補助魔道士ですけど、なにか問題でも? ②
「おーい、生きてますかぁ。」
と言う昨日聞いた声と頬をツンツンと触られている感覚で、意識が覚醒する。
目を開けると、こちらを覗き込んでいたカナァと目が合う。ちなみに人の頬を突っついてたのはマナァだ。
「おはようございます?」
とカナァにいわれるが、いや、寝てませんからね。
「あら、二人も参加するんだね。」
「駆け出しの冒険者の基本だからねぇ。」
とマナァがいい、カナァはうなずいている。
「でも、マリカ、あんなにすごいのに、なんで駆け出しみたいなことやってるの?あれだけ攻撃受けてほぼ無傷だったよね?」
マナァがすごく不思議そうな表情で言う。いつの間にか砕けた口調になってる、マナァ。横でコクコクとカナァがうなずく。
「いや、だって、駆け出しだし、Fランクだし?」
と、そう聞かれることが不思議なのでそう返す。何言ってるのこの娘。
「いや、なんでFランクなのよってことよ。マリカ、レベルいくつよ。うちらは昨日の乱獲のおかげで、やっと8よ。」
とちょっと誇らしげにマナァが言う。横で控えめながらカナァも誇らしげだ。何このカワイイ生き物。私と同じ生物なの?
「えっと、20だったかな?」
確かそうだったはずと、マルフォーさんとのやり取りを思い出しつ答える。そういえば、このレベルって高すぎるんだっけ?
「はい?えっと聞き間違いかしら。10よね。うん。そうよね。」
二人して驚き戸惑った表情をし、マナァがブツブツつぶやく。
「いや、2」
「はい、ストップ。この話終了。私は何も聞かなかった。いいね。」
訂正しようとすると、乗っかる感じでマナァに止められた。
「なにか事情があるのかもしれませんが、このランクで高レベルなのはあまり公にしない方がいいと思います。上の人たちに睨まれると面倒ですから。」
とカナァが小声で教えてくれた。なるほど、目をつけられて袋叩きとか嫌ですし。まぁ、抵抗しますけどね、拳で。とりあえず、お礼を伝えると、ニコッと微笑んでくれた。カワイイなこの娘。
「で、その首飾りどうしたの?昨日着けてなかったよね?」
とマナァが話題を変えてくれた。さっきの、夢じゃなかったんだね。いや、起きてたよ。金髪ハンサム神から与えられたアミュレットが首にかけられていた。
「もらったの。」
「へぇ〜。誰から?」
「神様から。」
そう答えると、マナァは真顔になり、
「えっと、頭は大丈夫かしら?」
と熱を測るふりをする。あ、信じてないね。まぁ私もいきなりそう言われたらそう対応するかもと思っていると、カナァが、
「あんまり神様の名を使った冗談を言わないほうがいいですよ。」
と心配そうに言う。うーん、どうしたものか、と思案してると、タイミングよくというか、騒いでたからだとも思うけど、修道服をまとった若い女性がやってきた。
「すいません。そろそろ集会を始めますので、お静かにお願いしますわ。」
と注意をし、踵を返そうとしたところで、私に注目し、なにかに気づいたようだ、ていうか、アミュレットガン見されているんですけど。こちらも注視していることに気づいたようで、修道女さんは一つ咳払いをして、そそくさと去っていった。
それからしばらくして、牧師なのか神父なのかわからないけど、そんな感じの人が壇上にたち、神に祈りを捧げた始めた。さっき神様らしきハンサムさんにあったけど、いまいちこの世界の宗教がわかってないんだよねぇ。
大まかな話だと、創造神がいて、その下に火・土・水・風・光・闇の自然を司る6神がいて、大きくはその6教だけど、6神に連な数多の神々の解釈によって宗派が別れているらしい。そこまで行くとお師匠様もよくわからないとの回答だった。
そんなことを考えながら、横の二人を真似してお祈りのフリをしてると、ようやく終わったらしく、このあとの清掃活動の説明が始まった。やっとだよ。
今日の清掃活動は敷地内の草むしりがメインだそうで、私は、というか、いつの間にかセット扱いになってる3人は教会裏の墓地で作業になった。説明が終わり、出口に向かうと、修道女さんたちが、何かを配っており、それを受け取った。えっと、軍手だよねこれ。軍手を手に、驚いた表情をしてると、マナァが
「教会関係の労働をおこなうために作られてる作業用手袋、その名も『グンテ』。こういうところじゃないと手に入らない限定アイテムだよ。」
