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11話 スキル選択

 フィリアン・テイルの世界には多種多様な種族が存在する。

 人間やエルフ、ドワーフなどの人型の種族。羽や角、尻尾といった人型に異なる部位がついている精霊や獣人の種族。姿形に捉われない魔族や魔物といった異形の種族。

 大雑把な部類分けをするとこの7種族に分けられる。


 この部類分けは外見の違いだけではない。


 例としては人間とエルフの違いを述べるとまず身体能力。

 人間と比べてエルフは筋力が弱く、代わりに視覚と聴覚が人間の倍は良く、魔力量の平均は人間の平均の数倍は高い。

 それに覚えるスキルも身体能力が作用してか視覚や魔法に関するスキルの取得率が異様に高い。

 その為、必然的にエルフ族の戦闘方法は遠距離主体が多くなる。

 つまり人間と姿は似ていてもまったく別の種族であるのだ。


 この身体能力、スキル、魔法の種族差はかなり重要度が高い。

 そのもっともなのが固有スキルと能力と呼ばれるものだ。

 この二つは取得するのに条件が掛かっているスキルの事。


 固有スキルはその種族でしか覚えることのできないスキル。


 例えば【魔力感知眼】。

 通常では見える事のない魔力を色として判別する事が出来るスキルだが、このスキルはエルフ族にしか取得できない。


 一方、能力は特別な個体が取得できる特別なスキル。

 覚えられるのは7種族の中で唯一魔族だけである。

 そしてこの能力が魔族の強さの秘密でもある。


 スキルの場合、必ず効果の強さに従った制限が設けられる。

 使用回数であったり、発動条件だったりだ。


 だが能力は強い効果を持ちながら制限がない。

 魔族達はスキルよりも強力な効果を持つ能力を無尽蔵に使えるのだ。


 ……そして最も残酷な事実が、人間にはこの能力どころか固有スキルもないという事だ。

 唯一固有スキルと該当するのが勇者専用固有スキルがあるだけ。

 その為、人間は決して強い種族とは言えないのだ。



 転移先の世界が決まったので、今度はスキル選びをする事になった。

 俺はスキルポイントで取得できる3つのカテゴリー。

 魔法、スキル、技についてを調べた。


 魔法と技は大して難しい事ではなかった。


 魔法は基本となる戦闘魔法、回復魔法、補助魔法とあるが、取得してしまえば魔力を消費するだけで発動する。

 効果の方も説明に書かれている事がそのまま書かれていると言える。


 技の方は正直取得する必要性が低い。

 技というのは鍛錬により先人達が編み出した技術の事で、仮に取得しても身体が技の動きを取れるようになるだけで本物には遠く及ばず、本当の意味で取得したことにはならない。


 だから魔法は殆んど取得して、技術は取得しない方向で決まった。


 しかしスキルだけは数も種類も多く、状況の把握に手間取った。

 例えば下位と上位の付いているスキル。

 フィリアン・テイルの世界のスキル取得は下位のスキルをLv10まで育てると新たに上位スキルが発現するというスキルツリー方式。


 その為、下位と上位の同じスキルを重ね掛けする事は出来ないという事が分かった。

 今行っているスキル選択は下位スキルを取らなくても上位スキルの取得が可能である。だから下位のスキルは全て取得する必要性がないという事が分かった。


「それで固有スキルと能力はなんで載ってるんだ? 俺は人間だから取得できないんだろ?」


「……あぁ、取得は出来ないけど使えないと思っています?」


「違うのか?」


「はい。この場で取得したスキルは固有スキルでも能力でも使えますよ。……あまり人間では使えないようなスキルを取得すると人間から外れた存在になるかもしれませんが」


「おいっ! それってどういう意味だ」


 どうやら俺は例外として人間でありながら固有スキルも能力も扱うことが可能ならしい。

 ただし翼がないといけないスキルや肉体を炎に変えるスキルなどといった人間の肉体では不可能なスキルを取得してしまうと転移後に人間ではない存在になっている。……そういう可能性があるそうだ。


