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第十話 成長してますっ!何処がとは言いませんが

 ダジェスと五人組を纏めた時、周りにいた男達も同時に纏め上げたからか、しっかりとリットさんも一緒に捕縛されてた。まあ、後で対応しよう。


「さて。やるか」


 そう言ったヴィーを中心にして、先輩達と横並びになって抜剣し会場内の厳つくいきり立った男達と対峙する。

 私の隣で抜剣しているオーラン先輩がいるからか、何故か凄く気分が高揚していた。


「先輩達のせいで計画が台無しですよ」

「計画?」

「そうです。魔法でぶっ飛ばしてさっさとトンズラする予定だったんですよ」

「ああ、まあ二人しかいなかったから妥当な計画だな」

「そうですけど。出来なくなりましたよ」

「ま、キリキリ働けって事だ」


 オーラン先輩に遠慮なく尻を蹴り飛ばされ、その勢いで飛び出して斬り伏せて行った。部屋の中にいた厳つい男達と、ほんの少しのお嬢さん方と剣を合わせて行き、そして全員が床に倒れて行く中、先輩達と私達は徐々にご機嫌になって行き。


「何か、こっちが悪者に見えますね、これ」

「そうか?」

「凶悪面な奴がいますから」

「お前を筆頭にか?」

「こんな可憐な女の子に向かって何言ってんですかねえ、オーラン先輩は」


 バシッと遠慮なく頭を叩かれるまでがお約束です。


「お前、少しは成長しろよ」

「してますってばっ!」

「ふざけんなっ、大体何でこんな事に巻き込まれてんだよっ!」

「し、仕方がないじゃないですかっ!いつの間にか迷子になってたんですからっ!」

「お前、迷子って。ホント阿呆かっ!」

「アルノの肉を堪能していたらいつの間にか迷子になってたんですっ!」

「ど阿呆がっ!その食い意地どうにかして治せよ本当にっ!」

「それだけが生き甲斐なのにっ!」

「懲りろよ、本当にっ!」


 オーラン先輩とそんな言い合いをしながら夢中で剣を振っていたら、いつの間にか全てが終わってたって言う。

 思わずキョロキョロと周りを見渡し、やれやれと溜息を吐き出す。


「こんな言い合いのついでで伸されるってどうなの?」

「勘違いしてんじゃねえぞコラ。俺の方が二人は多く倒してるからな」

「嘘ですよ、私の方が多いです」

「お前、計算まで出来なくなったのかよ」

「あっちの捕縛した奴らを勘定するのを忘れていませんかねえ?」


 魔力縄で縛り上げた奴らを指さして勝ち誇ってやれば、オーラン先輩がちっと舌打ちをし。いつの間にやらヴィーの所に集まっていたギルニット隊長、リクト隊長、ジェイド隊長が呆れながらも笑ってこっちを眺めてた。


「もしかしてサボってました?」

「いや?ただ、オーランといちるの勢いにあちらが負けてたからね」

「二人共、やり過ぎだ」

「やり過ぎ?」

「殺してないですよ?」


 ジェイド隊長の言葉にオーラン先輩と一緒に言い返すと、ジェイド隊長は溜息を吐いた。


「これじゃ全員立ち上がれないぞ」

「ここに置き去りにすれば問題ないですよ」

「大有りだ。大事な証人だぞ!」


 ルシェの声がそう答えたけど、そこはほら、やり方色々あるじゃんか?


「あの三人、呼んで来ますね」

「そうだね」

「ま、待て!これを解け!」

「あ、それ無理。解く時は全員を牢に入れてからね?」

「なんだとっ!?」


 ヴィーの事はリクト隊長にお願いして、オーラン先輩と一緒にあの騎士三人組を探しに外に出る。屋敷のドアの所にいた厳つい男は後ろからどついて一撃で黙らせ、外に出てあの三人組を探して合流し、屋敷に戻った。


