『ドリンク・ミー』
「ドジスケくん。ひじょーに残念だけど、アリスはキミの質問に答えることができません」
よく研がれたカタナのように張り詰めた空気の中で、しかしアリスは自身のペースを崩すことなく、おどけた調子でそう言った。
しかし、その緩さに付き合っていられるほどの余裕を、聞き手であるドジスケは持っていなかった。ことは切迫している。相棒であるエインセールの無事を確認できるまで、彼はアリスの軽口を、普段のようには楽しめないのだ。
「アリスさん! この期に及んで隠し事は――!」
「ち、ち、ち。思い違いをしてもらいたくはないかなー。別に、イジワルしてるわけじゃないんだよ? アリスは秘密や謎や企みが大好きだけど、さすがに時と場所はわきまえるもんねーっ。
質問に答えられない、って言ったのはねぇ。ただ単純に、それが不可能だからなの。アリスは確かに、エインセルセルを隠しちゃった誰かさんの正体に心当たりがあります! それなりに長い付き合いで、どんな性格で、どんな性質で、どんな能力を持っているのかもよーく知っているけれど……でも、今まで一度も、『彼』の名前を聞いたことがないんだよね。
知らない名前を答えるのは、きっと神様にだって無理なんじゃないかな! あははー」
「名前を、知らない?」
思いもよらない釈明に、ドジスケはあんぐりと口を開けた。
アリスは、エインセールをさらった『彼』とやらのことを知っているようだ。しかも、ある程度の交流があることも認めた。それなのに、相手の名前という、パーソナリティの最も基本的な部分については知っていないという。そんなことが、果たしてあり得るのだろうか。
「ええっと、その。つまりそれは……エインセールの姐さんをさらったのは、名もない野生の魔物、ということなんですかね?」
「魔物? 魔物……かなあ? 人間や亜人じゃないことは確かだけど……魔物だとしても、同じ種族は見たことないし……というかアレって、そもそも生き物なのかな……? 究極的な話、そーゆーくくりに当てはまるかどうかも怪しいかも……」
珍しくアリスは、言葉を濁した。鏡の向こうで腕組みをして、首を傾げて、うーんうーんと唸っている。誤魔化しているとかか焦らしているとかではなく、本当にわからなくて困っているようだ。
そんな主の様子を見て、ドジスケも不安になってくる。名前もわからない、種族もわからない、それどころか生き物かどうかもわからない『敵』。それは結局、何なのだ? 魔物や悪党のように、立ち向かえば退治できるものなのか?
「うーん、アリスとしたことが、わからないということを認めなければならないなんて、不覚なのです……。
でもまあ、少なくともね、人や妖精を取って食うような生態は持ってなかったはずだから、その点は安心してくれていいと思うよドジスケくん! アリスの知っている『彼』の行動原理は、自分自身を純粋にすることと、自分自身を拡張することと、あと他人をからかうことの三つだけだから。食欲も性欲も睡眠欲も、そしてたぶん殺意も悪意もない。『彼』が呪いの影響をモロに受けていて、魔物のように理性を失っているとしても――自身が最初から持っている欲求が強調されるだけで、持っていない情動を新しく手に入れたりはしない。人を襲う魔物は、もともと狩猟本能としての攻撃性を持っているからこそ、呪われて人を襲うようになるんだー。だから、栄養を取る必要のない存在なら、たとえ呪われても人を襲ったりはしません! それは、これまでに調べた魔物たちの傾向を見ても明らかだね!」
自信ありげに言うアリスだが、ドジスケは理解を深めるどころか、困惑を深めていた。情報は増えているのに、それがまとまる気配がない。
「その、アリスさん。もーちょっと具体的にお願いできませんか。その『彼』とやらについて、全然知識のないあたしにも、頭の中にイメージを浮かべられるように……」
「あっと、ゴメンゴメンー。確かに、食材や調味料だけ並べて見せられても、何の料理を作るのかわかるとは限らないよね!
