら爺喋りの球体の姿をした神に異世界転移をさせてやると言われて、俺は球体(かみ)から説明を受けることになった。




 まずもう一度確認するが、転移方法は特定の異世界へと飛ばされるのではなく、全ての事を自分で選択して転移する方法で行う。

 その為、まだ行き先も決まっていない。


 それを今から球体(かみ)の説明を聞きながら選んでいく。OK?


 球体(かみ)はまず一つ世界をタップしてみろ、と指示した。


 この大量の星の中から一つの世界。

 どれがいいかなんて当然分からないので深く考えるような事はせずに無難な一番上の左端の星をタップした。



 ーーーー


 ナナルベグ


 知性を持った種族:人間のみ

 魔法:あり

 外敵:魔物、動物

 安全度:7

 スキルポイント:10000pt

 アピールポイント:まだ未発達な世界です。前の世界での知識を使えば簡単に億万長者に成り上がれます。

 定員:3人


ーーーー



 表示されたのはタップした世界の情報だった。


 たぶん一番上が世界名だろう。

 ネーミングは世界によってだろうしスルーしよう。


 その下がこの世界の情報か。

 これで他の世界と比較していくんだな。


 しかし情報を如何読み取ればいいのか全く分からない。


「さて、プロフィールを開いたの」


 球体(かみ)は俺がプロフィールを開いたところで声を上げた。


 先程言っていたが、球体(かみ)がこれからプロフィールの説明をしてくれるようだ。


「では、まず何から話そうかのう」


 球体(かみ)は俺が聞く耳を持った所で一拍間を置いた。


 早く説明を聞きたい俺と敢えてゆっくりな口調で話す。


 この球体(かみ)はどうしてこう俺の意図を外すような事をやるんだろうな。


「そうじゃの。まずはこのプロフィールについてから話そうかの」


 絶対最初から話す内容は決まっていたと思うが、球体(かみ)はさも今決めましたって口調で話し始めた。


「先程のスクリーンに表示された世界は全て儂ら仲介者に依頼をしてきた世界じゃ。それをタップすると今のようにタップした世界の情報が簡潔に表示される」


 タップした世界の情報であることは分かっている。

 俺は頷いて球体(かみ)に続きを促した。


「では上から順に説明するぞ。一番上に書かれているのは世界名。それは一目で分かるの。次にその世界で生きておる種族じゃ。この世界の場合は人間と魔物と動物が存在しておる。そして知性を持っているのは人間だけじゃ。魔物は人間を襲う存在であると読み取れるの」


 大層な言い回しで説明しているが、そんなこと俺でも分かるぞ。


「まぁ、ここではそれ以上深く読み解く必要はない。ただその世界に存在する他の種族を見ればいいのじゃ」


「他の種族。つまり他の異世界には人間以外の知性ある種族が存在するんだな」


「その通りじゃ。知性ある種族はたくさんおるぞ」


 知性のある種族。



 その代表としてまず挙げられるのは魔族。

 人間との関係性は世界によって違ってくるが、大抵の場合は人類の敵という立ち位置である事が多い。

 人間にとって犬猿の仲といった種族だ。


 次にエルフとドワーフ。

 ファンタジー世界ではお馴染みの種族は実在していた。

 そしてこの二種類は大抵の場合は友好、もしくは中立な立ち位置にいる。


 精霊もしくは妖精。

 エルフとドワーフ同様基本無害な種族であるが、エルフとドワーフとは違い実体がない事が多い。


 最後に魔物。

 この際に該当するのは知性を有するまでに成長した高位の魔物で、知性を持つ魔物がいるかどうかは世界によって、更に強さや性格もまちまちで災害レベルの魔物もいれば、背中を預けられるパートナーになれる世界もある。



 なるほどなるほど。


「まぁ、一つの目安じゃがな。プロフィールの種族は自分のいて欲しい種族の確認をする項目じゃ」


「獣人はいないのか?」


「おるぞ。ただ亜人や魔族と一緒くたにされとる場合もあるから獣人と書かれ取らんからといっていないと言えん」


「それも自分で確認しないといけないのか」


「世界によっては魔物娘なんてのもおる。じゃが気を付けるんじゃぞ。魔物娘がおる世界じゃからと詳細を見ないで決めて後悔する場合もあるからの」


 それって過去に可愛い魔物娘がいるからとその世界をよく確認もせずに転移してパートナーになれないと知って絶望した奴がいた、って事だろ。


 ――――俺はどうだろうか?


 人間以外の種族はやっぱりいて欲しい。


 特にエルフ。

 全員が美人として統一されたような種族。

 是非とも会ってみたいと思うのが男ってものだろう。


(出来る事ならあのエルフの特徴である長く尖った耳を触らせてもらいたい!)


