表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覚醒の勇者  作者: 砕鬼
5/7

覚醒補助

筋トレをしよう。

そう決断したはいいけれど、この子はおそらく筋トレとはどんなものであるかを知らないはずだ。

一応確認


「筋トレってなんだかわかる?」


「い、いいえ」


やっぱり知らなかった。


「んっと・・・あぁ!筋トレっていうのは体を鍛える手段のことだよ」


「体を鍛える?」


「そう、筋トレをすると体が強くなるんだ」


「えっと、具体的には何をするのでしょうか?」


「簡潔に言うと、重いものを持ち上げる。以上」


「それだけですか?」


「簡単に言えばね」


「とても簡単そうですね」


「まあ、細かいことを言えば態勢とか、動きとか考えなきゃいけないんだろうけどね」


筋トレで大切なのは重量を上げることだけではない。

適切なフォームでトレーニングを行い、狙った筋肉にしっかりとした刺激を与える。

「フォーム≧重量」これが重要なんだ。


「とは言っても理屈だけじゃぁ効果はない」


実際にやってみることは大事だ。

一回、僕が筋トレしているのを見せてからやってもらうほうがいい。

だけど、彼女は目が見えない。

口で説明すればいいかもしれないけど、実際にやってみた方がいろいろとわかることがある。

だから・・・




「じゃあまずはベンチの上に仰向けに転んで」


目の見えない彼女の手を取ってベンチまで誘導してからそう言った。


「足は肩幅より広めに開いて、足の裏は地面につける。膝、足首は直角に」

「背中は軽く反らせて、肩を後ろに寄せる」

「片手に一つづつ重りを持って上に持ち上げる。持ち上げたとき肘は軽く曲げて」


ベンチに横になった彼女に一つ一つ指示をだしていく。

ダンベル(仮)を持ち上げたとき、彼女から「んっ」と声が漏れた。

すこし、色っぽかった。


さあ、ここからだ。

ダンベルプレスを始めよう。


「肘を曲げながら重りを下ろしていこう」

「脇を絞めないように気を付けて」

「そうだ、いいぞ」


彼女の肘に軽く手を添えながら動きをコントロールしていく。


「胸の筋肉が収縮していくのを感じるんだ」

「脇が閉まってる。開いて」

「肘は伸ばし切らないように」


いいフォームだ。

しっかりと大胸筋が収縮しているのが目に見えてわかる。


ダンベルプレスが10回目に届くか届かないぐらいのところでダンベル(仮)が動かなくなった。


「いいか、筋トレで大事なのは限界を超えることだ。今君は自分で出せる限界を出し切っている。ここからは僕がサポートしながら、君を限界の先へ連れていく」


そう言って僕はダンベルの挙上を補助する。


「あと3回」


「・・・んっ!!」


「あと2回!」


「・・・・・・んっ!!!」


「ラストだ。がんばれ!!」


「・・・・・・・・・・んっあ!!」


やり切った。

彼女はやり切った。

自分が出せる限界を超えた力を出し切ったんだ。

なんだろう、少し感動した。

「よくやった」

そう彼女に声をかけようとした。


その時


【覚醒補助が発動しました】


無機質な声が聞こえた。


【対象者を覚醒します】


バツンッ


限界まで張った金属製のワイヤーがちぎれたようなそんな音がした。


瞬間


「あぁあああああああああああああ!!」


彼女はその姿に見合わない獣のような叫び声をあげていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