じゃあ、そうだねー、まずは……仮の名前を、『彼』につけてあげようか。そしたら、代名詞だけで呼ぶより、ずっとわかりやすくなると思うしぃ。
まあ、別に『彼』とは、そんなに頻繁に言葉を交わしたわけじゃないけど……アリスが、『彼』と初めて出会った時にかけられた言葉は、印象的だったから今でも覚えてる。その時のセリフを、そのまま彼の呼び名にしちゃおう。
――『ドリンク・ミー』。それが、その屋敷で起きている連続失踪事件の元凶で……エインセルセルをさらった、犯人さんの名前だよ。ドジスケくん」
語られ始めた、事件の真相。
その最初に現れたのは――ドジスケ自身、どこかで見た覚えのある、不思議な命令文であった。
■
「…………あれ?」
エインセールは、ぱちくりと目を瞬かせた。
辺りをきょろきょろと見回し、自分がどこにいるのかを確かめようとする。まず前提として、彼女はついさっきまで、屋内にいたはずだ。フックスグリューンの端にある、怪しげな無人の屋敷。彼女はほんの数秒前まで、その屋敷の部屋のひとつにいたはずだ。
ひるがえって、今現在のありさまはどうか。
彼女の足下にあるのは、ごつごつとした巨岩や砂礫で埋め尽くされた、荒れ果てた大地である。
石のタイルの床ではない。灰色で無秩序な、むき出しの地面である。それが、目の前に、ずうーっと――何百メートル――あるいは、何キロにも渡って広がっている。
「えっ、えっ……何ですこれ。えっ?」
右手と左手には、切り立った真っ黒な岩の壁。地面から天に向かって、垂直にそそり立っている。その一番高いところは、高過ぎて霞んでおり、目視することさえできない。これまた、途方もないスケールの絶壁である。
つまるところエインセールは、切り立った崖によって挟まれた、深い谷の底にいるらしかった。
どんなにひねくれた見方をしても、明白に屋外である。あまりにも開放的で、あまりにも雄大で、あまりにも武骨。部屋も屋敷も、床も壁も天井も、窓も扉も、およそ人工物と呼べるものは何もない。
さらに言うならば、相棒であるはずのドジスケの姿もなかった。
ひとりぼっちである。
見覚えのない、得体の知れない場所に、ただひとりで放り出されたことに気付いた途端――エインセールは、寂寥感という刃で、胸を深く突き刺されたような気分になった。
「ど、どどどど、ドジスケさーん!? どこですかっ、どこに行っちゃいましたかー!?
あ、いや、違う! 私だ! 私はどこに来ちゃったんですか!? ここはいったい何なんですか!? フックスグリューンのお屋敷には、どうやったら帰れるんですか!?
誰か、誰かいませんかー! ドジスケさーん! アリス様ー! だ、誰でもいいから、返事して下さーい!」
彼女はわたわたと飛び回りながら、思いつくままの言葉を虚空に向けてばら撒いた。
その取り乱しぶりときたら、エインセールがいなくなったことに気付いたドジスケの様子とそっくりであった。長らくチームを組んでいると、本人たちが意識していなくても、無意識の仕草や行動が似通ってくることはままある。
ただ、彼女は不幸にも、相談できる相手を持たなかった。アリスと通信できる魔法の手鏡はドジスケだけのもので、エインセールは持たされていない(というか、彼女の手には大き過ぎるので、渡されたとしても持ち運べない)。知り合いに助けを求めることも、助言を請うことも、励ましをもらうこともできない。
小さな妖精の小さな叫び声は、谷の中でわずかに反響したのみで、誰の耳にも届くことはなかった。
声を上げ続けても、状況がまったく好転しないと悟った彼女は――しばし呆然とし、やがて両目に涙を浮かべ、えぐえぐとしゃくり上げながら、ふらふらと谷に沿って移動し始めた。
彼女は空を飛ぶための羽根を持ってはいたが、そう高くまで行くことはできない。雲を衝くとさえ思えるような崖の上に昇ってみることを試す気にはなれなかった。
谷の幅は、目測で百メートルほど。かなり広めだ。しかし、谷の奥行きは、それどころではない。左右の崖に挟まれた道は、前後にどこまでも続いているように見える。
この先に何があるのか、エインセールは知らない。想像もつかない。いや、それどころか、何かがあると自信を持って言うこともできない。それでも進むのは、ただ単にその場に留まり続けるよりも、まだ何かしら変化を期待できるからだった。人を見つけられるかも――とか、見覚えのある場所に出られるかも――などという、事態の解決につながるような変化だけではない。わけがわからなくて、寂しくて、つらくて仕方がない自分の心を、彼女は変化させたかった。別にはっきりとした目的を持たなくても、とりあえず行動さえしていれば、ただふさぎ込んでじっとしているよりは、ポジティブになれるのではないか。
力なく、しかし迷いもなく、エインセールは飛ぶ。
どこまで行っても、見える景色は変わらなかった。無数の岩と、砂と、切り立った崖ばかり。しかし、気分は少しだけ落ち着いてきた。風に流されて、涙も乾いた。今なら、この場所に放り出された時よりは、冷静になって考えを巡らせることができそうだった。
(とりあえず、まず考えないといけないのは……私がここに来たことと、フックスグリューンの屋敷で起きていた怪事件の間に、関係があるのか、ないのかということでしょうね)
この疑問に対する答えは、『ある』に違いないと、エインセールは思った。
(私は、ほんの一瞬のうちに、ここに移動して――いえ、移動させられていました。ドジスケさんが、今もあの屋敷にいるならば……私は、パッと手品のように消えてしまったように見えたでしょう。行方不明になった、十人の冒険者たちと同じように)
(そう、きっと間違いありません。行方不明者たちは、拘束されてさらわれたわけでも、自分から姿を隠したわけでも、魔物に食われてしまったわけでもなく、私のように瞬間移動させられたのでしょう。これなら、誰にも気付かれず、暴力の痕跡も残さず、人を消すことができます)
(物体を瞬間的に別の場所に移動させることは、不可能ではありません。実際、あちこちの街に、人の移動を手助けするワープ屋さんがいたりしますし。転移術をしっかり勉強した人なら、この犯行は可能でしょう)
(しかし……たとえ可能だとしても……いったい誰が、どうして、こんなことを?)
