神隠しと少年
蒼くんの手が止まる。
私を見た。
私は力強く頷いた。
「神隠しが始まったのは5年前、そうよね?」
「そうだよ」
「それから子供はこの街で見つからない、そうよね?」
「そうだよ」
「何でだと思う?」
「それは、こいつが殺したから・・」
松田さんを指す。
やっぱりだ。
「蒼くん、馬鹿ね」
蒼くんは、むっとする。
どろり、と邪気も増えた。
い、いかんいかん。
「こうは考えなかったの?
街の外にいるって」
「街の、外?」
「そう、子供はこの街ではないどこかにいるの」
「誰が連れてくんだよ」
「松田さんの奥さんよ」
「え」
「松田さんの奥さんが出て行ったのって何年前でしたっけ?」
部屋の隅にいる松田さんに振る。
松田さんは観念したように
「5年前だ」
と溜息交じりに言った。
子供が可哀想だと感じた松田夫妻は考えた。
国が保護しないなら
自分たちの手で保護しようと。
しかし、それは犯罪だ。誘拐だ。
だから、松田さんは奥さんとは世間体では別居という形をとり
奥さんに居場所のない子供たちを任せたのだ。
それこそが
神隠しの全ての全貌だ。
「そこにいるのは蒼くんなんだね」
松田さんは見えないものに向かって言う。
それはトンチンカンな方向だったが別にいいだろう。
「すまないね、心配させてしまって」
蒼くんから邪気はなく
もとの浮幽霊の蒼くんに戻っていた。
松田さんは
すまない、すまないと何回も呟いた。
蒼くんにも伝わっているはずだ。
「優衣は自分で望んだのか?
無理やりじゃないだろうな」
私を通じて
蒼くんの言葉を聞いた松田さんは
「もちろんだ」
と頷く。
「優衣は元気なんだろうな?」
松田さんは
先程よりも深く頷いた。




