表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/74

第一話 ラインハルトにて

「ふぉおおおおおおっ!」

 

 チオちゃん達の案内でザクト火山の天辺に登った私は、デッカイ赤竜を見上げながら雄叫びを上げた。

 

「本当に竜がいるっ!すげえ、格好良いっ!」

「いちるさん、落ち着いて下さい」

「すっげえ綺麗っ!素敵、最高っ!」


 バシッと後頭部を叩かれ「落ち着け」とオーラン先輩に言われたけど。


「落ち着いてられるかっ!竜ですよ、竜っ!」

「確かに、こうして目の前で逢えるとは思ってもみなかったよ」

「ですよねえっ!もう感動ですよっ!」


 大興奮して一人ではしゃぎまくりつつ、少し離れた所からじっと竜を見つめてた。

 赤い鱗がキラキラ輝いてて、金色の眼でこっちを窺っている。


「ああ……、竜が生きてる、生きてるよ……」


 触りたいなあと思いながら眺めていると、ウェルさんが話し掛けて来た。


「いちるさんにとって、神様だとおっしゃってましたが」

「その通りです。もう鼻血と涎物です」


 竜から目を離さず答えながら、少し動く度に感動しまくっていた。


「チオちゃん、触っちゃ駄目かな?」

「駄目です!これ以上近付けば容赦なく攻撃されます!」

「攻撃って?炎吐いたり尻尾を振り回したり?」

「はい、いちるさんだって知らない人が家に入って来たらそうするでしょう?」


 チオちゃんにそう言われて、初めて視線を逸らしてチオちゃんを見た。


「……そっか、そうだよね。そこまで考えてなかった、ありがとう」

「いいえ、偉そうな事言ってスミマセン。ですけど、竜にとってはここは家ですから」


 確かにその通りだと、物凄い勢いで反省した。

 全然考えてなかった事を言われ、恥ずかしくなる。


「チオちゃん、私が莫迦だった。ありがとう」

「あ、いえっ、私こそごめんなさい」

「ううん、私色々勝手に思い込んでたよ。凄く反省した」


 そして、名残惜しいながらもその場を後にし、下山途中で野宿をする。


「あー、でもやっぱすっげえ綺麗だったなあ……」


 そんな事を言いながら夜空を見上げ、すげえよ、竜に会ったんだよ!と叫びたかった。


「確かに、圧倒的だったね」

「ですよね、あの存在感!」

「だな。威圧感も凄かったが」

「うむ。良い土産話が出来た」


 そう言って微笑んだギルニット隊長に、ああ、あの奥さんに話しをするのかと思うと微笑ましい。


「そういや私らって今無一文じゃ?」

「そうだね、全部使ってしまった」

「げ。美味い物食いたーいっ!ヤバイ、稼がなきゃ!」

「城に泊まれば良い。招待する」


 ディル殿下が笑いながらそう言ってくれたけど、でも、城って。


「いや、そう気軽に泊まりに行ける所じゃないでしょ、城は」

「構わない。どうせ部屋はあるのだし」

「殿下。たぶん、彼らは軍宿舎の方が宜しいかと思いますよ」

「おー、そっちならちょっと間借りさせて欲しいです」


 ウェルさんの言葉にそう言ってみれば、ウェルさんが笑いながら頷いてくれた。


「お前達は変な奴らだな」


 そう言ってディル殿下に笑われたけども。

 ウェルさんの提案で、ラインハルトの赤竜騎士団って所で指導してくれるのなら、給金を渡すと言われ、即頷いた。


「いいんですか?」

「勿論だ。君達の強さは嫌と言う程見て来たからな」

「おー……」


 思わず全員の視線がリクト隊長に集まると、リクト隊長がにっこりと笑う。


「何やらかしたのか気になるが」

「ですよねえ?」

「やだなあ、普通に戦っただけだよ」


 絶対えぐい事やったに違いない。

 それだけは解る。


「所で、チオちゃんはその赤竜騎士団に入ってるの?」

「私は元々そこにいたのですが、今は殿下の近衛隊におります」

「そっかー。チオちゃん一緒じゃないのか、残念」

「滞在中はチオが世話をすると良い」


 ディル殿下が笑いながらそう言ってくれて、チオちゃんも笑顔で「はい、解りました」と答えてくれたので、ぜひ仲良くなりたいと思う。


「チオちゃん、ラインハルトではフォーガが食べられるってウェルさんに聞いたんだけど」

「ああはい、フォーガの料理も楽しめます」

「あのね、にょろにょろって動くんだって教えてくれたんだよね」


 ウェルさんが教えてくれた通りに身体をくねらせながらそう言うと、チオちゃんが笑いながらその通りですと答え。


「イヴァリエールの獲れたての魚も美味いぞ」

「そっちも是非堪能したいです」

「じゃあ、たくさん働かないとね?」

「うお、そうでした、無一文でした。あ!港で働けないですかね?」


 良く荷運びで日銭を稼ぐとか聞くし、取り敢えずの資金を稼いでもいいんじゃないかと思ってそう言うと、ディル殿下とウェルさんが顔を見合わせ。


「しかし、あれは重労働だぞ?」

「持って来いですね。じゃあ指導係と荷運びやって金を稼ぎましょう」


 おっしゃ、これでラインハルトの美味しい物食べ尽せるぜ!と楽しみにしながら、ザクト火山を下りてラインハルトへと入った。

 関所の門とか砦も無く、山からそのまま国に入れるってのも面白い。


「そっか、竜がいるから」

「そうですね、あの山を越えて来る人はいないんです」

「……途中で竜にやられるって事?」

「はい。ラインハルトではザクト火山自体が神域となっていますし」

「うわ、ごめん、神域に入らせて貰ったのか」

「構わん。森や砂漠を超えるより安全だからな」


 ラインハルトは、自然要塞に囲まれた半島だから、とっても平和なのだと言う。

 勿論、平和と言っても色々あるから赤竜騎士団ってのがあるんだろうけど。


 そして、ディル殿下の案内の元、国王陛下に挨拶をさせて貰った私達は滞在の許可を頂いた後、ウェルさんの案内で赤竜騎士団の宿舎に部屋を借り、グライズさんと言う人を紹介して貰った。


