第3話 拒絶
待ちに待った放課後のチャイムが鳴った。優奈が席に来る。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん!」
真心は立ち上がり、琴葉のクラスに向かった。
琴葉は一つ上の学年だったようだ。真心たちは一年生で入学したばかり。琴葉のことを知らなくて当然である。
「琴葉ちゃん!」
真心が琴葉を呼ぶと、周りがぎょっとした。琴葉はそんな周りに目もくれず近づいてくる。
「今日は白井さんに会いに行くから一緒に来てくれない?」
教室がまたどよめいた。
「いいよ…」
「ありがとう!じゃあ、行こう!」
三人は教室を後にする。教室の異様な雰囲気を琴葉は何も気にしていないようだった。
「なんで二年生の先輩たちはあんなに驚いていたの?」
優奈が答える。
「琴葉が綺麗だから」
「…」
琴葉は前を向いて歩き続けている。
(否定しないんだ…)
つくづく変わった人である。
黙々と歩いているうちに三人は商店街に着いた。
「さ、行くわよ」
優奈は路地裏への道をずかずか進んでいく。
壁に落書きがしてあったり、ゴミが落ちていたりで汚い。しかも周りから死角になっている道だ。
「ねえ、優奈。学年集会で危ないところには行かないように言われなかった?」
「言われたわよ?」
「じゃあなんで行ってるの!?」
「しっ!」
優奈が口元に人差し指を立てて静かにしろと訴えかけてくる。その鬼気迫る表情に黙らざるを得なかった。
路地は少し開けた行き止まりにつながっていた。行き止まりの空間から路地は見えない。三人は路地にそっと身を潜めた。
「なあ、白井。今日はどこ行こうか?」
「私はどこでもいいけど…」
「じゃあ今日はあのコンビニにしようぜ。夕方はバイトしかいなくてやりやすいんだ」
「お!それ名案!じゃあ白井、今日も頼むな」
白井を含めて三人の声が聞こえる。白井以外は男性のようだ。
「今日は何を盗むの?」
白井の声だ。真心ははっとする。盗む?
「今日は…そうだな。いつものと、あとつまみを何個か頼む」
「俺、さきいかがいいー!」
「わかった。じゃあ行ってくる」
一つの足音が近づいてくる。まずい。バレる。
「…!」
白井と目が合う。白井はひどく驚いていた。
「白井ー?どうかしたか?」
行き止まりの方から声が聞こえてくる。
「なんでもない」
白井は路地の入口の方を指さす。真心たちはそろそろと着いていった。
商店街のにぎやかな通りに出てきた。白井はキッと真心たちを睨む。
「どうしてあそこにいたんだ?あいつらにバレたらどうしてくれる!」
「なんか、優奈が連れてきてくれて」
「またお前かよ!」
優奈を睨みつける白井。手は震えていた。
「あなたがいつもあそこに入っていくのを見ていただけよ」
優奈はさらりと答える。真心は感心するとともに
(優奈はストーカーなのかな?)
とも考えていた。
「てかお前らなんで私についてくるんだよ。ソフトボールならやらねえぞ。あんな仲良しごっこ」
白井は言い切る。でも。
「私は白井さんとやりたいよ。仲良しごっこ」
「うるさい。私は一人で強い。お前らは琴葉を連れてきているじゃないか。結局のところ、お前は一人では何もできない弱虫なんだな」
「そうだね。私は個人としても能力者としても弱い。昨日まで能力を知らなかったんだもん。だから、弱い私と友達になってよ。やろう、仲良しごっこ」
白井は目を見開く。でもそれは一瞬だった。
気が付けば白井は人混みの中にいた。いや、正確には白井と琴葉がいた。真心は走り出す。優奈は苦笑しながらついてきた。
白井との差はぐんぐん開いていく。そしてある瞬間。白井が消えた。前と同じだ。琴葉も置いて行かれている。真心は立ち止まった琴葉に駆け寄る。
三人とも息が上がっていた。
「ごめん…追いかけられなかった…」
「いいのよ。琴葉、ありがとう」
真心には何が起こっているのかさっぱりだった。
「なんで白井さんは消えたの?」
優奈が優しく話し出す。
「彼女の能力は二つあるわ。一つは時間を三秒止める」
「ええ!二つあっていいの!?もう一つは!?」
真心が驚きながら聞く。優奈は答える。
「時間を一分間止める」
「たぶん…私は負ける…」
琴葉も説明してくれた。
「じゃあずっと一分間止めればいいんじゃない?」
「それは不可能だわ」
優奈は言い切る。
「なんで?」
「強い能力にはそれだけ代償が伴う。時間を一分間止められるのは一日に一回がいいところかしら」
「でも…私が打ち消せないくらい…強い…」
真心は思った。みんなの能力が強すぎる、と。
「とりあえず今日は帰りましょう」
「え!白井さんを追いかけないの!?どこかのコンビニにはいるよ?」
真心は問う。
「いるでしょうね。でも探してどうするの?この市には何十軒ものコンビニがあるわ。三人で分かれたとしても琴葉以外が遭遇したら何もできないわ」
「確かにそうだけど!」
「帰りましょう。真心。また明日も白井さんを追いかければいいでしょう?」
それもそうか。真心は頷いた。
「じゃあ、また明日ね!」
「琴葉。明日も協力してくれるかしら」
「いいよ…」
「ありがとう!琴葉さん!」
琴葉は少し笑った。かわいすぎる。
三人は手を振りあって解散した。