「こ、れは」

「こう言う事だから、応援呼んで?大量にね」

「し、しかし」

「お願い。それと護送にはここにある荷車を使えば早いと思うの」

「そ、それはそう、なんだが」


 そしてルシェへと視線を走らせ、ギョッとした後私へと視線を戻す。


「あれだけ出すのは無理。だからあのまま護送して」


 そんなやり取りをじっと眺めていたダジェスが、クツクツと笑い出し、その後声を上げて笑い。


「あー、してやられたなあ。つうかお前、これはもしかして魔法なのか?」

「そうですけど?」


 どよめきが部屋の中を支配し、そして再びダジェスの笑い声が響いた。


「魔法が使えるなんて知らなかったぞ」

「最初にちゃんと名乗りましたけど?」

「何時だ?」

「この街に入る時と、ジャッハさんと初めて会った時に」


 そう言うとやっと気付いたジャッハさんが、あっ!と声を上げた後がっくりと肩を落とした。軽く流したみたいだけど、最初からちゃんと名乗ってたっつうの。


「仮面の貴公子とっ」

「黒の魔導士っ!」


 改めてヴィーが名乗りを上げながらポーズを取ったので、それに合わせて名乗りを上げながらポーズを取ったらオーラン先輩に蹴り飛ばされた。


「お前は、何をさせてんだ何をっ!」

「いや、本人ノリノリですしっ!」


 そう言いながら蹴られた尻を撫で、そして騎士三人組がやっと動き始めたので後はお任せしようと思う。

 応援が来るのは十日を超えるって話しで、普通は捕縛する場合街の外に待機させるだろうと言ったらばですよ?

 三人組は悔しそうに俯いて、これがこの国の現状なのですと言う。あまりにも可哀想になっちゃって、元黒騎士メンバーが憐れみを掛けてしまう程だ。

 

 そして、ヴィーの命令により捕縛した全員に気絶の魔法を掛けてから魔力縄を解き、ルシェとリットさんを出してからもう一度魔法を掛け直し、鍵が掛かる部屋に全員を押し込んだ。