「でも人間でも使える固有スキルは多いですから」


「この勇者スキルも使えるのか?」


「はい勿論です。何でしたら勇者スキルを全てとって本当に勇者になってみては……」


「それはいい」


 勇者なんて正義の味方俺が務まる訳がない。

 それにユクスと同じになるのはなんか嫌だ。


「固有スキルと能力については分かった。他に重要なスキルとかは?」


「そうですね。言語スキルはここで取っておかないと向こうに言った後、会話が通じませんよ」


「言葉って勝手に翻訳される物じゃあないのか?」


「そんな便利な機能ある訳ないじゃないですか」


 そうか。そうだよな。……危なかった。

 もし取り忘れていたら転移後誰とも話せないまま死んでいたな。


 言語スキルの中から【世界言語】を選んで取得スキル欄に書き込む。


 それ以外に必須なのは……衣食住の食だな。

 食べ物だけは我慢でどうにもならないからな。


 食事関連のスキルは、



 ▼食事


 【料理】Lv1

 料理をするのに補正がかかる。Lvによって美味しさが上昇。


 【料理】Lv10

 料理をするのに補正がかかる。


 【料理】Lv極

 失敗する方が厳しいほど補正が入る。殺人料理を作ってしまう人にオススメ。


 【毒料理】Lv1

 毒料理を作るのに補正がかかる。Lvによって殺傷力、見た目の良さが上昇。


 【毒料理】Lv10

 毒料理を作るのに補正がかかる。


 【ポイズンクッキングマスター】

 毒料理を極めし者。ありとあらゆる毒料理を作れる。デメリット普通の料理が作れなくなる。


 【食料生成】Lv1

 食料を生成する。Lvによって量又は質が上昇。


 【食料生成】Lv10

 食料を生成をする。


 ・

 ・

 ・


 この中からだと【食料生成】と【料理】が良さそうだな。


「食事系を取るのは正解ですね」


「食事もなにか取らないと拙いのか」


「お見せしましょうか」


 映像で今のフィリアン・テイルの食事を映してもらった。


 生焼けの肉に、カピカピのパン、中身の分からないスープ、そして巨大な芋虫の丸焼き。


 了解した。これは耐えられそうにない。

 絶対に食事スキルを取って正解だ。



 そうやって少しずつスキルの中から必要だと思うスキルを選んでは書き込んでいく。

 生活に関する者は割とすいすい決まっていった。


 一番の問題は戦闘面。

 この世界のステータスには身体能力の欄が書かれていない。

 スキルの説明には2倍にするとか書いてあるのに元々の能力値が分からないのだ。

 更に転移した直後のレベルは1から始まる。

 強さは転移者なので下級の魔物と戦える程度にはあるそうだけど間違いなく弱い。

 出来るだけ早くレベルを上げないと魔族に怯えながらの生活を一生送るか捕まるかの二つに一つになってしまう。なのでその弱みを解消するための方法を模索していた。


 最強クラスのスキルは同レベルまたは近いレベルでは大きなアドバンテージだけど大差をひっくり返す力はない。



 【吸収】

 食べた相手の力の一部を自分の物として取り込む。



 スライム専用固有スキル。

 食べれば食べる程強くなれるスキルだ。


 だが食うには戦って相手を倒さないといけない。それに吸収で取れる力も微々たる物だ。

 すぐに強くはなれない。


 それと……魔族や魔物を食わないといけないんだよな。

 オークとかは豚肉っぽいからまだ我慢できるけど人間に似ている魔族とか異形の化け物とかたぶん食うのは無理だ。


(安全にレベルを上げられる場所があればいいんだけど、そんな都合のいい場所が無いんだよな)


 レベル1のスタート。


 この問題をどうやって克服するか。

 それがスキル選びで大いに悩まされる事となった。


「……もう一度、安全な場所がないか調べてみるか」


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