(私は、移動させられただけで、他には何もされてないみたいです。完全にほったらかしです。もしかして、他の行方不明者たちも、そうなのでしょうか?)
(だとしたら、犯人の目的は? この場所に私を移動させること自体に、何らかの意味が?)
(……まさか、逆の可能性もある? 私に、この場所に来て欲しかったのではなくて……フックスグリューンの屋敷から、私を排除する必要があった、とか?)
(そうだとしても、それこそ、なぜ?)
思考は巡る。しかし、結論は出ない。情報が、まだまだ少な過ぎる。
(そもそも、ここはどこなんでしょう? フックスグリューンの近辺には、こんな特徴的な場所はありませんよね。鉱山都市ピラカミオンになら、こんな風な、岩だらけの谷もあるかも……ううん、それも違う気がします。広過ぎるし、人の気配もなさ過ぎです。このまままっすぐ進んで、人のいる街や集落に行き当たることができるか――という自信さえ持てないぐらい、静まり返っています)
(導きのランタンは……試しに、『フックスグリューンの屋敷へ導いて』と願ってみましょうか。どれどれ――)
(駄目、反応なし。炎の矢印が、真下を向いちゃってます。まるでこの場所が、フックスグリューンの屋敷の中だ、って言っているみたい。そんなはずないのに)
(この秘宝の機能を阻害するような、特殊な結界でも張ってあるんでしょうか? だとしたら、敵はどれだけ念入りで多芸な相手なのやら)
そんな風に思いながら、ふと下を見ると――地上で何かが、かさりと動いたような気がした。
飛ぶ速度を落とし、動きがあったように感じた場所に注意を向ける。ジャガイモみたいな形をした、ずんぐりとした大岩。その影で、はっきりと形のあるものが蠢いている。けっして気のせいではない。
それが何なのか確かめるために、エインセールは岩に近付こうとした。しかし、影の中にいた相手の方が早かった――ビョン、という空気を裂く音とともに、一本の矢が飛来し、彼女の羽根を引っかくようにしてすれ違ったのだ。
「って、わ、うわわわっ? あぶっ、危なあぁぁっ!? なに? な、何なんですか、えええっ!?」
最初の一矢が外れたからと言って、それっきりで攻撃を諦めたりする射手はいない。矢は続けざまに、二本、三本と射掛けられてきた。
エインセールは、サーカスでよく見られる空中ブランコの芸のように、きりもみしたり、宙返りしてみたりして、恐るべき飛び道具を回避していく。その動きは見事ではあったが、お世辞にも華麗とは言えなかった。とにかく必死で、かつギリギリである。さっきまで引いていた涙が、また目の端にあふれてくる。
「わーん! やめて、やめてー! 怖い、怖いです! 誰か助けてー! ドジスケさーん、アリス様ー!」
エインセールの動体視力と運動神経の手柄と言うべきか、それとも運が良かったと言うべきか。矢は次々に放たれたが、そのうちの一本たりとも彼女を傷つけることはなかった。
しかし、無茶な動きは体に負担をかける。十時間も二十時間も飛び続けたのと同じくらいの運動量を、ごく短い間に背負わされて、疲労困憊した彼女は――怪我ひとつ負っていないのに、へろへろと緩やかに、地面に落ちていった。さながら、秋の枯れた木の葉のように。
もうこれ以上飛ぶことは難しい。飛べるとしても、充分な休息を取ってからのことになるだろう。しかし、彼女を狙った襲撃者が、果たしてそんな風にのんびりすることを許してくれるだろうか?
もちろん、そんな甘い話はない。ざり、ざりと、砂利を踏みしめる足音が、エインセールの耳に入ってくる。大きな体を持った何者かが、倒れ伏す彼女にとどめを刺すべく、近付いてくる。
「ううう~……エインセールの冒険は、ここで終わってしまうのでしょうか~……。
し、死ぬ前に、ルチコル村のアップルパイ、ホールで食べてみたかったっ……!」
最後の力を振り絞って、彼女は心残りを、涙声で空に叫んだ。
――すると、どうだろう。
その言葉を聞いた襲撃者の様子が、急に変わった。今の今まで、無言の殺気と緊迫感が、ピリピリと肌で感じられるくらい放たれていたのに、それが一気に緩んだのだ。
「んん? 何じゃこいつ。人語を話したぞ?
