表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/74

第八話 懐かしい顔

 別れ際、リットさんにはこっそりと回復術を掛けておいた。

 やけに疲れた気分になるだろうけど、まあ気のせいで済ます事が出来るぐらいの回復術だ。ルシェは気付かなかったけど、リットさん、随分殴られたり蹴られたりしたみたいだからねえ。


「この街はどうだった?」

「想像通り、美味しい物たくさんありました……」

「満足したみたいだな?」

「まだですっ!きっとまだ食べていない物があるに違いないのですっ!」


 早速部屋にやって来たジャッハさんとそんな会話をし、届けられたお菓子の数々を前にひゃっほー!なんて喜んでいる所です。

 

「遅れてる奴から連絡があってな、夜には到着するそうだ」

「夜?」

「ああ。一番デカい商隊だからな、色々あんだろうよ」

「へえ……」

「アンタらは先に休んでりゃいいさ。後で紹介しよう」

「そうさせて貰いますよ」


 そうして夕食までお屋敷の部屋で過ごした後、ジャッハさんの部屋でリットさんと四人で夕食を摂った後、再び部屋に戻り。


「到着するのがダジェスさんですか?」


 部屋まで送ってくれたリットさんにこそっとそう聞けば、こくりと頷いた。


「これで全員が揃うのかな?」

「はい。明日の夕方にはそれぞれの荷をどうするかの話し合いが始まります」

「わかった」


 そしてリットさんが出て行って、後は寝るだけとなった頃。

 やっと屋敷の外が騒がしくなり、ダジェスさんが到着したらしい。


「さて。行きますか」

「俺も行く」


 そうして、姿を消して窓から抜け出し、ダジェスさんの商隊と一緒に屋敷に入り直し。

 ルシェとジャッハさんが話をしている男を認め、そちらに行こうとして足を止めた。


「……あれって」

「いちる、今はダジェスを」

「は、はい」


 久し振りって言うか懐かしい四人を見た気がするけどそこは流す事にしたらしい。階段を上がって行くダジェスさん達を慌てて追いながら振り返ると、四人がこちらを見ていた。

 おっと、やっぱ気付かれんのか。

 まあ散々この魔法を使って悪戯しまくったから、その内バレるようになってたもんなあ。


「これだけの会合は久し振りだな」

「そうだね。皆中々集まれないからね」

「そう言うダジェスさんも随分久し振りじゃないですか」

「まあな。だが色々面白いモンを持って来たぜ?」

「みたいですね。少し、驚きました」

「ジャッハ、お前も面白いモン拾ったみたいだな?」

「ええ。明日にはお見せ出来ますから」


 そんな話しをしながら三階まで上がった三人は、三階の一番奥の部屋へと歩いて行って部屋の中に消えた。


「……どうします?」

「窓に回ろう。集まった面々を確認しておきたい」

「じゃあ戻りますか」


 厳つい男達が見張りの為かドアの前に陣取り、その他にもどうやら廊下をうろつくと言うか、廊下で話を始めたりしてる。なるほどね、ダジェスは特別って事か。

 三階の状況を把握してから階段を降りて行くと、ダジェスさんが運び込んだらしい荷物を運んでいる男達に紛れて外に出て、三階まで舞い上がる。

 窓から部屋の中を覗いて行き、ダジェスの部屋を探した後、話しを聞く為に窓に身を寄せた。最初はダジェスへの歓迎の言葉で埋め尽くされ、聞いててうんざりして来た頃、やっと本題に入ったようで。


「しかし、ダジェスさんも見付けていたとは」

「ジャッハ、お前は黒いのも持って来たらしいじゃねえか」

「まあそうですけど。ダジェスさんとこ、赤毛じゃないですか」

「そうそう、赤毛は凄いですよ」

「下の毛も赤いのかしら?」

「チェスカ……、気になるのはそこなのかよ」

「あら、当たり前じゃないの。それによっては値段が跳ね上がるでしょう?」

「まず帝国の奴なのかどうかだろうがっ!」

「ああ、それなら違うから気にするなよ、ジャッハ」

「えっ?帝国の奴じゃないんですか!?」

「ああ。あいつら、どうも言葉が通じねえのさ。一応覚えてる帝国の言葉でも話し掛けてみたが、わからねえみてえでな」


 ダジェスのその言葉に、その部屋にいた奴らが顔を見合わせて訝しみ始めた。


「何か、嫌な予感がするな?」

「ああ。偶然で終らせるにはちと数が多過ぎる」

「……金髪は高く売れますが」

「帝国の赤毛が入っただけじゃなく、見た事もねえ黒髪ねえ」

「黒ってのは不吉を呼ぶ色だからな」

「……黒だけ片付けましょうか?」


 そんな事を言ったのは初めて見る顔の男だったので、そいつの顔を良く覚えておく事にした。あの野郎、ついでにとことん潰してやろうじゃねえか、ちくしょうめ。


「いや、お前らは手え出すなよ。黒は俺が貰う」

「えっ!?いや、けど」

「いいじゃねえか、不吉な色ってのが身近にいてもよ。それに、意外な高値が付くかもしれねえからな」


 ダジェスがそう言って笑うのを、ルシェが微妙な顔になりつつも必死で笑顔を作ってるのを眺め。さて、そろそろ行くかとヴィーと一緒に下に降り、まだ荷物を運びこんでるってのに話しに夢中になっている無能な奴らに感謝しながら中へと戻った。