とドヤ顔カワユス。じゃない、まんま軍手なのか。間違いなく過去の迷い人の痕跡だよね、これ。なら、ねじり鎌とか、草抜きフォークはないの?って聞いたら、何言ってるんだこいつって表情された。ちょっと迷い人、軍手だけじゃなくそういう便利道具も伝えといてくださいよ。
横からカナァが、
「草抜きフォークって、骨董品のフォークみたいに歯が2本しかないものだったりします?」
と聞いてきた。やっぱりあるんだ、こっちにも。
「そうそう、そんなの。作りはもうちょっと頑丈そうなのだけどね。あるんだね。どこに売ってるの?」
「いえ、売ってはないですね。うちの孤児院の院長が普通のフォークを加工して使ってたので。でも、マリカさん、その道具なんで知ってるんですか。」
それは迷い人だからですって、その院長さんも迷い人なんじゃないの!うーん、気になる。どう説明するといいんだろう。と悩んでいると、マナァが
「早く行かないと終わらないよ!」
と先行して進んでいたところから振り返り、手を振っている。カナァがニコッと微笑み、
「近いうちに話してくださいね。」
と言い残し、マナァを追って駆け出した。置いていかれるのも嫌なので、慌てて二人の後を追った。
「帽子をかぶるべきだった。」
ぐぐーっと背伸びをし独りごちる。
炎天下ではないが、直射日光の下で3時間近く作業し続けて、ようやく当てられた作業は終了した。便利グッツの素晴らしさを身にしみて感じたよ。以前の迷い人め、もうちょっと可能な範囲で便利グッツ増やしとこうよ。ほら、ねじり鎌もそうだし、せめてタイヤ付きまでは要求しないから、小型の折りたたみイスくらい普及させとこうよ、と愚痴がとまらない。いろいろ突っ込んできてもいいマナァとカナァは少し前から、力尽き木陰で休んでいる。
とりあえず終了の報告のまえに、休んでる二人のために水をもらってきて、手渡した。二人はお礼を言い一気に飲み干した。
「はぁ、生き返るわ。」
とマナァが言い、カナァはそれを見て笑っている。そんな二人の横に座る。
一息ついたあと、カナァが話しかけてきた。
「マリカさんは、ひょっとして『迷い人』なんですか?」
別に隠し立てするようなことでもないので、「そうだよ。」と答えると、マナァは、「そんなあっさり」と笑い、カナァは、
「やっぱりそうなんですね。」
と苦笑い。
「どうしてわかったの?」
「私達の孤児院の院長さんもそうらしいので。マリカさんみたいに変わった道具のことを話してましたから。」
「でもさ、マリカも人が悪いよね。そうならそうと教えてくれればよかったのに。まぁ、マリカがすごい理由がなんとなくわかったよ。迷い人は何かしらのギフトスキルがあるっていうしね。で、何?」
「マナァなんだか遠慮なくなってきてない?こういうのって普通躊躇するよね。」
「えー、いいじゃん。減るもんじゃないし。」
「そりゃ、減らないけどさ。レベルと一緒であんまり言わないほうがいいんじゃないの?」
「普通はね。よし、マリカ、今日から私達は正式なパーティだ。今後のためにお互いのスキルを把握しておこう。」
とキリッとした顔でマナァが言う。続けて、
「そうですね。私も正式にパーティ組みたいです。マリカさん頼りになりますし。」
とカナァも乗り気。これから先のことも考え、ある意味渡りに船かなとも思い
「わかったよ。」
と了解した。
「で、スキル何?」
とキラキラした目でマナァが聞いてくる。仕方ないなぁと思いつつ、
「マナ循環だよ。」
と答えるものの、二人の表情は?マークを浮かべてた。
「えっと、初めて聞くスキルなのですが、どういったスキルなんですか?」
「攻撃魔法が使えない代わりに、防御と魔法耐性が高くなってる、かな。」
「どれくらい?」
「普通の人がどれくらいかわかんないけど、今が210かな。」
と答えると、二人は絶句してた。しばらく二人で相談して、
「これからも前衛おねがいね。」
「これからも前衛お願いします。」
と言われた。まぁこのパーティだとそうなるよね。
とりあえず、作業終了の報告へ向かう事にし、立ち上がり歩きだす。ふと、カナァが、
「そういえば、マリカさんの職業って何になるんですか?大型ではないので、盾メインってわけではなさそうですし。」
「補助魔道士だよ。」
「はい?」
「補助魔道士だよ。」
「ええと、冗談、ですよね。」
「いや、ホントなんだけど。そういえばギルドカード作るときに、リッカさんからも残念そうな目で見られたんだけど、何でかな?」
「マリカ本気で言ってる?補助魔道士って過去二人しかいない職業なんだよ。」
