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21話 進んでいる様で・・・あまり進んでいない

今回はエリティアの視点の話です。

 エリティアは困惑していた。


 魔王ブローが死ぬ。

 そんな事態微塵も考えた事がなかった。


 魔王ブローは魔族の王であるだけでなく、魔王の中でも上位の力を持っている。

 勇者にも勝ったような存在に一体誰が魔王ブローを倒せるというのだろう。


 なのに魔王様は死んでしまった。


 それもたった一人の何の力も感じられないような人間に負けるなんてあり得ない。


 しかし実際に魔王様は死体に……ズタボロで原形を留められているのが不思議なぐらい破損している。

 それに自慢の角がへし折られている。


 あの絶対に曲がらないと豪語していた角がだ。


 あれでは幾ら魔王様でも生きてはいられない。


(一体何がどうなって……)


 状況をまるで理解できないままいた男が急に立ち上がった。

 さっきまでの怪我では立ち上がる事が出来ない筈だったのに何事もないように。


 そして魔王様の死体を消した。

 跡形もなく消えてしまった。


(……魔王様が死んだ……魔王様が死んだ)


 その光景を見た瞬間、私の頭は憎悪が濃くなっていった。

 混乱していたのが嘘のようにスッキリし、男を殺す事に意識が切り替わった。


 私はすぐに玉座に常備されていた槍を二本取って一本を男に向かって投げつけた。


(魔王様を殺した。奴は魔族の敵だ。男を殺す、殺す、殺す)


 投げた槍は一直線に飛んでいき無防備な左肩へと直撃した。


 こんな攻撃も躱す事のできない。

 そんな男に魔王様が殺された事に、更に憎悪が増した。


 それからの戦闘は私の優勢で常に進んでいった。

 男の身体能力は私と同等の力を持っていたけど明らかに戦闘慣れしていない。

 殺気だけは上手く隠せている様だけど技術は素人同然でしかない。

 私の槍を避けるだけで精一杯という感じだ。


 このままいけば負ける事はない。


 でも男には異常なほど多種多様な協力なスキルがある。

 スキルを使ってきたらいつ逆転されるか分かったものではない。



 そう警戒していたのに私は一瞬の油断から……パ、パンツを見られることにッ!!


(今日のパンツは残っている中でも綺麗ではあるけどかなりきわどくてなかなか履けなかったやつ……それが見られるなんて)


 倒れてからずっとガン見されてしまった。

 しかもそのお蔭で男が攻撃できなくて助かったというのが……。


 思い出しただけで悶絶するほどの羞恥と怒りを覚える。

 絶対にこの男を消してやるんだから。


 一撃での攻撃では避けられるのならと連撃に変えた。

 すると避けられはしても態勢が徐々に悪くなっていって一撃が入った。

 攻撃は浅いが、男は倒れた。このまま攻撃されれば避けるには態勢が悪い。


 チャンスだ。

 ここで止めを刺す。


 突撃をしようとする私に男は何かを投げる動作をする。


 また何かのスキルを使用したのか?

 しかし何も投げていないし、変わった事は起こらない。


 私の警戒を利用して苦し紛れの出鱈目の行動を取っただけと判断して攻撃を再開し……吹き飛ばされた。

 何もない所から急に発生した衝撃波に防御する間もなく身体が後方に向かって飛んだ。


(ダメージは……ない。風圧は凄かったけど威力はなかったのね)


 足が地に着くとすぐに態勢を立て直して男を見る。


(今のは風魔法? でも魔力を使った気配は感じられなかった。隠蔽スキルなら男の周囲全ての魔力の気配が消えるはずなのにそれもない。一体どうやって)


 でも脅威ではない。

 殺傷能力が無ければただの空気砲。

 来ると分かっていれば耐えられる。


 でもその判断は遅かった様ね。

 男は魔法の詠唱をしていた。


 たぶん空気砲を投げてすぐに始めたのでしょうね。

 もう終わり掛けている。

 今からでは止められそうにない。


 魔力の気配からして……上級以上の魔法であるのは確実。

 スキルだけでなく魔法まで上級以上なのか。


 でもこれはむしろチャンスだ。


 詠唱をしているという事はそれが終わった時に魔法が放たれる。

 それはどの魔法でも変わらない。

 放たれた時に避けて魔法の膠着を起こしている所を攻撃すればいい。


 しかし詠唱が終わっても魔法が放たれない。


(失敗した? ……いえまだ魔力は感じる。これは術式を封印したのね)