もしかして……お、おい、ちょっと待て、マックス。武器をしまえ! わしらはとんだ勘違いをしたかも知れん! その小さいのは、魔物なんかじゃない!」
しわがれた男の声が、へたり込んだエインセールの頭上で聞こえた。
その言葉の内容と、困惑している様子とを不思議に思った彼女は、すぐそばまで歩み寄ってきていた集落姿を、恐る恐る見上げた。
薄汚れた革の服を着込み、手には短弓を握っている、大柄な男がふたり。髪に白いものが多く混ざった壮年者と、その息子のような年齢の若者だ。どちらも、背中に大きな雑嚢と矢筒を背負っている。
かなり野性的な風貌ではあるが、それでも文明の香りがする。ヒトなのだ。理性のない、魔物ではない。
「おいあんた、妖精か? すまんな、ピクシーと間違えてしもうた。有害な魔物のピクシーと、理性があって人間と交流のある妖精……どっちもそっくりじゃから、ときどき取り違えてしまうんじゃ。
それにしても、何でこんなところに一匹っきりでおるんだ? まさか、わしらのように、フックスグリューンの屋敷から、ここに飛ばされたのか?」
年寄りの方がしゃがみ込んで、おびえた表情のエインセールをなだめるように、ゆっくりと、穏やかな声で話しかけていた。
その言葉で、エインセールは状況を飲み込むことができた。
仲間なのだ、この人たちは。
あの屋敷に潜んでいた何者かによってさらわれた、冒険者たちのうちのふたり。エインセールと同じ境遇にあり、彼女よりずっと長く、この不毛の地で我慢してきた人たちなのだ。
「は、はい、あなたの仰る通りです。あの廃屋敷にいたと思ったら、突然ここに」
「ううむ、やはりそうか。災難だったな」
「あの、こちらからもおたずねしたいのですが……先ほど、そちらの方のことを、『マックス』と呼ばれましたが……も、もしかして、あなた方は……ルヴェールのハンス・ダンプトンさんと、マックス・ポロさんではないですか?」
「む? よく知っているのう。
いかにも。わしこそ、ルヴェールにその人ありと言われる大狩人、『狼狩り』のハンスじゃ」
壮年の男は大きく胸を張り、小さなエインセールを相手にその威光を示すかのごとく、堂々と名乗りを上げた。
■
「ふむ、わしらがここに来てから、もう二週間以上が経っておるとな? 意外と過ぎておるもんだな……三日目ぐらいまでは、陽の昇り降りを数えておったが」
ルヴェールの猟師であり、行方不明事件の被害者でもあるダンプトンとポロを発見したエインセールは、さっそく彼らと情報の交換を始めていた。
彼女が伝えたのは、この荒れ果てた谷底に来る直前までに、見て聞いて知った物事だ。フックスグリューンの屋敷で、ダンプトンたち以外にも、複数の行方不明者が出たこと。相次ぐ失踪事件に不審を抱いたクエスト協会が、原因調査のクエストを発注したこと。そのクエストを受けた騎士ドジスケが、キュートで頼れる相棒のエインセールとともに問題の屋敷を訪れたこと、などなど。
対して、ダンプトンは、谷にやって来てからのこと――行方不明になってから今までの間に、何があったのかを、エインセールに話した。
「わしらは、狩りの途中で休息を取ろうとあの屋敷に入って、気がついたらこの場所に立っておったのだ。
誰かにさらわれたという感覚もなかったし、悪事に巻き込まれたという意識もなかった。わけがわからんことになった、と思うばかりでな。
ここに来て以来、わしらがしていることと言ったら、ただただ食って寝るだけじゃよ。谷から出ることができないか、しばらく歩き回ったこともあったが、何十キロ歩いても景色が変わり映えせんので、今は一ヵ所にキャンプを張って留まっておる」
そうだろう? と、ダンプトンはポロに問いかける。年若いこの弟子は、師匠に比べるとずいぶんと無口で、ろくに表情も動かさず、小さく頷いただけだった。
「魔物、いるんですか? この谷をしばらく飛び回っていましたけど、生き物の気配とか、全然感じなかったんですけど」
「ああ、いるとも。フックスグリューンの草原にいるような奴らが、岩陰に潜んでおるのさ。
もっとも、個体数は断然少ないがね。一日に一、二匹、小さいのを見つけられるかどうか、といった程度だ。弓の訓練にはならんな」
この情報を聞いたエインセールは、自分の幸運に心から感謝した。
彼女には、戦闘能力は少しもない。相棒であるドジスケのサポートはするが、それはあくまで相談相手や道案内としての手助けであって、殴ったり蹴ったり、武器を持って魔物をどついたり、といったことは、思いもよらない。
もし、このふたりの猟師より先に、魔物に見つかっていたなら。彼女は、カマキリに捕まった蝶のように、なすすべもなく食べられてしまっていただろう。
「えっと、ここに来る前に、屋敷の中で何か気付いたことは? 不審な物音がしたとか、怪しい人影を見たとか?
