少年と山本さん
山本さんの家は
3軒の中でも1番に神社から近かった。
チャイムを鳴らすと
明るい返事があり女性が出てきた。
「山本さんですか?」
「ええ」
虐待していた、という印象はなく
はつらつとして元気そうだった。
ノイローゼになってたなんて嘘みたいだ。
「神隠しのことで伺いたいことがあるのですが」
「あぁ、それ」
間の抜けたような返事をする
山本さんにむっとする。
もしかして
あの豹柄のとこの人と同じで
いなくなって嬉しいのか?
と思ってしまったので
ついつい口に出てしまっていた。
「帰ってきてほしくないんですか?」
山本さんは
意表を突かれたような顔をした。
「帰ってきてほしいわ」
何言ってるの、当り前じゃない、と。
本当にこの人が
虐待をしていた母親なのか?
「でも、虐待してたんですよね」
「あなたって、けっこう図太いわね」
山本さんは
可笑しそうに笑った。
「そうよ、私は優衣を虐待してた。
優衣のお兄ちゃんを亡くして
鬱でノイローゼ気味だった。
あの時の私はどうかしてたわ」
その時は
さすがにしょぼんと悲しそうな表情を浮かべた。
「でも、あれから優衣がいなくなって。
私ってば何てことをしたんだろう、て。
ものすごく反省したの」
「反省・・・」
「そう、神隠しにあった神社に
毎日のように通ってお願いしたわ。
返して下さい、ってね」
それこそ
ノイローゼだったわ、と山本さんは言う。
「子供が2人もいなくなるなんてひどい話でしょ」
「ちなみに優衣ちゃんのお兄ちゃんは?」
「6年前に事故で亡くしたのよ。
優衣とすごく仲が良くてね」
それから優衣ちゃんは
1年間の虐待を与えられ神隠しに・・・。
「そうだ、お線香あげてよ、お兄ちゃんに」
「え?あぁ、はい是非」
家に上がらしてもらう。
忘れないうちに
他の被害者との共通点も確認することにした。
「何故、神社で神隠しにあったと思われたんですか?」
「何故って・・・。
優衣のものが見つかったのよ」
「なんですか?」
「優衣がいつも髪を結んでいたヘアゴムよ」
ヘアゴム・・・。
「あの、山本さん」
「はい」
「急な用事が出来ました」
私はそう言い残すと
慌てて山本さんの家を出た。