 見張りの順番を決め、ルシェとリットさんの魔法を解く。


「喰らえ、気付けの水っ!」


 バシャッと頭から水を掛けてやると、二人共ビクッと跳ねながら目を開け。

 慌てふためいた騎士三人組をよそに、ヴィーがさっさと話しを始める。


「ルシェ、希望通りにしたよ」

「あ……?」

「応援が来るまで足止めするつもりなら、対価の交渉をしたいんだけどね?」

「……え?」


 まだボケているらしいルシェにもう一度水を掛けようかと思ったら、騎士三人組に必死な顔で止められてしまった。


「ルシェ、いつまでボケてんだよ」

「だ、黙れっ!」


 言い返して来たルシェを見下ろしていると、よろよろと立ち上がり、ずぶ濡れの自分を見下ろして疑問符を浮かべながら私を見て来た。


「なんで濡れてるんだ?」


 そう聞いて来たけど、その問いに答える者は誰もいなかった。

 ただ、全員の視線が私に集まった事で状況を理解したらしく、ジロリと私を睨み付けて来る。


「……お前、本当に失敬だなっ!」

「はいはいごめんねごめんねえ」

「っ!!!」

「ルシェ。話を戻すけど、これ以上協力を要請するなら対価の話しをしたいんだが?」

「な、た、対価って」

「当たり前だろう?理解していると思うが、こっちはお前達がいなくても自分の身ぐらい守れるからな」


 ヴィーがそう言うとルシェは物凄く悔しそうな顔をしてこちらを睨んで来た。実力って奴ですよと小声で言えば、眼を剥いて睨んで来たけど気にしない。

 こっちの人数が増えた事を伝え、最初と状況が変わった事を説明し、一応この後も手伝いが必要かと問い掛けるとルシェは顔を顰めたけど手伝って欲しいと言って来た。


「……いくら欲しい?」

「一日一人頭銀五枚」

「ぎ、銀五枚……」

「一日銀三十枚。応援が到着して全員を護送するまで、十五日として金四枚と銀五十枚だね」

「……も、もう少し」

「しょうがないですね、大マケにマケて金五枚で引き受けましょう!」

「おかしいだろっ!何だその計算はっ!」

「おっと、公爵家莫迦にすんなって感じ?なら全員で金十枚はどうです?」

「なん、だと……?」

「やだ、この国の公爵家って実は火達磨になってたりするんですかねえ?恥ずかしいわあ」

「だ、黙れっ!そんな訳ないだろうがっ!」

「やり!なら金二十枚で毎度って事で」

「だから何でそう跳ね上がって行くんだっ!」

「五十まで出してくれるだなんて、太っ腹ですねえ。さすが公爵家!」

「ふざけ」


 即反応したルシェの口を慌てて塞いだリットさんが、こちらに向かって必死に顔を横に振っていた。仕方ないな、リットさんに言われちゃ引っ込むしかないわ。


「仕方がないですね、リットさんに免じで金百枚で勘弁してあげますよ」

「おい……」

「ま、それは冗談として。それで?いくらで雇うつもりです?」


 黒騎士の腕を早々安い金額で売る訳ねえだろっつうの。


「……応援到着までで、金五枚までなら」

「交渉成立だね」


 ヴィーがにっこり笑ってルシェと握手をし、そして今後の予定を話し合う。

 その辺りはヴィーとリクト隊長の得意分野なので、ギルニット隊長とオーラン先輩と私は、転がしっ放しになってた奴らを片付ける為に部屋を出た。

 ヴィーとリクト隊長をどうにか出来る奴がいるとは思わないけど、念のためにジェイド隊長が一緒にいるのでこっちは何も気にせず色々出来るし。


「お前ら、随分フラフラとしながら旅して来たよな?」

「まあ、のんびりとあっちこっちを見ながら進んで来ましたけど?」

「地図を描く為には必要な事だろう」

「……それもそうか」


 ギルニット隊長の言葉にオーラン先輩が頷いた。


「綺麗な顔をした男と黒髪の女って聞くと、何処の街でも通じるってのはどうかと思うがな」

「そう言えば、必ず『大食いの』って付いていたな?」

「可憐なの間違いでは?」

「その形容詞がお前に付くと本気で思うのか?」

「真顔で聞きますっ!?ねえ、真顔で突っ込むとこですかっ!?」


 オーラン先輩の腕を掴みながら必死に縋ってみたら、少しは悪いと思ったのか、私から視線を逸らして「悪かった」と謝って来た。


「えー、オーラン先輩が謝るとか天変地異の前触れじゃないですかね?」


 バシッと頭を叩かれ、ついでに尻を蹴り飛ばされ。


「演技力上げてんじゃねえよっ!」

「せ、成長してると言う証をですねっ!」

「そこ成長してどうすんだテメエはっ!」

「騙されたじゃないですかっ!オーラン先輩を騙せるなら何処に行っても大丈夫と言うお墨付きじゃないですかっ!」

「ははは、確かにそうだな。オーラン、負けたな?」

「くそっ!」


 ギルニット隊長のその言葉に素直に悔しがるオーラン先輩に笑わせて貰い、全く変わってないこのノリに物凄く安心してしまった。


「おっと。何人か逃げたみたいですね?」


 転がしっ放しにしておいた部屋は見張りも置かずにそのままにしてたせいか、数を数えたらどうも三人ほど逃げたらしい。オーラン先輩が走って部屋を出て行ったので、私とギルニット隊長は残りの面々を捕えておいた。

 

「ギルニット隊長、ここにあった宝石類の中で大き目の物が無くなってます」

「持って逃げたか?」

「と思いますけど。売り捌くと足が付くような大きさですよ?」


 これくらいあったのでと右手の拳を突き出せば、ギルニット隊長はぷっと吹き出して笑い出した。


「まあ、放っておいても大丈夫だとは思うが」

「今からなら街を出る前に捕まえられるかもですけど」

「ルシェって奴の判断に任せよう。こちらはただ従うだけの方が良さそうだ」

「わかりました」


 そして、纏めて縛り上げた奴らを空に浮かせて運び、ダジェス達とは別の鍵のかかる部屋に放り込んで魔法縄を解き、暫く大人しくしているように気絶の魔法を掛けた。


「ごくろうさん」

「お腹、減りました……」


 その言葉に答えるように、盛大にぐぎゅるるるるると鳴ったお腹を撫でてやると、ギルニット隊長が笑いながら私の頭を撫でてくれた。


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