あるいは何か、ここにワープする原因になりそうな、特別なことをしたとかはないですか?」
「何も。誰もいない、小綺麗な空き家としか思わなかった。
変なことをした覚えもない。寝やすそうな部屋に入って、すきま風の吹き込んでいた窓を閉めたことぐらいしか、屋敷の中ではしておらん。
たぶん、他の連中も似たようなもんだろう……みんな、気がついたらここに来ていた、と言っていたから。まあ、お前さんが直接会って、もう少し詳しく質問をしてみれば、少しは変わった返事が期待できるかも知れんがね」
「かも、知れませんね。どれだけやれるかはわかりませんが、一応聞いてみるだけ聞いてみます。
でも、本当にあなた方を含めて、十人全員が一緒に行動しているんですか?」
「ああ、本当だ。カジェックスの野郎からは、ドライフルーツを分けてもらってるし、『スペードの七』の連中にも、料理の時に世話になってる。行方不明者は全部で十人、間違いないんだよな?」
「ええ。たぶん私が、十一人目ということになると思います」
エインセールは、今の時点でも貴重な情報を多く手に入れていたが、中でもとりわけ興味をそそられたのは、消えた十人の冒険者が全員、同じ場所に集まって、集団生活をしているということだった。
名前も聞いてみた。サベロ・カジェックスをリーダーとした三人組と、『スペードの七』のメンバー五人。間違いなく、行方不明者リストに載っていた人たちだ。あとは本人たちに会って確認を取れば、この事件で死者が出ているかも知れない、という最悪の疑いは取り除くことができる。
ダンプトンたちに先導され、二十分ほど移動して――ついにエインセールは、行方不明者たちが暮らす、こじんまりとしたキャンプ場にたどり着いた。
そこは、まさにキャンプ場だった。巨岩と巨岩の間に、ロープと布を渡して、簡易的な屋根が作られていて、その下で人々がくつろいでいる。鎧を着た男たちは、談笑しながら武器の手入れをしていたし、女たちはたき火の周りに集まって、串に刺した肉を焼いていた。みんな、身につけているものはかなり埃っぽくなっているようだったが、エインセールが予想していたよりは、ずっと元気そうに見えた。
「戻ったぜ」
ダンプトンのその声に、集落の仲間たちは顔を上げ、軽く手を振ったり黙礼したりして、気安く挨拶した。
「お帰りなさい、『狼狩り』の旦那。今日は何か、いい獲物は獲れましたか?」
レザーメイルを着込んだ若い男が、ダンプトンに声をかける。その表情には少なからぬ敬意がこもっており、ハンス・ダンプトンがこの集まりのリーダー的な存在だということを、無言のうちに語っていた。
「今回は駄目だったな。だが、その代わりにこんなのを連れてきた。ちっこいが、どうやらわしらのお仲間らしいぜ、クレッパーソース」
そう言ってダンプトンは、その場にいた人たちにエインセールを紹介した。
彼女は人間ではなかったが、得体の知れない現象に巻き込まれて、この荒涼とした谷底に放り込まれた、という点では、他の十人と共通していた。同じ理不尽をこうむった彼ら、彼女らは、新しくやって来たエインセールをすぐに仲間だと認め、すぐに打ち解けた。
腹が減っては戦はできぬ、と、焼きたての肉をひと切れ、ふるまわれた。根が食いしん坊なエインセールは、遠慮なくかぶりついたが、柔らかくてさっぱりとした、なかなか美味い肉だった。干し肉や塩漬け肉のような保存食ではない。生肉を新鮮なうちに焼かないと出ない味だ。
「これ、何の肉です?」
「この谷で狩った、フロビィの肉だよ。それはモモの部分。こっちの串は内臓だね」
ロイ・クレッパーソース青年の言葉に、危うくエインセールは、口の中のものを吹き出しそうになった。
フロビィは、普通のカエルをスイカぐらいに大きくしたような魔物である。間近で見るとなかなかショッキングな姿をしており、食べようなんて思う人間はまずいない。
彼らがフロビィを料理しているのは、別に下手物食いだからというわけではなく、単に必要に迫られてのことだった。
「一応俺たちも、もうひと月ぐらいは食っていけるだけの携帯食を持ってはいるけどね。それでも、ここでの暮らしがあとどれだけ続くかわからないから、保存の利くものはできるだけ節約しよう、って、みんなで相談して決めたんだ。