「あ、そうなんだ。」
「だから、なんでそんなにあっさりしてんのよ。」
「いや、だって、補助魔道士だもの。」
といい、強化魔法をかける。何かに気づいたのか、カナァが、
「自己情報を開示、ステータスチェック」
とステータス確認の魔法をつかう。この魔法、なぜか攻撃魔法扱いなので、私使えないんだよね。そんなことをよそに、カナァが驚いたように、ほへっみたいな奇声を発した。慌ててマナァもステータスチェックの魔法を使い、
「な、なんじゃこりゃぁ。」
と叫んでる。
「だから、補助魔法ですが、なにか?」
「なにか?じゃないわよ。こんなの。こんな効果だなんて初めて知ったわ。」
「そりゃ過去に二人しかいないんだったらそうなるよねー。」
「だから、軽すぎるんだって。勇者の物語とかだとほんの少しの影響みたいだったのに。」
そう言われたって、お師匠様にはこれしか教わってないし、他がどうかなんてしらないからね。そんな様子を納得はしてない様だが、とりあえずは受け入れて、作業終了の報告場所に到着した。
報告して、終了証明もらって解散だとおもってたら、さっきの修道女さんに呼び止められましたよ。そして、奥の部屋に連行。なんだかここのところ別室行きになってる気がしないでもない。
奥の部屋で、しかたなくくつろいでいると、さっきの修道女さんと、最初の方で説法説いてた高齢の牧師か神父さんが入ってきた。とりあえずたちあがる。マナァとカナァはなぜか緊張している。
「わしは光神教団の司祭、カーターじゃ。以後よろしくたのむ。」
と会釈をしたので、
「はじめまして、宮本茉莉花です。で、仲間のマナァとカナァです。」
といい、3人で頭を下げた。相変わらずガチガチに緊張してるなぁ。
着席を促され、本題に入るようだ。
「さて、わしはごちゃごちゃ前置きするのが、好きではないので、単刀直入に確認させてもらう。マリカ殿が祝福のアミュレットをお持ちだと聞いた。すまないが、見せてはもらえないか。」
という。まぁそういう要件だよね。さっきガン見されてたし。首から外して手渡そうとするも、なぜかカーターさんに渡せなかった。なんかすり抜けるんだよね。
「ほっほっほ。久しぶりに加護持ちが持つ祝福のアミュレットじゃな。」
と嬉しそうに笑う。どうやら加護持ちに与えら得る祝福のアミュレットは保有者指定がかけられているらしく、譲渡できないそうだ。神様のアイテムすごい。
「で、これはどちらで手に入れたかのう?」
「この教会に入って、椅子に座って目を閉じたら、真っ白な世界にいて、金髪のハンサムさんから受け取りました。」
と隠す必要もないので、そのまま伝えた。マナァとカナァは目を見開き、私を見る。え?なんかおかしいことでも言った?カーターさんは、目を細め、
「なるほど。光の神自らが聖域に招き、お渡しなさっとは。」
なるほど、そういう解釈になるのね。もっと軽い感じだとおもってたよ。カーターさんは何かを考える様子で目を閉じ、しばらくして目を開け、私を見つめ、
「我ら光神教団は、マリカ殿に転移部屋の使用を許可しよう。また、何かを困ったことがあれば、喜んで援助をさせていただきたい。」
と慈悲深い微笑みを浮かべながら言った。続けて、
「それでじゃ、マリカ殿は迷い人じゃな。」
と聞かれて、驚く。
「その表情からすると、あたりじゃな。まぁ、六大神の加護持ちは迷い人しかないからのう。」
「そうなんですか。」
「ああ、そうじゃ。我々にごく稀に与えられる加護は、六代神に連なる神々からもたらされるもので、六大神からの加護となると、我々とは別の世界から来たもものとなるわけじゃ。」
「なるほど。」
「お主ら迷い人は、基本教会などに縛られるのを好まんし、仮にそうでできたとしても、他宗教の奴らにつけ入る隙をあたえるだけじゃ。ただ、このまま何もしないのも光の神への冒涜になってしまう。でじゃ、解決策として、この娘をお主らのパーティに加えてくれぬか?」
といい、修道女さんを呼ぶ。
「この娘は、わしの孫なんじゃが、回復魔法と浄化魔法が使える。このまま修道女を続けるよりも、一度見聞を広げさせたいのじゃ。」
「ミシェルです。よろしくお願いいたしますわ。」
と優雅に挨拶する。
「ええと、本当にいいの?」
「ええ、お願いいたしますわ。迷い人の方と旅をするというのは、勇者様の物語のようで、たいへん心惹かれますわ。」
「そうなの?」
と横の二人に聞くと首を振られる。どゆこと?