「ディルナルド殿下が世話になったと聞いている」

「エルトと言います。左からギル、リクト、オーラン、いちるです。お世話になります」

「グライズだ。よろしく頼む」


 そして、ウェルさんの希望もあり、指導係はヴィーとリクト隊長、ギルニット隊長となり。オーラン先輩と私は港へ出稼ぎに出る事になった。


「港ってそういやこっちに来て初めてですよね?」

「イヴァリエールに近付いてねえからな」

「ですよね?すげえ楽しみです!」


 ラインハルトに着いたその日は、ディル殿下の計らいでお城で美味しい物たくさん食べさせて貰った。さすがに、国王陛下はいなかったけどディル殿下のお兄さんの一人だと言う人が来て、一緒に食べたんだけど。


「これも美味しいですから、是非どうぞ」


 と言いながら私にたくさん勧めてくれるので、勧められるままに食べ尽した。

 何故かニコニコしながら私の食べっぷりを見ているお兄さんは、私の中でかなり良い人になっている。


「あれが港です」

「おおお、船が見えるっ!ってか、海!海ですオーラン先輩!」

「判ったから落ち着け」


 チオちゃんの案内で辿り着いた港で、海だけど海じゃないその景色を堪能し、風を浴びながら思いっきり吸い込んでは、深呼吸を繰り返し。


「さて、働きますか」


 そして、荷運びの仕事は無いかと声を掛け捲り、何とか雇って貰ってオーラン先輩と私とチオちゃんまで一緒になって荷運びの仕事をし。

 夕方、その日の分だとお金を貰った。


「三人で銀十枚だ」

「ありがとうっ!」


 すげえ安く扱き使われた自覚はあるけど、無いよりはマシ。

 夕食は宿舎で食べればいいと言うチオちゃんの助言に従って、腹を鳴らしながらも通りを歩き、ついでに酒と小瓶を手に入れて戻る。

 赤竜騎士団の食堂に入ると既にヴィー達が待っていてくれて、食事が乗った盆を受け取ってから同じテーブルに着いた。


「チオちゃんまで働いてくれたのに銀十枚ですよ。あ、これチオちゃんの分ね」

「わ、私はいいです!」

「駄目だよ。ちゃんと受け取って?」


 そう言いながらチオちゃんに今日の稼ぎを渡し、オーラン先輩にも同じだけ渡した。


「……お前は良いのか?」

「ふっ。明日は私、荷運びの仕事より良いモン売りますから」

「ああ、買って来たんだ」

「勿論です。今日仲良くなった奴らに種を撒いておいたので、明日は色々と楽しみます」

「そっか。頑張ってね」

「はい」


 赤竜騎士団の宿舎は、部屋が凄く狭くてベッド一つで部屋が埋まるような、小さな部屋だった。でも、布団の手入れはされてて凄く清潔に保たれているので、これはこれでありだと思う。

 買った安酒は銀一枚、小瓶は五本で銀一枚だった。

 なので、チオちゃんとオーラン先輩に銀四枚ずつ渡したんだよね。

 また無一文になったけど、こっから稼ぎまくってやるぜ!と鼻息を荒くした後、いつものように小瓶に酒を入れ、魔力を注ぎ込む。


 一本いくらで売ろうかな?

 小瓶のサイズが一番小さい奴だから、やっぱ銀三枚かなあ?


「手伝おうか?」


 ノックの音に返事をしたらヴィーだったので部屋に入れ、二人でベッドに座り込んでいる。小瓶に分けた酒を見ながらヴィーがそう言うので、もう終わったと伝え。


「そういや、そっちはどうでした?」

「そうだね、そこそこ強いと思うよ?」

「へえ……。じゃあやっぱり森とか砂漠の魔獣と戦ってんですかね?」

「そうみたいだね。それと、ザクト火山に登る事もあるらしい」

「え、入っていいんですか、あそこ?」

「勝手に入り込んだ人の残り物を片付ける事があるって言ってたよ」

「あー、そっか、やっぱりいるんだ」


 森の中の魔獣の強さは良く解ってる。

 確かにあの多さなら、ある程度の強さが無いと危険だし。


「海はどうだった?」

「すげえ綺麗だったですよ!で解ったんですけど、こっちの海は潮の匂いがしないんです」

「潮の匂い?」

「はい。海の水って塩が含まれてるんですけど、こっちは違うんですよね」

「へえ?水に塩が入ってるんだ?」

「そうです。乾燥させて塩を採るんですけど、こっちは岩塩が主流ですもんね」

「そうだね、石に塩が含まれているからね」

「ねえ。面白いですよねえ」


 そのせいで塩と一纏めに出来ないから面倒なんだけどさ。

 

「そういやフラグニルの野郎、いつの間にか姿消しましたね?」

「そうだねえ。まあ良かったけど」

「ですね。ったくアイツ、全然変わってねえし」

「まあ、あれでも一応は神使だからねえ」

「消える前にもう一回殴っときゃ良かった」


 そう言って笑い合いながら、小瓶を避けて一緒に寝転がる。


「ラインハルトの美味しい物食べ尽しましょうね」

「そうだね。楽しみにしてるよ」


 そうして、小さなベッドで抱き合いながら眠りに付いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