魔物肉なら、猟をすればある程度安定して手に入るから、当座をしのぐ食料としては最適だ。フロビィはなかなか食えるし、コカトリスなんかは普通の鶏肉より脂がのってて美味いぐらいだよ。この谷じゃ、滅多に出会えないけどね」
「じ、自給自足ですか……そういえば、お水は? ここに来るまでに、水場らしいものをまったく見なかったんですけれど」
「ゼリルーを捕まえて、目の粗い布に包んでね、雑巾みたいにぎゅっと絞るんだ。そしたら、かなりの水分が採れる。それを軽く煮沸すれば、飲料水になるよ。少しとろみがあるけど、ほんのり甘みがあって悪くない」
「えええええ」
魔物を最大限に利用するサバイバル術の説明に、エインセールは驚きを隠せない。というかむしろ、ドン引きである。冒険者というのは、みんながみんな、かくもたくましいものなのか。彼らならば、この不毛の地から出られなくても、意外と充実した一生を全うしそうだ。
「でも、まあ、もちろん、牛肉のステーキだとか、生野菜のサラダとか、塩気のきいたフレンチ・フライとかも恋しいよ。家に帰れるなら、一刻も早く帰りたい。
クエスト協会が調査を始めてくれてるんなら、希望はあるんだろうけど。エインセールちゃん、実際のところ、キミの相棒の騎士さんは、どれくらいまで現状を把握してるんだい? このわけのわからない事件を解決して、俺たちを助け出してくれる可能性は、どれくらいある?」
真剣な表情で尋ねる、クレッパーソース。エインセールは、口の中の肉片を咀嚼しながら考えを巡らせ、ゴクン、と飲み込んで、答えた。
「それは……ううん、ごめんなさい。私には、はっきりしたことは言えません。
でも、ドジスケさんは意外と、頭の回るところがありますし。そのご主人様のアリス様は、説明の必要がないくらい賢い方です。今も間違いなく、私たちを救出すべく、いろいろと方策を練ってくれていると思います。
一生、この谷から出られないということにはならないでしょう。遠からずすべてを解き明かして、私たちを迎えに来てくれる、はずです」
その発言は、遭難者たちを安堵させることはできなかったが、不安を多少取り除くことには成功していた。「あの有名なアリス姫なら、あるいは……」とか、「クエスト協会が乗り出してるんなら、ほったらかしにはならないな」などといった意見を、お互いにささやき合っている。
エインセールにとって意外だったのは、ダンプトンがドジスケの名を聞いて、感心したように唸り声を上げたことだった。
「ドジスケ! 妖精の嬢ちゃんの相棒は、あの『狂乱』のドジスケだったか!
あいつはやばいな。騎士連中の中でも、特にとんがった男だ。彼なら確かに、最後までこの事件を追及してくれるだろう」
「え? き、『狂乱』?」
自分の相棒の、聞いたこともない二つ名を聞いて、エインセールは目を丸くする。
「ダンプトンの旦那、『狂乱』って、そりゃあいったい、どんな奴なんですかい?
俺らはノンノピルツに住んでましたが、そんな恐ろしげな騎士なんか、見たことがないですぜ」
エインセールに代わって、ダンプトンに尋ねたのは、サベロ・カジェックスだ。
他の仲間たちも、聞きたげに身を乗り出している。もちろん、エインセールもその一員だった。
「ふむ、聞いたことがないのも仕方がない。いばらの塔があるアルトグレンツェに出入りする冒険者たちが、勝手にそう呼んでいるだけだからな。
そのドジスケという騎士は、普段は目立たない、暗い感じの男らしいんだが……魔物との戦闘になると、様相が一変するんだ。
怪鳥の鳴くような、すさまじい奇声を発しながら、真っ赤な大鎌で敵にを容赦なく打ち据える。それも、一発や二発じゃねえ。何度も何度も、何度も何度も、相手が反撃する暇もないほど、滅多打ちにする。
俺も一度、キッツカシータの森で、ドジスケの戦いを見たことがあるが……鬼気迫る、というのかな。まさに、『狂乱』という二つ名がぴったりのありさまだったね。格下のマシュロン相手でも、余裕や油断を見せたりしない。大鎌をやたらめったらに振り回し、最後の一匹に至るまで、全身全霊で蹂躙しにかかってた。正気を手放して、魔物を抹殺するだけの現象になり果てているんじゃねぇかと思うほどだったな。
あそこまで狂気的で、活動的な騎士が事件を担当してくれているんだ。きっとその調査は、アリの巣を掘り起こして、最後の一匹まで念入りに押し潰すような、細かくて執拗で、徹底的なものに違いないぜ。だろう? 妖精の嬢ちゃん」