「先の勇者様が、迷い人であったというのは教会に伝わる言い伝えみたいんもんじゃよ。六大神の加護持ちじゃったそうだからのう。」
とカーターさんが補足してくれる。ミシェルはこほんと咳払いをして、
「街道で暴れる邪竜を追い払ったり、厄介な魔獣が数多住まう沼地を街に変えるなんて、まさに神の使いとしか思えません。」
すごいな、勇者。いや、それができたから勇者と言われてるのかな。私には無理だわ。そんなこっちの気持ちを悟ってくれず、
「そんな素晴らしい冒険が私を待っているのです。」
と胸を張っておっしゃる。こちら三人はかなり引き気味だ。だって、そんなことできないからね。こちらを察してくれたようだが、孫に甘いらしく、
「すまんが、よろしく頼む。」
と頭を下げられた。なんと面倒な。
「マリカ様、これからどちら向かわれるんですか?」
明日からでいいのに、無理やり旅の準備をして、ついてきたミシェルが聞いてくる。様づけに苦笑いしつつ、
「冒険者ギルドに清掃の報告に行くよ。ついでにミシェルも冒険者の登録しちゃって。あと様付やめてね。」
「それは無理です。」
といい笑顔で言われる。
「光の神の信徒に、光の神の加護をお持ちの方を敬うなというのは無理な話ですわ。」
とのことだ。やだもー、めんどくさい。もう、諦めて話題を変える。
「そういえば、マナァとカナァは、えらく緊張してたみたいだけど、なんで?」
「なんでっといわれても、カーター様って光神教の上位司祭様の一人ですよ。私達のような一般人でも知ってるクラスの。」
「そうなの?」
「マリカ相変わらず軽いなぁ。法王猊下の次の次だよ。」
「こんな辺境の土地にそんな偉い人がなんでいるの?」
「マリカ様。この地は辺境かもしれませんが、光神教では聖地の一つですし、隠者の森の監視者という意味もありますので、それ相応の実力者がつくことになっていますの。」
なるほどと納得してたら、目的地についた。ちょうどよくリッカさんが居たので、報告とミシェルの登録をお願いし、残り3人で処理待ちがてら仕事の掲示板を眺めながら雑談していると、イチゴ屋さんが慌てて入ってきた。ちょうど目が合い、
「嬢ちゃん、すまないが、中級クラスのポーション持っていないか?もしあったら売ってくれ。」
とかなり追い詰められた感じで言う。
「薬屋に聞いたが、調合中で手持ちがないそうで、どうしても必要なんだ。」
そういえば、薬草採取の時に需要高で薬草が高くなってるって言ってたし、ポーションの場合は作製に時間がかかるとお師匠様から聞いたような気がする。
「すいません、中級ポーション持ってないです。」
と申し訳なく答える。
「いや、こちらこそ、無理言ってすまなかった。」
と言うが、かなり切羽詰まった様子だ。そこに、
「皆様、お待たせしました。」
とホクホク顔でミシェルが戻ってきたが、空気を感じ取って、
「いががなさいましたか?」
と聞いてくる。
「この方、私の知人なんですけど、すぐに中級ポーションが必要で、持ってたら売ってほしいってことなんだけど…。」
「なるほど、緊急性が高いのですね。でしたら、私に見せてくださいまし。回復と浄化魔法が使えますので。」
というと、いちご屋さんは、藁にもすがる様子で、
「お願いします、こっちです。」
といい、走り出したので、皆で後を追った。
あとをついていきながら、あれ、この道って?と思ってしまう。
付いた先が冒険者料理の宿だった。
宿に入ると、いちご屋さんはナイゼムさんと話しており、ミシェルは、エルザさんに連れられていった。治療の邪魔しちゃまずいので、3人はおとなしくロビー横の食堂で待つことにした。
しばらくして、いちご屋さんとエルザさんとミシェルがやって来た。ミシェルは、
「かなりの重傷でしたけれども、なんとか大丈夫でしたわ。あとはゆっくりと体調を戻して行く必要がありますが。」
