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結局、1番大切なもの  作者: 魔法の杖
番外編 花を添える
7/7

第7話 一輪の花

白井たちと解散した後。

優奈は迎えの車に乗り込んだ。

窓の外を見ながら、今日の出来事を思い返す。

犯罪に手を染め続けていた白井を、救い出すことができたように思う。

真心が白井を仲間に入れたいと必死になったことでまた、優奈も救われていた。

白井が他人を拒否して、一人よがりになっている姿を見て昔の自分と重なったからだ。


「あ!優奈ちゃんだー!」

「優奈ちゃん、おはよう!」

小学五年生の頃。優奈はクラスの人気者だった。

家がお金持ちであることは、大きなアドバンテージであった。

流行りのものはすぐに買ってもらえた。

クラスで流行っているペンケースも、優奈はすでに数種類持っていた。

クラスメイトに消しゴムやシールをあげることもよくあった。


「席についてー。この前のテストを返すぞ」

先生が授業を始めた。教室はテスト返しに大ブーイングである。

優奈の名前が呼ばれる。

「すごいな、皆見。また100点か」

先生が嬉しそうに話しかけてくる。

「ありがとうございます」

優奈は微笑んでお礼を言った。


「優奈ちゃんすごーい!いっつも100点じゃん」

「ありがとう」

「今度勉強教えてよ!」

「いいわよ。田中さんは筆算が苦手かしらね」

「うん!割り算、難しくない?」

「じゃあ少し前まで戻ってやる必要がありそうね」

「ありがとう!優奈ちゃん!」

田中は嬉しそうに去っていく。

あの子の下の名前を優奈は知らない。

知って何になるのだろう?

優奈のうわべしか見ていない有象無象のことなど興味がなかった。


たまたまお金持ちの家に生まれて、家庭教師がいて、習い事もしている。

優奈は器用であるため、特に苦手なこともなかった。

そして、人口の数パーセントしかいない能力者でもあった。

彼女の能力は「他人の能力を視る」こと。

特に情報収集と危機回避に特化した能力であった。

毎日学校に行って、習い事のために家に帰る。

習い事が終わったら、お風呂やご飯を済ませて寝る。

危険な能力者とは距離をとる。

すべて持っているから、なにもなかった。

毎日がつまらなかった。


放課後。いつものように迎えが来る。

迎えを待つ間、優奈はグラウンドを見ながらぼうっとしていた。

すると、グラウンドの端の木陰にしゃがみこんでいる女の子が見えた。

迎えが来るまであと十分ほどあった。

優奈は好奇心の赴くまま、その女の子の方へ向かった。


砂を踏みしめる音が女の子の耳に入ったのだろうか。

ツインテールの女の子は優奈を見上げた。

「何をしているの?」

優奈は問うた。

「えっとね、お花を育ててるの!」

女の子は優奈に向かってふわっと微笑みながらそう言った。

彼女の足元を見ると、何輪かの花が小さく咲いていた。

「花を咲かせる能力…」

優奈はぼそっとつぶやいた。

「なんでわかるの!?」

女の子はびっくりして優奈を見た。

「そういうものよ」

理由は言わなかった。優奈自身の能力の話は誰にもしたことがなかった。

「そういえば、隣のクラスの皆見さんだよね?」

女の子は笑顔で聞いてきた。

「そうだけれど」

「皆見さんってすごいんでしょ?足も速くて勉強もできてお金持ち!ほんと、憧れるなあ」

優奈は否定も肯定もせず、足元の花を見つめていた。

スマホが震える。どうやら迎えの車が着いたようだ。

「さようなら」

優奈は花を見つめながら言った。

「もう行っちゃうの?もっと遊ばない?」

女の子は不思議そうに優奈を見る。

「今日はピアノのレッスンがあるの」

「じゃあ明日は?」

「家庭教師が来るわ」

「その次は?」

「お習字のお稽古ね」

女の子は目を見開いて言った。

「やっぱり、お金持ちってすごいなあ」


ああ、つまらない。みんな同じような反応、同じような目線。もううんざりだ。


今、この子を傷つけたら、面白いのかな。

この退屈な日々を壊せるかな。


花を踏みつぶしていた。一つずつ。

女の子は驚いて固まっていた。

すべてを踏みつけた後、女の子の瞳には涙が溢れていた。

「ひどいよ…」

女の子は花びらを抱えながら泣いていた。

「また咲かせればいいじゃない」

優奈はそれができないことを知っている。

泣いている女の子を残して、優奈は去った。


つまらなかった。残ったのは、優奈が泣かせた女の子だけだった。

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