「え、あ、えっ……あ、は、はい、そ、そそそそうですね、ドジスケさんの戦闘スタイルは、端から見たらそんな感じかも知れませんね! あは、あははははっ」
ダンプトンの言葉に、ちょっぴり口の端を引きつらせて頷くエインセール。
まさか、自分の気弱な相棒が、そんな風な評価をされているとは、思ってもいなかった。
ダンプトンの評価は、完全に間違っている。実際のドジスケには、狂気も容赦のなさもない。ただ、戦闘の際に正気を手放している、という表現だけは的を射ていた。彼は魔物と遭遇すると、ビビってパニックを起こすのだ。
泣き叫びながら、武器を振って敵を追い払おうとする。怖いものを見てヤケになった子供が、グルグルパンチを繰り出すようなものである。
もちろん、単に子供が小さな拳をぶつけてくるだけであれば、まったく大したことはないが、ドジスケはいい大人である。装備している武器も重量級で、鋭い刃もついている。大鎌を使ったグルグルパンチであれば、一発当たれば大怪我は免れない。
しかも彼は、反撃を恐れるあまり、一度襲いかかってきた魔物は、完全に動かなくなるまで殴り続けるのだ。必死の形相で、大騒ぎしながらそれを行うので、ドジスケの本質を知らない人には、いかにも邪悪な戦闘狂のように見えてしまう――ということは、あり得るかも知れない。
ここで「いえいえあの人、そんな大層な武人じゃないですよ。ウサギやカピバラみたいな怖がり屋さんですし、仕事に対する姿勢もどっちかというと消極的ですからね?」などと、真実を暴露することもできなくはない。しかし、それで喜ぶ人は果たしているだろうか? 自分たちを助けようとしているのが、度胸もやる気もない弱虫騎士だと知らされて、「それなら安心だ、期待して待ってよう!」と思えるほど、ここにいる遭難者たちはポンコツだろうか? ただでさえ大変な目に遭っている人たちに、追い打ちをかけるようなことを言ってしまうほど、エインセールは残念ではないのだ。
「と、とりあえず、私たちはここで、どっしりと腰を据えて待っていましょう!
この谷が、世界のどこにあるのかはわかりません。フックスグリューンから、どれだけ遠い場所なのかもわかりません。でも、私たちが来れたのなら、救いの手も届くはずでしょう。希望をしっかり持って、帰れる日まで生き延びるのが、今できる最善の行動ではないでしょうか!」
「おお、妖精の嬢ちゃんの言う通りだ! 今が悪くても、元気でいさえすれば、いつかいい目に会えるってモンよ!」
パチパチと手を打ち鳴らして、ダンプトンがエインセールの言葉を褒め称える。苦境にあってなお、前向きであろうとする精神は、彼にとって非常に好感の持てるものであったようだ。
他の冒険者たちも、この猟師に賛同して拍手を始める。この場にいる人たちは、みんなポジティブであるらしい。ドジスケの本当の性格について、正直に説明しなくてよかった――と、エインセールは心から思った。
「おい、女ども、もっとじゃんじゃん肉を焼け! 今日は彼女の歓迎会をするぞ! マックス、ゼリルーの搾り汁も出してこい! 酒じゃねぇが、気分だけでも宴会にするために飲みまくるぞ!
ほれ、嬢ちゃんも遠慮はいらねえ。しゃべってノドが渇いてるだろう? ぐぐっといけぐぐっと!」
「え、ちょっ、そ、それがゼリルー汁ですか!? 待って、コップ代わりのティースプーンに入れて差し出さないで! 別にノド渇いてないっていうか、ま、まだ心の準備が……むがもごごぐびぐび!?」
(ど、ドジスケさん、アリス様! 早く私を助けに来てー!)
気のいい連中に囲まれて、美味しいものをごちそうになって――しかしエインセールは、だからこそ切実に、この場からの脱出を願ったという。
■
「『ドリンク・ミー』……ですって?」
アリスの口から語られた、その奇妙な名前を、ドジスケは咀嚼するような気持ちで聞き返した。
「ええと、ちょいと待って下さいよ……アリスさん。それ、あたしにも覚えがあるんですが。
確か……ヒトとか魔物とかの名前じゃなくて……そう、魔法の薬の瓶に書いてあった言葉じゃなかったですか?」
「うん、その通りー。不思議の国に至ったアリスの、懐かしい思い出の言葉なのです。ウサギさんを追いかけて、穴ぼこに飛び込んだアリスが、最初に遭遇したファンタジーだね!
