メイド
彼女の体から煙のようなものが出ている。
これはヤバい。
人の体から出ていいものではない。
「うあぁぁあぁああぁぁ」
ドックン ドックン ドックン
彼女の心臓の鼓動が叫び声に負けないほど部屋中に響く。
【欠損部位を修復します】
無機質な声とともに目のある場所から光が放たれる。
その光は薄暗い部屋を煌々と照らした。
苦痛を伴うのだろうか、彼女は目を抑える。
しかし、手で光を遮ってなおも部屋は明るいままだ。
【修復完了】
途端に、光が収まる。
【ステータスが限界値に到達しました。覚醒完了です】
再び無機質な声が聞こえてきた。
その声を聴いたとき、何が起こっているのかわからない状況の中僕は「あぁ、やっと終わるのか」そう直感した。
だが、僕の直感に反して彼女の体から煙は収まらない。
ドクン ドクン ドクン ドクン
心臓の鼓動もさらに大きく、早くなっていく。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
これまで以上の声を上げている。
【あれっ、これはやばい】
無機質で平坦な声ではあるが取り乱している。
状況不明、未知数、異常、アンノウン】
無機質な声も状況を把握できていない。
バァン!
彼女を中心に衝撃波が放たれ僕は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
意識が朦朧とする。
視線の先にはもがき苦しんでいたはずの彼女が立っていた。
「申し訳ございません。力を制御するのに手間取ってしまいました」
彼女が立っていた。
しかし、僕に声をかけてきた彼女はいろいろと大きくなっていた。
身長とか、腕周りとか、あと胸とか・・・というか筋肉質になってない?
それなりに痩せていた体ではなく、筋骨隆々としている。
腹筋もばっちり割れている。きれいな6パックだ
ちなみに僕の腹筋は割れていない。
それに、少し年を取とったように見える。
大人な女性特有の艶やかな色気と優しげな気品にあふれていた。
僕は彼女に声をかけようとした。
しかし、朦朧とした意識は自分の体を動かすことを許さない。
僕はだんだんと意識を失っていった。
「待っていて下さい。所用をかたずけて参ります」
その言葉を聞いた瞬間、僕は完全に意識を絶った。
◇
目を覚ますと知らない天井が目に入った。
体を起こして周りを見てみる。
目に映るのは僕が宿泊している宿だ。
しかし、変わっていることが2つある。
一つは部屋がきれいになっている。
昨日は彼女から発せられた衝撃波で部屋かボロボロになっていた。
僕が今座っているベッドも原型を留めないほどバラバラになり、床や天井に刺さっていた。
それなのに、ベッドだけでなく、床や天井も傷一つない。
それどころか昨日よりきれいになっている。
そんな気がする、どころか見違えるほどきれいになっている。
そして二つ目は彼女がいないことだ。
僕が買った盲目な奴隷の少女。
彼女の姿がどこにもなかった。
部屋の外にいるかもしれない。
僕はそう思いベッド降りようとした。
「おはようございます」
誰もいないはずの部屋に彼女の声が響いた。
ブオン
かすかにそんな音が扉の方から聞こえてきた気がした。
何となく、扉の周辺が揺らいでいるように見える。
ピシっ
揺らいでいた空間にひびが入った。
バリッ
バリバリバリバリバリバリバリッ
大きな音と稲光を伴いながら空間がどんどんと裂けていった。
その空間の向こうには
「おはようございます」
メイドがいた。
次回ラスト