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第四話 稼ぎ時を見逃したら貧乏人

「アンタみたいな女は、もっと自分に合う男を見付けなさいよっ!」


 そうよそうよと言う女の子達に、つい笑ってしまう。

 あのセクシーランジェリーの店に入った後、ヴィーを店内に置き去りにして女の子達の話しを聞きに来ただけなんだけど。開口一番にこう言われちゃったよ。


「私に合う男ってどんなだろ?」

「そ、そんなの自分で見付けなさいよっ!」

「ふうん。で?自分ならあの人に似合ってるって?」

「あ、当たり前じゃないのっ!」

「それは一体どの辺が?」


 ニヤニヤしながらそう聞けば、女の子がいきり立つ。


「貴女と比べたら私の方が」

「そりゃ私と比べたら駄目だろ。あの人の隣に相応しいってんなら、比べたりせず自分の良い所だけで勝負しろや」

「な、何を」

「誰かを貶めて自分を良く見せるアピールすると、足元掬われんぞ?」


 何で自分も同じ事やり返されるって思わないんだろ?

 

「お嬢ちゃん、出直して来な」

「あ、アンタなんかに」

「はいはい、凄い凄い。お嬢ちゃんみたいな元気な子好きだけど、折角可愛い顔してんだからさ、もっと違う方向で頑張ってほしいと思う訳よ」

「はあ!?」

「ほら、顔歪めちゃ駄目だろ。男ってのは単純でさ、女の笑顔にころっとやられるんだ。だから可愛く笑顔で行こうよ」

「そ、そんな事言われなくても」

「解ってんならもっと頑張れ。蹴落とすのも結構だけどそんな事ばっかりしてると顔が歪むんだぜ?」


 どうやら思った以上に若いらしくて、それ以上何も言えなくなっちゃった。


「あの人、私の夫なんで、譲るつもりはねえよ?」


 そう言って膝を落とし、剣柄に手を当てて見せれば、唇を震わせて睨み付けた後逃げて行った。ホント、面倒くせえ。

 店に戻るとヴィーに抱き締められ。


「……もっと上手く捌いて欲しいんですがね?」

「ごめん」


 睨み上げてそう言えば、真面目に反省したらしいヴィーがそう言って謝って来た。

 まあいいですけど。


「で?どうだったんですかね?上手く行きました?」

「あら、あれで許しちゃうの?」

「え?」

「お詫びの印に何か買って貰えばいいのに」

「あー……、それだとたぶん、毎日の食費を出して貰う方がありがたいんで」

「食い気なのっ!?ふふ、あははははははっ」


 綺麗なお兄さんは今日も綺麗だった。


「あれ、もう何本か渡せるかしら?」

「無料でって事ですか?」

「そう。最低でも五本は欲しいのよ」

「五本か。じゃあお試し価格で一本銀一枚」

「……あら、いいの?」

「はい、お試し価格です。商売になるなら銀五枚で」

「わかったわ。夜までに頼める?」

「勿論」


 ヴィーのお面は型が出来た所だから、これから作るのだと言っていた。

 大体三日程って話しなので、それまでに商売して稼いでおかないとなあと首を捻った。


「何本注文もらえるかなあ?」

「注文貰ってから作ってもいいんじゃないかな?」

「でも、そうするとここに足止めされますけど?」

「いいよ。今度はちゃんとやるから」

「そうですか。じゃあ私は更に稼いでおこうかな」

「……酒場?」


 にやっと笑いながら頷き、ふら付きながら菓子を買ったり露店で買い食いしたりを繰り返し。一度宿屋に戻って作っておいた潤汁を取り出した。

 