 おっと欲望が、


 折角の『異世界転移』なんて奇跡のような体験をしているんだ。

 人間だけしかいない世界を選ぶなんてそんな勿体ない選択をするのはどうかしていると思う。


 少なくとも人間以外にもう一種族は別の種族がいてくれないと面白くない。


「話を進めるぞ。次の説明は安全度についてじゃ」


 プロフィールを見た限り一番重要そうな説明だな。


 安全度というのは、転移先の世界の安全性を10段階に区分けした評価の事である。

 10が最も安全で、1が最も危険という評価の仕方がされている。


「その評価じゃがある程度定義付けが出来るのじゃ」


 安全度10~9。

 これは基本危険がない。俺のいた世界の様に人間のみしかおらず、死が身近になく、生活さえ安定すれば生きていく上で安全が保障されている世界だ。


 安全度8~7は魔物が生息している世界が多い。

 街の外へ出ると魔物に襲われて死亡するリスクがある。だが街を出なければ10~9と大差がない世界だ。


 安全度6~5になると人間以外に知性の持つ種族が生息する様になる。

 先程言ったエルフやドワーフが住んでいるという事だ。

 なぜ知性の高い種族が増えると安全度が下がるのかというと種族間争いや種族差別が起こったり、街や村を襲うのも計画的になるからだ。

 しかしやっぱり他の種族がいるというメリットは捨てがたい様で、この安全度の世界を選ぶ転移者は最も多いのだそうだ。

 その気持ちは十分に理解できる。


 安全度4以下からは魔族が存在する世界が多くなる。

 やはり人類の敵という認識のある魔族がいると表面上は良好な関係性を保てていても、何かの拍子に争いになるのでどうしても低く評価されるらしい。


 安全度3は戦争に発展していないまでも小競り合いが行われていて、安心して生活できない状態になっていく。


 安全度2になると小競り合いなんて小規模な物ではなくなり、種族間の戦争に突入する。

 極めて危険な世界だ。

 しかしこのような世界で勝利を掴み取る事が出来れば、その見返りは大きく、一生を遊んで暮らせるだけの報酬が約束される。その為、転移先に選ぶ転移者は少なくない。


 最後に最も危険な安全度1の世界。

 ここまでくればおおよそ想像がつくだろう。

 人間が真面に生格するだけでも困難な世界だ。流石にこの安全度1の世界を選んだ転移者はいないそうなのであまり細かく覚える必要もないだろう。


「定義にするとこんなもんかの」


 つまり一番多く選ばれる世界は安全度6~5の『安全度が高く他種族のいる世界』で、次に『スローライフ願望』のある安全度重視の8以上を選ぶ転移者と『ハイリスクだが成功すればハイリターンが見込める』安全度3~2を選ぶ転移者が続くというのが長年仲介者を務めている球体(かみ)の見解なのだろう。


 勿論、安全度が8でもエルフやドワーフのいる世界や人間しかいなくても安全度3といった世界も存在するので一概にすべてが全てこれに該当する訳ではない。

 それでもこの安全度がいい目安になるのは間違いなかった。


「次にスキルポイントじゃ。これは何となく想像がつくじゃろ」


 本当に予想通りといった内容だった。

 スキルポイントは転移した世界で使えるスキルを事前に取得する事が出来る取得ポイントの事で、世界神側の前金と考えれば分かりやすいだろう。

 前の世界での善行ポイントとかではなくて本当に良かった。


 取得できるスキル欄はスキルポイントをタップすると表示される。

 表示されるのは、スキル名と取得ポイント、スキルによってLvの三つである。

 当然ポイントが多い方が多くのスキルを取得できる。ただし気を付けないといけないのが、世界によってスキルの構成がまるで違うという事。

 スキルポイントが多くても取得ポイントがそれ以上に高い、同じスキル名なのに効果や強さがまるで違うなんてざらだ。


 今表示しているナナルベグのスキルポイントをタップして実際に確認してみると、ナナルベグも初級魔法の取得ポイントは10ptと思ったより低いが、中級で100pt、上級は1000pt、超上級は5000ptも取得ポイントが掛かる。

 これでは10000ptなんて超上級魔法二つ取得しただけで使い切ってしまう。


 ちょっとポイントが少なくないか?


「それから安全度が高い世界程ポイントを少ない傾向にある。スキルを多く与えんでも十分に生きていけるからじゃ。お主が見ている世界の安全度は7じゃからポイントは多くもなく少なくもなくと言った所じゃろう。それでも向こうの世界へ行けば十分周りよりも恵まれた勝ち組になれるのじゃ」


 確かに超上級魔法を二つも使えるようになるのは向こうでは十分なアドバンテージになる気がした。


 それにこのアピールポイントを見るにやってもらいたいのは戦闘ではなく生活レベルの向上。生産系スキルは戦闘スキルよりも必要なポイントが低く生産チートをするのなら十分すぎるポイントだと言える。


 どちらにしろこの世界には人間しかいない時点で選択する事はない。


 球体(かみ)はここまで説明してこの世界に興味があるのかを聞いてきた。

 そこで正直にこの世界を選ぶ気はないと伝えると閉じてもいいと言われたので、俺は最初のスクリーン画面に戻した。


ブックマーク・評価などは作者の力となります。

面白い、と思われましたら是非つけて下さい。

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