細長い大広間、たくさんの扉、そして、その中でたったひとつだけ開けることのできる、犬猫しか通れないような小さな扉……。そこを通り抜けたいなーって思っていたアリスの目の前に、謎のお薬の小瓶が現れたのです。ただひと言、『私を飲んで』と書いてある、怪しさ満点の小瓶がねー」
アリスの言葉に相槌を打つように、ドジスケは頷く。
彼もまた、その小瓶のことを知っていた。異界の作家、ルイス・キャロルの手になる童話――【不思議の国のアリス】の中でも、特に印象的なエピソードのひとつだからだ。
「確か、こんな筋でしたよね。その薬を飲んだアリスさんの体は、みるみるうちに小さくなり、扉を潜り抜けられるようになった。しかし、うまくいかないもんで、せっかく小さくなったのに、その扉を開けるために使う鍵を、あなたは高いところに置き忘れてしまった。
これはしまったと嘆いていると、今度は『私を食べて』というメッセージの付いたケーキを見つけて……それを食べると、今度は三メートルを超えるほどに背が伸びてしまい、高いところの鍵は取れても、やっぱり小さな扉を潜れなくなってしまって……」
「そうそう! あの時は、ホントーに困り果てたのですー! 二度手間、三度手間を繰り返すと、なんてゆーか心がもわもわとして、うひーって叫び出したくなるんだよね!」
ぷくーっと頬を膨らませて、悔しさを表現するアリス。しかしドジスケは、そんな彼女を慰めるよりも、話の先を読むことに意識を回していた。
「あの、ちょいと理解が及ばないんですが。なにゆえ、そのエピソードを今、話されたんです?
その変な小瓶と、あたしたちが直面している行方不明事件とは、何の関係もないじゃないですか」
「ノンノン! それは大きな心得違いだよー、ドジスケくん!
なぜってね、そっちの屋敷でエインセルセルたちをさらった犯人と、『私を飲んで』のお薬でアリスをからかった奴は、同じ存在なんだから!」
「ええっ!? え、ちょ……つまり、その、あの小瓶の話って、仕掛け人がいた、ってことですか?」
「あったり前じゃない! ねえ、ドジスケくん? キミは、アリスが過去に体験した冒険を、異界の物語って形で読んだことがあるんだよね? 確か、ルイス・キャロルって人の書いた、【不思議の国のアリス】って童話だったかな?」
「は、はい、仰る通りです。古都から出てきて、アリスさんにお会いして……あなたが、境遇から性格まで、あまりに物語の『アリス』とそっくりなので、驚いた覚えがありますよ」
「うん。あれには、アリスもががーんって驚いたねー。アリスの人生の一部が、創作物として本になっているなんて、想像もしなかった異常事態だよ!
どっちが卵で、どっちが鶏なのか、今でもわからないし。ただの偶然、って考えるのは難しいよね? この世界のアリスが最初にいて、それをもとにキャロルさんが本を書いたのか? それとも、キャロルさんの物語が最初にあって、アリスは物語の通りに行動していただけなのか? 突き詰めて考えると、怖くなってくる気さえするよ!
でも、そのことは今は置いとく。大切なのは、【不思議の国のアリス】には、『彼』――すなわち、『ドリンク・ミー』が起こした現象については書かれてたけど、『ドリンク・ミー』自身は、キャラクターとして登場しなかったってこと!
彼は確実に存在していたのに、書かれてないなんて可哀想~! だから拗ねて、事件を起こしたのかな? ううん、さすがにそんなことはないと思うけど」
「……………………」
ドジスケは考える。アリスの言葉の意味を。その衝撃的な内容を。
屋敷で起きた事件に、アリスの体験したエピソードを当てはめる。
いくつもの扉がある広間。小さな扉。小さくなったり、大きくなったりできる薬や食べ物。
広々とした、無人の屋敷。割れていないぴかぴかの窓。煙のように消えてしまった冒険者たち。
ぞっとする可能性が、ドジスケの中で形をなしていく。
「アリスさん……ふと、思いついたんですが。
消えた人たちって、もしかして……今もまだ、あの屋敷の中にいるんですか?」
その問いかけに、鏡の中のアリスは、小さく頷いた。
「あなたは、『ドリンク・ミー』なる誰かさんをよく知っているご様子だ。ならば、『彼』がどんな能力を持っているか、把握しておられますよね?」
これにも、アリスは頷く。
「物語の中で、アリスさんは薬を飲んで小さくなったり、ケーキを食べて大きくなったりしましたね? それを踏まえて、確認したいのですが……『ドリンク・ミー』は、別にそんな小道具を使わなくても、自由自在に人の背丈を、縮めたり伸ばしたりできるんではないですか?」
みたび、アリスは頷く。
ドジスケは目を細め、背後の屋敷を振り返った。フックスグリューンに君臨するような、重々しく巨大な屋敷を。
「最後に、もうひとつお尋ねします。
……行方不明になった人たちは、殺されたとか、さらわれて別の場所に移されたとかではなくて……『ドリンク・ミー』の魔法で、体を小さくされちゃったんですか? それこそ、肉眼では見えないような……途方もない極小サイズに?」
「うん。きっと、そんなとこだねー」
アリスは、四度目の頷きを見せた。
その顔には、「よくできました」とでも言いたげな、優しい笑みが浮かんでいる。彼女は奇妙なこと、異常なことが大好きだが、必ずしも孤高ではない。他者が自分と同じ解答にたどり着けば、やはり仲間ができたような喜びを得られるものなのだった。