「……小瓶なのは稼ぐ為?」

「当たり前です。出し惜しみしないと」


 リュクレースの花街には大瓶で作って提供してたんだけど。

 ま、こっちも商売なんでこれで勘弁ですよ。

 ついでにみるみる勃った君もポケットに入れて宿屋を出た。


「こ、こんにちはっ」


 追い払ったお嬢ちゃんが宿屋の前で待ち構えてたみたいで、出て来た途端にヴィーにそう言って来た。少しヴィーから離れて様子を窺う。


「あ、あの、良かったら私と一緒に」

「君と一緒に歩くつもりはないし、君の好意を受けるつもりもないよ」


 冷たく言われたお嬢ちゃんは顔を硬くし、軽く青褪めた顔でヴィーを見上げる。


「あ、の……、私、けど」


 言葉を続けられなくなって俯いたお嬢ちゃんをじっと見下ろし。


「誰に好意を持とうが勝手だけど、それを押し付けるのは間違えてる。それと、着いて歩かれるのは迷惑だから止めて欲しい」

「わ、私、ただ、貴方と一緒に、食事でもと……、思った、だけで……」

「君と食事をするつもりはないよ」

「じゃ、じゃあ、あの、良かったら案内しますけどっ」

「必要ないよ」


 お嬢ちゃんの目に涙が溜まって行くのを見ながら、空を仰いだ。

 今日も青空が広がってて良い天気だ。


「解ってくれたかな?」

「……その女がいるからですか?」


 あちゃー。

 途中までは良かったんだけどなあ。


「なんでそうなるんだ?」

「その女がいなければ」

「いようがいまいが関係ない。俺が君に興味を持てないと言っているんだよ」

「……じゃあ、どうして」


 そう言って泣き出したお嬢ちゃんを慰める為にお仲間さん達がやって来て。

 泣かせた可哀想のお決まり合唱団となり。


「一方的に押し付けられる好意は迷惑だ。それに、俺にも感情があるのを忘れるな」


 冷たく言い放たれたその言葉に、泣いていたお嬢ちゃんは更に号泣して駆け出して行ってしまい、合唱団はそれを追って行った。残ったのは野次馬達。


「……はいはい、見学料はここにどうぞー。ザ、修羅場!楽しかったならここに銅貨入れてねえ、金貨でもいいよー?」


 そう言いながらハンカチを広げてみれば、割りと入れてくれる人がいてこっちがビックリだよ。まあ、儲かった儲かったって事で。


「またあるかもしれないから見に来てねえ!」


 そう言いながら手を振って野次馬達を追い払い。


「……いちる」

「はい?」

「その金で酒を奢るように」

「はいはい」


 クスクスと笑いながら再びセクシーランジェリーショップへと足を運び、潤汁を五本渡した。


「先に払っておくわね」

「え、いいの?」

「いいわよ?ああ、注文は多分三十は行くと思うの」

「え、そんなに?本当に?」

「任せて。家の商品と一緒に売って来るから!」

「よろしくお願いしますっ!」


 がしっと握手をしてぶんぶんと腕を振った後店を後にし。

 

「酒場はまだ開いてないでしょうねえ」

「夕方からじゃないかな?」

「ですよねえ。お菓子も食べ尽したし、王城でも見に行ってみます?」

「そう、だね、そうしようか」


 ここの王都は庶民街から貴族街へと移ってから王城があるらしく、王城の上階辺りは庶民街からでも良く見えたんだけど。


「やっぱ警備兵とか見て見ないと」

「そうだね。装備は気になるね」

「ですよねえ」


 どんな武器を使っているのか、王城なら最新の武器になるだろうから参考になるんだよね。勿論、防具も一緒に見てるんだけど。


「こっちのお貴族様も派手ですね」

「そうだね」


 煌びやかな服を着たお嬢様が日傘を差して歩いていたり、気取った格好のお兄さんがこれまた気取った格好でベンチに座っていたりとちょっと楽しい。


「割りと外に出る人が多い事にビックリです」

「そうだね。けどこの辺りはまだ下位の方じゃないかな?」

「あー。まあ上位になると庭が広くなるのはお約束なんですかねえ」

「その位に見合った収入があるからね。分け与えられた土地も大きいだろうし」

「……それを民に還元するって発想が無いのが悲しい所ですよ」

「無理だろうねえ。だけどいちるのように組織を作って寄付を集めて色んな所へって言う発想は凄く良いと思うよ?」

「明朗会計にしないと寄付は無いですけどね」

「そこは変な奴が目を付けないように厳しくしたからね」

「ですね。まあけど、あの時はありがとうございました」

「うん?」

「ほら、コーラルにいた奴らを雇ってくれたでしょう?」

「ああ……、まあね」


 王都にいた頃、孤児院に寄付してたけどそれがちゃんと使われてるかどうかが気になっちゃって。つい、調べたりしちゃったんだよねえ。まあ、懐に入れながらも一応は子供達に色々使ってはいたけどさ。

 その辺が何かモヤモヤしちゃって、ヴィーに相談して組織作ったんだよね。

 そん時はまだ王妃だった大公妃殿下が一緒にやってくれたんだけど、お蔭で寄付金が集まったもんで大助かりだった。それをヴィーの案で、誰がいくら寄付してくれたかを明確に記載して、何を買ったとか何処へいくら渡したかを一緒にして提出して。

 次の年には寄付金が倍額に跳ね上がったのもいい思い出。

 貴族の見栄ってのは、使いようだよね、ホント。


「コーラルにいた人達は、貴族の横暴に嫌気が差した人達だからね。絶対に繋がらないだろうし、言いなりにならないだろうって踏んだんだ。お蔭で医薬品の充実にもつながったし、地方への医務室生の派遣も出来るようになったし。それに、花街も随分綺麗になった」

「まあ、荒事に慣れてないと危ないってのがありましたからね」

「そうだね。悲しい事だけれどね」


 随分綺麗な通りなのに、人が疎らになって来て豪邸が立ち並び始め。それを横目で見ながら王城を眺めてた。


「女王様だからか、何か煌びやかな感じですね?」

「そうだねえ。何が収入源なのか凄く気になるよ」

「ああ、それを考えてたんですか?」

「まあね。王都の通りを歩いてもこれと言った特産のような物は無かったし」

「何でしょうね?警邏の人達もどっかの兵士と同じ感じですしね?」

「……魔獣かなあ?」

「珍しい奴ならそうかもですね?」


 所謂希少な魔獣ってのがいるって話しは、この国の前の国で聞いた。

 滅多にお目に掛かれないその魔獣は、綺麗な青い鱗で覆われてるとか何とか。


「噂が一人歩きしてたかと思ったんですけど」

「少し、調べてみたいな」

「わかりました」


 もう一度王城を見上げた後、二人で庶民街へと戻り丁度開き始めた酒場をうろついて、一番賑やかそうな店へと入った。


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