 上位の魔法使いは魔法の発動をコントロールするために詠唱を途中で止める術式で発動直前で止めて相手に隙が出来たタイミングで放つ事が出来るというけどそれも魔法を放つのとはまた別の魔法が関わっているとか何とか昔の仲間が話していた筈。


 私は本当に何と戦っているのかと男の存在を疑いたくなってくる。


 とにかくこの男は上級魔法という武器を未だに持っているという事。

 さっきとは状況が変わった。


 取れる行動は慎重に行動してわざと隙を作り魔法を放たせる。それか痛みを伴う可能性を覚悟して先程のような攻撃を続けるか。

 先程の感覚なら連撃でなら男は攻撃を避けきれない。


 でも同じ攻撃方法で果たしてこの男を殺せるか。

 ここは危険を冒さずに遠回りになっても確実な勝利を選ぶべき所。


 そう思ったが、次の男の行動を見てやめた。


「一体何のまねよ」


 男の行動は予想がつかない。

 でもこれはどう考えても一つの事を示している。


 そしてこの場では絶対にしない。


「何のまねって見ての通りだ」


 男が取った行動は戦闘態勢の解除。

 全身の力を抜いてまるで私の次の攻撃を受けるような体勢を取っている。


「舐めてるの」


「大真面目だよ。君に勝つために……一撃わざと食らう」


「一撃貰って勝つ? あなた私の一撃を食らってまだ生きてられるとでも思っているの? それを舐めているっていうのよ。あなたは強い。それは認めてあげるわ。でもそれは飽くまでも身体能力の高さと有用なスキルを多く取得しているから。あなた自身には戦士としての技術も香りも感じられない。そんな中途半端な人間に私の攻撃は耐えられる訳がないのよっ!!」


「ならその自慢の攻撃で一撃で俺を殺して見ろ。一撃で殺されるか、それとも耐えられて反撃されるか。怖くて逃げるかだ」


 カチンときた。


 お前がそういうのかと。

 さっきまで逃げていた男はどこのどいつだと言ってやりたい。

 

 激高しそうになる。


 ――――が、どうにか思いを心の奥底に仕舞い込んだ。


 "戦闘は常に冷静に徹しろ"


 私の師匠がいつも教えていた言葉を思い出す。


 男と正面からぶつかれば負ける気はしない。

 さっき言ったように能力は兎も角、男の戦闘は素人に毛の生えた程度の実力しかない。


 そうなると今回も必ず強力なスキルでの小技で乗り切ってくるはず。


 私の攻撃を受けるっていうのが嘘でなければ可能性としては私の突きを無力化するようなスキルが高いでしょうね。

 あとは嘘だった場合に最初に見せた回避系のスキルを使われる。


 ただ男の行動は予想外の事が多い。

 あれだけ自信たっぷりに言っているという事は相当な自信があるのだろう。


 それを含んだ上で私は――――攻めるっ!!


 男の目が変わった。

 先程までのあたふたしてその場凌ぎの行動ばかりとっていた男の目は動揺と焦りと甘さでまるで覚悟も感じなかったが、今の男の目は自分の死を賭けられる覚悟の決まった者の目に変わった。


 そんな覚悟を決めた者を前に逃げるのか。

 否、断じて逃げてはいけない。

 その覚悟を受け止めたうえで相手を屠る。


「安い挑発ね。でも乗ってあげる」


 私が槍を構えても男は構えを取る気配がない。

 あくまでもその格好で対峙するという事ね。


 感情が高ぶっていく。

 なのに頭はどんどんと落ち着いていく。


 久しく忘れていた感覚が甦ってきた。

 自分が戦いに集中しきっている時にしか感じられない。

 勝敗の分からない緊迫した戦いにのめり込んでいくような感覚がどんどんと研ぎ澄まされていく。


 この状態ならなんだって対応できる。

 罠があろうと打ち破っていける。


 最高の状態になったことを自覚した所で私は身を沈めると加速体勢に入った。


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