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悪霊と少年


「松田さん!」



開けっぱなしだった扉を確認すると

躊躇なく中に入る。



どろり。



邪悪な気を感じる。

人生で初めて感じたものだ。


黒くて泥のように粘着質で

どこまでも深く飲み込まれそうな気だ。


おばあちゃん、

これが悪霊なの?




中はめちゃくちゃだった。

そこだけ嵐が通り過ぎたようだった。


松田さんは

部屋の隅で丸くなって怯えていた。



「松田さん!」



もう一度、声を掛けると

松田さんは私に気付いたようだ。



「さっきから、おかしいんだ。

 部屋のものが勝手に動いて

 私に襲いかかってくる・・!」



そういう松田さんの口を塞ぐように

北の方角から机が飛んできた。


間一髪で

松田さんは避ける。


いや、避けさしている。

遊んでいるのだ。


遊んで痛ぶっている。


私は北の方角を見る。

想像はしたくなかったがやはりいた。



「蒼くん・・・」



どろどろとした

邪悪な気の元は蒼くんだった。



「咲子さん、こいつだよ、こいつが」



うわ言のように

松田さんに敵意を向けている。



「あんたは何か見えるのか?

 さっさとやっつけてくれ!!」



松田さんは

私に懇願する。


「やっつける・・・」



私は松田さんの言葉を復唱した。

違う、おばあちゃんは夢で言っていた。




「咲子、救うんだよ」




そうだ、

やっつけちゃだめだ。


救うんだ!



私は刃物を投げようとしている

蒼くんに向かって叫ぶ。



「蒼くん、生きてる! 

 子供は生きているわ!!」



「嘘だ・・・」



刃物を振りかざす。

ダメだ、当たると松田さんは死んでしまう。


力の限り叫んだ。






「優衣ちゃんは生きてるわ、本当よ!」















山本さんの家で

お焼香をあげた優衣ちゃんの事故で亡くなったお兄ちゃん。



それは、間違いなく蒼くんだった。





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