 懐かしの四人組はどうやら、荷物部屋へと入れられたらしいって事だけは解ったので、ヴィーと二人でその部屋まで行ってみる。


 ココン、ココン、コン、ココッと言う特殊なノックをすれば、ドアが細く開き。


「いちるです」


 言った途端にドアから手が出て来て、中へと引っ張り込まれた。姿を消してるってのに、よく居場所が解りますね。

 そうして姿隠しの魔法を解いた私とヴィーに、懐かしの面々がほんの少し涙ぐみながらヴィーと挨拶を交わし、私の頭を叩いて再会を喜び合った。


「言葉が通じなくなってね」


 なんでダジェスなんて奴に掴まってんのかって聞いたら、リクト隊長が笑いながらそう答えて来た。そういやヴィーがそんな事を言ってたなと思い出し。


「色々、困った事が起きてたから、いっその事捕まってみようかって」

「お蔭で国境越えも楽になったからな」

「……リドルはどうしたんです?」

「後から着いて来ているよ。この近くに来た途端、森の方へ駆けて行ったよ」

「お前らのリドルがいるんだろ?」

「はい、そうです」

「やっぱりか。ならリドルの事は気にしなくても良さそうだな」


 そんな話しをしながら、と言うか、リュクレースから遠く離れたこの地に何故いるんだと問い掛ければ、四人は笑いながらそれぞれに私の頭を叩き。


「いちるだけじゃ不安で不安で」

「女房が笑って送り出してくれたから」

「ついでに両親の生まれ故郷を見ておこうかと」

「お前がリュクレースの恥を広めてないかと思って」


 ギルニット隊長とオーラン先輩は家族がいるのに何してんだよと思ったけどさ。

 会えて嬉しいと思ってしまったのも事実。


 そして、取り敢えず話が通じるようにしておくと、ヴィーが同時翻訳魔法を全員に掛けたけど、まだ話が通じない設定で動くって事と、これから私達がどうなるのかの話しだけ通しておく。


「細かい話は、リクトに通す。そろそろ部屋に戻らないといけないし」

「わかりました」


 ヴィーの言葉に全員が頷き、私がリクト隊長に姿隠しの魔法を掛け。

 三人で部屋を出て、私達にあてがわれた部屋に入って魔法を解く。


「……何処にいても変わらないんだね、いちる」


 大量のお菓子の山を見たリクト隊長が、そう言ってクスクスと笑うのを何だか懐かしく思いながら眺めてしまった。

 そして、ルシェの企みとリットさんの事を話し、この国の現状やカルッチェと言う国の話しもしていると、いつの間にやら夜中を過ぎていて。


「三階の奴らが部屋から出ました」

「おっと。じゃあ俺も部屋に戻ります」

「ああ」


 立ち上がったリクト隊長に姿隠しの魔法を掛け、送って行くと立ち上がった私も姿を隠して部屋を出ようとした時、ヴィーがリクト隊長に声を掛ける。


「会えて嬉しいよ、リクト」

「……俺もです」


 そうして二人で部屋を出てリクト隊長を送り届けた後魔法を解き、お休みなさいと声を掛けてから部屋に戻った。

 

「まさかこんな時に再開できるとは」

「心強い味方が出来たね」

「本当に。これでもっと楽しい事が出来そうですからねえ」

「ああ、その通りだ」


 くそ。

 どうせ私は隊長達に比べたら剣の腕も動きも鈍いですよ、こんちくしょう。


「……いちる。俺はいちるも頼りにしてるよ?」

「とってつけたようなフォローどうもありがとうございます。大丈夫ですよ、自分で良く解ってますから!」

「いちる」

「はいはい終わり。そろそろ寝ましょう、明日の為に」

「……いちる、話しを聞け」

「もう眠いから嫌です」


 さっさとベッドに潜り込めば、ヴィーが一緒に潜り込んで来る。


「いちる。寝ながらでいいから話を聞いてくれ」

「……どうぞご勝手に」


 そう言うとヴィーが私を抱え込んで、軽く溜息を吐いてから話しを始めた。


「いちるは、旅に出てからずっと、俺を最優先にしていただろう?それって、いちるにとって楽しいのかなってずっと思っていたんだ」


 気付かれてたか、やっぱり。

 だけどしょうがないじゃないか。リュクレースにとってヴィーは大切なんだから。

 もし万が一の事があったら、ヴィーだけでも生かして帰さないといけないって、ずっとそう思ってた。


「俺は、いちるがいなきゃ駄目なんだ」


 そう言ってぎゅっと抱き締めて来る。


「いちるの為に俺が動くって理解してるから、この間の国でも何もせずに出たんだろう?」

「……違いますよ。自分が無力なのを理解してるからです」

「いちるは、無力なんかじゃないよ」

「無力ですよ。助けたいと思っても、何も出来なくて八つ当たりするしかない程に無力なんですよ」


 ちゃんと解ってるよ。国をどうにか出来るほど力がある訳じゃないって。

 思い上がってる訳じゃないし、自分の力量って物もちゃんと理解してるつもりだけど。


「いちるは、何処でも変わらないね。ほっとするよ」

「……何言ってんですか。大人の色気がたっぷり出て来たに決まってるじゃないですか」


 ぐるっと回転して睨み上げながらそう言うと、ヴィーはぷはっと吹き出して笑い出す。

 まったく、失礼な夫だ。偶には妻をべた褒めすればいいのに。


「いちるへの信頼と、黒騎士への信頼は別物だ。だからって、いちるが無力だって事じゃない」

「……解ってますよ」


 そして同時に、先輩達がどうして後を追って来たのかも良く解ってるんだ。

 たぶん、私が潰れるって事が解ってたんだろうなって。


「……本当の事言うと、先輩達に逢えて凄く安心しちゃったのが悔しいです」


 そう、四人の顔を見てほっとしたんだ。

 これで、重責から解放されるって。


「……うん」


 ヴィーはそれだけ言って私を抱き込み、お休みと言った後額にキスをした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