と落ち着いて言う。無事でよかった。あと、中級ポーションクラスの回復魔法って、かなーりすごいんじゃなかったっけ。
いちご屋さんは、
「まさかミシェル様に直していていただけるなんて、感謝しても、しきれません。」
と男泣きせんばかりだ。しばらくして、皆が落ち着いたところで、エルザさんが、
「こういった恩を受けて、こうなった理由を説明しないわけには行かないよね。」
といい、いちご屋さんも頷いている。エルザさんは、続けて、
「マリカには、ナイゼムが少し話していたと思うけど、店で使っている香辛料や、こいつの店で売っている一部の野菜だが、黒白山に自生してるっと伝えてるとおもうが、実際は、魔獣の管理地、いや、そいつらが作っている畑から盗ってきてる。なぜ畑を作っているのかはわからないが、知能は高いとおもう。それで、今まではある程度見逃されていたようだが、どうやら今回は外れを引いたらしく、大怪我をして逃げ帰ってきたわけよ。」
なんか、微妙に嫌な予感するんですけど。他2名も気づいてるけど、おい1名、そんな期待した目をしちゃいけません。
「すまないが、そのあたりの原因を見つけてくれないか。」
そうきますよねー。そんな危険な魔獣がいるとこなんて、Fランクのうちらがどうにかできな、いや、なんだかんだで、できそうなんだけど、できないことにしよう。3人にアイコンタクトを取る。うまく行ったかな。3人とも頷いている。よし。と、ミシェルが、
「任せてください。マリカ様が、さくっとまるっと解決してきますよ!」
とバシッと決めポーズを決めて答える。おおう、何も通じてなかったぜ。これには、マナァとカナァも苦笑い。今更断ることもできないし、全員この宿で安く泊めてくれるとのことだったので、引き受けてしまった。魔獣が常識の範囲内の強さでありますように、そう願うしかないよね。
はい、翌日です。
只今私達は、正門前に集まっています。いちご屋さんが、黒白山の近くのボーセン村、マナァとカナァが育った村だそうで、そこに仕入れに行くらしく、同行させてもらうことになった。予定としては、村で迷い人の孤児院の院長と話をしてから、黒白山に向かうことにした。いちご屋さんに同行するということは、
「ミッミッ!」
と大走路鳥のお出ましです。ダチョウのでかいのというより、ヒクイドリのでかいのと言う方がいいのかな。蹴られたら死ぬね。
そんな二匹で大きめな荷車を引きながらでも、普通だと6時間くらいでつくそうです。マナァとカナァによると歩いて2日くらいの距離とのことで、結構なスピードだね。
そう、結構なスピードで、サスペンションもない荷台を走らせると
「揺れるー。」はい、すごい揺れます。跳ねます。
「この振動が、ぎもじわるい。。。」シェイク、シェイク、ブギな胃の中身。ちょベリベリサイテー、ヒップヘッドシェイク。と頭の中でリフレイン中です。
「お尻が割れるー。」ええ、私も2つに割れてます。
と三者グロッキーです。そうなるよねー。え、私?もちろん絶賛車酔い中ですよ。しゃべると吐きそうなので、黙ってるだけですわ。無駄なこと考えてますが。
いちご屋さんは苦笑いしつつ、開けた場所で休憩を入れてくれた。揺れない地面って素晴らしいね。
なんとか回復してきたので、あとどれくらいかかるかと聞くと、今日は天候や害獣、魔獣などの不確定要素もなかったうえ、大走路鳥が楽しそうに軽快に走ってくれたらしく、あと1時間くらいでつくとのことだった。大走路鳥がんばりすぎ。
この開けた場所が、ボーセン村と黒白山の分岐点とのことで、大走路鳥は道のせいで使えないそうで、2時間弱歩いて問題の場所に向かうとのことだ。このまま向かうと、戻ってくる頃には暗くなりそうなので、ボーセン村で一泊し、明日白黒山に行って調査、終了後また村で一泊し、エフスリーに戻ろうと相談して決めた。
皆なんとか回復したので、また揺られて、村に向かった。おおう、そんなに飛ばさなくていいよ。揺れるー。